FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹   作:天狼レイン

78 / 80

はい、散々Twitterで30000文字で出してやるぜ、ぐへへへとかほざいてた天狼レインです。

実はですね。調子に乗りすぎて40000文字に入りました。はい。

読みずらいことこの上ないので、前篇、後篇と分けることになりました。

散々待たせてスミマセン。ちなみに後篇は一週間後に出すつもりです。

日にち開けないとすぐに飽きちゃいますからね。それとテスト明日からだし(笑)

じゃあ、なんで小説書いてるの? Twitter更新してるの? アニメイト行ってたの?

白猫してるの? 答えは簡単です――現実逃避、それ以外に何がありましょうか。

てな訳で、前篇からぶっ壊れてくれよ、我が物語の主人公レインよ!!

P.S.
嗚呼、征服王。おお、征服王。汝は何故に舞い降りない? 我がカルデアでは御身が
征するだけの価値がないと仰いますか!!←要約:当たらないよぅ……(涙目)




男たちの戦場 前篇

その日はいつになく、騒がしく、且つ、活気付いていた。

理由は様々と言った所ではあるが、大きく分けて二つある。

 

一つは、男子陣が主に理由である。

まず基本的に脳味噌筋肉(ノーキン)が多い男子陣にとって“修行”という言葉じたいが最高であり、すべからく自らを鍛えるに相応しいものであるからだ。

特にナツやグレイ、ガジルなどがそういうヤツらだ。まだグレイはマシな分類かもしれないが。ただその問いに答えることができる理由は一つ。“やっぱ筋肉ムキムキでガッチガッチだったらカッコよくね?”的な願い故に、あるいは強さこそ正義的思考であるが故にだろう。

 

まあ、何度もそういう類いの馬鹿共を見てきた俺から言えるのは“心底下らん”という凄烈な毒舌一つなのだが、別に夢を見ることを否定はしていないことは理解してほしいものだ。

現に俺がそうであった。あくまでも過去の話だ。例として上げるが東方にある漢字の一つにこんなものがある。

そう、“儚い”という漢字である。見た通りの意味だ。“人”に“夢”と書いて“儚”。俺の勝手な解釈ではあるが、人は夢を見る。それが正しくとも間違っていようとも。もしくは大きくて素晴らしいもの、小さくて愚かなもの。それらが例え逆でも、人は何れ知ってしまう。

夢とは叶えることが一番難しく、そしてその未達成の結果に訪れる報酬はただ“絶望”だけであることを。もしそれが“絶望”でなくとも、“失意”や自信の喪失に繋がる。それすら踏み台にして次に取り掛かれる者など、ほんの一欠片と言うべき希少種の類いに過ぎない。

俺もまた、夢を見た。達成しようと努力した。何度も挫折しそうになっても、それを乗り越え、同様に夢へと歩もうとする者たちと同じように進んできた。

 

けれど――その夢は散った。ただ“仲間と後悔しない生き方をしたい”という夢は、その時の俺が覚えてなくても大切だった“ギルドマスター”でもあり、実妹でもあったメイビスの■■と言うべき終焉(終わり)によって、夢は散り失せた。

原因はあの男だ。だが、それ以上に俺は神という存在が憎くて仕方がない。未だにこの身は悪魔であると同時に不死者だ。悪魔である今なら死ぬことはできる。

けれど、悪魔であることを完全に拒んだ場合は――誰とも一緒には居られない。

言うまでもなくそれは、周囲に対して“死”をもたらす“死ねない病原菌”。それがあの“アンクセラムの呪い”だ。

ハッキリ言って俺はこれじたい知りたくもなかったし、この身に受けたくなった。そんな地からを賜りたくもなかった。でも――俺はメイビスを一人にしたくなかった。相談できる唯一の存在として、頼ってほしかったのに……。

 

――いや、この話は今するべきものではない。故、一度話を戻そう。

 

さて、もう一つの理由についてだが、女子陣にある。

こちらに関しては恐らく海に遊びに――ゲフンゲフン、海に修行に行きたいからという理由……らしい。

修行の計画を立てたのは俺だが、一応山などのことも考えておいたのだが、再確認してみれば、見事に海以外を断固拒否する。それもウェンディやフィーもそのメンバーだった。

大方ウェンディは虫が少々嫌いである。だから虫が多めの山は嫌なのだろう。なら、なんでフィーもなのかと思うのだが、これにも理由があった。

聞くところによると、最近フィーは泳げるようになりたいらしい。俺はてっきり7年間のうちに水泳の練習をしていたと思っていたのだが、ずっと陸上戦ばっかりしていたらしい。

そういえば、未だに家の中にある大きな風呂場で溺れそうになる時がある。いつもそれで悲鳴を上げては、救助される度にずっと風呂場を睨み付けていた。

まあ、狼という種類的に、そのハーフであるフィーは水を好むのか、好まないのかのどちらかとは思っていたが、後者だったらしい。

未だに不安要素があるらしく、時々泣き付いて、一緒に入ってほしいだのいう時は本気で焦った。お願いだから一人で入ってほしい。俺は言うまでもなく男だ。そっちは女だろう。

と、他にも理由があるようだが、主に理由はこれらしく、丁度水に触れる機会があるためにそちらを選んだとのことだ。

他の女子陣も大体似た理由。エルザは何処でもいいらしい。ルーシィはウェンディと似た感じの理由。レビィは……まあ、泳ぎたかったのだと思っておこう。

 

で、このように大歓喜している最強チーム()()()彼ら+αが目の前で、浜辺を目にして飛び上がった訳だ。

 

 

 

 

 

「ウオオォォォォォォォォォ!!! 海だあぁぁぁァァァァ!!!」

 

「おっしゃああああァァァァ!!! 泳ぐぜぇぇぇェェェェェ!!!」

 

「ねぇ、ルーちゃん。何して遊ぶ?」

 

「そうね、ビーチバレーとか……あとは」

 

「沢山ありますね」

 

「………み、水…た、沢山……お、溺れない…?」

 

 

 

 

 

 

 

上から順に“火の玉(ナツ)”、“半裸王子(グレイ)”、“自室図書館(レビィ)”、“小説家志望(ルーシィ)”、“義理の妹(ウェンディ)”、“狼少女(フィー)”。

なんだ、この阿鼻叫喚。可笑しいな、浜辺は元から騒がしいものだが、その喧騒八割がこいつらのような気がしてしまうぞ? なんだろうな、すごく恥ずかしい。なんで馬鹿共のせいでこんな仕打ちに遭わねばならん? ああ、そうか。こういう時こそあれなのだな?

 

 

「ちょっとお前ら、一旦落ち着け。じゃないと、全員揃って浜辺に埋め――」

 

「「「「「すみませんでしたッ!!!」」」」」

 

 

エルザ、フィー、ドロイ、ジェットを除いた他メンバーが同時に土下座。タイムはなんと驚くべき1.5秒。あれ? 人間ってそんなに早く土下座できるっけ?

しかも綺麗だと思えるぐらいにしっかりとしている辺り、コイツらやればできる。

ちなみになんで土下座をこんなに早く出来るようになったかは秘密である。別に熱血指導もとい、脅迫などは一切している()()()はない。

それになんでウェンディも土下座しているかがよく分からない。混ざって会話していたからだろうか? 別にお兄ちゃん、そんなことでは怒らないし、怒りたくもないです。基本妹には甘いのです、兄って生き物は。若干色々と俺が可笑しいのは疲れているから一択である。

俗にいう深夜テンションと原理は同じだ。

 

「よし、全員なんでもいいから話を聞け」

 

その瞬間、全員がそれぞれ正座、立ったまま、土下座のままという各々の態勢を取る。……いや、土下座しているヤツは一体全体何がしたい? それで疲れないのか? 逆に訊ねるが。

まあ、いいか。土下座していたいヤツはさせていればいいし。

 

「まず一つめ。一応俺らは修行の場所として海に来ている訳だ」

 

コクリと頷く一同。それを一瞥し、続けた。

 

「当然遊びに来た訳ではない。それは理解してるか?」

 

シュン……と落ち込む一同と再びコクリと頷く一同。だってそうだろう? 一応これは修行のために来ている。それを何度も何度も伝えておいた筈だ。

故に今頃言い訳される筋合いは一切ない。勿論、反対意見など今となっては役に立たない。

それを再度確認し、更に続けた。

 

「二つめ、メリハリをキチンと付けろ。守れないヤツはとりあえず、折檻OK?」

 

急激に首を縦に振る一同。流石に何人かが青褪めている。いや、うん、そんなことしないよ? 一応後から言おうと思ってるけどさ。そこまで俺はSじゃないからな?

 

「んじゃ、最後。他人に迷惑かけるな。これに関してはマカロフがあとで真っ青にならないように、という意味合い込めてる。忘れてほしくないのはマカロフが真っ青ってことは、当然メイビスもそれ知ったら真っ青になるか、泣くからな? 妹を泣かしてくれるなよ? ウェンディも同様だ。泣かせたら真っ先に滅尽滅相待ったなしだからな?」

 

最後をかなり語尾を強めて威嚇し、その上で注意を締め括る。やはり最初にドカンと一発ではなく、最後にドカンの方が俺としては合っている気がする。まあ、人それぞれだ、そんなものは。――と言ってみたが、俺は悪魔だった。

 

「………以上が俺の言いたいことだ。よし、後は好きにしろ。初日はぱぁーっと遊んでいいぞ、別に。それじゃ解散」

 

“解散”。その言葉が彼らの耳に届いてから数秒後。漸く完全にその言葉の真意を知るや否や、ナツとグレイは回れ右。即座に浜辺を駆け回った。

 

「うおっしゃあああァァァァ!!!」

 

「泳ぐぞォォォォォォォ!!!」

 

叫んだ瞬間、ドボンという音が聞こえた。多分飛び込んだのだろう。成程、ヤツらには特別な処置が必要らしい。後々そういう類いのヤツを考えておこう。

さて、こっちは――っと。

 

「………み、水…………」

 

「ふぃ、フィーちゃん、大丈夫?」

 

「……うん、多分…大丈夫…」

 

すぐそこに海があるというのに波が来るギリギリのラインで攻防戦を繰り広げる愛娘フィーと、それを見守りつつ助けの手をいつ出すか考えあぐねているウェンディの二人。

よく見れば、二人とも可愛らしい水着を着てきたようだ。ウェンディは基本的に青色と黄色をベースにしたもので、若干縁にフリルのようなものがついている。

次にフィーはと言えば、こっちも基本的にウェンディと何ら変わっていない。配色が違うと言うべきか。こっちは青色と白色がベースとなっており、フィーらしいものではあった。

 

しかし、なんだろう。ほぼ全く同じ水着をきていると言うのに何処か違うような気がしてしまう。さてはて、一体何処にそんな違和感を感じるようなものが――

 

 

 

「(あ………)」

 

 

 

――気がついた、否、気がついてしまった。

 

ウェンディは気がついていないのだろうか。ふと俺はそう思ったが、口にしてはいけない禁句であると瞬時に悟っていた。

以前7年ぶりの帰還時にリーダスの書いた絵を見て嘆いていたウェンディの姿。それを見てしまった俺には、それを言ってはいけないことが分かっていた。

だから口にしないし、すぐに忘れようと思う。そもそも女子の魅力やら何やらというのは外見と内側、そしてどれだけこちらを向いてくれているかということで評価すべきはずなのだ。

なのに、近頃の男共と言えば、呆れたものだ。マカオやワカバも良い年こいて、グラビアにデレデレしていたりと、ロメオが引いた様子をしていたのを俺は見ている。

普通親というのは子供の見本となるように居るべきだと思うのだが、あれではなんとも……。まあ、そういうのは人の選択肢。関係する時以外は気にしないでおくとしよう。

 

と、ここで漸くなのかウェンディが何かに気がついた。

 

「………フィーちゃん、もしかして()()より大…きい?」

 

「………?」

 

一度は首を傾げてこちらを見るフィー。しかし、ウェンディの視線を追うとそこにあったのは小さな膨らみ。女の子らしい、膨らみだった。

少し膨らんでいる自分のを見たあと、恐る恐る視線をウェンディの方へと戻すと――

 

「……………。お姉ちゃん、女の子のミリョク?は胸なんか関係ない」

 

キッパリと言い捨てた。あまりのことに悲しむ可能性があった筈のウェンディですら固まった。それどころか、完全に無表情のままフィーの方に近づいていく。

 

「………」

 

「………」

 

両者共に無言。視線を互いに交わし、それから互いに見えない言葉の矛を構えた。よく思えば、ウェンディたちは7年間年をとっていない。

と、なれば、フィーも大体推定12歳。つまり、ウェンディと同年代ということになる。

互いに12歳。身長が同じで、身体の鍛え方を考慮すれば、恐らくフィーの方が少し軽いかもしれない。ナツたちのようにガチガチ筋肉を鍛えている訳ではなく、しなやかで動かし易く負担のかかりづらいようにしてあると思われるからだ。

まずそれ以前に狼である以上、元々のパフォーマンスと言うべき身体能力もある。と、なれば、体重などウェンディと同じぐらいか、それ以下なのだろう。

 

なのに――

 

 

 

「フィーちゃん……私より大きい…」

 

「………?」

 

 

 

恨めしげにフィーの膨らみを死んだ魚のような目でウェンディは見ながらブツブツと言い始めた。こういうウェンディを見たのは初めてである。

 

「………フィーちゃん、7年の間に何かしてたの…?」

 

「……ううん、全然なにもしてない。ただ修行だけ。あとは料理いっぱい作って、それ食べてただけ」

 

料理、その言葉を聞いてウェンディが後退り。

彼女も料理を作れる女子なのだが、道具を使うことすら儘ならなかった筈のフィーが料理まで出来るようになったと聞けば、嬉しいはずなのだが、今の状態では完全に負けてしまっていると言えるかもしれない。

まあ、これについては現在萱の外まっしぐらの俺が料理のレシピなどを教えたり手伝ったりして得意になってもらうようにすればいい訳だ。一応予定に料理研究日とでも記しておこう。

 

と、ここでウェンディに変化が訪れた。普段なら大人しく恥ずかしがり屋な一面が露出しやすい彼女が突然フィーの膨らみに手を伸ばしたのだ。

 

「………柔らかい」

 

「……!? お、お姉ちゃん、き、急に…そこ…触っ…んっ!?」

 

うん、これはダメだ。禁断症状でも出ているのやら。コンプレックスだったのだろう“それ”にまさか7年前までチョコンとしていた可愛らしい妹分のフィーにまで負けてしまったかもしれないと思うと理性の壁が壊れてしまったらしい。

まあ、他の男子らしく考えれば、おおーとか、眼福とか思うのだろうが、俺にとっては正直そういいのは心底どうでもいいので、気になるのは二人の絆にヒビが入ることである。

なので、ここはフォローの一つや二つを入れておこう。本音を少し混ざらせて。

 

「二人とも、何してるんだ? ――ってウェンディ。現実に戻ってこーい」

 

「………ッ!? あ、あれ…? わ、私……!? ふ、フィーちゃん!? ご、ごめんね!!」

 

「……うぅ……お姉ちゃんに…襲われると…思った……」

 

ほんの僅か目尻に涙を浮かべつつ、フィーは両手で膨らみを押さえた。止めた分、触られていた時間は短かったのだが、まあ、ああいうハプニングに慣れていないのだろう。

それも身内と言うべき存在からだ。慣れないのも分からなくはない。俺だって色々ハプニングを………いや、それは言わないでおこう。最早悪夢か何かに近いものだし。

 

「んで、さっきのは姉妹のスキンシップか? にしてはウェンディ、ブツブツと怪しげに呟いてたが……」

 

「…ぅぅ……気がついたら…その…………」

 

目を下に向け、落ち込むウェンディ。見たところ本人に自覚はあまり無かったようで、完全にコンプレックスの刺激による理性ぶっ飛び後の無我の行動らしい。

まあ、当人はかなり反省しているようだし、ここは怒らずにフィーとの仲を取り持つのが筋というものだと俺は思う。

すると、ここで黙っていたフィーが決意を固めたように口を開いた。

 

「お姉ちゃん」

 

「ひゃ、ひゃい!?」

 

急激な緊張と謝罪のせいか、ウェンディは完全に虚を突かれたように変な声を漏らす。

それに構わず、フィーは堂々と、真剣な顔つきで豪語した。

 

 

 

「――胸は大きいと動くのに邪魔だよ。私これ以上は要らない」

 

 

 

「……………は(ふぇ)?」

 

 

 

突然の胸は大きくない方が良い豪語に、ウェンディどころか俺まで唖然とした。幸い周囲に人がいなかったらしく、先程の豪語を聞いているものはいない。

と、なれば、当然俺たちが黙ってしまうと沈黙に包まれる。聞こえるのはさざ波と青空をのうのうと飛び交う鳥たちの囀ずり。

 

それから数秒を費やし、漸く俺とウェンディは唖然としていた状況から我を取り戻す。

 

「………な、なぁ…フィー?」

 

「………?」

 

恐る恐る俺が呼び掛けるとフィーは首を傾げてこちらを見る。なんだか俺が可笑しいみたいなのだが……。

 

「さっきの宣言………なに?」

 

「神様への威圧」

 

愛娘はすっぱりと返す。あれ? 平常そうで怒ってらっしゃる?

 

「ふぃ、フィーちゃん? その…怒って…る?」

 

「ううん、怒ってない」

 

俺の疑問を汲み取ったウェンディが訊ねるが、本人は何ともなさそうに答えた。

が、しかし、前に足を進めてウェンディの手を握った。ジーっと見つめて、数秒。何かを考えながら、何度か唸り声を挙げつつも、決心し、ウェンディに向かって諭した。

 

「お姉ちゃん、まず胸が大きいと何か得することあるの?」

 

「え、えーっと……」

 

「私、7年でいっぱい女の人とすれ違った。けど、胸の大きな人、みんな肩が凝るって言ってた。それって得なのかな」

 

「え、えーっと……その……」

 

戸惑うウェンディ。に構わず、フィーは更に畳み掛けた。

 

「魅力とか母性的とか最近知ったけど、別にそれって胸が大きいの関係ないと思う。知り合いに落ち着いた雰囲気の女の人がいたけど、あの人はスゴく優しくて母性的だった。

でも、その人、胸大きくない。多分単純に優しくて器が広い狭いの話だと思う。だから胸は関係ない」

 

「…あ、あぅ………」

 

反論の余地なし。俺の目にはそう見えた。ウェンディの方は完全に自分を見失いかけている。このまま胸の大きさを気にする自分に戻るか、それとも吹っ切れてフィー同様に胸なんて知らない、女の価値は器の広さと優しさ。って方になるのかで完全に迷っている。

まるで“祭りのお店で美味しそうな串焼きを見つけたけど、極々普通の串焼きの店で買った方が安いけど、どっちの方を買おうか”などと悩んでいる一般人のようだった。

例えがくどい? そんなことは知らん。これ以外に合っているヤツが思い付かなかったんだ。仕方あるまいよ。

 

そんなことより兎に角今はウェンディをどうにかしてあげるべきだろう。まあ、俺の意見なんかで変わるだのどうだのは分からないが、とりあえず、フォローの一つや二つを入れておくべきだろう。なので――

 

「ウェンディ」

 

「お兄ちゃん………」

 

微かに虚ろになろうとしている瞳が見えた。ああ、これはヤバいな。もう少し後だったら完全に虚ろな目で暫く過ごすことになっていただろう。

そんな姿を他に見せる訳にもいかないし、当然そんな状態で修行なんて儘ならない。というよりもまず休憩時間で海すら楽しめない有り様になってしまうだろう。

だから俺は助け船?を出すことにした。

 

「俺も一応フィーと同じ意見だ」

 

「「………ふぇ?」」

 

キョトンとする二人。ウェンディならいざ知らず、何故フィーもなのかは分からない。

まさかとは思うが、俺も男だから胸の大きい方が良いなどと勘違いしていたのだろうか?

……いや、俺は――

 

「――正直言って胸の大きい人は大体苦手だ。フィーと同様に大きかったら良いという理由がよく分からないしな」

 

本音だ。だってそうだろう? まあ、大きいのが良いって人もいるのは分かる。けれど、当人の女性としたらどうだろう。前の方向に余計な負担がかかっているのと同じなのだぞ?

俺からしたら余計な労力の消費ではないかと思う訳だ。その分の労力を別に使った方が効率もいいし、後々自分の疲れを軽減できる。

大体それが理由だ。別に俺はロリコンではない。シスコンだ、それは理解済みである。

おい、誰だ。俺がロリコンって言ったヤツ、表に出ろ、滅竜奥義を叩き込んでやる。

 

「まあ――あ……うん。誤解されたくないんだが…あと、好みって理由もある…かな」

 

自分でなにいってるのか、よく分からなくなるが、まあ、これも本音だ。事実、俺がよく巡り会う少女は全員そうだったし、第一胸が大きいのが好きなのならルーシィやエルザとかに恋心やその他諸々を抱いただろう。抱かないのは恐らくこれが原因だろう。

まあ、別に後悔の一つもないが。それも好みだから仕方がない訳でもあるし。

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

三人の間に沈黙が再び訪れる。原因は俺だ。フォローにすらなっていない意見をぶちまけたのだから。………なんてことをしたんだ、俺は。

ここにハリセンだのタライだのがあれば、自分の頭をそれを殴っていただろう。半狂乱染みた状態で気が済むまで延々と。ひたすらにひた向きに、自分の頭を殴る作業へと。

見ていてそれは痛々しいことなのは理解している。だが、それぐらいしか思い付かない。なんでこうなのだろう、俺は。

 

と、不意に何か覚えのある気配を感じ取った。

 

兎に角その気配は隠すつもりを感じられなくて、それでいて俺と同じ――いや、俺の魔力を保持している存在であることが伝わった。

成程、これは間違えまい。絶対にあの子だ、あの少女だ。

 

眩しいぐらいの晴天の下、俺は顔を上げて空を見上げた。

 

そこにいたのは、太陽を背にしてこちらへと降り立とうとする小さな人影。背から突き出、羽ばたき、ゆっくりと降下するに至るそれは紅蓮の大翼。

周囲の空気が熱され、気温が同時に上昇する。魔導士でも無茶をすれば、熱中症で気を失う程に熱い何か。それは正しく少女の異名を体現するもの。

 

そして、少女は降り立った。

 

飾り気のない黒羽織を羽織り、ウェンディやフィーと殆ど同種の可愛らしい、且つ、少女のイメージを象徴するような緋と白を中心とした水着を下に着込みながら。

 

 

 

 

 

――《火焔天(アシャ・ワヒシュタ)》シャナ・アラストールは三人の前に姿を現した。

 

 

 

 

 

 

「レイン、舞踏会以来だね」

 

黒羽織をバッと脱ぎ、同時に何処かへ消え失せさせると同時にシャナは駆け出し、若干油断気味の俺を押し倒した。

 

「グハッ」

 

軽く後頭部を打った。いくら砂浜でも痛い時は痛いのだ。時々砂の中にガラス瓶とか埋まってる時あるし。他にも貝殻やら何やらのetc……。

 

「あ、ごめん。怪我してない?」

 

俺を押し倒したまま、少しだけ起き上がりペコリと頭を下げるも、あまり謝罪されているという実感が湧かない。まあ、シャナのことだ。俺がこの程度で怪我をする程、柔じゃないことを知っているからしてきたのだろう。

謝った後に、顔を上げたのを見て確信することとなったが。だって見てくれよ、この笑みだ。完全に他のことを考えていただろう。そして怪しげな雰囲気を纏ってるし。

 

「……はぁ…。んで、シャナは海に遊びに……いや、絶対違うな、どうせ俺だろ?」

 

「うん♪」

 

「うん♪ってお前……、大魔闘演武が3ヶ月後あるだろ……。修行とかしてるのか?」

 

「ちゃんとしてるよ。でもついでだからレインと一緒にしたかった。あとで試合しよ?」

 

「あー、分かった分かった」

 

「やった♪」

 

まるで久しぶりに主人と出会った飼い犬……いや、シャナの場合は猫だろうか。

兎に角飼い猫よろしくと言わんばかりに甘えてくる。あまり期間が空いてはいないが、7年間ほど出会うことができなかった分を考慮すれば、まあ、許せる範囲である。

流石にここでケチケチするのも大人げない。見た目14歳の少年が何をいってるのかと言われそうだが、中身はれっきとした爺さんだ。これでも俺は120歳超えだぞ? 7年間起きっぱなしだったんだから前みたいに120歳前とか言えねぇぐらいだっての。

 

「そういや、結構前より性格柔らかくなったな。舞踏会の時はもっと固かった気がするんだが?」

 

「………うん、色々あったから」

 

「サクヤの仕業?」

 

溜め息を溢しながら言うシャナの姿に、横脇にいたフィーが原因を推理して口にする。

コクりと頷くかわりにシュン…と落ち込むような動きをする所から図星だろう。そのサクヤって人物。名前的に女の人のようだが、躾るのは慣れているのかもしれない。

と、言っても俺は大体放任主義なのだが。わざわざ枷だの決まりだのグダグダとほざくつもりもないし、御託を並べるつもりも一切無い。自由から何かを学んでほしい、それが俺の教育方針のようなものだ。自分でいうのも難だが、そういうものだと思っている。

え? ナツたちの土下座(あれ)のこと? ああ、あれは流石にしつこいうるさい鬱陶しいから躾てやったまでのこと。お陰で意外と静かになった。

 

などということはさておき。一度俺はシャナを立たせると、後頭部を擦りつつ、立ち上がる。まだ目がチカチカしたりするが、どうせ慣れるだろう。何せドラゴンの目だし。

まあ、厳密且つ正確に区分するならば、ドラゴンそのものの目ではないが。

 

「さてさて。んで取り敢えず、自己紹介でもしたらいいんじゃないか? ウェンディ、シャナ」

 

そう、この二人は初対面だ。それも俗にいう○○属性などで区分すれば、両者ともに妹属性と言うべきか。どうしてこんな知識があるのかと言えば、小説書くのに必要だったりするからなので悪しからず。というよりこんなもので興奮するような変態には絶対なりたくないし、なろうとは思わない。……なると、すれば――

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、どうも。麗しいお嬢さん方。此度は仲よろしく友達同士で海水浴を楽しみながら友好を深めるのかな? どうだろう? この僕をその楽園(ツァオル)に混ぜてはくれな――グフォァッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

――そう、コイツだ。ついに出やがったな、幼女趣味似非紳士(ロリコンフェミニスト)

 

 

 

 

 

 

 

「なんでお前がいるんだ、このクソロリコンッ!!! 三千世界の果てまで(あまね)く全ての人類がお前なんぞ求めてねぇ!!!」

 

 

 

遭遇開始(エンカウント)初撃暴言(ウェポン)、超ド直球(ストレート)死球(デッドボール)。効果など言うまでもなく、精神ダメージを与えるためのものである。

極々普通の一般人、その中のロリコンが聞けば大概項垂れ、心をほんの僅かに傷つけられるだろう。加えて、暴力(ウェポン2)鉄拳制裁が見事にクリティカルヒットし、ヤツは砂浜に頭部をめり込ませている。普通に考えれば、これで止めでいい。

だが、しかしである。コイツの場合は――

 

 

 

「さっすが、我が親友~♪ 相変わらず毒舌のキレで魔封石の手錠を切り裂けそうだね~♪ いやぁ、君のことだし、死んでないのは分かってたから嬉しかったよ、アハハッ」

 

 

 

全然へこたれない、落ち込まない。逆にそれを糧にするかのように元気が増す。可笑しいな、さっきキチンと鉄拳制裁で砂浜にめり込ませたはずなのだが。

頭から若干血を滴らせながら元気に今日も幼女趣味(ロリコン)道に走り出そうとするコイツを見て、俺は正直諦めてしまいそうだ。

が、今回はそうもいかない。何せ今回は近くに大切な妹と愛娘、さらにはシャナもいる。

三人揃って未だに若い女性の芽と言うべき存在。となれば、自然とこの変態は狂喜乱舞し、活気立つ。もはや手がつけられなくなる程に。

 

「おぉ~♪ なんだろうねぇ、親友~♪ これこそ選り取り緑と言うに相応しいじゃないかぁ~♪」

 

もう手付きやら目が怪しい。コイツはなんと言うべきか、タチが別の意味で悪い。所謂ムッツリスケベのロリコンと違い、コイツは恥じることもなく、全身全霊を懸けてド直球に立ち向かう、あるいは突撃する類いのロリコンだ。

一番危険で、且つ、止めるのすら面倒な方である。それに加えてコイツは不屈の幼女愛好心を持つ。故に眼下に幼女一人さえいれば、治癒力が圧倒的と言える魔物すら凌ぐ回復速度を誇る変態だ。となれば、一番容易く手っ取り早いのは殺せばいい訳だが、流石に殺すのはどうかと思ってしまう辺り、俺はマトモだと思える。一度血迷ってコイツの首をギリギリまで締めた者がいたような気もしなくはないからだ。

 

「お前なんぞに妹たちを渡さねぇし、指一本触れさせる気はねぇ。だから帰れ、土に還れ、生物皆の原点たる母なる大地に還れ、変態」

 

ウェンディとフィー、シャナを自分の後ろに下がらせ、構える。

兎に角今は“動けば半殺し作戦”で行くつもりだ。正直動けなくなるまで殴りたいが、それをするとこの変態は意地でも立ち上がるので逆にウザイ。

どうやら視界に幼女入るだけで至福らしい。……その眼孔に風穴開けてやろうか、変態。

 

 

 

鋭い視線で牽制する俺と、どうウェンディたちに近寄ろうかと模索する変態。二人の間で火花が飛び散りそうなぐらい睨み合っていた中で、俺はある異様な魔力に気がついた。

それも背後だ。しかもこれは――

 

 

 

「――あ……ヤバい」

 

 

 

 

 

こう表現してしまうのも可笑しいことこの上ないが、それは正しく那由多の果てまでも焼き尽くさんと煌々と、赫耀(かくやく)に天穣の業火が燃え盛っていた。

加えてシャナの眼が完全にあの変態を蔑んでおり、同時に殺さなくてはいけない対象として見ていることに俺は気がついた。

 

 

 

「……燃えちゃえばいいのに………。私の…業火で――」

 

 

 

大きく息を吸い込むと同時に天穣の業火に注がれた魔力が膨張し、ほんの僅かが爆発する。恐ろしい程の衝撃波が走り去り、周囲の魔導士がいれば、即座に危険だと判断し逃げようとする程に。正しくそれは太陽と言うべきか。願うならば、超新星爆発(スーパーノヴァ)だけはやめてほしいものだ。まあ、それは無理な話だろうなと()()してしまった訳だが。

 

 

 

「――灰燼へと帰せぇぇぇェェェ!!!」

 

 

 

太陽の如き天穣の業火が変態めがけて投下された。恐らく周囲を丸ごと焼き尽くす程の大規模破壊は免れないだろう。いやはや、どうして海水浴でこうなってしまうのだろうか。

請求されたら丁度良いし、《四つ首の番犬(クワトロケルベロス)》宛に送っておこう。そっちの変態(馬鹿)がこっちに来たからですって言って逃げよう、そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一部のビーチが灰燼と帰したのは言うまでもなく、一時期海辺周辺の気温までもが急上昇を起こしたのは内緒である。

 

ついでのついでながらあの変態に関してだが、どうやらいつも通りなんとかほとんどの魔力を使って凌ぎ切ったらしいが、正気に戻ってなお、シャナが愛刀で首を撥ね飛ばそうとしていたので、一応放置しておいた。生きていれば、また何処かで顔を会わせるだろう。

正直遠慮願いたいことこの上ないが。どれくらいかの度合い? そうだな、丁重に遠慮申し上げたい程だ。

 

 

 

 

 

 

 ――◆――◇――

 

 

 

 

 

 

 

あれから数時間が経ち、日は水平線の彼方に落ち消えた。鮮やか黄昏を眺めるのも一興だったが、やはり黄昏の後にあるのは漆黒の帳が下ろされてなお天穣にて輝ける星々の光芒。

つまり、星空だ。いつみても星空というものは素晴らしいものだ。悠々と、俺たちの届かない空間で漂い続ける星々の輝きがこの世界にまで届いている。

そう思うだけで神秘というものを感じよう。と、言っても中々こういうのを理解できないものもいるために語る時には興味津々な者や同種な者たちとするべきだと思わざるを得ない。

事実、俺や今行方不明らしいジェラールのように《天体魔法》を使う者は大体そういうのに興味を持ったりする。まあ、ぶっちゃければ、ロマンチストということだ。

自分で言うのも難ではあるが、多分そういう類いに僅かでも入っているのだろうと思う。まあ、こういうのはルーシィにでも聞いたりすれば良い話である。

何せ星々のことに詳しい、且つ、自らがそうである星霊たちと親しいからだ。それに本人も詳しく調べているのだから興味あり以外のどう判断を下せばよかろう?という話だ。

 

などと暗くなっている空を見上げていた俺はとりあえず疲弊している三人に声をかけた。

 

 

「大丈夫か、ウェンディ、フィー、シャナ。主に身体的、精神的に」

 

 

「…レインが慰めてくれるなら立ち直れる」

 

 

というシャナ。

 

 

「パパ、あんなのいるんだね…この世界に」

 

 

と若干話題がずれているフィー。

 

 

「……え、えーっと……大丈夫です、多分…ですけど…」

 

 

といつも通りより少しテンションが下がっているウェンディ。

 

 

兎も角まだ良かったと言うべきか。あの変態の開幕洗礼――まだあれで序の口の序の口――を受けて立ち直れなくなるような者を俺は見たことがある。

一番酷かったのはウェンディのような少女が半狂乱に狂い哭きながら“絶対に身長も胸も器も大きくなってやる”と豪語する程だったことだ。ちなみにその子は結局大きくならなかったとの噂が流れている。可愛そうだとしか言いようがない。逆に痩せ細ったとの聞いた。

恐らくストレスだろう。もう一度言おう。可愛そうに。

 

さて。現在俺たちは浴衣に着替え終わった所だ。なんで三人と一緒なのかはさっきのことで大丈夫かを聞くために呼び出しておいたのである。

見たところ、聞いたところ大丈夫らしい。シャナはこの機会にあわよくばと言わんばかりに慰めて、慰めてと言っている。こう言うときは軽く流して躱しておこう。

関わったら色々とあとが不味い気がする。逆に無視すれば、さっきみたいなのが拝めてしまう気がするので同様に。

 

いつもではないというのに既になれてしまった辺り、俺は意外と適応力があるのかもしれない。まあ、なければメイビス同様に軍師らしく指示も出せそうにないのだが。

 

などと心のうちでゴニョゴニョ言っていてもキリがないので、兎に角、全員が集まる予定である大広間に行くことにしよう。

一応この宿に他の宿泊客はいないが、流石に事情を知らない者にこれを見られると、妹を引き連れている兄として見られるのか、それともロリコン待ったなしの目でみられるのかが一切分からない。後者など絶対にお断りだ。んなこと言ったヤツを徹底的に絶望させてやりたくなる。そうだな、方法としては拷問フルコースで対応してやろう。

殺さない程度に殺してやる。言わば、そんなぐらいだ。これでも甘口と言えよう。本物の拷問などもっとエグいものである。鞭打ちだの、手首足首切断だの、火炙りだの、と数えるために上げれば、これまたキリがない。呆れてものが言えなくなりそうだ。

よく思い付いたな、昔の人。素直にぶっちゃければ、そんな感じだ。

 

さてさて。そろそろ本当に向かっておくとしよ……あ………。

そう言えば、一番やっておかなきゃならないことを忘れていた。

 

「悪い、フィー、シャナ。二人は先に行っててくれ。ウェンディと話しておきたいことがあってな。勿論、外野無し、盗み聞きアウトで」

 

 

「ん、分かった」

 

 

と返すのは素直で理解の早い我が愛娘フィー。

 

 

「………レイン」

 

 

と声音を低くしてこっちを妬ましいような恨めしいような目で見てくるシャナ。………いつからこの子はヤンデレというか嫉妬しやすいというか、兎も角そういう子になったのだろうか?

7年前に一度離別した際はもっと純粋且つ健気で、それでも今みたいな軽い嫉妬ぐらいを兼ねていた極々普通?の少女だったというのに。

いや、まあ、普通とは遠い気がするのは言うまでもない。だってそうだろう? 5、6歳だった少女が突然出会ってから年月がまだ浅い男に告白するなど。

今もはぐらかしてはいるが、いつ言及されるか分かったものではない。そろそろ返事をせざるを得ないだろう。だが、俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それに――

 

 

 

「えっと……」

 

 

 

何故自分なのかが分かっていないまま待たされているウェンディをそのままにしておけない。加えて俺は義理であってもあの子の兄貴だ。

だからキチンと妹を誉め、優しく接し、家族として愛することぐらい許されても良いだろう?

 

微かに微笑み、俺はそれらしい理由を瞬時に脳内で構築し、シャナに頼んだ。

 

 

「ま、二人を先にいかせる理由は簡単だ。とりあえず、晩飯の死守を頼む。酒瓶あったら気を付けろ。聞くところによるとうちのギルドの女子共はどいつもこいつも酒癖が悪いらしい。晩飯をオシャカにされたら堪ったもんじゃないだろ? だから頼む。俺が行くと若干嫌な予感がするんでな」

 

 

そう言う俺の言葉に、思い当たることがあったウェンディとフィーは脳内で理解した。俺の自分勝手な解釈でならこうだろう。“ああ、あれか”、というヤツに違いない。

シャナはまだ知らないが、どうせ隠していても露見するようなものだ。誤解がないうちに話すつもりだから兎に角今は晩飯を死守してほしい。それが本音二割、建前八割である。

 

そう頼むと、シャナの表情はパァ…と明るくなり、なんたか頼まれたことが嬉しくて仕方がないような顔付きでニッコリしてから力強く頷いた。

 

 

「うん、分かった!! レインの頼みだもん、ちゃんと死守するから」

 

 

そういうとシャナはフィーを連れて大広間へと向かっていく。二人の背中を見送った後、漸く俺はウェンディと二人きりになった。

 

 

「さて、と」

 

 

背伸びを一度だけしてから俺は近くの縁側に腰を掛けた。瞳を軽く伏せ、開いた。それを済ませ、自分の横に座るようにと左手で縁側の木板をポンポンと叩いた。

それに従い、ウェンディもまた律儀に俺の左側の縁側に腰掛けた。ほんの僅か、沈黙が二人を包み込み、俺は空を見上げ、ウェンディは縁側にあった池に目を向けた。

 

僅かな沈黙を過ごし、俺は漸く口を開く。

 

 

「ウェンディ、不便はないか?」

 

 

「あ……それって……」

 

 

訪ねたのは健康面のことだ。いくら凍結封印の魔法とは言え、死んでいないのだから人間としての機能が死んでいないのと同じ。動いてなくとも生きている。

当然、突然封印が解けて違和感を感じたり、体調に変化が訪れているかもしれない。だからそれを訪ねたかったのだ。

 

だが、困惑する姿から察するに、主語が足りなかったらしい。やはり言葉は簡略化するものではないと悟ってしまいそうだ。まあ、理解したことに代わりないが。なので言い直す。

 

 

「身体に違和感を感じたりしてないか?」

 

 

言い直すと、すぐに質問の内容を理解したらしく、一度だけ頭を悩ませた。多分思い出しているのだろう、少し変だった時や違和感のあった時が無かったか、を。

 

と、ここでウェンディが口を開く。

 

 

「今のところはないから大丈夫だよ、お兄ちゃん」

 

 

そうか。その言葉が聞きたかった。

本音をわざわざ口にするほど殊勝なことをする人間じゃない。だからこういうのは心のなかで呟くに留まる。けれど、安堵の表情だけは隠せなかったらしく、ウェンディがキョトンとしたまま、俺の顔を眺めていた。どうやら変な顔でもしているらしい。

 

頭を数回左右に振ると、俺はウェンディの身体を自分の方へと抱き寄せた。突然のことで驚き、身体が強ばるのを腕のなかで感じながら、ただ俺はちょっとだけ甘えたくなった。

 

「なぁ…ウェンディ。君にとって、“ギルド”はなんだと思う?」

 

メイビスは“ギルド”を家族と解釈した。幼い頃に両親を亡くし、俺という兄を知らぬまま、孤独に生きていたからこその願いであり、解釈。それは一種の心の持ち様と何ら変わらない。

 

だからこの質問はその人がどういう人かを瞬時に大方検討をつけることができる。

と、言っても解釈など人それぞれ、十人十色。千差万別と言うべきものであることに代わりはない。故、これでその人の人物柄を想像するのは失敬であると言えよう。

 

だが、それは一種の知恵とも言える。完全に信じられるなんてことは心理的に、人間として生まれたサガと言うべき理があるが故にあり得ないのだ。全生物共通とも言えるが。

 

例として――悪魔である俺にとって“ギルド”とは家族である以上に自らの手足やら胴体やらを縛り付ける鎖にしか感じられない。

何れ来る時にとって、ただの足手まといであり、邪魔以外の何かでしかないと、頭の片隅には考えざるを得ない。それを、そう思う俺を壊れていると言ってくれても構わない。

それでどうこうする以前に俺を殺す術を探す方が圧倒的に早いはずだ。などと自分を悲観しようと絶望しようと何も変わらない、壊れない、崩れ落ちることなく、ただただ人という翼は逢えなく天災やら寿命で地上へ墜つ。

人理を壊すには時代を燃やせ。天を紅く染めたくば、地上に地獄を顕現させよ。真に救済するならば、全人類の命を断て。不変の真理、故に下らないと言われる戯言の例だ。

 

つまり、俺が“ギルド”を家族である以上に邪魔な足手まといでしかないというならば、関わらなければいい話だったということだ。だが、俺は中途半端だった。

人間として生きていて、悪魔としても生きている。半々だからこそ、俺でいられるのだろうが、それ故に俺は他者を理解する脳を無くし始めていた。

次々と記憶が脳へとインプットされ、記憶が消え失せるのと同じだ。俺でいようとするから、曲げらない強い己をイメージし、ワクチンとして自らに投与する。

 

だから脳の残量が古くなって使い物にすらならない過去の自分ばかりが溜まっていき、今の自分を留めようとするから、他が消え失せ欠けていく。

結果俺は僅かずつ人間でありながらも人間でなくなろうとしている。未だ、誰もそれは気がついていない。メイビスですら気がついていないことだ。

だが、教えるつもりもないし、それを教訓にする気もない。例えそれが実の妹であっても。

 

 

 

だから――だからこそ、問おう。

 

 

 

君にとって“ギルド”が何なのか。それが俺に届く代物(願い)なのかを知るために。

 

 

 

 

「私にとって“ギルド”は――」

 

 

 

 

淡く微笑む、その少女に偽りはない。同時に、邪なる者でもない。敢えて言うならば、この子は()()()()()。天竜グランディーネの意志を継ぐかのように、この子は救えるものを救いたいと願っている。まるで聖人だ。

これならば、きっと俺の願った“劇終の結末(アクタ・エスト・ファーブラ)”は成就されるだろう。それと同時にこの子が――

 

 

――仮に救済の少女と称されても批判はされまい。だが、()()()()のだ。

 

 

無知蒙昧。少女は純粋であるが故に人間の裏を知らない。絶望を真に知らない。運命と時間の卑劣さ、残酷さを知らないのだ。

だからこそ、少女に――ウェンディ・マーベルには届くものがある。純粋故に、ただ馬鹿正直に。それだからこそ救える魂が近くに転がっている。

狂い惑いて、惑い狂える。狂気の果てに真理を見出だして。正気の果てに絶望を知り得て。そう、恵まれずに――“白銀”から“漆黒”に染まった者を助けることが出来ることを。

 

 

それが自分の望まない終焉(別れ)であろうと。

あるいは、相手が望む終焉(大願)であることを。

 

 

その一歩を踏み出してほしいから。いつまでも過去の亡霊にしがみついて欲しくないから。

愛しているからこそ、俺は――幕を引く。

 

 

だからその想いに答えてくれ――それと同時に裏切ってくれるなよ、我が愚妹よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺から誘った密かな会話を済ませ、俺たちは漸く集合の場である大広間の前にまで来ていた。

ウェンディは上機嫌だ。と、同時に俺も心なしか身体が軽い。責任感とやらが失せたからか。

これでさっきの問答も無駄ではなかったと言えるな。結果が期待以上だった。期待していて良かったと思えたのは久しいものだ。

 

――が、まあ、そんな堅苦しいことなど今は思い出さなくて良いだろう。

兎に角今は大いに楽しもう。騒ごう、歌おう、飲もう、食おう。柄にもなく胸が踊ってくる。あまり胸が踊る展開に陥ったことがないから判別は出来ないが、嫌な予感に嫌な予感が重ねられたと同じぐらいに、胸が踊っている。

 

 

さぁて、と。今宵は精々楽しませてもらお――

 

 

 

 

 

 

「ぎぃぃィィやぁぁァァァァァ!!!」

 

 

「助けてくれぇぇぇェェェェェ!!!」

 

 

「グレイ様ぁぁぁぁ………」

 

 

「アハハッ、アハハハハハハハ!!!」

 

 

「ナツぅ……ゴロゴロしてぇ~?」

 

 

「アンタは馬よ!!!」

 

 

「…あ、あいさぁ………」

 

 

「……なんで俺たち怒られてんだ……?」

 

 

「俺が知るかよ………」

 

 

「そこッ!! 私が話しているというのに何を余所見しているのだッ!!!」

 

 

「……ぷはっ……。やっぱり美味しいね、シャナ」

 

 

「……あぅ~……目が回りゅう~……」

 

 

 

 

 

――バタンッ。

 

 

目の前で起こってきた地獄絵図を目にし、それから数秒をかけ、現状を整理整頓する。少しずつ思考が纏まってくる。隣で口が開いたまま固まっているウェンディを軽く揺すって現実に引き戻しつつ、俺は結論を導きだした。

 

 

「ウェンディ、何か食べたい晩御飯あるか? 今から早急に作るから。ああ、心配するな、こんなこともあろうかと寝袋を用意しておいた。多少廊下で寝ても身体を痛めはしない。自分用の枕が必要なら、すぐに取りに行こう。あとフィーを確実に回収するぞ」

 

 

結論、扉を介して向こうは地獄(グラズヘイム)。行っちゃダメ、関わっちゃダメ。向こうで拾っていいのはフィーだけ。アーユーオーケー?

 

 

それからまたもや数秒をかけ、漸くウェンディは完全に我に返った。

 

 

「お、おおおおおお兄ちゃん!? み、みなさんはどうするんですか…!?」

 

 

「フッ、まあ……いいヤツだったよ…」

 

 

「そんな風に言ってもダメですっ!!!」

 

 

「ちぇ…」

 

 

どうやら義妹(いもうと)は厳しいようです。いや、うん。フィーだけ助けたらいいんじゃないかと思うのだが。あ、でも結構目を回してたし、シャナも回収するか。

だが――

 

 

「ウェンディ、あれ関わったらアウトだぞ、絶対。そこの所どうお考えで?」

 

 

「え、えっと……その……気絶させるとか……でなんとか……」

 

 

「それ事実上の俺だけの肉体労働だよな? 特にエルザ止めるの俺ぐらいしか出来ないだろ、あれ。しかもかなり酔いが回ってやがるし」

 

 

酒瓶片手に熱弁を奮う。そう、あれは完全に酔ったオッサンと何ら変わらぬ危険度を誇るものだ。カナが大体ああいう感じだ。それに俺は巻き込まれた前科を持つ。

そんで知りたくもなかった酒癖――抱き上戸を知った。特に可愛がっていると言うべき、ウェンディやフィーを抱き締めずにはいられなくなるとのこと。

……いや、もう、勘弁してください。次あれやったら首吊りしてしまいそうです。いくら悪魔だろうと羞恥心はあるんだからな? そこの所どうなんだろうな、本当に。

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

「……………」

 

 

「……………」

 

 

「…………………」

 

 

「…………………」

 

 

沈黙の数秒間。黙り混んだ挙げ句思考停止に入りかけているウェンディを見つめながら、俺は切羽詰まった現状を打破すべく策を巡らせる。

こういう時こそ優雅たれ。予習は二倍し、余裕で達成せよ。さすれば、道は拓かれん。故、俺はメイビスと同等に近しい頭脳をフル回転させた。

俺だって影でコソコソしていたが、《妖精軍師》の代行であることに間違いはない。血筋以前に、俺とメイビスはどちらも勉学を好んでいる。事実、俺は8歳で拉致されるまで、ずっと書物を読んできた。だからあそこから脱獄できた。

人間として死してなお、俺は変わってないし、変わらない。人格と知識、どちらを取ると言えば、直ぐ様、俺は知識を取る。探究こそ、俺らしさがあると思えたからだ。それに実際今こうやって役に立っているのだから文句はない。

確立した完全なる策を練り上げ磨きあげ、確立する。勝利は我が手にあらん。

 

 

軽く瞳を伏せて、息を吐き、己を落ち着かせ――さて、そろそろ始めるか。

それでは久しく楽しませてくれ、我が遊戯(ごっこ遊び)にてな。

 

 

「…ウェンディ二等兵!!」

 

 

「…ふぇ……に、二等…兵?」

 

 

これの意味を察することができる者には分かるだろう。

つまり、そういうことだ。ただ単に俺は遊び半分で楽しもうとしているだけ。過去に色んな大陸を放浪したことがある俺は勿論のこと、この戯れの原型を知っていて改良したまで。

このハイテンション、高レベルな察し能力、合わせるという連携。これら全てが果たされていなければ、難しいにも程があるノリ。ああ、素晴らしきかな。久しく遊び心だけで胸が踊ってくる。

しかし、ウェンディの反応を見るに――成程、こういうのに慣れてないのか。

まあ、それでも強引に進めるが。軽く手の動きだけで何をするかを伝えて、扉を若干開け、向こうの様子を確認しつつ作戦の開始を待つ。

 

 

「我らの目的はフィーリ・ムーン、並びにシャナ・アラストールの二名。未成年者の保護である。即座に保護し、脱出後、二人からアルコールを解毒せよ。以上!!」

 

 

「…は、はいっ…!!」

 

 

何処で覚えたのか、若干覚束ない敬礼。うん、悪くない。けど――

 

 

「――ゴホン……。悪い、テンション可笑しいだろ、今の俺」

 

 

一応冷水をかけたようにあがる遊び心を沈静化してから、声をかける。極々普通の今まで通り、そんな俺の声を聞き直してホッとしたのか、ウェンディは肩の力を抜いてから口を開いた。

 

 

「その…えっと……どうしたの? お兄ちゃん」

 

 

「……現実逃避しないための作戦。正直一番手っ取り早いのは扉突き破って、強引にフィーとシャナを奪取すればいいんだが……流石にメイビスがあとで泣いちゃうから止めた」

 

 

「あぁ……まあ、初代はマスターでしたから…」

 

 

どうして、うちのギルドのマスターは破損だの修繕費だのの話を聞くと泣くのだろうか。プレヒトはさておき、メイビスやマカロフは当然の如く泣いたり怒ったり。

こういう所はやっぱりユーリに似たのだろうな。また……会えるなら会いたいと思う。まあ、俺がアイツと同じ所に逝けるかどうか、分からないが。

 

何せ俺は殺人鬼紛いの悪魔だった訳だしな。審判などと評して殺戮する。呆れて物が言えない。狂いに狂った挙げ句の光明見出だし、再び絶望の連鎖。切れない、壊れない、崩れない。

こんな三拍子はヘドが出る。それに――

 

 

――俺自身がそんな救済を()()()()()()

 

 

誰かに会いたいと願うことは悪くない。だが、その者と同じ善行をしたか? あるいはその者と同等の悪行を犯したか? 否、それは論外と言えよう。

俺は俺であり、ヤツはヤツ。故に同等などということは一切ない。同じ所に逝ける? ハッ、笑わせんな。同じ統括に入れるとでも考えていたのか? 下らねぇ、んなもん塵芥に等しい。

 

兎に角、俺は一人ではなくて、独りだ。そう、一人ではないのに独りなのだ。その真実は紛うことなく――

 

 

「――さて、と。本当にそろそろフィーとシャナを救出するぞ。じゃないと未成年の身体に悪影響でしかねぇ。んじゃ、突撃3カウント数えるぞ、俺が“ゴー”叫んだら突撃だ、OK?」

 

 

「はい!!」

 

 

いい返事だ。悪くない。その元気を続けてくれよ、ウェンディ。

 

 

3(ドライ)……」

 

 

軽く唾を飲み込み、息を潜める。扉は開いている。叫べばバレるだろう。だからこそ、静けさが必要だった。エルザの喧騒のお陰で一切バレていないようだが。

 

 

2(ツヴァイ)……」

 

 

扉の明け口に手を開け、魔力で軽く防御の結界――“天竜の羽衣”を久々に発動する。

一応ウェンディの肩に手をおいて同様に展開する。

 

 

1(アインス)……」

 

 

さぁ、迷うことはない。ただ任務を果たそう。フィーとシャナを奪取して逃走するだけの簡単なお仕事だ。報酬? ああ、あとから二人に褒められる。それだけで十分だろ、子供から金を取るような外道は犯さんよ。やるなら犯罪者から巻き上――ゲフンゲフン、没収するだけ。

当然のことだが、家にあるJは全部キチンと貯めた分だ。没収したヤツは大概ギルドに回ってきた損害賠償に送っている。え? 没収したヤツは本人たちに返さないのかって?

なら問うが、お前は今までにその金が何人の手に行き渡ったか分かっているか? 分からぬなら文句は言えんよ。だって没収されたヤツも真に自分のものではないのと同じなのだから。

 

 

まあ要するにだ――

 

 

 

 

 

 

「ゴーッ!!!」

 

 

 

 

 

――勝てばよかろう。力の限りを尽くして怨敵を蹂躙すればいい。ただそれだけだ。

 

 

 

 

 

扉をガンッと勢いよく開き、手前の方で転がっていたナツの悲鳴を無視。近くで笑い転がるレビィも同様に無視。

ウェンディと共に中心で酒をまだ飲もうとしている愛娘と既に目を回しているシャナを救出するべく突撃。

奥ではエルザによる説教とジュビアによる浸水奈落に囚われたグレイ。こちらを見て助かったとでも思っている可愛そうなグレイはその場で見捨てる。

まあ、乙女の気持ちを分からないヤツは一回ぐらい痛い目を見ろ。ジュビアらしいジトジトしたものをそこで味わってろ。と、コンタクトをぶつけ、それを理解したグレイが大声でこちらを呼ぶのが聞こえた。

 

曰く“おいぃぃぃぃぃ!!! ちょっと待てッ、助けてくれッ、頼む、今回ばかりは本当に助けてくれぇぇぇぇぇ!!!”とのこと。

 

――知らんよ、そんなこと。兎に角、仲睦まじくて良いじゃないか、ニヤニヤ。

 

 

 

と、そんな感じで仲間たちの必死の叫びを無視しながら、中央に辿り着くと、すぐさまフィーから酒瓶とコップを取り上げ、ウェンディに“ほい”と渡す。

察したウェンディの素早い行動で、フィーはおんぶされ、脱出不可。俺もシャナを抱き上げると、そのまま扉の方へと向きを変える。

ここまで計画通り。あとはエルザに気を付け、入り口前で翻弄されているナツを完全に見捨てれば完遂。あとは解毒等々をし、二人から事情を聞ければ尚良しと言ったところだ。

 

だが、中々に思いようにいかないのがこのギルドである。

 

 

 

「待てぇぇぇぇぇいッ!!! 酒も付き合えんのか、レインッ!!!」

 

 

完全にジェットとドロイを説教でボロボロにしたエルザ登場。片手に酒瓶。

しかもアルコール度数(たけ)ェよ!!! おい、ふざけんな、誰だこんなの持ってきたヤツ。アルコール度数65%? 普通に喉が焼けるわ、阿呆がッ!!!

それを付き合えと? ハッ――

 

 

「――んなもん、誠心誠意お断りだァァァァァ!!!」

 

 

酒瓶ど真ん中を狙って魔力を圧縮した弾丸のようなものを発射。狙い違わず真っ直ぐに宙を駆ける。

が、それを容易くお盆で弾く。どうやら近くに散乱していた晩御飯だったものの所から取ったらしい。小癪な。大人しく割られていろよ、クソッタレ。

すると、向こうはこちらの意図を読み取ったのか――

 

 

「レイン、貴様、酒を狙うとはどういうことだ!! こっちにこい、説教してくれるッ!!! ついでに酒を注げ、飲み交わせぇぇぇ!!!」

 

 

「誰が、んな危険地帯に行くかァァァァァ!!! つうか晩酌してほしいのか、説教したいのかどっちかにしろやァァァァァ!!!」

 

 

すかさず先程より密度、質を上昇させた魔力の弾丸を撃ち出す。さっきよりも加速され、難易度は更に増している。

だが、またもや、エルザはそれをお盆を器用に使って弾き飛ばした。吐息が荒い。どうみてもラスボス感が溢れている。目が真っ赤に発光して、顔回りを黒く影が出来ているってか?

 

 

――んな嗜好なんぞ、要らねぇわ。ふざけ過ぎだろ、クソッタレがァァァァァ!!!

 

 

心のからの絶叫を上げ、弾幕の如く撃ち続ける。魔力量の心配はない。当然だろ、誰だと思ってる? ――○○さんだぞ、と思ったヤツ、怒らないから出てこい。

 

 

「ウェンディ!!」

 

 

「うん、分かった!」

 

 

素早く指示を飛ばし、兎に角フィーとウェンディだけでも脱出させる。入り口でナツとルーシィが何やら変なやり取りをしていたのが目に入ったが、別にあの程度ならマシだ。

目の前のトチ狂い始めた《妖精女王》に比べりゃ、月とすっぽんってヤツだ。

 

 

「………あれ? …レイン……?」

 

 

などと考察していると、片手に抱えたままだったシャナが漸く意識を覚醒させた。

足が地面についていないことに気がつき、視線をさ迷わせ、誰かに抱き抱えられていることを理解し、それが誰かを悟ると――

 

 

「………ッ!? ぁ…ぁぁ………~~~っ~~~!!!」

 

 

――みるみるうちに顔を真っ赤に染め上げ、自分の顔を俺の胸板に押し当て、顔を見せまいと隠し始めた。いや、もう、すっかり寝顔とか目を回した時の顔を堪能したんですが、それは。

中々見れないものを見れただけで、結構得したのは言うまでもない。7年前より大人っぽくなってたのは間違いないし、どっちかというと可愛らしさも増したというべきか。

まあ、兎に角、シャナは成長した。それだけでいい。いいんだが……

 

 

「シャナ、さっきから俺の胸板に頭とか寄せるのはいいが、頭突きは止めてくれないか? 地味に痛いぞ、それ」

 

 

鈍痛が定期的に響き、地味に痛い。本当に地味に痛い。若干照準がずれてしまいそう――

 

 

ズドンッ!!

 

 

「危なッ!? て、てめぇ、レイン危ねぇだろうが!!! つうか、助けろよ、さっきから無視すんなよ!!!」

 

 

――危ねェ。もう少しでグレイを撃つところだった。

 

 

それにしても……。エルザ、お前しぶとすぎ。いい加減酒瓶諦めろよ。俺はそれ割らなきゃ、あとでどうしようもねぇからやってるのに。また悪夢やら地獄に再来してほしくねぇから。

 

 

「……………」

 

 

…………もういいか。あとで酒瓶持ち込んだ犯人を説教すればいい訳だしな。

と、いう訳で――

 

 

――メイビス、あとで覚えとけよ。これでも俺、怒ってるからな?

 

 

ギロリと鋭い視線を天井へと向け、身体を震わせていたメイビスを睨み付ける。こちらの視線と怒りに気がついたメイビスもまた青くなり、さっと何処かに逃げ失せる。よし、隠れんぼか。捕まえたら覚悟しておけ。

 

 

と、いう訳でだ。エルザ、お前と付き合ってる暇はねぇ。

 

 

素早く回り込み、首筋に手刀を叩き込む。ドスッと入ったそれは確実にエルザの意識を刈り取っていき、そのまま眠りに落ちさせた。

若干手荒く畳の床に放置すると、俺はそのまま全速力で大広間を後にする。勿論、早く駆け抜けるため、シャナをキチンと抱き締めておいた。

抱き締められたシャナの状態を知らぬまま――

 

 

「~~~ッ!?!? ~~~っ~~~!!!」

 

 

 

 

 

 

――その後、ウェンディと合流した俺は自分の浴衣の胸辺りが真っ赤に染まっていることに気がついた。と、同時に止血キットやら治癒魔法が必要となったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




簡単な今回のマトメ。

・開幕レインの自虐話。

・海でヒャッホー、数秒たたずに大体正座。

・ウェンディ暴走

・フィー、ウェンディに諭す。

・シャナ降臨、レインの後頭部ダメージ。

・万を持して変態登場(キリッ→数秒後に太陽投下。

・浴衣着て慰め談話。

・ウェンディへの問答。

・臨時特殊部隊、未成年者解放作戦開始。

・シャナ羞恥と歓喜で鼻血。

・前篇合計文字数22905。
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