FAIRY TAIL 天空に煌めく魔導の息吹 作:天狼レイン
内容は全くない変わっていません。気にしないでくれると助かります。
「来いよ、仕付けてやる。大きくなりすぎたその鼻を軽々とへし折ってやるよ、ラクサス!」
レインの挑発が確実にラクサスの気に触ったであろう時から、すでに5分弱が経過していた。未だに戦況は一歩も譲らない。
……しかし、ミストガンには何かが可笑しく見えていた。先ほどから両者は負けず劣らずの攻防を繰り返し、互いに傷つけているように見える。
だが、レインが時々見せるあの余裕はなんだろうか?口許の片隅を上げ、ニヤリと不適に笑い、それでいて疲れが全くと言っていいほどに見えてこない。
一方のラクサスは徐々に攻撃するタイミングやスピードを確実にずらしていっているが、未だに決定打とも言える強攻撃をレインに当てることが叶わなかった。
隙を埋めるための攻撃ですら、レインには見えてしまっているかのようにのらりくらりと避けられている。
ラクサスの身体には殴られたときの痕が少しずつ増えていくのに対して、レインには殴られたときの痕が少しずつ減ってきているような気がする。
まるで自動回復をしているかのようだが、別の魔法を予めに設定している可能性の方が高かった。そう思い、ミストガンはレインの魔力を確認していくのだが、明らかに怪しすぎる点があった。
先ほどからレインは“天竜の鉄拳”を使っているはずなのに、魔力が一向に減ったように見えない。それどころか回復する方向へと向かっているのだ。
ついでに言えば、徐々に魔力が高まり、体力が回復しているとも言えるようだった。そんな中で、ミストガンはあることに気がつく。
先ほどから少しずつ酸素が薄くなってきている気がしたのである。よくよく見れば、レインは何かを吸い込み続けているようにも伺え、吸い込んでいる度に笑っている。
「(まさか……!?)」
ミストガンが結論に辿り着こうとして、その時だ。後ろから誰かがやってきたような気配が感じられ、向いてみると……。
そこには桜髪のマフラーをつけた少年と緋髪の鎧を着ている女性がいた。そうだ、《
《
二人はミストガンを見つけると驚きを見せるが、空中で殴りあっている別の二人を見て、目を疑った。
ラクサスとレインの二人が戦っているという現場のことだろう。ナツは羨ましそうにしているが、エルザは完全に驚いている。
多分ラクサスに勝てるような者がギルダーツの居ない今でミストガン以外にいたとは思っていなかったのだろう。
そんな三人の目の前で、ラクサスが突然咆哮する。
「ちょこまかとかわしやがってええええ!!!レイジングボル……」
彼がよく使用する魔法の一つ、《レイジングボルト》。強力な雷の魔力の塊が、レイン目掛けて襲い狂う……はずが、途中でラクサスが空中で動きを止める。
まるで何かに縛り付けられたようなそんな様子を見せていて、身体が一つも動いていなかった。動いていても痙攣しているのかと思えるくらいにピクピクとだけだ。
その疑問に答えるかのように、ラクサスの身体中には謎の紋章が現れており、ソレが動きを規制していたのだ。
その紋章は何処かで見たことがあるような……そう思った途端、エルザは思い出した。前に“楽園の塔”……いや……Rシステムの本体で評議院でジークレイを演じていたジェラール・フェルナンデスが使っていた拘束魔法、“
それがラクサスの動きを完全に封殺していたのだった。当然ラクサスはそれを知るよしもないし、すぐに破れるような弱い魔法ではない。
そんな中、レインはミストガンの方を一回だけ振り向いて小さく告げる。
「ちょっと魔法を使わせてもらうよ、ミストガン」
「………?」
困惑のミストガンに対して、レインは即座に魔法を発動させる。発動した魔法には、5つの魔方陣が浮かび上がっており、それぞれ赤色の魔方陣、青色の魔方陣、黄色の魔方陣、緑色の魔方陣、黒色の魔方陣が浮かんでいた。
それを見たミストガンは、両目を見開き、驚いた。先ほどラクサスに使った魔法である“五重魔方陣 御神楽”だったのだ。
仕組みは評議院の使うエーテリオンと似ているその魔法は、ミストガンの取って置きに等しかった。それがあっさりレインが使用しているのである。
しかし、それだけでは終わらなかった。五重魔方陣の真ん中辺りにラクサスが閉じ込められ、次の瞬間には横からも同じ“御神楽”が設置されていたのだ。
つまり十字型にラクサスを閉じ込めた上に、両方から強烈なビームを放とうとしていたということだった。
丁度“
両方からの強烈なビームがラクサスを襲撃し、大爆発を起こさせ、後ろにいたナツやエルザが目を閉じてしまうほどの閃光がラクサスを蹂躙する。
気がついた頃にはラクサスがカルディア大聖堂の床にラクサスが倒れており、レインはつまらなさそうに欠伸をしている姿が目に入る。
あのラクサスがレインに圧倒され、敗北の兆しを見せているのだ。その姿はエルザやナツ、ミストガンからもあり得ないものであろうが、現実に過ぎない。
しかし、やはりラクサスはここで終わらなかった。少しずつ立ち上がって、怒りを顕にしており、今にもレインに襲いかかろうとしていた。
――が、レインにその攻撃は何故か当たらない。スカッスカッと空中でさ迷い、レインは余裕綽々の様子だった。突然レインが地面を蹴り、空中を舞い始めると同時に、大聖堂の天井から別世界が開いているように見えていた。
よく見れば、それは星空のようであり、今にも墜ちてきそうな状態だ。当然その魔法もエルザとナツは知っている。一度ナツはその身に受けている強大な魔法、“
「七つの星に裁かれよ! “
飛来した七つの輝きがラクサス目掛けて墜落し、輝きが途絶えることなく爆破の嵐を生み出す。大きく穴が穿たれた大聖堂の床、その上でラクサスは傷だらけになっていた。
耳に着けていたヘッドフォンはひしゃげたりしていて半壊しており、着込んでいたコートは破れ、来ていた紫色のシャツも切り傷のようにびっしりと破れが見えるほどだった。
圧倒的だ、ソレ以外の言葉はミストガンにもエルザにも、ましてやナツにも口にできない。完全にラクサスが押し負けていて、勝ち目すらが見えている。
それほどまでにレインのほうが実力が上なのだろうと言うことは理解できる。しかし、先ほどから見せている魔法の数々。
ミストガンの使う“五重魔方陣 御神楽”や、ジェラールが使っていた“天体魔法”の一つ、“
それをこうもあっさりと使いこなす目の前のS級魔導士のレインの実力。それは最初に出会ってからエルザやナツが見てきていた彼とは程遠い“何か”だった。
あれこそが、レイン本来の実力なのかもしれない。それでも何か違和感が残っているように見えるエルザとは違い、ナツはそんな二人の戦いに煽られたかのように戦いたがっていた。
「………ふぅ、やっと大人しくなった。あれ? エルザにナツもいたんだ? いやー、ちょっとお見苦しいところを見せたかな…?」
「な、なんだ…さっきの戦いは…」
「俺も戦わせろー!!」
「うるさいぞ、ナツ!」
「ご、ゴメンナサイ…」
ナツがエルザに叱られ、静かになる中、突然後ろで倒れ付していたラクサスが立ち上がり、レインを急襲する。それも全身が変化し、腕には鱗のような模様が顕になっている状態だった。あまりのスピードにエルザやミストガンすらが追い付けずにレインは強打の一撃をその身に叩きつけられる。吹っ飛んだ彼は、そのままカルディア大聖堂の壁へと全身を打ち付けて沈黙する――はずが、崩れる壁の中から再び現れ、静かなる怒りをたぎらせていた。
「……やっと本性だしたか…、ラクサス。 なるほどな…滅竜魔導士の噂は事実か…。面白い…
「クックック…。オレの邪魔をするヤツは失せろ、失せろ、失せろおおおおおお!!!」
目からも電撃を放つラクサスの暴走っぷりが三人の目を釘付けにする。しかし、それを越える者が近くにいることに気がつけば、その時点で全身は震えを止めることができない。
ラクサスよりも恐ろしい形相を醸し出しているレインの様子は、いつもの優しそうな姿ではなく、全身から身の毛も弥立つような強大な魔力を放出させ、白銀の髪に青みを帯びた髪が姿を現していた。
だが、それだけではなかった。突然彼は腰に引っ掻けていた鍵サイズの刀剣を通常サイズへと戻すや否や、前から怪しそうに見えていた、弾丸を入れるような謎のケースを開く。
その中には武器に使われている天竜の鱗がそのまま入っており、それをレインはバリバリと食い始めた。
エルザには見覚えがあった。“楽園の塔”で“エーテリオン”を食べたときのナツの姿にそっくりだったのだ。確かジェラールはその時のナツの姿のことを“ドラゴンフォース”と言っていた。
まさに今、身体や魔力の変化を始めたレインはその“ドラゴンフォース”を発動していたのだ。
白銀に輝いていた髪の一部は蒼く染まり、手首や足首からは白銀の鱗が次々と着ている手袋や靴などを串刺しにし、さらにはコートの両肩から同じ白銀の鱗が飛び出し、背中からは自分よりも大きめな翼が姿を顕にしている上に、彼の右手は完全にドラゴンそのものを思わせるような手へと変化していた。
「さぁて……、どれくらい足掻いてくれるか。楽しみにさせてもらうぜ? 滅竜魔導士レイン・アルバースト。これより雷竜なるラクサス・ドレアーの撃滅を開始する…!」
―――☆―――☆―――
位置特定不明 レインがラクサスとの本気の戦闘を開始した同時刻にて
彼はそこにいた。枯れ死んでいく木々の中、ハラハラと舞い腐り塵と化す落ち葉が空中をさ迷うその場所で。
ただ静かに目蓋を閉じ、空気の流れのみをその身に受けて、ただ誰も近づかないことを祈り、ただ独りだけでいれることを願いながら、彼はふと呟く。
「やっぱり君か……、レイン。まだ君は戦うのかい? まだ君は守りたいと願うのかい? まだ……人が持てる可能性を信じているのかい?」
そう呟く彼の瞳は憂いを帯び、悲しさや哀れさをも誰かへと向けているようにも見えた。“
それは自分だけでもない。自分が伝え、教えた“彼女”も……今もなお、誰かのために戦い続けている“彼”でさえも同じなのだ。
だから“彼女”はそれに対する策を練り、自らを人ならざる存在へと変えていった。それを見てきた……いや……知ったからこそ黒髪の彼も思うのだ。
“生命の尊さ”、以前はとても大切に大好きでもあったそれが自分を苦しめる咎と化し、鎖と化させる。それがツラくて仕方がないのに、まだ愛してしまう二人がツラそうで仕方なかった。
黒魔導士などと呼ばれながらも、彼も本当は一人の人間に過ぎなかった。大切な家族を……失ってしまった家族を取り戻したくて、ただ“死”ということを愚弄することをしてしまっただけに過ぎない。
忘れるのが“咎”であるというのなら、覚え続けるのもまた“咎”でもある。でも、あの時の彼は大切な“弟”という失われた存在を忘れたくないが故に、様々な
“時をも超える魔法の扉”、“どんな死者でも甦らせる塔のシステム”、“罪を背負いすぎているのに死ねない自らを破壊するための悪魔の本たち”。
それの一つが今も……間違ったことを考え、世界を歪ませる。何のために生み出したのかさえ分からなくなってしまう。
“ああ……早く僕を……早く僕を……壊してくれ……”そう願い続けるばかり。ただ暴走する力を完全に消したいがために。二度とこんな“呪い”が現れないためにも……と。
だから彼は400年も待ったのだろう。そして現れたのは三つの可能性。
一人の滅竜魔導士の彼か……、最強の悪魔なる存在か……、そして……その両者を圧倒するかもしれない人ならざる彼か……。
ただ彼は願うだけ…。
“自分を死なせてくれる存在が早く目の前へと現れんことを……”