他種族をホームステイさせたり他種族を制圧したりする二人の文通とそれを取り巻く日常のお話。
モンスター娘のいる日常の世界観を勝手に補完して満足するためにチートスペック他種族ガールを突っ込んでみました。
完全リハビリ用気まぐれ更新なので次が来るかどうかも未定なのでご注意。
かつての私は、ただ空を自由に飛べればそれで良かったのです。
何にも縛られず、何も遮るものはなく、どこまでも広い世界をただ独りで。
だけど今は違います。
あの悲しみを二度と忘れない、そう心に誓いました。
だから私は悲しむ物、傷つく者、嘆く者に手を差し伸べます。
いつかまた、あの人と再び笑顔を交わすために。
それが、あの人との約束だから。
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親愛なる公人さん。
日本は若葉萌える季節になったことでしょう。お元気でいらっしゃいますか。
さて、先日は日本のお菓子を送ってくださってありがとうございました。
周囲の者達と美味しくいただきました。
こちらは今中東に居ますので、お礼も兼ねてこちらで手に入れた粗品を送らせていただきます。
どうぞお納めください。
季節の変わり目ですので、体調を崩してお風邪など召されませぬよう、お祈りしています。
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部屋に近づく人の気配に、ふと、手を止めます。机に置かれた時計に目を向ければ、思った以上の時間が過ぎていました。
書くのを中断して、あとは署名だけとなった便箋をファイルに仕舞っていますと、部屋のドアがノックされました。
返事を返せば、そろそろ作戦開始時間であることをドア越しに告げられます。その声は先ほど手紙にも書いた、あの人に送ってもらったお菓子を一緒に食べたうちの一人でした。
私と彼女との関係は、任務遂行上出会った現地人と友軍というだけに過ぎないと、簡単に断じることはできます。本来なら、不必要な接近はかえって任務遂行に支障をきたす可能性があるという考えも理解できなくもありません。
けれども、それでも私は共にお菓子を楽しむことを選びました。日本から来たお菓子だと伝えて渡したときの、彼女の好奇に満ちた笑顔は、とても輝いていました。
この地に害を為す他種族の鎮圧が私の任務ですが、私はただ鎮圧して終わりではなく、そこに住む者に人種を問わず安らぎをもたらすことが至上と考えています。
そう思えるようになったのは、あの時出会ったあの人のおかげ。
窓から見える私の翔ける蒼穹の先に、あの人の居る日本があることを想えば、
「――公人さん」
私はまだまだ、頑張れます。
「そういえば、だぁりんクンに手紙があるわよ」
墨須がコーヒーを飲みながら取り出した手紙に、だぁりんクンこと来留主公人は少し驚いたように目を見開いた。ミーアをホストファミリーとして受け入れて以来、突然訪問してはコーヒーを飲んでいく墨須の行動にも慣れてきたが、手紙を持ってくることなど今まで一度もなかった。
公人が受け取った手紙――見るからにエアメールのそれは、月一で送られてくる昔なじみからの物に相違ない。今月も来たのか、と嬉しく思う反面疑問が湧く。
「――って、なんで墨須さんが持ってきてくれたんですか?」
まさか人の家のポストを漁ったのかと想像したが、このエージェントもとい他種族間交流コーディネーターの墨須は、適当でちゃらんぽらんなところはあるがこうみえて公務員であるらしく、そのような犯罪行為を働く人ではない、はずだ。
その質問に、墨須はコーヒーを口にしつつ事も無げに、
「なんでって、彼女が私の同僚だから代わりに預かっただけよ?」
「……同僚?」
「そうよ。今任務で海外に派遣されてて――って、もしかして聞いてなかったのかしら?」
不思議そうな目で墨須に見られる公人は、最後に会ったときの件の少女の姿を思い浮かべる。
他種族であるが故に人とは少し離れた姿だったが、どう見ても当時の公人より頭一つ二つは背丈が小さく、そして性格も仕草も幼く感じた。というよりその後直接年齢も聞いたので、年下であることは確認済みだ。
そんな彼女が、この胡散臭い墨須と同僚であるということがにわかに信じられない。
「……ええまあ、確かに連絡は取り合っていますが、どんな生活をしているかまでは話題にしなかったんで。世界中あちこち行ってるらしいのは聞いてますけど」
「あら、そうだったの」
直接伝えたかったのかしらねえ、とか何とか言いながら遠い目で呟く墨須。その表情は若干下世話なものを感じたが、公人は見なかったことにした。そんなことより、気になることが一つ。
「ていうか、あの子僕より年下ですよね?そんな未成年まで働かせるとか墨須さんの所ってよっぽど――」
「シャラップ!それ以上は私の安月給がさらに安くなるから言わないほうが良いわよ」
あ、ハイと濁った目をした墨須さんから目を逸らしていれば、騒ぎを聞きつけたのかミーアがやってきた。
「――だぁりん、その手紙は?」
「僕の昔なじみの女の子からだよ。毎月届くんだけど、前回はミーアが来る前だったからね」
「女、の、子?」
呟くなり、ミーアの表情が一変する。
ラミアであるミーアはその種族の常として、やや嫉妬深いところがある。現に今も獲物を取られまいとする狩猟本能にも似た感情と合わさり、瞳孔が縦に裂け口からは威嚇音が小さく漏れ、ありていに言って狩られる恐怖を周囲に与えるほどだ。
ミーアの変容に思わず表情が固まる公人だが、しかしこの場にいるもう一人の墨須は海千山千の他種族との交渉に長けただけはあり、平然とコーヒーを啜っている。
「ちなみに言うと、その子もミーアちゃんと同じく他種族で爬虫類系よ」
「だぁーりーん!?」
「え、何で僕が怒られる展開なの!?っていうか墨須さん余計なこと言わなくていいんで!!」
「余計ついでに言えば、まあ、あの子は特別ってことよ。それじゃあだぁりんクンコーヒーご馳走様ミーアちゃんと仲良くねっ!」
言うが早いか物凄いスピードでコーヒーカップを置き椅子から立ち上がり片手を上げミーアが来たまま開けっ放しのドアからにこやかに去っていく墨須。
引っ掻き回した上投げっぱなしで逃げた、と公人が思ったのもつかの間、それ以上考える余裕もなく四肢が拘束されていく。ラミアの本領発揮である、通称ロールミーホールド。毎朝の日常ではあるが日に二度も受けたいとは思えない程度に苦しく下手をすれば骨も折れかねない危険な状況である。
「だぁりーん?その子の話、詳しく聞いてもいいよねぇー?」
だがそこはミーアも慣れたもの。意識がはっきりしていれば緊縛の強さを調節など朝飯前だ。本来の朝飯前は寝ぼけてボキリといかせやすいのはさておき、絶妙な力加減で縛り上げ、公人の耳元で囁く様に熱い吐息に言葉を載せる。だが公人が横目で見るその表情は一言で言えば、とても凄かった。
そんなわけで、来留主公人の日常は、今はラミアと共にあるのである。
その一族は、かつて星を救ったという伝説がある。
なにぶん文明がまともに生まれるより遥か以前のことであるのではっきりとはしないが、発掘資料と他種族も含めた極々わずかな伝承に矛盾はない。
高速で飛翔するために体は小柄でありながら、その身を空気との摩擦にも耐える強靭な鱗で覆い、吐息を高圧で噴出すことにより更なる推進力を得、まるで空を引き裂くように突き進む。
空気抵抗が少なくなるように身を縮め翼を畳み風を切る、流星にも例えられるその姿。それが今、武装した他種族の立てこもる拠点へと高速で落下した。
爆発こそないが、ミサイルの着弾のようにも見えるその光景に、遠くから作戦を見守っていたとある女性隊員は息を呑んだ。
建物の壁を破砕して生じた白煙のなかから身を起こす姿は、人型の二足歩行に腕からの大きな翼。生物学的な種族分類としては飛竜――ワイバーン系ドラゴニュートであるため、一見すればハーピーのようにも見える。が、それはシルエットだけに過ぎない。
衝撃と轟音から立ち直りなにやら言葉を叫びながら手にした銃を向け乱射する他種族達は、しかし白煙の収まると共に悠然と歩み寄る姿を見て、その顔に絶望を浮かべた。
洗練された、それでいて異形としか呼べない造詣。最低限の装備だけで単身敵拠点に乗り込む胆力。そして何より、その小さな体躯がまるで巨龍のように感じる圧倒的な威圧感。
ある研究者は語る。彼らが星を砕かなければ、この星にここまで多様な種族の繁栄はなかっただろう、と。
故に彼らは星に住まう全ての生物から畏敬と共に呼ばれる。
星を砕き、星を救い、星を見守る竜――星竜族。
「私の名はアカシア。星竜族と呼ばれる一族です――これ以上の罪を重ねることはやめて、投降してください」
種族名という分類上のものではなく、もはや一つの尊称として用いられる名を持つ一族。その末裔の少女アカシアは、穏やかな口調で敵対者に告げるのだった。