FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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はい、どうも。不肖の作者、天狼レインです。またもこれだ。中編挟むような構成に

すんなよ、なにしてんだ私は……。それしか言えませんね、ホント。

今回久しぶりにレインが彼らしく登場します。つうか、内容をもっ増したかったんですが、

やり過ぎは注意だったので止めました。あと10000文字追加出来そうだったんですが、

そうなると中編が二つになりそうで……、いやそれって中編じゃなくね?

まあ、そんな訳でしっくりこない終わりです。それに関しては寛大な心で許してください。

P.S.
受験勉強頑張り中。故に投稿スピード減速。それにやる気も減少。
すげぇ、めんどい。ダルいです。あと眠い。睡眠時間が日に日に減っていく不思議。
おお、怖い怖い。




おかえり、みんな… 中編

ハルジオン港から航海を開始した一隻の小舟。港を出るときは高々とギルドの紋章を挙げられはしなかったが、ここまで遠くに来れば堂々と挙げられる。

はためく帆を一人が監視し、他は皆自らの仲間たちが最後に消息を絶った天狼島を望遠鏡で探し回る。そこにいるのは今残っているギルドのメンバー全員ではない。

大体半分といったところか。半信半疑なのだからそれぐらいが妥当。これ以上人員を削げるほど今の妖精に力も地位もない。今や借金を返そうと必死になる程度なのだから当然だ。

故にこうやって半信半疑の中。旧知であり、戦友たる《青い天馬》の者共が提供してくれた情報の真偽を確かめに来ているのである。

だが、その一方であることに不思議な点が存在していた。

それは――

 

「なぁ、《青い天馬(ブルーペガサス)》の連中が言うことなら兎も角。なんで途中で颯爽と現れて消えたあの子が天狼島があるって情報を知ってたんだ?」

 

ふと込み上げた疑問を口にするマックス。確かにそうだ。いくら現在フィオーレ第二位のギルドの所属であったとしても流石に魔導爆撃挺を所有しているとは限らない。

なれば、フィオーレ中を回るなどということは限りなく不可能だ。

それに《古文書(アーカイブ)》の魔法を持っている魔導士がいるとも言えない状況である。

だがあの状況下であの少女シャナは平然と“生きている”ということを口にした。それも誤魔化す必要もないと言わんばかりの口調でだ。

彼女は見たところ火魔法を使う魔導士だろう。だが、他に何かの魔法を持っているようには見えなかった。本当は持っているのかもしれないが、それでも堂々と宣言できるような結果を持っている訳ではないだろう。

そう思うと疑問しか浮かばないのだ。

 

「だよな。でもなぁ……」

 

ウォーレンが何かを言おうとして口をつぐむ。

別に言おうとすれば言えたのかもしれないが、それはシャナという少女が言ったことよりも自信のないもので、それもその疑問に答えられるようなものですらなかったからだ。

当然だ。人の真相心理、分かるならば今の世の中全ての国が一つの国にでも纏められていただろう。それに反逆者なども即刻見つけ、すぐさま処刑でも処罰でもできる。

そうなれば、評議院も犯罪が起こった後から必死になって犯人を捕まえる必要すら皆無になる。簡単に言えば、心を読めるならば疑問などほぼ出来ないということだ。

故に今のこの疑問すら無に帰すことすら造作でもない。

 

そんな中、望遠鏡を除いていたビスカが一通りの捜索を一旦止めて、二人の方に向き直る。

 

「一応今見てみたけど、本当にこの辺なの?」

 

「何も見えてこないじゃないか」

 

それに同意するようにアルザックもまた、彼らの方に向き直る。やはりこの二人がそれを言うとなるとかなり怪しくなってくる。

二人はどちらも優れた銃の使い手だ。特にビスカは狙撃手。遠くを見ることや周囲に気を配るなど彼らには造作もない。ならば、その彼らが気がつかないというのは場所が違うのか、はてまた本当は彼らの持ってきた情報は嘘、偽りでしかなかったのか、とそうなってしまう訳だ。ここで諦めず、探そうだのなんだの言えることには言えるが、後々実際に見つからなければ笑い事で済まないし、当然時間の浪費であることを避けられない。

そんな彼らの集中力を途切れさせないようにと仲間たちはフォローを入れる。

 

「天馬の奴等の話じゃ、この海域でエーテルナノが何とか……」

 

「そもそもエーテルナノってなんだよ?」

 

「知るかよ。魔力の微粒子的な何かだろ?」

 

天馬たちの情報を再び盛り返し、なんとか集中力を保ってもらおうとするが、疑問が増えるとちゃんとした答えが出なくなる。そもそもここにいるメンバーは知識面では乏しい。

こういうものはルーシィやレビィの得意分野といったところだ。当然二人とも今では天狼島と一緒に行方不明の身である。つまり、答えられる者は一切いないという訳だ。

 

「本当にロメオを連れてこなくて良かった?」

 

「無理矢理にでも連れてくるべきだったかな……」

 

仲間の――いや、特にナツの帰還を待ち望んでいるのはマカオの息子ロメオ。あれから彼はマカオの言う通り笑わなくなっている。

そのためにこういう時こそ連れてくるべきだったかと思ったアルザックとビスカだったが……

 

「まだみんな生きてるって決まった訳じゃねぇんだ」

 

「ぬか喜びさせる訳には……」

 

事実そうだ。仮にここでナツたちが生きてるかもしれないとかロメオに伝えて来させよう。それから一生懸命にみんなで探す。だが、見つからなかった。

なら彼はどういうだろうか。「やっぱりナツ兄は……」や彼らに向かって「ふざけないでくれ」とでも言うだろう。見つかるかどうかの確率がかなり低いこの状況下、信じられるものはただ一つ。“本当に彼らが生きてここにいる”という実感と証だけだ。

それ以外に完全に信じられるものなど存在しない。だからこそ、ぬか喜びさせる訳にはいかなかったのだ。

だが……

 

「「レビィに会える!! レビィに会える!!」」

 

この駿足男(バカ)とこの体重増加男(バカ)は場違いなほどに喜んでいた。別に喜んではいけない訳ではないが、もし見つからなかった時に自らの首を絞めてしまうようなことはしないほうが利口だと思えるのだ。

故に……

 

「やかましい!!」

 

ウォーレンが二人を黙らせた。そして言葉を続ける。

 

「7年も連絡がねぇんだぞ。最悪の場合も考えろよ」

 

「お……おう………」

 

「もしや……」

 

「「……………」」

 

続けて口にした言葉が自分にも仲間たちにも突き刺さる。一応ここに来ている仲間たちは少しでも生きていると信じて来ている者たちだ。

故に自分達の気持ちを否定するような先程の言葉は出来る限り避けたかった。だが、二人を落ち着かせるのに必要だったのは言うまでもなく。

それが自分達に返ってくることもか分かっていたが、意外にもそれは心に冷たく響くものだった。

沈黙が彼らの間に訪れる。そんな中、海を見ていたマックスが何かを見つけた。

 

「なんだあれ……」

 

その声に気がつき、仲間たちもそちらに向き直る。

 

「……人?」

 

「まさか……海の上だぞ…」

 

ウォーレンが信じがたそうにする。その隣から狙撃手であるビスカがその正体に気がつく。

 

「ちょっと!! よく見て、あれ!!」

 

彼らが見つめる先には白い服を着た少女がいた。金色の長髪に緑色の瞳。頭には天使の羽根のような髪飾りをつけた――海の上に浮いている少女。

 

「た、立っている!?」

 

「誰なんだ!?」

 

アルザック、マックスが驚愕し、目を凝らす。すると、その少女の隣に立つもう一つの人影に気がついた。

 

「嘘……だろ……?」

 

「あの…姿……」

 

「おい……あれって……」

 

先程よりも驚愕する仲間たち。その視線が注がれる先にいたのは――少年。

腰まで伸びた銀色の長髪に茶色混ざりの瞳。白銀色に輝くコートを羽織ったそれは記憶が間違っていなければ、知っている人物の姿にそっくりだった。いや、そっくりではない。

()()なのだ。

《妖精の尻尾》が誇るS級魔導士が一人、レイン・ヴァーミリオン。

彼本人がそこに佇んでいたのだ。

 

「レイン!?」

 

「本当に生きてたのか!?」

 

「おーい、レイン!!!」

 

涙腺が緩む。涙が目尻から零れ落ちそうになる。だが、仲間たちの声に答えず、彼は謎の少女の方に向くと小さく頷き――何かを呟いた。

 

「Diejenigen , die den ewigen Schlaf losen――」

 

未知なる言霊が静寂に包まれる海上に響き渡る。聞いたことがない。その一言に尽きるそれは怪しげな雰囲気を醸し出していた。

 

「な、なんだ……?」

 

「レイン…どうしちまったんだ……?」

 

仲間たちが首を傾げる。しかし、彼は淡々とそれを続ける。

 

「Oh , tut mir leid , Fairy folk .

Es wurde in ein verschlossenes unterworfen , Me Sunden vergeben――」

 

そう告げる彼の姿は寂しげに、何かを乞うように見えた。しかし、何を告げているのかは彼らには分からない。ただそれは不思議な響きを散らすだけ。

 

「deshalb , Nun , aber aufwachen gut――」

 

その刹那、突如として小舟に強い震動が伝わった。周囲では津波が多発し、まるでレインの告げる言霊に反応しているかのような感覚に至らせる。

必死で仲間たちが小舟に掴まる中、彼は未だに揺らぐこともせず、少女と共にその場に立ち続けていた。

そして……

 

「Obwohl gute auflosbar in diesem Moment――Fairy Sphere!!!」

 

その言霊が放たれたと同時に海から出現する天狼島。現れた天狼島には損傷が全く見られず、かつてのままを思わせるものだった。

それに加え、島を覆う巨大な結界には妖精の紋章が刻まれ、白銀色の輝きを放っていた。完全に島が海上に出るとすぐさま結界は崩壊し、島は外気に触れた。

最後に大きな津波を巻き起こすとそれきり再び静寂が訪れる。

 

「て、天狼島……!?」

 

驚愕する仲間たち。そんな彼らの方を一瞥すると彼はコートを翻し、少女と共に島の方へと去っていく。

 

「お、おい!?」

 

「れ、レイン!! どこ行くんだ!!」

 

仲間たちの声が彼の背に向かっていくが、それには答えず黙々と島に向かっていくばかり。そんな彼の状態に彼らは不審なものを感じ始めた。

 

「ま……まさかレイン、忘れちまったとかじゃねぇよな……」

 

「…いや、それはねぇだろ……」

 

「もしかして……隣にいた少女が原因……?」

 

それぞれで模索する彼ら。もし仮にだ。7年の間にレインに何らかのことがあり、側にいた少女によって洗脳などされていた場合、先程自分達を無視した理由になる。

しかし、あのレインだ。あのレインがそう易々と操られる訳がない。そう信じる彼らだったが、このままでは置いていかれることに気がつき、すぐに我に返るとそのまま小舟を急いで天狼島へと進めていった。

 

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

 

天狼島へ到着した後、彼らは大急ぎで小舟から降りると、謎の少女とレインを追いかけた。幸い視界にギリギリ止まる場所にいたために見失うことはなかったが、それでも二人は大の大人が全力で走っても追い付かず、距離すら埋められないほどの速度で駆け抜けていく。

これでは埒があかない。このままでは体力を切らした途端に見失い、捜索から始めることになってしまう。そう判断するや否や……

 

「ジェット!!」

 

「おうよ!!!」

 

マックスがすかさず指示を出し、それに答え《神速(ハイスピード)》を発動させるジェット。ギルドの中でも最速――だった速さを利用し、二人を追い掛ける。

流石のレインと言えども魔法を未発動では彼に追い付かれてしまうはずだ。

だが……

 

「(嘘だろ……追い付けねぇ……!!?)」

 

未発動であるというのにレインとその側にいる少女の速度はまだ速まるばかり。折角詰めた距離ですら少しずつ無かったことに変えられていく。

あり得ない。その一言に尽きる光景にジェットは走りながらも絶句した。

この7年の間に彼に何があったのか。それしか言葉に出来るものが無かった。

それでも負けじと彼は走り続ける。まだ視界にある今なら少しでも彼らのいく方向を掴めるはずだと信じて。

 

「うおおォォォ!!!」

 

走る。走る。走る。走る走る走る走る走る。ただ走り続ける。仲間たちを置いていくことになろうとも自分一人でもいいからレインを――

 

――そう思った矢先、何かを見つけ、立ち止まった。

 

「……ぁ…………ぁぁ…………」

 

弱々しく声が漏れた。目の前に広がっていた光景にあんぐりと口が開き続ける。信じられないと言ったような顔だ。

 

すると後方からかなり息を切らした仲間たちが追い付いてきた。

 

「…ジェット!!」

 

「……どうしたぁ?」

 

あれほど距離があっても、やっぱり仲間たちは追い付いてくる。当然だ、彼らも――いや、彼らは魂ある妖精の一人なのだから。今までこうやってギルドを支えてきた仲間たち。

そうでなければ、こうやってこんな早く追い付くことなど出来やしない。

 

「あの女は!?」

 

「レインは何処に行ったんだ!?」

 

すかさず仲間たちは距離を詰めつつ、訊ねた。だが、ジェットは何も答えない。ただ前の光景に唖然としているだけだ。そんな彼に違和感を覚え、彼らもまた追い付くや否やそれを見る。

そして……

 

「……ぁ……ぁぁ……」

 

ただ何も言えないまま声が漏れた。

 

目の前に広がっていたのは先程と何ら変わらぬ森の風景。

いや、違う。そこには先程とは違う一色があった。

森の中にポツリとある濃い桜色。桜髪の何か。身体半分ほど土や瓦礫に埋もれてはいるが、それでもその形は言うまでもなく――人間。

桜髪の身体中に包帯が巻かれた少年。記憶が正しければ、この人物は――

 

 

 

――ナツ。ナツ・ドラグニル。《火竜(サラマンダー)》と呼ばれた妖精の一人で最強チームの一人。

 

 

 

天狼島と共に消えたS級魔導士昇格試験の受験者。7年間探し続けた仲間の一人だった。

 

 

 

「ナツ……」

 

アルザックが漸く言葉を紡ぐ。しかし、依然として仲間たちは絶句したままだった。

だが、仲間の姿を見つけてなにもしない彼らではない。すぐさま小さな崖を滑り降りると、彼のもとに向かう。到着するとすぐに彼の名前を呼んだ。

 

「ナツ!! しっかりしろ!! おい!!」

 

「目ぇ覚ませ、この野郎!!!」

 

思いっきり騒ぎ立てる。大体緊急時に起こすときはこれが定石、定番と決まっている。

しかし、うるさいことは言うまでもない。つまり――

 

「だぁー!!! うるせぇぇェェ!!!」

 

――飛び起きた。ナツが目を覚ましたのだ。となればここからは俗に言うテンプレだ。

 

「「「ナツぅぅぅぅぅ!!!」」」

 

「ぐほぉ!!?」

 

ナツに飛び付く仲間たち。最後に止めを刺すかの如くドロイのプレスがナツを襲う。

小さく悲鳴を上げ、完全に意識が覚醒する。抱きついた仲間たち――と押し潰そうとしたドロイを払い除けるナツ。続いて口を開く。

 

「どうなってんだ、一体!? なんでお前らがここに?」

 

驚くナツ。しかし、別件でさらに驚くことがあった。

 

「つうか、お前ら老けてねぇか!?」

 

「お前は変わらねぇな……」

 

「てか、ドロイ、太ッ!!」

 

瞬時に見合わせた仲間たちが記憶にあるよりも老けていることに気がつき、驚いたのだ

――特にドロイの変わり様に。

それに答えるかのように泣きじゃぐる仲間たちは口を揃えて染々と呟く。

 

するとアルザックとビスカの後ろから聞き覚えのある声が続いて響く。

 

「あれもう朝? オイラの魚は?」

 

「「ハッピー!!!」」

 

驚きと嬉しさで涙が滝のように流れる二人。一方のハッピーは目元を擦って欠伸をするだけ。

 

「ちょっと待てよ!? 俺たち、さっきアクノロギアの攻撃を喰らってぇ……えとー……」

 

両手を頭につけ、記憶を探る。すると、自然と記憶は脳内で再生され――

 

「他のみんなは!!?」

 

ナツは他の受験者たちがどうなったかを訊ねた、まあ当然だろう。あれだけのブレスを防いだとは言え、完全に衝撃が消せる訳ではない。

当然吹き飛ばされはする。だからナツは土の中に半身埋まっていた状態だったのだ。

慌てるナツ。当然他の仲間を見ていない彼らも慌てる。

だが……

 

 

 

「慌てんな、バカナツ。お前が心配するほど、あいつらは柔じゃねぇし、俺が死ぬのを簡単に“はいそうですか”で許す訳ねぇだろ」

 

 

 

懐かしい声が響いた。すぐさま振り返るナツたち。すると、そこには銀色の長髪を靡かせ、コートを翻した少年の姿。それに加えた他の人影。

それは間違いなく――

 

「レイン!!?」

 

「みんな!!?」

 

他の受験者全員の姿だった。それも全員起きている。ゆっくりと崖から滑り降りる。

それから全員が降り切ると同時に再びレインは口を開いた。

 

「全く……無理矢理起こされるまで起きねぇとはお前は爆睡するのが好きなのか?」

 

「んだと、レイン!!」

 

「あー、はいはい、寝言は寝てから言おうなー? 爆睡大好きバカナツ君」

 

「起きて早々だけど、お前だけはここで殴るッ!!」

 

すぐさま火竜の鉄拳を発動。レインに襲い掛かるナツ。しかし、彼は大きな欠伸を溢すと彼の鉄拳を意図も容易く手のひらで受け止める。

 

「――なッ!?」

 

「起きて早々元気なモンだなぁ。まあ、とりあえずお前は二度寝でもしてろ、阿呆」

 

もう片方の手でナツの頭に軽くチョップを叩き込む。すると、ナツが簡単に地面に押し付けられ、そこを中心に地面にヒビが入り、爆発的に砂煙が舞い上がった。

 

「――がはっ!?」

 

「あ……。少しやり過ぎたか……」

 

地面に伸びるナツを見てレインはしまったなぁ…と言いながら頭を押さえた。すぐさま後ろにいたウェンディが飛び出し、ナツに治癒を施す。

 

「もう、お兄ちゃん!! ナツさんは怪我人なんですからね!!」

 

「ご、ごめん……。ちょっと手加減出来てなかったわ……ホント」

 

頬をプクーと膨らませ怒るウェンディに苦笑いで答えると、小さく微笑んだ。

 

漸くだ。漸くこの時が来た。7年待った甲斐があったものだ。

俺の大切な刹那。この瞬間、この時間がやっと戻ってきた。忘れてなどいない。否、忘れてたまるものか。たかが7年だ。忘れるほどの長い時の流れに晒されてはいない。

 

するともう一度復活したナツがまた飛び起き、気になっていたことを口にした。

 

「それよりもなんで俺たち無事なんだ!!?」

 

「確かに……あたしたちアクノロギアの攻撃を受けて……」

 

「あのあとどうなったんだ……?」

 

上からナツ、ルーシィ、グレイが疑問を口にする。当然他の受験者全員や居残り組の一部である仲間たちも首を傾げた。傾げていないのはレインぐらいだろうか。

すると、彼はニッと笑うと後ろを振り向いてある人物を呼んだ。

 

「そろそろ解説でもしないか、()()()()

 

『ええ、そうですね』

 

その呼び掛けに応じ、崖の上から謎の少女が姿を見せた。金色の長髪を靡かせ、微かに微笑みつつこちらを見る姿は不思議という言葉を思わせるほどに幻想的だった。

 

「「「誰!?」」」

 

仲間たちは瞬時に首を傾げつつ、告げた。まあ、当然だろう。初対面だ。

――というよりも普通なら顔を合わせることなど一生ないはずなのだから。

すると、メイビスと呼ばれた少女は崖からゆっくりと降り立ち、名乗った。

 

『私の名はメイビス。《妖精の尻尾(フェアリーテイル)》初代マスター、メイビス・ヴァーミリオン』

 

「「「なぬぅっ!!?」」」

 

「「「なにぃぃぃ!!?」」」

 

突然のことに驚きを隠せず、驚く仲間たち。驚きが小さいのはウェンディとシャルルくらいだろうか。二人は知っていたのだからこれぐらいで十分だ。

その驚きを見つつもメイビスは話を開始した。

 

『あの時、私は皆の絆と信じあう心。その全てを魔力に変換させました。皆の想いは《妖精三大魔法》の一つ、《妖精の球(フェアリースフィア)》の()()を発動させたのです』

 

語るメイビス。それを聞き、仲間たちは瞬時に悟った。初代が助けてくれたのだと。それを言葉にしたのはマカロフだった。

 

「初代がワシらを……」

 

しかし、メイビスは首を横に振った。違う。その意思表示に彼らは困惑する。魔力を変換したのは間違いなく初代だ。しかし、それで守っていないと言うならば、誰が――

そう思った矢先、嬉しそうな顔をし、彼女はある人物の方を向いた。

レインだ。その視線はきっちり彼に向けられていた。

 

『いいえ、皆を守ったのは私ではありません。彼――私の大切な兄さんです』

 

「レインが!!?」

 

「そうだったのか……」

 

驚き、しかし、嬉しそうにする仲間たち。当然だ。仲間に守られた。それはギルドでは当たり前でそれでいて嬉しいことに他ならない。

こうやって生きているのは彼のお陰だと言えるのを噛み締めて何が悪いと反論できるほどに。

だが、その途中でエルザが何かに気がついた。

 

「少しいいでしょうか、初代」

 

『はい、なんでしょう?』

 

「先程あなたはレインのことを“私の兄さん”と言いましたか?」

 

その言葉にどよめきが走った。すっかり聞き逃していたが、確かに彼女はそう言った。

どう意味だ? それしか思い付かなくなる。すると、レイン自身が口を開いた。

 

「さて…と。前にも名乗ったが、改めて名乗らせて貰っていいか?」

 

それだけを訊ね、彼は軽く息を吐いてから声に出した。

 

「《妖精の尻尾》創成期メンバーが一人、レイン・ヴァーミリオン。メイビスの兄で、ゼレフ書の悪魔の一人。それが俺だ」

 

何の躊躇いもなく、ただ単純に静かに告げる。その言葉に誰もが驚き、声を漏らした。

 

「マジかよ……」

 

「創成期メンバーって……」

 

「つうことはレインは……120歳後半なのか…」

 

「それに…ゼレフ書の悪魔って……」

 

まあ、驚かないヤツなどいないほどの暴露だ。この反応が普通で当たり前。それは俺でもわかる。確かに俺がお前ら側なら驚くさ。――だから敢えて言おう。

 

「誰が言おうとこれは嘘偽りない真実だ。まあ、とりあえずこういうのはさっと呑み込んで馴れるのが一番だ。頭で理解しようとするのは時間かかるしな。

あと俺、これでもマカロフよりも歳上だからな? 人間――いや、なんでも通用するけど容姿ってのは宛にならないからなぁ……。これが典型的な例ってヤツだ」

 

堂々宣言する彼の姿。誰も反論など出来やしない。

だが、後方で青白い輝きが見えると同時にグレイが攻撃を仕掛けてきた。

 

「やっぱりてめぇ、悪魔だったのか!!」

 

「おいおい、なんで俺が攻撃されなきゃならんのだ。別に俺はお前の大嫌いなデリオラじゃねぇぞ。お門違いも甚だしいな、阿呆が」

 

「うるせぇ!! てめぇもデリオラもどっちにしようがゼレフ書の悪魔だろうが!!!」

 

氷で出来た鉄槌が降りおろされる。危ねぇ。いや、マジで危ねぇことこの上ない。こんな所で攻撃してくんな、ナツと同レベルか、てめぇは。

ハッキリと口にしてやりたいが、今言っても意味もねぇし、こいつが落ち着く訳でもない。

故に――

 

「ああ、そろそろ()()()()ぞ、お前の羽音(どせい)なんか聞いていても心地よくも何ともねぇよ。だから――とっとと黙れよ、餓鬼。俺は子守りするつもりは一切合切ねぇぞ」

 

その刹那、白銀に輝く閃光がグレイの腹に突き刺さる。貫通はしない。当然だ、貫通などさせれば死んでしまうからだ。この地を死者の血で染めるつもりは毛頭ない。

理由などただ静かに寝てもらおうと思っただけに過ぎない。

だからお願いだ、これ以上は喋るな、騒ぐな。待ても出来んのか、餓鬼が。躾されたきゃ、俺じゃなく別のヤツに頼めよ。

 

その想いと共に、傷口に触れたのか吐血し倒れ行くグレイを冷徹な眼で睨んだ。別に悪意もない。殺意もない。ただ一つ、俺は怒っている。

うるさいのもしつこいのも理由だが、一番の理由は仲間が側にいるのに気にせず襲って来たことに他ならない。だから眠れ、沈め、黙れ。一旦頭を冷やせ。

 

目の前でグレイが倒れる瞬間まで彼を睨むとレインはコートを翻し、頼んだ。

 

「ウェンディ、ソイツの治癒頼む。致命傷にはなってないから大丈夫だ」

 

「あ……うん」

 

レインの気持ちに気がついたのか、ウェンディは小さく頷きグレイに駆け寄った。

視界の端で緑色の優しい光が見えた。これで大丈夫だ。命に関わるようなことはしていない。ゆっくりとメイビスの方に歩み、彼女の隣に立ち止まると、やっちまったと言わんばかりに頭を押さえた。

 

「……はぁ……」

 

『やっちゃいましたね、兄さん』

 

ストレート一直線、曲がることなど毛頭ないかのような直球が俺の胸に突き刺さる。

それにこの笑顔だ。反論など何にも言えねぇ。だから敢えて自分を自虐する。

 

「全くだ。いや、全くその通りだな……。流石にやり過ぎたかもなぁ……。確かにうるさかったのはうるさかったんだが……」

 

『それでも仲間を守ろうとしたんじゃないですか?』

 

突然のフォロー。なんだろう、遊ばれているような気がする。それでも――

 

「気づいてたのか、やっぱり」

 

『当然です。これでも私、《妖精軍師》って呼ばれてたんですから』

 

これは細やかな妹からの励まし。何故だろうか、スゴく嬉しい。心にまで染み透るとはこういうことかと実感、納得できる気がする。

 

「…だな。……メイビス、少しお願いがあるんだが…いいか?」

 

『はい、なんでしょう?』

 

「あとで、俺の家に来てもらえるか? 俺たちの大切な“娘”にプレゼントあげたいからさ」

 

実際の娘ではない。というより血の繋がっている兄妹で結婚や出産など笑える話じゃない。近親婚と言うのだろうか。今まで行ったことのある大陸全て禁止されていたような気がするのは気のせいではないような感じがする。などと考えていると、メイビスはそんな俺の言い訳のような何かに気がつかないまま嬉しそうに同意した。

 

『ふふ、そうですね。分かりました。あとで合流しましょう。――それよりもこの現状どうするんですか?』

 

「……………手伝って貰えるか? 自分でしておいて何だが、解決できる気がしねぇ……」

 

 

 

 

 

あれから7年。漸く時が進みだしたと言うのに俺はいきなり修羅場(これ)らしい。

 

 

 

 

 

 




さて、次回こそこの話を終わらせないとね。そろそろ茶番挟んで急いで大魔闘演武に

行かなければ……。それと何処かの番犬ギルドに入れるオリキャラ決まりました。

しばらくしたら出ると思います。皆さんの予想を越える変態ですけどね(笑)

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