FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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どうも皆さん、おはようございます。今日がなんの日か分かりますか?

そうです、今日は――第三次世界対戦だ。リア充と非リア充による論争合戦です。

つまり、ひたすら非リア充の方々がリア充に対し、爆ぜろ!!と叫ぶ日でもあります。

いやはや、恐ろしいこと、この上ない。え? 私ですか? 非リア充ですけど?

つうか、受験生が恋なんかすんなよ(笑) 自分の身を滅ぼすぞ、愚か者。

――愚痴もこれぐらいにして丁度バレンタインのお話を書こうか悩んでいたのですが、

シャナ編だったので。土曜日丸々潰して書き下ろしました。まあ、元からこの設定があった

んですが、タイミング良かったので、書くことにしました。

前回の話の冒頭でシャナの様子について“まるで恋をしているように”とありましたが、実際

彼女はレインに恋してます。まあ、その理由は今回の話です。つうか、基本的に主人公は

朴念仁。レイン・アルバーストの時期なんか朴念仁度はトップクラスですから(笑)

そんな訳で私のまだまだ“甘い”執筆スキルが書いた“甘い”話ですが、それでも良い方どうぞ。

ちなみにシャナはクールキャラに見えて、実際は乙女。恋する乙女なのです。

ギルドではクールを装ってるだけです。本人と出会ったら――もう分かりますよね?(笑)

P.S.
皆のもの、ハッピー(Frohe)バレンタイン(Valentinstag)!!
フハハハ、現実から逃れてしまっては行けないのだよ。私も非リア充だが、目は背けんぞ!!
こう言うときこそ空元気に祝おうではないか!!











……………リア充爆発しろ。






私の初恋

目映い光が目を焼いた。目蓋を開けることすら拒んでいたかのように。紅蓮に輝く炎と一瞬の閃光。それが私の――“シャナ”になる前の少女の運命を変えた。

阿鼻叫喚の村。滅べ、滅べ。死ね、死ね。そう叫ぶ人の形をした化け物たち。人の心の奥底は誰にだって理解できない。優しくても本当はおぞましいことや恐怖するしかないことを考えているかもしれない。それが少女を人間不信にさせる結果を生んだ。

守るための力を少しだけ手にできたというのに、少女は結局守られ、守りたかったはずの存在を目の前で失った。自らもあと少しで失うところだというのに、何も出来なかった。

 

だから少女は願った。未来(あした)が欲しいから。自分が生きていても許される世界が欲しいから。自分の存在意義が欲しいから――そのために少女は現実へと帰還する。

 

 

 

 

「……ぅ……んぅ………」

 

寝言を小さく口から漏らしながら、少女は目を覚ました。目映い光がそこにあると思っていたが、少女の眼に届いたのは暗い闇――夜空だった。

回りに強い光が無いためか、星々がその柔らかい光を放つ。さっきまで鼻に届いたはずの焦げ臭さや死臭、異臭は何処へやら。そんなものは元から無いように全く臭わなかった。

ゆっくりと身体を起こし、周囲を見渡す。回りは木々に囲まれている。森の中だ。だが、こんな森は見たことがなかった。魔力に目覚める理由になった森とは雰囲気が違う。霧一つなく、森そのものが静かだ。夜だからか、それとも――

 

「……ん? あ、起きたんだ。よく眠れた?」

 

聞き覚えのない声が聞こえた。すぐさま声がした方を向き直ると、そこには白銀のコートを羽織った少年が焚き火の前に手を翳し、暖を取ろうとしていた。

 

「……………?」

 

誰だろう? 見覚えがない。村に――人の形をした化け物がいた村にあんな人はいただろうか? いや、いないはずだ。村ではあんな服装しないし、している人もいない。

なら――

 

ふとそう思った少女――私が首を傾げようとした刹那、頭の中であの時の光景の一部が姿を現す。一瞬で炎を切り消し、罵倒と呪詛を叫んだ化け物たちをあっという間に殺した少年。

そっと私に声をかけ、安心させてくれた――その少年がそこにいた。

 

「………なんのつも……っ!?」

 

思わず自分の口を押さえた。いつもの自分とは違う口調が口から出たことに驚いて。幼さの残る口調だったはずの私。村で一度意識を失った後、今まで何があったのだろうか。

驚く私に彼は何かを思い出したのか、苦笑しつつ声をかけてきた。

 

「…あ、…ご、ごめんね? 実は色々あってさ。君が眠ってる時に少し知識みたいなのを入れさせてもらったよ。まあ、それもあって口調が変わってたりするけど……。う~ん……やっぱり無断はダメだったかな……」

 

「……………」

 

「…えーっと…と、とりあえずその目…止めてほしい…かな…?」

 

「…最低」

 

「…う、うん…ごめん」

 

どうやらこの口調になってしまった原因は彼だったようだ。知識が以前よりもあるお陰が頭が以前よりも冴えているような気がする。

ジトーッと彼を睨みつつ、そろそろ立ち上がろうと身体に力を入れる。

だが――

 

「――っ…」

 

身体に痛みが走った。顔を歪め、痛みに堪えると立ち上がることを止め、もう一度身体を横に倒す。横になる方がやっぱり楽みたいだった。

すると、先程まで苦笑し続けていた彼がこちらに近づいてくる。普段なら知らない人がやって来たら距離を取るのだが、今は身体が思うように動けないために拒むことすら出来なかった。

 

「今は動かないでね。いつ怪我したのか分からないけど、身体に結構擦り傷とかあったから。あとは……打撲かな。一応手当てしてあるから安心してね」

 

確かに私の身体にそんな傷があった――と言ってもそんな感じがしただけに過ぎない。打撲は恐らく無理矢理捕らえられた時や反抗した時にできたものだろう。

擦り傷は身体を十字架に縛られた時にロープによる擦過傷や服を破られた上にほとんど裸だった状態で引き摺られた際に――

 

顔が急に熱くなった。焚き火の温度が熱い訳ではない。羞恥心を感じたからだ。“手当てしてあるから”、それはつまり――

 

「……ぁ…ぁぁ………」

 

「ん? どうかしたの?」

 

きょとんとする彼がさらに羞恥心を高めた。まさかごく自然に見ていたのか? いくら治療や応急処置とは言え、本当に彼は――そう思うとある言葉が口から漏れた。

 

「…………ぃ」

 

「へ…?」

 

「――変態、変態、変態ぃぃぃ!!!」

 

「えええええぇぇぇ!?!? な、なんで急に!? ぼ、僕は変態じゃないってば!!」

 

思わず出た三連続変態決めつけ宣言。勝手に決め付けられた本人にはかなりの精神的ダメージは見込めるだろう。それでも社会的死亡などの制裁は見込めない。

ここは森。恐らく近くに町がないから森で野宿しているのだろう。そうなれば、近くに人がいる訳がない。結局あまり意味はないのだ。――ただ目の前の本人はかなり焦っているが……。

 

「ぼ、僕はそんなんじゃないってば!! 第一そんなことした覚えは――あっ…」

 

弁解しようと必死になっていた彼が変態ではないということを証明するべく思い当たることを脳内で探していたが、あることを思い出した。

急に静かになり、顔を向こうに向け、背中をこちらに向ける。すると、突如地面に向かって転がり出した。突然のことに仰天し、開いた口が塞がらない私。転がり続ける彼は頭を抱え、ただただ叫ぶ。

 

「なんてことしてるんだ、僕はぁぁぁぁぁ!!! いやいや、なんで応急処置でなんでそこまでやったんだよぉぉぉ!!! 治癒魔法使えるのにぃぃぃ!!!」

 

「……………」

 

どうしてしまったのだろう。さっきまでのイメージが音を立てて崩壊してしまった気がする。優しげでカッコいい、そんなイメージ。助けてくれた時の彼のイメージが、今では見る影もない。――どうしてこんな風になってしまったんだろうか?

 

ふと浮かんだ疑問に答えられないまま、私は彼が転がり続けるのを止めるまで待った。数分間転がり続けた彼が漸く落ち着くと何故か今度は彼が顔を真っ赤にしていた。

 

「……………どうか…したの?」

 

何故こんな風に声をかけたのか分からない。だけど、これぐらいしか思い付かなかったのは事実だ。すると、それを聞いた彼が頭を地面に打ち付け――

 

「……本当にごめん…。もう変態でいいから………本当にごめん」

 

完全に壊れた。さっきまでの彼は何処に行ったのだろう? 今では自らを変態だと勝手に認め、自虐的になる彼の姿しか残っていない。しかも土下座だ。

正直なのか、バカなのか、それとも両方なのか。それを問答するより先に私は自然と口を開いて無意識に告げていた。

 

「…別にいいよ。…もう許すから」

 

あれ? 私は何をいっているの?

 

「……へ?」

 

「…だから…もういい…。そんなに…自分責めなくていい」

 

不思議と私はその言葉を口にしていた。操られている訳ではない。気がつけば告げていた。この少年のバカ正直さに負けたのだろうか。

いや、そんな感じではない。だけど、不思議とその言葉は私の口から出ていた。

ゆっくりと顔を上げ、彼は首を傾げていたが、自分が許されたことに気がつくと、笑顔を見せ、笑った。

 

「――ありがとう、許してくれて」

 

急に胸が苦しくなった。なんなんだろう、この笑顔は。まだ10代前半ぐらいだろう歳の彼が見せた無邪気なそれ。それを見ると何故か胸が締め付けられるような……。

そんなことに頭が上手く働かなくなっていた私に対し、彼は土下座を止めると、楽な姿勢になり、焚き火の方を向いてさっきまでしていただろう作業を再開した。

彼の行動が視界に入った私は問答するのを止め、そっちに顔を向けると、あるものを目にした。魚だ。それも見たことがない魚だ。不味そうには見えない。

グ~と小さな腹を鳴らす私にあの時の彼に戻った少年は魚を刺した串を焚き火の縁から取り出すと、それを少し冷ましてからかぶり付いた。

 

「………あ、旨い。考えていた通りの味になって良かった~」

 

まるで味まで計算していたかのように自分の作った焼き魚に安心すると、そのまま美味しそうに食べ続ける。やっぱり美味しいようだ。

――というより、美味しそうだ。なんだか欲しくなってきた。それでも、だ。

彼がいくらバカ正直だとしても、何を考えているのかがわからない以上は――こういうパターンでは誘いにのって食べてしまってはいけない。

勝手に脳に入れられた知識がそう物語るかのように私の思考に助力(アシスト)する。彼をまだ完全に信じてはいけない。

村を滅ぼすかと思うほどの勢いで斬り込んでいた時の彼の眼はただ怒った時の眼ではない。あれは純粋に殺意を漏らし、どう殺すか、どう動くかを考えていた本物の暗殺者のようなもの。今は優しい目付きだが、あの時はクマ型の化け物と同じ血のように紅い眼をしていたし、眼光だけで何かを切り裂けるぐらいに鋭かった。

だからこそ、彼のことはまだ信じられ――

 

「………ん? あれ? 食べないの?」

 

ニコニコしながら彼が焼き立ての串に刺した魚を私の前にまで持ってきた。熱々ではあるが、凄く美味しそうだ。食欲が祖剃られる。

さっきまだ信じないと決めていた信念が揺らぎそうになる。腹の虫が「早く、早く食わせろ」と言わんばかりにお腹が鳴る。

 

ぐっ……、耐えなきゃ…。あれを食べて眠ったりなんかしたらあとで何があるか分からないし……。それにあれだけバカ正直だけど本当は少しだけ我慢できなかったりしたんじゃ……。

 

知識が有らぬことを勝手に思考に付け加え、彼に対しての不信感を引き立てる。その勢いのまま私は強引に腹の虫を黙らせ、彼にキッパリと言った。

 

「…いらない」

 

「……そっか。それじゃ、僕が残り食べておくね。お腹空いたら言ってくれたら作るから」

 

断ってしまった。いや、断れたことに安心するべきだろう。もしあれが私の見ていない隙に睡眠薬を微量に盛られたものだったとしたら――。

 

そう考えると寒気がした。これ以上誘惑に負けまいと視線をずらし、大人しく横になる。良い匂いが鼻腔をくすぐる。食欲がわき、なんだか我慢しづらくなっていく。

さっき黙らせたはずの腹の虫が再起を計り、詰めかけるように私の理性を押し退けようとする。歯を噛み締め、なんとか耐える。

 

――と言うより先に何故ただの焼き魚からあんなに良い匂いがするのだろう? 彼は料理人でもあるのか? それともそういう風に細工しているのか? しかし、細工しているのなら食べられるものではないのではないか? だが、現に彼はあれほど美味しそうに食べている。

それなら――

 

押し流されそうになる理性。それに気がつき、頭をブンブン振り、邪なものを一斉に追い出す。なんとか我慢できた。安心しつつ、彼の方に向き直ると――

 

「ふぅ……、あと5本かな」

 

あれだけあったはずの焼き魚の串がたった5本と化していた。正直驚きすぎて言葉がでない。さっきまでの自問自答している間にあれだけの量を一気に喰らい尽くしたのだろうか?

――となると、あの5本が無くなるのも時間の問題ではないのか?

 

そう思った途端、簡単に理性が飛んだ。身体が痛かったはずなのにすぐさま飛び起き、彼の前に正座――そして両手を突きだし、今までの我慢を完全に忘れて言った。

 

「食べる!!」

 

「はは、そっか。じゃ、ゆっくり食べてね」

 

ニコリと笑った彼の手から私に皿と焼き魚の串が2本渡される。一気に渡さないのは恐らく落とさないようにとしてくれているのだろう。

しかし、私はそんなのに構わず飲み物を飲むように焼き魚をガツガツとかじっては租借し、呑み込んだ。

 

「美味しい……!! 美味しい……この魚、美味しい!!」

 

嬉しくなってきた。こんなに美味しいものを食べたのは久しぶりだ。すごく暖かくて懐かしくもあって、それでいて優しい味。塩味も適量で焼き魚によくあっていて、魚の身もホクホクしていて美味しい。なんでさっきまで変な意地を張っていたのだろうと思えるほどだった。

急いで食べた時に何回か咳き込んだが、彼が優しく背中を叩き、詰まらないようにしてくれる。飲み物も彼がちょうど良いタイミングで渡してくれた。

なんだか彼が私の保護者みたいに感じた。実際今も魚を食べている間、優しく頭を撫でてくれている。それが優しい手付きで、つい前まで知らなかったのに撫でられていても悪い気がしないのだ。そんな不思議な感覚に私は心地よさを感じていた。

全部食べ終わり、ほんのすこしお腹が好いていたが、彼には止められた。これから横になるのに食べすぎはよくないとのことだ。

母親といた時は少し反論したけれど、何故か反論が出来なかった。もう彼の魔法の術中なのだろうか? 操られてしまったのだろうか? そう思ったが、不思議と怖くなかった。

ゆっくりと眠気が私に襲い掛かり、私は――

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

あれから半年が経った。あのあと、私は眠ってしまったのだが、彼は何もしておらず、ただいつも通りにのんびりとしていた。今もなお、彼は私のそばにいてくれている。

あれからしばらくして彼がイシュガルという大陸の魔導士だったことを知り、仕事は大丈夫なのかと訊ねたが、彼は笑って答えた。

 

「別に大丈夫。あそこでバンバン働く必要ないし、どうせならこうやって有給休暇っぽくのんびりしていた方が僕には貴重な時間だから」

 

“あそこ”という言葉の意味はよく分からなかったが、それでも彼が勤めている仕事場のことだと理解した。あの村にもそういう機関があったのは覚えている。

あの村で起こったことも私のツラかったこともある日我慢できずに涙を流しながら吐き出した私を優しく抱き締め、慰めてくれたことも今では懐かしい。まだそれを吐き出してから半年も経っていないが。

そして、今は――

 

「それじゃ、教えた通りに魔法使ってみて」

 

「うん、分かった!」

 

――私の魔法の先生でもある。

 

この特訓は一週間ほど前からだが、前にクマ型の化け物を倒した時に感覚のようなものを掴んでいるお陰か、順調に魔法が使えるようになってきている。

言うまでもなく使う魔法の属性は火だ。つまり、弱い火から強い炎の類いを操る魔法などだ。

さっきから分かってはいたが、彼は本当に物凄い魔導士だ。様々な魔法も知っている。強い魔法も行使できる。それでいて町で聞いた魔導士のを噂で彼の名前が出ていた。それほどまでに彼は強く、有名だ。それを今さらながら驚いている。

 

「ハァッ!!」

 

炎で作り出した剣。以前のクマ型の化け物を倒した時よりも形が安定し、高火力な一撃が彼に襲い掛かる。しかし、彼はそれを涼しい顔のまま自らの魔法で迎え討たせる。

光輝いた手刀が容易く炎の剣を切り裂く。サッと散ってしまった炎の剣に呆然とする私の頭にポンと手が乗せられた。

 

「残念だったね。それでも前より形も威力も良くなってたよ」

 

「うぅ……」

 

あれでも彼は手加減している。魔力を身近に感じられるようになってから、彼から放出される魔力の量でどんな状況かが分かるようになった。

微量しか漏れていない――それはつまり、まだ手加減し続ける範疇だということ。それ故に彼はまだまだ私が未熟だと思っているのだろう。

それでも何故か馬鹿にされているとは思えなかった。日に日に彼は嬉しそうにしている。私が成長することを喜んでいるのだろうか?

不思議にしている私に彼は優しい手つきで頭を撫でた。

 

「偉い偉い。やっぱり火魔法に対して生まれつきの才能あると思うよ。普通ならここまで進歩しないから」

 

「…そうなの?」

 

「うん。前に魔法のこと知りたがってた子は魔力のコントロールも上手くいってなかったから。まあ、最後の最後でコントロールしてみせたけどね」

 

「…そっか」

 

嬉しくて仕方がなかった。半年前の私なら魔法どころか、魔力すら嫌いだった。自分がこんな目に遭ってしまった理由に少なからず魔力が関係していたのだから。

だけど、今は違う。そのお陰で彼に出会えた。運命というものがあるなら、魔力が目覚めること、それが即ち私の人生が別のものに変わるための必要不可欠なものだったのだろう。

 

――などと考えて入るものの、何時からだろうか。彼に褒められると嬉しくて仕方がなくなってしまった。もし人間に尻尾があるならば、彼に頭を撫でられ褒められ始めた頃から尻尾はブンブン振ってしまっているだろう。

本当にいつから彼に褒められることが幸せになっているのだろうか? 謎である。

 

「……ん? どうかしたの?」

 

「……なんでもない」

 

真っ赤な顔を背けるように彼から離れると、再び私は炎の剣を両手に構築し、それを構える。前より魔力を多めに使用している。ただ馬鹿の一つ覚えのように無駄遣いしている訳ではない。多めに使った魔力で炎の剣の相手に切りつける部分を強化している。

これなら簡単には砕かれない。それを見て彼は満足そうに笑うと、真剣な顔つきを微かに見せた。

 

「ヤァァァッ!!!」

 

気合いのこもった声で駆け出し、勢いよく剣を横に降る。

しかし、これを彼は容易く避ける。しかし、何本か髪の毛が宙に舞ったのを私の目はちゃんと視認していた。

 

――今度こそ!!

 

今度は袈裟斬りを彼に見舞う。だが、これも彼はサッと躱し、今度は髪の毛一本すら切ることを許さない。

 

――まだまだ、これから!!

 

今度こそしっかり当てて見せる。力一杯に真っ直ぐに降り下ろされる剣。これなら彼が避けた後に衝撃で少しは足元が揺れるはずだ。そこに横凪ぎ払いで当てることだって不可能ではない。そう思い、力一杯に降り下ろした。だが、彼は降り下ろされる剣から視線をはずすことなくジッと眺めていた。

 

――見えてる!?

 

確かに真っ直ぐ降り下ろした。しかし、炎の剣である以上は普通の剣と違い、核たる弱点が不鮮明で分かりづらいはずだ、しかし、彼はそれを見通すようにジッと見て、一瞬だけ魔力を多く使用し、魔法の濃度を高めた手刀を横一文字に振った。

 

パキンッ。

 

高音質な音が鳴り響き、強化されていた炎の剣が真っ二つに折れる。次の瞬間には私の手にある炎の剣の残骸と折れた先が一瞬で無に帰した。

倒れかかるように前のめりになった私を彼はすかさず抱える。転ばずには済んだ。しかし、彼に抱き締められているような感じになっている。

それを自覚した途端、顔がさっき以上に赤くなってしまった。彼はゆっくりと身体の力を抜き、こちらを見る。

 

「さっきのは良かったよ――ってどうしたの!?」

 

真っ赤になった私を見て彼は大慌てになる。しかし、私はそれどころではなかった。真っ赤になった顔のまま、冷静さを完全に失い、舌が縺れてなにも言えない。

 

「……ぁ……ぁぁ………わた……私……抱き締め…られ………ぁ」

 

ガクッ。

 

何故そうなってしまったのかは今でも分からない。だが、私は確かに気絶してしまった。何故だろうかは覚えていない。ただ久しぶりだったということと、男の人に抱き締められたことが無かったせいか。私は力なく彼の腕のなかで気絶してしまった。最後に目に映ったのは大慌てになっている彼の姿だった。

 

 

 

 

私が目を覚ましたのは数分後のことだ。幸い何も変なところがなかった。――いや、ただ気絶していたのだから何も怪我などしてはいないだろう。だが、彼は大慌てだったらしい。

もし彼が親だったら俗にいう親バカというものだったのだろうか? 

――などと考えて入るのだが、心拍数が上がったまま落ち着かない。そんなに彼に抱き締められたことが私を落ち着かせない原因となったのだろうか? ただただそれは謎だった。

だけど、分かることは一つ――

 

「……ぅぅ…彼の顔が見れない…恥ずかしくて…見れない…」

 

ただそれだけ。恥ずかしさ故に彼の顔をちゃんと見れなくなってしまった。早くさっきの出来事を忘れたいのだが、忘れられないのが現実。

こういう時は頭を殴るべきなのか? しかし、一撃で忘れさせることが出来るような代物は近くにない。当然私の小さな手では自分を気絶させることすら無理である。

――と考えているなか、あることを感じ、私は自然と口にした。

 

「……レインの身体…暖かかった…。…それに良い匂い…身体洗うのに気を使ってるのかな……。なんだろう…スゴく落ち着く…」

 

不思議だ。男のことをこんなに考えることは村ではなかった。見たところ彼もまだ少年と言ったところだ。それなのに不思議と気になってしまう。

 

なんでなのかな…。

 

知識に関係なく思考がそう告げる。疑問だ。彼によって手に入れた知識でもその正体が――その答えが浮かばない、分からない。

胸が苦しくなるのに、なんだか切なくなるのに――なんだか嫌にはならない感覚。不思議と彼を考えると心が暖かくなる。寂しくない。

最後に村で感じた恐怖もその安らぎに包まれていくような感じがする。無意識に微笑んでしまう。優しい。嬉しい。幸せ。そんなものが次々と湧き出す。

 

「…………なんだろ…この感じ…」

 

齢5歳の少女は真剣に悩む。答えのでない問いかけ。永久に続いてしまいそうな迷宮の中をグルグルと思考の旅人が進んでいく。

進み、進んで、行き止まる。戻って、進んで、立ち止まる。それの繰り返しが今もなお、行われている。膝を抱え、不思議な感覚に私はボーッとしてしまった。

だが、それをすぐに現実に戻らせるようなことを思い出す。

以前母親に訊ねたこと。赤子の頃に病気で死んでしまった父親との出会いの話を。その話の一部――母が嬉しそうに語ったある一節を。

 

 

――多分“一目惚れ”かもしれないわね。お父さん、すごく優しくて強い人だったから。

 

 

“一目惚れ”? 出てきた単語に首を傾げる。しかし、追加された知識がその言葉の意味を知らない訳ではなく――

冷水を頭から被されたかのように私は現実に返り、漸く収まろうとしていた胸の激しい鼓動が再稼働。さっきより顔が真っ赤に――紅に染まった。耳まで熱い。

何故そこまで赤くなり熱くなったか。それは追加された知識が“一目惚れ”という言葉の意味を詳しく知らせたからである。

 

“一目惚れ”――それは簡単に言えば、初めて見ただけで強く惹かれること。それは最終的に“恋”というものになる。“恋に落ちる”とは相手を好きになり――

 

――“一緒にいたい”と思うようになること。

 

その瞬間、頭が爆発しそうになった。頭から湯気が出てしまうぐらいに熱い。今からに来られたら何を口走ってしまうか分からないぐらいにだ。

 

「(こ、ここここここここ――恋ぃぃぃっ!?!?)」

 

自分でも暴走していることが分かった。それでも止められない。“一緒にいたい”というものに近いことを思ったことやそういう感情は最近感じていたことだ。

一目惚れではなくとも、“一緒にいたい”などと思ったことは否定できない。つまり、今の私が真っ赤になり、暴走しかかっているこの状況は――

 

「――…こ、恋…してるんだ…私……」

 

それを呟いた途端、私は必死に自分を押さえつけようと議論を始めた。

 

いや、待って!! まだ私5歳だから!! レインのお陰…ううん、彼のせいで歳に合わないことになってるけど、恋なんか……恋なんかしてないってば!! 恋ってもっと大きくなってからするものだし……。……あれ? ……それって…本格的な恋は大きくなってからだけど……この気持ちって……“初恋”?

 

それを浮かべた途端、自ら自爆したことを悟った。さらに我慢できないほどに顔が熱くなってしまった。今の私が小さな池に浸かったら恐らくお風呂でも出来るのではないかと思うくらいに。熱い、顔も手も耳も、全身が熱い。頭の中から彼のことが離れない。

 

「……わ、私……やっぱり…恋…して……――」

 

暴走する私。その刹那――

 

「ただいま~。あれ? 起きてたんだ、大丈夫?」

 

――恐らく朴念仁である彼が襲来した。彼の声が耳に届き、振り返って私は固まった。

 

「……………」

 

「あれ? ど、どうしたの? ()()()()()だよ?」

 

指摘された。顔が真っ赤なことを指摘された。その言葉が私の理性どころか、薄っぺらくなっていた平常心ごと粉砕し、私は――

 

「わひゃああああああ!?!?」

 

奇声を上げた。ジタバタと身悶えし、足元にあった石を適当に何故か彼に投げ付ける。今思えばなんてことをしているんだと思えるものだが、彼はそれに驚き、問答無用で飛んでくる石を弾く。

 

何の罪もない彼に向かって石を投擲し続ける私だったが、手から滑った石の一つが私の頭に直撃してしまい、私はバタンと倒れ、そのまま意識を失った。

漸く石の弾幕から逃れた彼はその光景に固まっていたがすぐに顔を真っ青にし、驚愕、慌て出し、彼は急いで私のもとに駆け付けた。

 

その夜、目を覚ました私は彼の顔を見ることどころか、彼の声すら聞くことが出来なくなり、野宿中の寝床であったテントの中から彼を追い出してしまう羽目となった。

毛布だけにくるまる結果となった彼は自分が何か変なことをしていないかを問答しながら寝ることになったらしい。

一方の私は羞恥と恋情の焔に身を焼かれながら、落ち着けない今宵の夜を過ごすこととなるのだった。

 

 

 

 

 

 

――齢5歳、何も知らなかった無垢で無知だった私は初恋を知る。

 

 

 

 

 

 




ここで一句。

リア充に対しての一句。

“ああ爆ぜろ 嫉妬に呑まれ 弄られろ” (´・ω・`)トモダチガサケンデタナァ……。

まあ、別にリア充がどうこうしようと私は知らぬ、存ぜぬ、興味ない。

しかし、調子に乗りすぎることだけは許さぬ。恐らく非リア充はそれを思っている。

こう言うときこそ某ニート神の言葉なり!!

某ニート神「異論は認めん、断じて認めん、私が法だ黙して従え」

――つうか、てめえはただの変態ストーカーだろうがあああああ!!!

                                (`・ω・´/)シ オワリ
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