3度目の人生は静かに暮らしたい   作:ルーニー

29 / 29
2話連続投稿です。1話にまとめるよりもこの形がいいと思ったのであえてこの形で投稿させていただきます。


A's 1

 部屋の中の明かりは、ベッドのすぐそばにある電灯のみだった。目を通しても頭の中に入ることのない文字列を眺めていたはやては、深くため息を吐いて本を閉じる。

 

「……わからん。わからへんよ」

 

 はやての頭の中にあるのは、今朝の信也の状態だった。いつも以上に顔色が悪く、フラフラと歩いていた信也は、ついには倒れてしまった。

 

『し、しんや!?』

 

 倒れた信也に驚いて病院へ電話をかける。急に倒れたと言って家まで救急車を手配してもらうようにしてもらい、信也の様子を見ていると、苦しそうな表情を浮かべながら口がもごもごと動いていたのが見えた。

 いったい何を言っているのか。不安とともに耳を澄ませて聞いたそれは、しかし、倒れた信也の口から洩れていたのは果たしてなんのうわ言だったのか。

 

『……らなくちゃ、今日算数の宿題があって、A社に営業行く必要があって、就活5回目をやらなくちゃ、いや小学校を確認しなくちゃ、あぁそうだあのバカまた教室にとんでもないものを持ってきてたなさっさと処分しないと、あの古典の先公とんでもないもの持ってきやがって奪うのにどんだけ時間かかるんだ、あの猫どもどこで操られてるんだ、修学旅行水族館行くから楽しみだな、なんでまた小学生からやり直すことになったんだ、あいつがしぬ、またあの邪神の仕業なのか、もうやめてくれ、しにたくない……』

 

『……しん、や?』

 

 どういうことなのか、どうしてあんなうわ言が漏れていたのかはわからない。どうしてあんな言葉が出てきたのか。どうして小学生のはずなのにあんな言葉が出てきたのか。救急車が来ることにはすでにうわ言もなくなった信也に聞くすべは、もうなくなったのかもしれない。

 

「……もうすぐ、今日も終わるんやな」

 

ふと時計を見ると、針はもうすぐ12時を指すぐらいの時間だった。次の日は自分の誕生日だ。いつもならしんやのお父さんとお母さん、しんやが祝ってくれていたが、しんやは入院、しんやのお父さんとお母さんは仕事で帰ってこられるかわからない。

 

「……1人になるのも、久しぶりやな」

 

 今ここにいるのは、たった1人。そう実感した瞬間、体が震える。呼吸も荒くなってくる。怖い。恐い。こわい。いやだ、1人はいやだ。

 

「……我慢や。我慢しやんとあかんのや」

 

 自分に言い聞かせるように、震えを止めるために自分の体を抱きしめる。しかし、そうしたところで何も変化が起こるはずもなく、時計の針が進む音が静かな部屋の中で響き渡るだけだった。

 そして、時計の針が12時を指した時、それは突然起こった。

 

「……えっ?」

 

 戸棚から光が漏れ始める。そしてその光は独りでに動き始め、それが鎖のついた本だとわかったのは自分の前まで浮いてきたときだった。

 

「なんっ……!?」

 

 何が起きているのかを理解する前に、鎖が千切れとんだ。白い粉のような何かが4つ、本から吐き出される。様々な大きさの白い山が作り上げられ、それを囲むようにして光る何かが回り始める。

 何か聞こえる。まるで歌うように聞こえてくるそれがなんの言語なのか、どこから聞こえてきているのかわからなかったが、ただ1つ感じるのは、この音がただただ疎ましいものだということだけだった。いや、疎ましいなんてものじゃない。この声は、この歌は、この音は、この世にあっていいものではない。

 動くことができない。足が動かすことができないこともあるが、それ以上に目の前で起きている現象が理解を超えていて動くという発想に、未知という恐怖から逃げるという発想にたどり着かない。

 

 そして目の前の白い山が人の形を作っていき、そして音が聞こえなくなったころには3人の女と少女、1人の男がはやてに向かってひざまついていた。

 

「夢より我ら夜天の主の元に集いし騎士」

 

「主在る限り我らの魂尽きることなし」

 

「この身に命在る限り我らは御身の元に在り」

 

「我らが主、夜天の王、その大いなる使者の下に」

 

 はやてはなんとなく理解した。これまでの変わらなかった日常は、ここで終わるんだということを。そしてはやては気づかなかった。この出会いが今までのものすべてを壊す(失う)きっかけとなるということに気づかないまま、ただ家族が増えたということをほんの少しだけ理解していた。

 




ア イ デ ア ク リ テ ィ カ ル

ヴォルケンズの口上について

  • もっとひねってくれよぉ
  • まぁこの程度なんじゃない?
  • これはないでしょ…
  • にゃる!しゅたん!にゃる!しゅたん!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

魔法科高校の劣等生〜魔法世界に這い寄りし過負荷〜(作者:味噌漬け)(原作:魔法科高校の劣等生)

球磨川禊…皆さんはご存知だろうか?▼めだかボックスという作品に登場した最低最悪最恐の普通の過負荷である。▼この物語は、とある悪平等な人外によってタイムスリップされた彼が発展した魔法の世界を生きる物語だ。▼※作者はにわかです。それでも良ければどうぞ。▼ 魔法科高校はアニメしか観ていません。そのため、設定など抜けた部分があるかもしれませんので、もしあったらご指摘…


総合評価:4297/評価:8.24/連載:43話/更新日時:2022年06月30日(木) 19:00 小説情報

ぼくの名前はインなんとか(作者:たけのこの里派)(原作:とある魔術の禁書目録)

禁書目録、つまりはインデックスに憑依した者の、自由を勝ち取る物語である。――――――――――だが男だ。▼*注意▼一度完結した作品を原作アニメ三期放送でテンション上がってしまい、もう一度書き直したものです。▼なので修正忘れがあるやもしれませんので、ご注意ください。▼原作20巻でインデックスがに■■フラグが出てしまったので戦々恐々です。


総合評価:18475/評価:8.2/連載:20話/更新日時:2020年04月30日(木) 00:45 小説情報

カルデアに探索者が召喚されました(作者:POTROT)(原作:Fate/)

 魔術によってクトゥルフ神話TRPGのシステムを現実世界でも使えるようになった男は、突然にも邪神ひしめく圧倒的魔境カルデアに召喚されてしまう。▼ これは、窮極のあの神(幼女の姿)とか名状し難き愉快犯(小悪魔の姿)とかに目を付けられたり、謎に水着の邪神ハンターとかやたらとお小遣いをくれる金ピカの愉悦に絡まれたりしつつも、ダイスを振って人理漂白に立ち向かってゆく…


総合評価:11255/評価:8.42/連載:31話/更新日時:2023年06月11日(日) 15:35 小説情報

ようこそペルソナ的人間模様が繰り広げられる教室へ(作者:行天)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

かつて日本を救った怪盗団のリーダーが、己が欲望のためにハッピーエンドの世界から並行世界の過去に飛ばされて、東京都高度育成高等学校に進学してしまったところから物語は始まる。▼注意書き(たくさん)▼※自分が読みたいと思ったから書いたリハビリ二次創作です。▼※P5は一回ちゃんとクリアした程度なので、設定ガバガバです。▼※キャラ崩壊がすごいので熱狂的な原作ファンの方…


総合評価:11607/評価:8.95/連載:41話/更新日時:2023年02月15日(水) 22:30 小説情報

前世の妹が今世の彼氏に告白したらしいんだが(作者:雷神デス)(オリジナル:現代/コメディ)

家族の幸せと引き換えに、自分の幸せを磨り潰した末に死んだ前世の俺。▼新たに女として産まれた第二の生、ハイスぺ彼氏を自らの手で育て上げ、惚れさせることで何の努力もせず楽して生きていける環境を作ったぞ!これで俺は勝ち組人生、やったー!▼ごめん今彼氏に告白してきた子、俺の前世の妹だったわ。ちょっと俺と別れて、あの子と付き合ってくんない?え、ダメ?▼どうしよう▼そん…


総合評価:8223/評価:8.84/連載:23話/更新日時:2026年10月06日(火) 22:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>