FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

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どうも。投稿をかなりサボっていた?作者の天狼レインです。

今回は完全にシャナ編と対して変わってないほどにシャナメインです。

角砂糖10個入りの珈琲ぐらいの甘さがあるかもしれないのでそれが苦手な方は撤退を。

OKな方はそのまま特攻してくださいな。間違えてもリア充爆発しろやぁぁぁぁって

ならないでください。つうか、こんな一途で純粋かつ可愛い女の子いたら普通に萌える

気がするのは私だけではないはず……。照れ隠しに“禍焔剣(レーヴァテイン)”……

うん、悪くないな(^^ゞ なんてことはさておきまして。

どうやら今週末にDiesアカウント動くそうですよ? なので皆さん、水銀ニートを

思いっきりディスってやりましょう!!! アイツの愚行に値する暴言罵倒を容赦なく

畳み掛けてやろうではないですか!!! まあ、要するにカール・クラフト超ウゼェェェェ

です。まあ、気になさらず、本編どうぞ。私は発声練習もといタイピング練習を久しぶり

に使用かなと思います。何度もツイートしてやらぁってヤツです、はい。




天焔の舞踏会

「………魔法…舞踏会?」

 

「うん、そう。何だか面白そうなイベントがあるんだって」

 

「……………」

 

突然話し掛けてきた挙げ句、魔法舞踏会とやらがあることを知らせてきたのは目の前にいる、灰色の髪をした少女のような少年。

容姿は誰がどう見ようと、どう見間違えようと、絶対に少女なのだ。それは断言できる。

けれど、彼はキチンとした男子、つまり男だ。決して女ではない。それを知っているからこそ、少々警戒してしまう。

まあ、ギルドの仲間である以上は避けるつもりもないし、警戒したくはない。……ないのだが、どうしてもその容姿だと警戒してしまう。

よくある漫画のパターンでいう、女装した男の暗殺者が暗殺対象(ターゲット)に近づき、ザシュッと首筋に小さな刺し傷をつけて暗殺。または毒薬を混ぜた飲み物を上手いこと飲ませて毒殺というパターンと手法が全て酷似しているからだ。

そんなことを脳内で考えつつ、私――シャナは目の前にいるムラクモの話を聞いていた。

 

「………それで、私に得…あるの?」

 

「……うっ…」

 

ずいっと詰め寄り訊ねる。別に問答されることや他愛もない会話をするのは嫌いではない。

しかし、何故か彼はタイミングが悪い。空気が読めない訳じゃないが、本当に私の時だけタイミングが悪すぎる。

 

さっきだって私が柄にもなくワクワクしつつ、買ってきたばかりの小説を読もうとした所で、こうやって話し掛けられたのだ。

だから少し私は機嫌が悪かったりする。ずいっと近づいた拍子か、いつも気をつけているはずの魔力の制御に微かな綻びが生まれ、足元の床の一部が焦げ臭くなる。

確実にそれは木材が私の魔法による効果で微かに焼けたことを表している。いつでも何処でも私は本当に特殊な場合を除いて“焔”と一体化している。

 

例え暗殺者が来ようとも、例え自分より実力者の魔導士でも殺すことが不可能になるように。

決して消えない、滅びない、最強にして最高の焔。それが私の魔法、《灼刃煉獄(フレイムヘイズ)》。

故に私は火を操る魔導士の中では上位にいるらしく、唯一“焔”に愛され、それを操る魔導士として知名度が高い。お陰様で不本意ながら《火焔天(アシャ・ワヒシュタ)》等と呼ばれる始末。――全く、誰がこんな異名をつけたのだろうか。見つけたら炙ってやりたい。

 

「……それで魔法舞踏会がどうかした…?」

 

素っ気なく私は訊ねる。こう言うときはサッと訊ねて耳にして、あとは速攻読書に没頭するのが一番だ。私は今だって本を読むのが待ち遠しい。

一度本を読みに入れば、回りの音なんて聞こえないし、景色も見えない。所謂別世界だ。

逆にそれだと危なくないかと言われるが、全然大したことじゃない。

 

私の魔法に弱点はない。“ある魔法”を除いて消すこともできないし、攻撃をキチンと当てることすら出来ないからだ。

その“ある魔法”もただの解除魔法や魔封石で出来た手錠などでないし、そんなものより効力は圧倒的に高い。格が違う、一線を引くことすら容易いほどだ。

 

呆れたことにその魔法とこの魔法の考案者は同じだという。だから――と言うべきか、それとも残念ながらと言うべきか。

本来この魔法は最強の火魔法――もはや焔魔法と呼んでも良かったはずの絶対的攻撃力、支配力を持つ魔法だった。

けれど、この魔法の考案者はそれを解く魔法を作り出してしまった。

 

故に――最強だったはずのこの火魔法は唯一にして絶対に克服不可能な弱点を背負うこととなった。

 

だからこそ、完全に油断はできない。だが、何故か油断してしまう。人間だからではない。ただ、その唯一にして絶対に克服不可能な弱点である魔法が誰の手にあるのかを知っているから。ただそれだけ、それを私は知っていたから。

 

「実はね、その参加者の中にレインさんがいるって、フィーリが教えてくれたんだ」

 

「…………」

 

それを聞いた途端、私は無言で座っていた椅子から立ち上がり、本を閉じて机の上に置き、反射的にムラクモの胸ぐらを掴んで――

 

「……それ、本当…? 嘘じゃない…?」

 

――手っ取り早く脅し……訊ねた。

 

「…え、あ…その……」

 

「………嘘じゃない? レインが行くの…?」

 

「……あ、うん、はい。――というか、そろそろ首絞まっちゃう気がするから手を離して貰えると嬉しいなぁ………なんて」

 

「そ。なら、私行く」

 

素っ気なくそれだけを伝えると私は力の入っていた右手を下ろし、同時にムラクモを開放する。どうやら胸ぐらを掴むつもりで首まで絞め掛かっていたらしい。

やはり常人並みだった私がここまで強くなったのも、この魔法のお陰なのだろうか。

 

――ううん、それは違う気がする。何か別のもの。それが私を高めているような……。

 

それを口にし表してみるならば、“過去の願い”、“過去からの悲願”と言うべきか。そんなものが私を日に日に高め、強めている。

ハッキリ言って私は可笑しくなっている。初めてフィーリにあった時は彼女の暴走状態に容易く圧倒されたというのに、今では多少なら着いていける所までだ。

 

あの強い願い――“渇望の具現化”さえ発動されなければ、勝てるかもしれない程に。

 

あれが俗にいう“我が道を行く”という覇道の渇望の具現化。

もしそれがそうだとすれば、私の渇望は純粋に彼に――レインに愛してほしいと言った、道を求める程度のものでしかない。正しくそれは求道の渇望。

ラインハルトのようにただ純粋に“総てを愛したい”という覇道の渇望や、サクヤの抱く“ラインハルトの渇望(おもい)血肉(みちしるべ)になりたい”と言った強力な求道の渇望ですらない。

 

ただ私のは他力本願のもの。所詮は彼に愛されなければ真骨頂にすら昇り切れない程に無駄で無価値なものに等しいのだ。

漸く具現化まで辿り着いたが、所詮は中途半端な渇望。弱々しい求道に過ぎない。故に効力など非常に弱い。出来ることは自分の魔力を高め、周囲から大量に吸収する程度。

フィーリやラインハルトのように回りにも影響が少なからず出るものではない。

かといってサクヤのものも私とは比べ物にならないほどに圧倒的だ。

 

ただ純粋に、愛した者に――ラインハルトという男のために自らの総てを捧げようというもの。それは具現化するに当たって非常に強力なもの。

突如として魔力を倍加――膨大にし、それ総てをラインハルトに譲渡する。ただそれだけの単純明快(シンプル)で直接的、無駄の省かれた完璧なものだ。

 

――さて、ここまで言えば理解できる。言うまでもなく、私は弱い。

 

確かに彼を想い気持ちはサクヤにだって負けていないはずだ。だけど、実質的な力がない。支える覚悟はあっても()()()()()()()

それが分からない、思い出せない。だから私は進めないし、強くなれない。

今の私では彼を支えることも側にいることすら出来ないだろう。それは分かっている。

けれど、今の私では進めない。だから――いや、だからこそ私は彼に会いたい。

ムラクモに行くことを伝えたが、自分でも分かるぐらいに素直じゃない。自然と行きたいことを伝えればいいのに。なんで自然と言えないのだろう。

やっぱりまだ信じられないからなのだろうか。あの村での出来事が――今ではレイン以外に唯一自然と話し合える親友である、元奴隷の少女が捕まっていたあの現場を見たから。

人間という生き物が何のために生きて、何のために争って、何のために醜い生き様と死に様を晒す理由が。やっぱり私には――分からない。だから進めないのかもしれない。

そう思い、自らを自虐するように溜め息をつきながら私は支度をするべく家に戻る。

全ては明日。そう、明日だ。7年ぶりに顔を合わせ、会話を交わすだろうあの人を見て。

 

大好きで、愛し続けたくて、側にいたくて、背中を預けてほしい、命の恩人でもある大切な人――レイン・ヴァーミリオンと、もう一度巡り会うために。

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

 

そこは壮麗で目が痛くなるような輝きに満ちていた。

天井を見上げれば、シャンデリア。下を見下ろしても大理石。正しく貴族の豪邸だ。そもそもここは確か貴族の保有する城だった気がする。

何をどうすればそんな大金が手に入るのだろうか。まあ、どうせ先祖の功績や財産をかじっている可能性も考えられなくはない。

自分の力で未来の可能性を掴む人を見るのは好きだが、誰かに元から与えられたもので満足したり満喫したりする人は嫌いだ。

私は前述――彼に与えられた術を自らの手で開拓し、未来の可能性を掴んだ者だ。後述も含めて入るが、彼が与えたのはほんの欠片。故に私はそれを広げ、自由自在に使っている。

などと貴族への批判と自分の努力を比べてはみるものの飽きてしまった。それ以前に比べて得することなど何一つない。手に入るとすれば、それは傲慢。要するにプライド――誇りだ。

 

私にはそんなものはない――いや、そうとは言えないかもしれない。

レインのことを誰よりも愛している。それは間違いなく自信だ。誰にも負けてないという誇りでもある。故にこれはプライドと同種。

彼に正面切って告白したのは私ぐらいだろう。あれに私は一世一代の願いを込めたつもりでもある。彼と結ばれることが至高の夢。私の核たる渇望だ。

そのために生きている、そう言っても過言ではない。嘘にするつもりだってない。いざとなれば、色々と策を講じてこっちに気持ちを向かせればいいし、最悪はキセイジジツ?というものを作ってしまえば私の勝ち。絶対に誰にも渡さないし、負けたくない。

 

などと考えた末に――

 

「………似合って…るかな…?」

 

――私は緋色を所々に装飾した特注のドレスを纏っている。何となく他のドレスが自分でもお世辞にも似合ってると言い難い結果だったので、結局大好きな色であり彼に褒められた色を選んだ。そういや、私が彼と一度離れた時も緋色の空を眺めていた気がする。

 

「………レイン…褒めて…くれるかな…?」

 

脳裏に銀髪の少年が浮かび上がる。白銀色のコートを翻し、圧倒的な実力で有象無象の魔物を一掃していく修羅の如き姿。それでありながら優しさと年頃の少年らしさを失わない。

もし彼が変わってしまったとしても私の気持ちは変わらない。彼を愛しているこの気持ちは揺らがない。私は彼のもの。委ねる覚悟だってある。今回はその準備。

小さく力を拳に入れ、気合いも共に身体に滲ませる。入れるのではなく、浸透させるように。

 

「………えへへ…」

 

まだ彼と会っていないのに頬が緩んだ。今から彼と会えると思うと何だか嬉しくて仕方がない。それにここは舞踏会。彼だってタキシードとかを着ているはず。

ならば余計に緊張してしまいそうになるけど、彼はそんな緊張も解きほぐしてくれる。

それ以前に彼と話していたら緊張なんて忘れるし。というよりも彼はほとんど完璧にやって見せる人間――いや、悪魔だ。私だって気づいている。神でも悪魔でも何でも御座れ。

彼が何であろうと私は全力で向かい合い、愛するまで。だって好きなんだもん、彼のことが。

 

「…ふぅ……。そろそろレイン探さないと」

 

一応仕草にも気を使って、少し駆け足気味の時にはドレスの裾を摘まんで走る。理由はあんまり知らないけれど、多分引っ掛かったりして転ばないようにだと思う。

周囲に目を配り、髪色が銀色の少年を探す。もしかしたら魔法舞踏会の参加者としてマスクを被っているかもしれない。だから判断する点は限りなく難所にある。

まず髪色は同じ人物がいないとは限らないし、マスクを被っている以上は顔で認識出来ない可能性だってある。確かめようと思えば、声音を聞かなければならない。

仕草や癖を見抜かないといけない。でも、彼には特徴的な仕草がない。トレードマークと言うべきものはいつも羽織っているコートだけ。

だが、ここは舞踏会。最低限の礼儀と格好はせねばならない。故にそれには頼れない。

だから難しい。誰が誰で、何処にレインがいるか、分からないからだ。

 

ふと立ち止まり、周囲を見渡す。やはり誰も彼もが同じに見えてしまう。何処と無く違えど、マスクを被り、タキシードやドレスを着ているならば、区別できるのは髪色と髪型のみ。

そうなると私には分からなくなってくる。

こういう時に何故役に立たないのかな、私の身体に巡る彼の魔力の欠片は。仕方なく離別したあの時に私は欲しいものを聞かれ、望んだ。

 

最初はこう願った。

“私を一緒に連れてって。私をずっと側にいさせて”、と。

 

欲しいものではなかった。ただ一緒にいたいと願っただけ。けれど、それは彼の自由を奪うことと同じ。彼の望む自由を阻害するしか脳のない自分勝手な願望。

だから私はそれを願ったあと、無かったことにしてほしいと頼み、別のものを望んだ。

 

それがこれだった。

“一緒にいられないから魔力だけでも私に”。

その結果、私は彼の魔力をほんの一欠片ほど貰った。代わりに私は彼に自分の魔力の一欠片を譲った。ギブアンドテイク。そういうことに違いはない。

私が彼の存命に気がつけたのも、信じていられたのもそれが理由。彼の魔力は彼が死せば、ただの魔力と化す。そうなれば、別で流れている現状から、私の魔力と合体し、全く同じものとなってしまう。つまり、彼の魔力と私の魔力は別のもの。水と油のようなもの。

完全じゃない魔導士。それが私。当然彼もそうなってしまった。原因は私の我が儘。

だから返そう。今日この時を以て。彼に借りた分と利息も纏めて。

 

「……何処にいるのかな…レイン…」

 

もう一度周囲を見渡し、彼を探す。見当たらない。残念ながら近くにいない。いや、そもそも参加していない可能性だってあったはずだ。それを信じて来たのは私。

これを罪と判断するならば、悪いのは私――いや、ムラクモも悪い。デマ流した元凶だから。

兎に角、本当にいなかったら明日の朝、ギルドで顔を合わせた途端に“禍焔剣(レーヴァテイン)”をお見舞いしよう。そうすれば、こっちもスッキリするはず。

そう心に決めることにした。

 

でも、やっぱり残念かな。会えると思って、こんなにお洒落だって仕草にだって気を使って来てみたのにいなかったなんて悔しいから。

“骨折り損のくたびれ儲け”というのだろうか。東方の地域ではそういうのを聞いた気がする。

悔しいけど、諦めるしかないのかな。

首をすくめ、出口に出ようかと一歩を踏み出した。その刹那――

 

 

「やあ、どうも、お嬢さん。どうしたんだい、浮かない顔してさ。さあさ、そんな浮かない顔しないで、ここは一つ、僕と踊ってくれないかい?」

 

 

――脇役(モブ)のお出ましだった。それもチャラそうだ。この機会にナンパでもして女の子を捕まえようとでも思っているような口調と声音。心底私の癪に触るものだった。

 

「……………遠慮します。…あんまり私は上手く踊れないから」

 

断った。振り向き様に。最低限の礼儀を払いながらスパッと。これなら少しは興が冷めて諦めるはず――

 

「大丈夫、大丈夫♪ 僕がリードしてあげるからさ♪」

 

――食い下がってきやがった。口悪く心の中で罵っておこう。ウザイ、しつこい、めんどくさい。なんで食い下がってくるの? 丁重に断ったと思ったのに。

それともあれなのかな。上手く踊れない=上手くはないけど踊れると解釈でもしたのだろうか。ならば、余計にウザイ。ジトーとした目を試しに向けてみるが、全然気づきやしない。

………なんだろう、スゴくウザイ。さぁ、って感じに手を差し伸べてくるのが余計に癪に触る。少なくともレインならこんなにウザくしつこくめんどくさく感じさせることはしない。

もっと紳士的に、優しく相手に支えてほしいと言わんばかりにしてくるはずだ。あくまで自分は引き立て役。貴方こそが華である、そう見せてくれるはずなのに。

 

――脇役(コイツ)は全くの真逆。自分こそが華である。誘った女の子をリードするのは自分だ、そう言わんばかりである。

 

「………私、友達と待ち合わせをしてるので遠慮します」

 

簡易な嘘だ。友達なんて一人しかいない。私が助け、私も助けられた、元奴隷の少女だけ。彼女がいるのは《蛇姫の鱗(ラミアスケイル)》だ。参加すると言う話も噂も聞いていない。

それでもここを切り抜けるには使い勝手のいいもの。これできっと切り抜け――

 

「そうなの? ならその子とも踊ってみたいなぁ♪ 良かったら紹介してくれない?」

 

――まだ食い下がるか、この脇役(モブ)め。

 

八方塞がり、四面楚歌。既に囲まれ、脱出の糸口無し。笑えない。なんでこういう時にこういうヤツはしぶとく食い下がるのだろう。

コイツが闇ギルドならば間髪いれずに焔の弾丸で撃ち抜いたり、極熱の火柱で焼き払えたのに。こういう時がたまにあるから貴族や一般人は嫌いだ。

 

「……………」

 

黙るしかない。このまま黙り混んで興味が失せるまで待つ方法しかない。でも、この脇役(モブ)のことだ。しつこく食い下がるはずだ。獲物を逃してたまるかと言わんばかりに。

こうなればいっそのこと、首筋に打撃を瞬時に与えて気絶させて誰かに頼み込むか、このまま逃げるか、叫んで助けを求めるかの三択だ。どれも私の苦手とする分野。

こんなことをするくらいなら自力で打破する。――けれど、コイツは何処をどう見間違えようと貴族だろう。つまり闇ギルドではない。

だから暴力もとい実力行使は不可能。そんなことすれば、即刻評議院一斉集結からの検挙でアウトだ。やっぱり詰み手であることには代わりない。

こういう時に限って本当に私は運が悪い。悪すぎると言っても過言じゃないと思う。

気がつけば、悶々としている私に貴族らしき男は詰め寄っていた。もはや逃げ道もない。

 

そう思い、諦めてダンス一つくらいは踊ってやるかと観念しようとした刹那――

 

 

「――全く。近頃の紳士っていうのはナンパする其処らの奴らと変わらないのか? 呆れてモノも言えなくなるぞ」

 

 

鋭く。共に静けさを保ったまま、その声は響いた。その声音は何処か冷徹さが微かにあり、けれど優しさを隠し持っていて、強く心に響くもの。

聞き覚えがあって、それでいて心の底から安心できる。そしてそれは空間から突然現れたかのように気配と共に姿を見せた。

 

そこにいたのはタキシードに、少し長めになった銀髪と茶色混ざりの瞳、右手の甲には金色の紋章が刻まれ、左手には飲みかけらしい飲み物を片手に持つ少年。

 

「………ぁ……」

 

思わず声が漏れた。仕方がない。だってやっと会えたのに声一つ出さないなんて無礼もいい所だから。ああ、見間違えるはずがない。あれからほとんど変わらないから。

ううん、雰囲気が変わった。気配や口調も変わった。けどやっぱり本質は変わらない。

やっぱり彼だ。私が――シャナ・アラストールが常に恋い焦がれた彼だ。

声が震える。会えたのだ、だから緊張せずに、リラックスして声をかければいいのに。なんでだろう。声が震えてしまう。感極まって上手く声が出せない。

でも、出さなきゃ。伝えたいことは、嬉しいって気持ちは伝えなきゃ。

だから私は――

 

 

「……レイン…っ!!!」

 

 

――彼の名を呼んだ。微かに彼の表情が緩んだ。内心驚いていたのか、それとも安心したのか。彼も私のことを心配してくれていた。それだけなのに凄く嬉しくて――胸が熱くなる。

ギュッと自分の手を握り締め、胸に抱く。熱い。多分頬も紅潮して紅くなっているだろう。

それでもいい。この早鐘を鳴らす心臓を疎ましくなんて思えないから。

 

「………なんだい君は? この僕が紳士らしくないと言いたいのか?」

 

その声を聞いた途端、現実に引き戻された。ああ、そうだった。目の前にまだ脇役(モブ)がいたんだった。まだ幸福(メルヘン)に入るのは早かったらしい。

 

すると腹を微かに立たせた貴族らしき男にレインは自然と、臆することなく答えた。

 

「ま、そうなるな。さっきからよくよく見ていれば、夏の海辺でナンパしてるだけの者共に見えたからな。強く迫るのは流石にどうかと思うぞ? 同意を迫るのは紳士らしくないしな」

 

「なにをペラペラと……。なら君は僕より紳士らしいと?」

 

レインの弁論に腹を更に立たせたらしい男は逆に問い詰めようと迫る。しかし、レインは冷たい目付きでその者を睨むと口にした。

 

「そうだな。確かにお前なんかよりはマシだな。なんなら今からお前に辞書でも探してきてやろうか? “紳士”って言葉を一から引いて確かめるか? 別にそんなことする時間があるなら、別の女の方々を探して誘った方が得だと思うが?」

 

「…なん、だと……? 君はどうやら僕に喧嘩を売っているようだね…。いいよ、それなら買ってやろうじゃないか。君みたいな民草の相手をしてやるんだから光栄に思うといいよ。こうみえて僕は魔導士さ。それもS級魔導士にだって勝ったことがある。君程度のお調子者に負ける訳がないさ」

 

すぐさま構え、殺気立たせる男。それを見て、呆れたと言わんばかりの顔をしてレインは左手にもっていた飲み物を飲み干し、近くのテーブルに置いた。

 

完全に男の視界から消えた私はその光景を見て、軽い同情と哀れな男に呆れていた。どうやら頭に血が昇って気がつかないらしい。

魔力に差が有りすぎる。ハッキリ言って無謀だ。レインの全体の魔力の二割にすら満たない男では勝ち目はない。それにレインは気配に敏感で空間把握力は誰にも負けない。

つまり、勝負を持ち掛けた時点でその者の敗北は決していた。

 

「《立体文字(ソリッドスクリプト)》 “爆発(エクスプロージョン)”」

 

これから起こることを知らないまま、男は放った爆発をレインへと向かわせた。ゆっくりと距離が詰まっていく。勝利を確信する男の笑み。

だが、それは意図も容易く――

 

「――温い。こんなモン、バカナツの炎の方が面白いっての。終わりだ、終わり。飽きる以前の問題だ。とっとと寝てろ、半端者」

 

――スパンと右腕で凪ぎ払っただけで消滅し、その刹那。その男の首筋には手刀が突き付けられ、ドスッという音と共に衝撃が全身を貫いた。

 

「……がっ………」

 

膝から崩れ、床へと倒れる。そんな後ろ姿を彼は哀れみをもった目で見ていた。

 

「………ふぅ。成程な。確かに腕はいいんだろうな。――でも少し怠けたな。どうせさっきみたいに遊び呆けていたのか、それとも調子に乗っていたか、どっちかだな。よっ、と」

 

倒れた男を起こすと、彼は誰かに引き渡すべく動き始めた。誰も気がついていない。ドスッという音はした。けれど、近くにしか聞こえなかったのかもしれない。

この舞踏会には魔法で浮く舞踏場もあり、周囲はざわめいている。だから雑音の一つとして無視されたのだろう。そんなことをふと考えつつ、私は彼の後を追った。

 

 

 

 

 

 

「………全く、どうして変なヤツに毎度関わることになるんだろうな、俺」

 

「……………」

 

場所は外。舞踏会に隣接するベランダだ。7年前の舞踏会ではここにも人がいたらしいが、今年は珍しくいない。静かで夜の涼しさが心地よいくらいだ。

備わっていた椅子に座る彼に視線を送り、その姿を目に焼き付ける。

やっぱり彼だ。変わってない。髪を少し長くしたのか、7年前よりも銀色の占める面積が大きくなっている。けどやっぱり変わってない。

雰囲気は変わったけれど、私には前と同じに見えた。

 

Lange nicht gesehen(久しぶり)、レイン」

 

「ああ、Lange nicht gesehen(久しぶり)、シャナ」

 

また会えた時に使う言葉。二人の小さな約束。別大陸でよく使っていた言語の一つだ。発音はランゲ ニヒトゥ ゲゼーヘンだったと思う。でも通じてるからいいかな。

さっきまでの冷たさのあった声音は消え、前と変わらない親しみやすい声音に戻っている。やっぱりレインはこうでなきゃ。

 

「レインは変わってないね」

 

「そうか? 正直な所、口調も雰囲気もかなり変わってると思ったんだけどな」

 

「ううん、私には変わってないよ。どうなってもレインはレインだから」

 

我ながら恥ずかしいことこの上ない台詞だ。けど、死んでしまいたいと思うぐらいの羞恥ではなくて、照れ隠しのようなものに似ている気がする。

すると、レインも少し恥ずかしそうな顔をすると、一度咳払いをして、また口を開いた。

 

「それにしても、やっぱり7年経っているからシャナも大きくなってるとは思ったけど……」

 

そう言いつつレインはこちらをじっと見る。なんだか恥ずかしい。頬が紅くなったのが見えたのか、レインは少し慌てて視線をずらした。あれ? レインが朴念仁じゃなくなってる? 少しは女心が分かるようになったのかな…。

すると、そんな私の心の声を知らないまま、次の言葉を口にした。

 

「やっぱりシャナも大人っぽくなったというか…。なんか一緒にいた頃よりも()()()()()()()()()()()()?」

 

「…………ふぇ……?」

 

えーっと、さっきなんて……? 可愛くなった? ………それって。

それを考える前に私の頭は羞恥と嬉しさに包まれ、緊急停止した。私がもし機械だったら頭から湯気を立たせて動かなくなっていただろう。

実際機械でなくとも、私の顔は茹でられたエビやタコのように真っ赤になり、口は開いたり閉じたりを繰り返している。

やっぱりレインは何処まで行こうとレインだった。朴念仁も変わってない。一番変わってほしかったかもしれない部分が一番鈍いまま残ってた。

 

「…………」

 

「お、おーい? しゃ、シャナ? だ、大丈夫……か?」

 

慌て気味に彼は訊ねてきた。勿論、私にそんなものを答える余力はない。暴走しかけている思考と理性を止めなければ後々めんどう極まりないことに――

 

「――ば…、ば……、ば………、レインのバカぁ!!!」

 

――なってしまった。

舞踏会だから魔法自体を解除していたのにすぐさま発動。私を中心に焔が立ち昇り、それがレインに殺到する。

突然の襲撃を受けたレインは驚愕し、反射的に《魔法解除(スペル・キャンセル)》を躊躇いなく使用すると、唯一私の魔法を解除できるレインのそれは容易く焔を消した。

 

「あ、危なッ!? さ、流石にここでそれは危険過ぎるからな、シャナ!!」

 

「うるさい、うるさい、うるさ――い!!! 元々レインがあんなこと簡単に口にするのが悪いんだから!!!」

 

「あんなこと? いや、俺はただ単に可愛いから可愛いって言っただけなん……」

 

「ッ!? ぅぅ……うぅ~!! やっぱりレインは燃やすッ!!! 私の焔で丸焼きにするッ!!!」

 

容赦なく両手に焔で錬成した魔剣を握ると、レインに向かって飛びかかる。一方の彼は完全に呆然とし、今度は口をパクパクさせながら――

 

 

「――レインの…バカぁ――!!!」

 

 

――私の禍焔剣をその身に受けた。

 

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

 

それから数分後。漸く落ち着いた私はタキシードの端などが微かに焼けたレインに冷やしたタオルを手渡していた。舞踏会など完全放棄だ。

 

「……うぅ……レイン、ごめん…なさい」

 

「………まあ、少し服が燃えた程度だから気にしてない。こんなことになったのも多分俺のせいだろうし」

 

少し軽い火傷を負った両手の指先をタオルで冷やしつつ、彼は反省した。

私にも悪い所が――いや、ほとんど悪いのは私だが、謝らなければならないのにこう言う時に自分のせいだというレインのことがやはり嫌いになれない。寧ろ好きになってしまう。

悪いのは分かっているのに甘えてしまうのだ、彼の優しさに。悔しい。凄く悔しい。

 

本人は気づいてないだろうけれど、私は見事に彼の手玉なのだ。遊ばれているような感じがしてならない。でも――怒れないし、恨めない。

胸が熱くなって、彼に触れたくて、彼に撫でてほしくて、彼に褒めてほしくて堪らない。

やっぱり私は甘えん坊だ。やっぱり私は彼のことが好きで仕方がない。恋い焦がれるのがこんなに苦しいことだなんて思ってなかった。正直恋愛を舐めていたのかもしれない。

 

でも、実際は凄く苦しくて吐き出したいものだった。想いを伝えてしまいたい。けれど、断られたら嫌だし怖い。だから伝えられない。

これが長い間続くのだ。だから恋愛は難しくてツラいものなのだ。私はそれを初めて知った。

――けれど、凄く嬉しくて楽しくて、こんなに胸が踊る体験はしたことがない。ずっと彼のことを想っていられる、こんな素晴らしい気持ちに感謝が止まらない。

出来ることなら、彼に今ここで全てを捧げたいぐらいなのに。私は貴方のことが本当に好きだと伝えたい。前に伝えたい時よりもずっと強く想ってるんだ、って伝えたい。

 

ふと込み上げた感情が私の理性をドンドン押し流していく。なんだろう、我慢出来ない。どんどん頭が真っ白になっていく。

どうしたらいいのかな……。この感情を何処に押し出せばいいのかな。レインにこのまま全部受け止めて貰えばいいのかな。

 

少しずつ理性が削がれ、それと共に私は彼のそばにもっと近づいた。身体が触れあった。服越しだけど、彼の熱を感じる。

今度はもっと――近づきたい。少しずつ彼にさっきよりも近づいていく。視界に映るものが彼の顔と首回りにまで変わっていく。

レインの顔が赤くなっていた。私が何をしようとしているのか察したのか、それともただ私が近くにいることで暑くなってきたのか。

魔法を解いていないために灼髪と灼眼のまま、私はもっと彼に迫っていく。もう少しだ。

もう少しで、私が彼の初めてを――。

 

その刹那――急に私の身体から力が抜けた。フニャッと崩れ、私の身体は彼に受け止められる。視界が彼の顔から彼の首筋に移動する。

なんで力が抜けたのか分からない。けど、まだ早かったのかもしれない。まだ覚悟が足りないのか、それとも――。

分からないまま、私は動かなけなくなった。やっぱりまだ何か足りないと思ったのかもしれない。彼に全てを捧げる以前に私は彼のことをあんまり知らなかった。

それをすっかり忘れていた。私が見てきたのは彼の表面だけ。だから知り得ていない場所だってあったはず。だから力が自然と抜けたのか。確かにそうかもしれない。

無意識に私は――。

 

その時、私の頭に懐かしい感覚が蘇った。優しく丁寧に、心の底からおちつかせるように。彼は優しく私の頭を撫でた。

 

「……シャナ、この7年間よく頑張ったな。聞いたよ、沢山の人を助けたんだよな」

 

「………うん…」

 

大体3年前ぐらいの奴隷貿易事件のことが脳裏に浮かんだ。それは偶然だった。別の依頼で向かった先でたまたま見かけたのだ。

そして、私と似た髪の色をした少女がいたから――私は自分と重ね合わせ、助けに向かった。

それだけなのに、私は褒められた。真意がどうであれ、彼は人を助けたことを褒めてくれた。

嬉しい、嬉しいよ…。胸が苦しくて、胸が熱くて…我慢出来ない。

 

やっぱり私は彼のことが――レイン・ヴァーミリオンが好き。ずっと側にいたいよ。叶うならば、あんな風に忌み子のように扱われた私でも幸せを掴みたい。

彼と結ばれて、子供だって――願うならば。叶うならば今からでも欲しい。この渇望が達されることを私はずっと望んでいるから。

ううん、渇望なんていい。ただ私は彼と一緒にいたいんだ、って。

 

だから今は――我慢しよう。今はこの気持ちを沈めるために――次に出会った時に想いを絶対に伝えて、答えを訊ねるために。

 

 

 

 

 

 

「遅れたけど、レイン。踊ろ? いっぱい踊って、慰めて?」

 

 

 

 

 

彼のもとから立ち上がり、頬を紅潮させたまま私は彼を誘う。

けれど、彼は擽ったそうに笑って――

 

 

 

 

 

 

「……全く。女の子に誘われたら断れなくなるだろ? あと、誘う側っていうのは男に任せてほしいかな」

 

 

 

 

 

苦笑いを浮かべて、右手をこちらに伸ばして――

 

 

 

 

 

Wuerden Sie mit mir tanzen(俺と一緒に踊ってくれませんか)?」

 

 

 

 

 

 

優しく微笑みながら私に訊ねた。ああ、言うまでもないし、断るまでもない。私の心は常に変わらず、ただ一直線に続いていると言っても過言ではないから。

だから、断らない。だってレインの誘いだもん。好きな人の誘いに乗るのは、恋した者の宿命だと私は想うから――

 

 

 

 

 

 

Ja , freuen(はい、喜んで)

 

 

 

 

 

私にとっての最高の笑顔で答えるんだ。

 

 

 

 

 

 




………あ、やっぱシャナがメインヒロインかもしれないわ。ウェンディさん、ピンチですよ。

このままだとタグが“オリキャラがメインヒロイン”とかになっちゃいそうです。

まあ、それでも構いませんがね(笑) でも、シャナにはレイン同様に悲しき運命が待って

ますからね。え? 文句ですか? ああ、それなら水銀ニートのカール・クラフトにお願い

します。アイツが全ての原因です。私の心の持ちようもヤツが原因ですよ、皆さん。

P.S.
白猫でノアっち出なかった……(涙) けど、学園でミレイユちゃんとヨシュア君が出たから
満足です。欲を言うならば、シャルロットとガレアも欲しいかな。
ん? 学園クエスト? ああ、そんなの有りましたね。とっくに全部コンプしました。
あと昨日追加されたんでしたっけ? ダグラスファイアー。あれもコンプです。
明日は時間無いので早めにTwitterに証拠を提示します。興味あればどうぞ。

FGOでアーチャー(御宮 士郎)出た。……あれ? ☆5は? (´;ω;`)ブワッ
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