FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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どうも皆さん、作者の天狼レインです。受験不合格でした、アハハ。

まあ、そんなことをクヨクヨしてても意味ないし、所詮何を頑張るかで価値が違うので

気にしません。受かっても真面目にやらなかったら塵芥に相違無いですし。

と言うわけで、今回は親馬鹿スキル発動のレイン登場。キャラ崩壊なんて茶飯事です。

まあ、レインが珍しく取り乱してるので面白いかもしれません。

それでは本編どうぞ。

P.S.
Fateで何故か☆4以上が全くでない。未だにサーヴァントが☆3構成(涙)




親馬鹿なる者

まずはどう始めるべきか。俺の場合、一言めはそれに限る。いきなり挨拶で始めるのは最早定番、定石と言っても過言ではない。

故に話し始めるならば、これからの方がいいだろうと思う。

 

しかし、あれだ。

当然俺たちが帰ってくるのを良い意味で良しとする者もいれば、嫌がる者もいるだろう。

例としてあげれば、闇ギルドの者たち。ただでさえ、今は此方側のギルドが成長し、7年前とは比べ物にならない程に強くなった分、彼らも強くはなっているだろう。

しかし、闇ギルドでなくとも気がついているだろうが、一角だった“バラム同盟”は崩壊間近。残すはただ一つ、()()()だけだ。

 

もう一つ例としてあげるならば、評議院だろう。特に常習犯のナツを筆頭にその他諸々までご帰還だ。これで何も起こらない方が可笑しい。

本当に何も起こらなかった場合はナツの頭でも殴っておいて、元通りに治しておこう。

アイツが損害出さない時点で事件、事故、天災、それら一つが確実に――いや、最悪の場合は全てが起こる可能性を孕んだ前兆と言えよう。

そんな彼らの思惑はさておくとして、こっちの都合で言えば、やっと帰ってきた、やっと帰ってこれた、と言うべきだろう。歓喜。喜ばしいことは喜ばしいことに相違ないのだから。

 

だが、俺の場合は少々残念に思う。この一年、どう抗おうが、どう動こうが――結局時代は移り行く。かつての静けさを保っていた時代は既になく。今あるのは激動迫る時代のみ。

弱き者は討たれ、強き者が残る。それが定石とならんとす、弱肉強食の日が迫っているのだから。そして――俺もまた、この一年で()()()だ。

 

言ってしまえば難だが、俺の身体はもう持たないだろう。あくまでも後天的。

先天的で悪魔なら兎も角。後天的でここまで肉体が持った方が驚きだと言われるだろう。悪魔になろうとした人間の成れの果て。別に否定はしない。否、否定は出来ん。

 

それでも構わない。選んだのは俺だ。進んだのは俺だ。ここにいるのも俺だ。

ならば、せめて…と言うやつだろう。ここで何処かの大陸で売っていた漫画みたく主人公が特攻をして敵と相討ちに散るという最後もいいかもしれないが、俺は悪魔だ。

主人公ではない。あくまでも時代という劇に踊る無様な役者に過ぎない。

そういうカッコいい役はあのバカにでも託すべきだろう。ああいうヤツは意外にも向いていたりするのだ。誰もが感動し、生き様を讃える――素晴らしい最期がある、そう俺は思う。

 

兎に角、俺は無様な悪魔なりにケジメをつけて散るべきだろう。

だが、散り方に気を付けなければ後々困る。ウェンディやシャナ、フィーリに変な残り香を残す訳にも行くまい。

 

それにしてもこうグチグチと自分を自虐し、自ら憐れんでしまう辺り、俺も歳を取ったと言うべきか。まあ、実年齢は軽く100を越えてしまっているのだが。

いや、それともあれだろうか――

 

 

 

 

 

今手元にある、この()()()()()()()のせいで柄にもなくしんみりと来てしまっているのかもしれ――

 

 

 

 

「あっ!! お兄~ちゃ~ん~?」

 

聞き覚えのある声が近くで聞こえた。視界の端で見えるのは藍色の長髪を下ろしている少女。同じ親の元に学び、過ごし、生活を共にした義理の妹であるウェンディに相違ない。

少々頬をプクーッと膨らませて、こちらに迫っている所を見ると、怒っている理由は――

 

「身体は未成年なんですから、お酒はダメです!!」

 

――あ、バレた。こっそり飲んでたのに気付かれたか。

 

「えー、いやな? 横にいるギルダーツがさぁ。酒に付き合えやとか言ってきたからさ? まあ、その――仕方なく?」

 

「おいコラ、レイン。なに人に罪を被せようとしてンだ?」

 

とりあえず、ギルダーツのせいにしておこう。これでヤツも同罪だ。――多分。

まあ、良心の塊であるウェンディはすぐに見抜いてしまうだろう。

それでも時間稼ぎには使える。要約すると、あれだ。ギルダーツは犠牲となったのだ。

 

それにしても酒を飲んだせいか、それとも7年間ずっと凍結封印から逃れたまま、隔離された状況で過ごしたせいか。なんだか今日はテンションが可笑しい気がする。

恐らく前者だろう。いや、前者であってくれ。後者だったら俺は頭の可笑しいヤツというレッテルを貼られて仕舞いかねない。

 

などと自らに問いたり言い聞かせつつ、俺は迫り来るウェンディから逃げる。上手いこと義妹は友達や仲間に頼んで俺の行動を制限しているようだが、ハッキリ言おう。

甘い、甘すぎる。これしきのことで仮にも聖十の一人である俺を捕らえられる訳がなかろう。故にこうやって逃げ回ることなど造作でもない。あとは手元にある酒を飲み干して謝れば一件落ちゃ――

 

「――あれ?」

 

すっとんきょうな声をあげ、俺は足を止めた。急に止めたせいか、追いかけていたウェンディが背中にぶつかり、転びそうになるも耐える。

すぐさま確保し、説教に入るのが社会の定石なんだろうが、ウェンディは俺の様子が可笑しいことに気がついたのか、訊ねてきた。

 

「えっと…お兄ちゃん? どうか…したの?」

 

「いや、な? その……酒がない」

 

「それって中身のこと…?」

 

「いや、そういう意味じゃなくだな……酒の入った()()()()()()()んだ」

 

「…ふぇ……?」

 

確かに先程まではあった。ちゃんと酒の臭いも漂っていた。しかし、気がつけば、それは無くなり、どこにいったかさえ分からない。

可笑しい。ハッキリ言って、これは可笑しい。どこにいった? どこに消えた? 油断していたのは一瞬だ。その一瞬の間に何があった? 気配があれば流石に気がつけたはずだ。

なのに全く気がつかなかった。どうしてだ? そんなに速いヤツがいただろうか?

ジェットの速さなら追い付けない人もいるが、それでも視認できないほどではない。

逆に俺ならもっと速いが、事実酒を持って追い掛けられ、ジョッキを見失ったのは俺だ。

つまり、俺よりも速いヤツで気配も隠すことができるヤツ。

 

「………なぁ、ウェンディ」

 

「はい、どうかしたの?」

 

「えーっとな。このギルドで俺より速くて気配も消せる魔導士いたか?」

 

「それはその……いなかった気が…」

 

「………なんかスゴく嫌な予感がするんだ、俺。なんか()()()()()()()()()()()()()()かもしれないってヤツだ」

 

こういう場合、大方嫌なことが起こる前兆だ。

例えにしたくはないが、評議院に入るとして。試験を受けたとする。その帰りから合格が言い渡される前に何かモノを落としたり、皿がピキッと割れたとしよう。

スゴく不安になる。嫌な予感しかしなくなる。実際それで落ちていたら更にタチが悪すぎる。

正しくこれと似ている――いや、同じ気がするのだ。

 

今の場合を先程と同じように言うとすれば、お酒を飲んでいた。追い掛けられ、酒入りジョッキが無くなる。疑問を抱く。嫌な場合を想像して不安になる。

そして――

 

 

 

「………ぷはっ…」

 

 

 

あ、嫌な予感がする。それも聞き覚えのある声で、大切な、大切な娘のような少女の声がする。それも不吉なものと混じって聞こえた。

気のせいだと思いたい。あの子がまさか()()を飲んでいないと信じたい。いや、本当にお願いだ。頼むからフィーリが酒を飲んでいるなどという現実を見せないでくれ。

絶対にそれだけはあってはならないと思うのだ。だってまだ12歳だぞ?

一応マグノリアでは15歳からだが、安全や健康面を考慮すれば、やはり20歳からだ。

だからこそ、お願いだ。マグノリアの決まりでも未成年であるフィーリが酒を飲んでいるなどという現実は――

 

 

 

「パパ、()()()()()()()

 

 

 

――残念ながらそこにあった。

 

「フィぃぃぃぃぃぃ!!?」

 

「フィーちゃぁぁぁん!!?」

 

度肝を抜かれたのは何時ぶりだろうか。本当に久しぶりな気がする。しかしながら、まさか身内に度肝を抜かれるとは思いもしなかった。身内に度肝を抜かれたのは初めてだ。

つまり、残念な意味で俺は驚かされてしまった訳だ。本当なら“強くなった”とか、“好きな人ができた”とか、“独り暮らし始める”とかで驚かせてほしかった。

いや、前者はいいとしよう。しかし、真ん中と後者は審議不可避だ。心配で夜に眠れなくなりそうで怖い。

 

別に親馬鹿という訳ではない。ただあの子(フィー)が可愛いだけだ。手放したくない。

そんな声をあげる親たちの想いは、よぉーく分かった。

それ関しては俺も納得しよう。同胞たちよ、と言いたくなるほどだ。だが、しかし。将来的に巣立つのは不可避だ。避けられるものではなく、来るべくして来るものなり。

その時は背中を押してあげるのが親というもの。それも納得だ。確かにそれは必要だ。

だから時に心を鬼にしたりするのが必要だ。“獅子は我が子を千尋の谷に落とす”、そう言うものである。それは理解できる、納得できる。これは何度も言うが分かっている。

しっかーし、これはどういうことだ? いつからこの子はこうなった? 7年の間に変なものを食べたのだろうか、見たり聞いたり学んだりしてしまったのだろうか。

兎に角、やることはただ一つに過ぎない。

つまり――

 

 

「よし、ウェンディ。今からフィーを捕縛する。捕まえたら早速治癒魔法でアルコール全てを消滅させる。所詮アルコールも毒だ。解毒の対象なり。故にさっさと解毒処理。OK?」

 

「……え、あ、はい。(お、お兄ちゃん…なんかいつもと違うような…)」

 

間違いなくテンションが可笑しいレイン。つい先程まで飲んでいた酒が無くなったのか、それのも酔いが先程ので完全に覚めたのか。

彼の目は誰が見ても――真剣(マジ)だった。完全に仕留める気だった。愛する我が娘を更正せんと奮闘する父親の如く。

如何せん、今の彼を止められる者など、この大陸に片手の指の数より少ないだろう。どうしてこうなったかなど聞かぬ方が身のためと言うものである。

 

やはりあれなのだろうか。

妖精の球(フェアリースフィア)》の中にいた者は全くといっていいほど変わらないが、そこから()()()()、外界の者は変わってしまうのだろうか。

勿論、この時の場合、外れていた者とは言わずもがなレインである。恐らく外れていたのは《妖精の球》だけではなく、羽目も外れていたらしい。要するに今の彼は壊れている。

主にテンションと自らの人格面で。

 

「フィー、ちょっと外に出てくれるか?」

 

「……?」

 

首を微かに傾げ、こちらをじっと見る。なんだろう、この純粋さを際立たせる瞳は。逆にこちらが悪いように思わせられてしまう程にだ。

多分こんな目で見られたら生粋の悪人でない限り、真面目に更正してくれるだろう。そうなれば、評議院も仕事が楽で済むだろう。牢の中で悪人が余計な反抗もしないし、大人しく罪業と等しい年月を牢で過ごしてくれるはずだ。

もしかしたら、フィーはそれで仕事もできるかもしれない。それでなくとも評議院がスカウトしに来るだろう。

ああ、そうか、確かに素晴らしいことだ。しかし、ハッキリ言おう。貴様らに娘はやらん。どうしても欲しくば、俺を倒して行け。

 

「質問いいか? フィー」

 

「どうかした? パパ」

 

「何故酒を飲んだ?」

 

「美味しそうだったから」

 

「そうかそうか。確かにそう思うのも無理はないと俺も分かるぞ、その気持ち。――で、なんで俺から奪った? それよりどうやって奪った?」

 

「パパが油断してたから。奪い方はこんな風にサッ…と」

 

両手を使ってやり方を説明してくれた。うん、可愛い。正直娘じゃなかったら少し気になってしまったかもしれない。いや、なんというべきか純粋。

ウェンディも結構純粋で素直なのだが、こっちはかなり純度高い気がする。多分ロリコンが近くにいたら四方八方から飛び掛かったことだろう。

当然その場合は全員血祭りだ。ロリコンに慈悲無し。貴様らに純粋な少女たちを汚させるものかと宣言してやりたいぐらいだ。特に妹、娘には絶対許さん、断じて許さん。

え? お前こそロリコンじゃないのかって? ――もう一度言ってみろ、喉笛掻っ斬るぞ?

 

「――コホン…。まさかとは思うが、フィー。お前S級魔導士になってたりしないよな?」

 

「違うよ」

 

「あー、そうか。7年の間、ずっとS級昇格試験無かったんだもんな、それはそうだよな。悪い、どうやら勘違いをし――」

 

「でも評議院から面倒くさいけど、S級昇格の推薦みたいなの貰った気がする。ちゃんとしたマスターが戻ったら上がれるみたい」

 

「……………」

 

絶句だ。まあ、確かに7年あればそこまで強くなってても可笑しくない。いや、なんというか、少し予想外だっただけだ。居残り組のマックスたちが前よりずっと強くなっていたのは分かった。確かに強くなった。上手くいけばナツを倒せるぐらいじゃないかと思う。

しかし、これはなんというべきか。7年前のこの子は不意討ちでもナツを倒せた。しかし、基本的な魔力の制御や少しの知識ぐらいしか無かったはずだ。

 

んで、7年経てば、これだ。気がつけば、居残り組を魔力面で軽く凌駕。恐らく実力も相応になっているだろう。――なんの冗談だ、これは?

いや、これは成長というより進化と言っても過言ではない。実力が上昇しているよりは倍加しているといった方が正しい。

伸び代がある。それは喜ばしいことだ。ああ、親として大歓喜ものだ。将来的にこの子が強くなってくれることがほぼ確定、および保証された訳である。

喜ばない親? ああ、ソイツは多分可笑しい。多分異常だ。魔導士というケースではなく、学生などのケースで考えてみろ。

学力が伸びやすく、将来的に優秀と言われてるのに親が喜ばない? ふざけてんのか。子供の成長、将来、これからの進歩。喜べないヤツが親をするな。

そういう話にまで接近するようなものだ。事実俺は嬉しい。娘がここまで強くなったのだ。ギルドの仲間としても家族としても嬉しくて嬉しくてたまらない。

狂喜乱舞しても間違いではない。だが――

 

「………とりあえず、フィー。簡単に訊ねるが、どれぐらい修羅場を乗り越えた?」

 

「えっと……、多分…100は越えてるかも…」

 

最初の無理難題SS級匹敵クエスト。自らの本性との対話もとい全面対決。ラインハルトとの試合というのなの一騎討ち。これは特に修羅場といっていい。

しかし、細かいのも含めば100は優に越える。つまり、強ち間違いではないし、この実力の理由の裏付けでもある。だから堂々と言える。

 

しかし、向こうは――

 

「……………」

 

口をあんぐりと開けたまま、固まった。可笑しいな…、パパはもっとしっかりしていたはずなのに。もっとかっこよくて堂々としてて……。

 

「パパ?」

 

呼んでみる。反応がない。まるで生きた屍のよ――

 

「………はぁ…、そうか。いやまさか、あんなに小さかったフィーが7年の間にこんなに成長しているなんてなぁ……」

 

――最後まで思い切るまでに復活した。それに加えて何かブツブツと言っている。少し怪しく思う。別に身内であり、信頼できて、安心できるパパだから怖くもなんとも無いのだが、時々こうやってブツブツと何かを考えられる時だけは少し嫌な予感もしてしまう。

特にパパは策略家と言っても過言ではない。何故ならママのお兄ちゃんだから。少し頭が混乱してしまいそうだけど、実際ママはパパと兄妹。なんだか私が変な呼び方をしているせいで誤解を招かれてしまうような気もしなくはない。

けれど、馴染んでしまった以上な治そうにも治せない。というより、治したくない。やっぱりこれが安心するから。

 

そんなことを胸のうちで考えていると、向こうでブツブツと言っていたレインが考えを纏め直し、こちらに向き直った。

 

「とりあえず、フィー。褒められるのと怒られるの。どっちが先がいい?」

 

「……ふぇ?」

 

思わず出てしまった腑抜けた声。それも仕方がないほどに正直驚いた。いきなり褒められるものと怒られるものを選べというものだ。確かに褒められるのは嬉しい。

けど、何故怒られるものも選択肢に入っているのだろう。疑問に思うのだ、ここが。

答えを出すべく少し考えようと手に持っていたものを何処かに置こうと思って――

 

「――あ」

 

――気がついた。これ、お酒だ。先程堂々と飲んだことを口にしたが、これは何処からどう見ても未成年は御法度のお酒だ。

 

つまりパパが怒っているかもしれない原因は――

 

「……じゃあ、その…怒られる方…」

 

「ふ~ん? フィーは後で褒められる方がいいのか…。成程な…――じゃあ、先に説教代わりの試合からやるか」

 

それを告げた途端、レインの足元が沈み、同時に放射状に亀裂が迸る。――戦闘態勢だ。

別に苛立ってはいないだろう。けれど、溢れる魔力は普段よりも濃密で膨大。危険度などSS級に若干劣る程度。

――いや、まだ1割出しているかどうか。そんな気がする。ラインハルトと戦ったからか。そんなものすら分かるような程に私は強くなったのだろうか。

 

今なら、少しでも守れる力があるかもしれな――

 

「――余所見や考え事は後にした方がいいぞ。それが命取りになるからな、フィー」

 

気がつけば視界から一瞬で消えていたレイン。すぐさま気配を追うが、見つからない。

しかし、聞こえた声から推測した場所を警戒し、不意討ちになりかねない一撃を防ぐべく、両手を交差した途端――

 

――ガンッ!!

 

強烈な蹴りが交差して防いだ私の両手に衝撃を伝える。痺れる。魔力で加速していたのか、それとも元よりの身体能力か。とてつもない一撃だった。

それに加え、殺気が無かった。それもそうだ。試合なのだ。殺す必要もないし、私は身内でもある。だから殺されはしない。けれど、怪我は覚悟させるつもりだったのだろう。

 

「容赦無いね、パパ」

 

「まあ、これくらいは避けるか、防いでくれると思ったからな。自慢の娘だし」

 

「ふふ、ありがと」

 

「んじゃ、続けるか」

 

それを口にした途端、またもや視界から消えた。けれど、次は()()()

いや、分かるようにするからだ。容赦がないならこちらも容赦しなくてもいい。殺さない程度にやり合えばいいのだから。それが一番明確で単純な答えだ。

 

「…加速(アクセラレート)

 

瞬間、私は加速した。まずは10倍速。音より若干遅い程度だが、それでもただの魔導士ならば、追い付けず見逃してしまうほどの速さだ。

急激に速くなった私に微かな驚きの色を見せるレイン。しかし、彼もまた加速する。魔力を噴射してスピードをはあげたのだろうか。

確かにあの膨大かつ高濃度の魔力なら尽きることはほぼ無い。それほどまでに彼は化け物のような魔導士だった。

 

互いの駆ける道筋が交差する刹那、すかさず拳を叩き込む。

だが、容易く躱される。それでも隙は見せない。速度を更に上げて決定的な敗因を潰す。

しかし、彼もまた速度を上げる。けれど、私はそれで負けるほど弱くない。

 

「…停滞(スタグネーション)

 

その瞬間、レインの動きが遅くなった。動きが鈍ると言った方が正解か。

私の加速した分の停滞を押し付けたのだ。既にここは私の渇望(ねがい)の範囲内。

だからこその特権。だからこその絶対的な拘束力。いくら加速しようと停滞で相殺すれば、動いていないのも同然に出来る。

 

「セイッ!!!」

 

鉄拳を叩き込む。今度は受け止められた。それでも加速分の速さに見合う衝撃だ。痺れない訳がない。驚いた表情を浮かべるレイン。

だが――

 

「…面白い。――なら、もっと俺に見せてくれ。全部受け止めてやる。なぁに、俺は簡単に死なないからな」

 

全力を――本気を出すように私に告げた。それもニヤリと口角を微かに上げ、楽しませてくれと言ったラインハルトのように。

 

「…うん。怪我しても知らないよ、パパ!!」

 

ならば、正直にその提案に乗ろう。私だって少し飽いていたから。同クラスの戦いが出来て、命の保証までついてくる戦いなどあまりない。

ラインハルトの場合は彼を熱くし過ぎると危険性が浮上してしまう。かといってムラクモは微妙に物足りない。シャナは容赦なく焔を次々と燃え上がらせ、周囲を焼け野原(バートランド)にしてしまう。正しく灼熱世界(ムスペルヘイム)と言ったところだろう。

だから待っていた。こうやって命の保証もあって全力を出せるだろう勝負を。

 

うん、期待してて、パパ。言葉にしないが、この戦いでそれを証明する。強くなったことを自慢するために。私だって誰かを守れるぐらいに強くなったんだと誇るために。

 

 

Eine(アイン) Faust(ファウスト) Kadenz(カデンツァー)

 

――“孤独刹那・独奏”。

 

 

高速詠唱。この区間にチマチマと詠唱は唱えてはいられない。相手が相手だ。そんな隙は当然与えてはくれない。だから、少々魔力消費量が増えるが即座に発動する。

全身から力がみなぎる。相変わらずこれには完全に馴れていない。それでもこれは私の力。私の願ったもの。私の渇望の具現化。拒む必要はない。ただ乗りこなせ――

 

「――行くよ、パパ!!!」

 

殺す気で倒す。それぐらいしないと勝てない。そう思ったから、そう理解したから。

だから加速する。追い付けないように、1()()()()

 

驚愕するパパの顔が見えた。流石にあの停滞は答えるだろう。大丈夫、攻撃は当てない。寸前で地面に着弾させて衝撃で吹き飛ばす程度に済ませるから。

 

だから――私に勝利を捧げて。

 

蒼き流星の如く疾走する私。光の残滓が遅れて棚引く。あれはただの残像。私はその先。当てられるものなら当てて見せて。

でもいくらパパでも当てられない。ラインハルトですら初撃は躱せなかったのだから。

 

「――ッ!!!」

 

殺気は出していない。だから追うことは出来ない。見つけることは出来ない。

 

 

 

――なのに、パパは()()()()()

 

 

 

「――よく頑張ったな、フィー。本当に強くなった。まさか“渇望具現(それ)”を使えるようにまでなっていたなんてな。正直ビックリした」

 

微笑みながら告げる。だが、何かが可笑しい。本来なら必死になる代物だ。

ラインハルトでさえ驚き、必死になりかけたのだ。それなのに――何故?

 

すると、それに答えるかのようにパパは静かに――

 

 

 

「なら、俺も少し見せるか。――永遠なれ、この刹那。故に我は願わん。強く、強く、誰よりも真摯に。かつ、激情と共に」

 

 

 

一瞬。たった一瞬、正しく刹那と言うべき時間に。レインの瞳に杖のような紋章が発現し、その言霊()告げ(奏で)た。

 

 

 

「今こそ、その刹那なり。永劫止まること無き、残酷非情なる時の流れよ。我が願いにより、その軋みを。その活動を。その鼓動を止めるがいい」

 

 

 

小さく呟き、そして願う。自らが今まで過ごした年月総てが生み出した悲願の願いを。

 

 

 

「――時よ止まれ、唯一無二なる刹那(いま)こそ美しいから」

 

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

 

「…………あれ?」

 

意識が覚醒した。目蓋が開いたと同時にさ迷う視線。しかし、すぐに視界に入ったのは彼。

パパであるレインの顔だ。優しく笑いかける彼の顔。

 

「目、覚めたか?」

 

「パパ…。私、どうなったの…?」

 

あの時のことだ。気がつけば、動けなくなっていて意識もそれを認識した途端に途切れた。

不思議な言霊を聞いてから、ほんの一瞬で。

 

「ま、ある意味での静止、停止って所だな。フィーも()()()()()()()使えるだろ?」

 

「パパも使えたんだ」

 

「まぁな。――というより忘れてたんだろうな、俺の場合は。全くもって俺は本当に罪重ね過ぎだろ。正直償い切れない気がするんだよなぁ」

 

そう言いながら、彼は私を立ち上がらせると自分も立ち上がった。一度空を見上げ、静かに溜め息をつく。目蓋を一度閉じ、開くとそこに迷いはなかった。

 

「さてと。さっき実はウェンディが後から来たんだよな。んでフィーが倒れてた訳だから怒られたんだよな、俺。兎に角、無事知らせに戻るか」

 

「……がう」

 

自然と懐かしいものが出た。7年前の私が使っていた受け答え。今は“うん”と言えるが、前は小さく吼えていただけに過ぎなかった。けれど、何故か懐かしいし、忘れ難そうで。

 

「ハハッ、それ久しぶりに聞いたな。ウェンディにも聞かせてみるか?」

 

「…うぅ……」

 

からかわれた。でもツラくはない。逆に嬉しかったりする。やっぱり時々思うのだ。

今のこの時間が嘘だったら、夢だったらどうしようと。それでもこんな風にしてくれるから怖くない。嘘だと、夢だと思わなくて済む。だから――

 

 

 

 

「そんなことより早く戻ろっ、パパ」

 

 

 

 

 

――忘れないように刻み付けておきたい。私はここにちゃんといる。みんなもいると、ずっと感じていたいから。

 

 

 

 

 

 




こっそり出てますね、レインの力の一端。

まあ、これに関しては彼の過去に深く関係するものなので、次第に明らかになります。

多分大魔闘演武ラストぐらいですね。

兎に角、ゆっくり頑張っていきますので宜しくです。

P.S.
最近のアニメに足りないもの。それはFateクラスの戦闘シーンである。

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