3度目の人生は静かに暮らしたい 作:ルーニー
部屋の中の明かりは、ベッドのすぐそばにある電灯のみだった。目を通しても頭の中に入ることのない文字列を眺めていたはやては、深くため息を吐いて本を閉じる。
「……わからん。わからへんよ」
はやての頭の中にあるのは、今朝の信也の状態だった。いつも以上に顔色が悪く、フラフラと歩いていた信也は、ついには倒れてしまった。
『し、しんや!?』
倒れた信也に驚いて病院へ電話をかける。急に倒れたと言って家まで救急車を手配してもらうようにしてもらい、信也の様子を見ていると、苦しそうな表情を浮かべながら口がもごもごと動いていたのが見えた。
いったい何を言っているのか。不安とともに耳を澄ませて聞いたそれは、しかし、倒れた信也の口から洩れていたのは果たしてなんのうわ言だったのか。
『……らなくちゃ、今日算数の宿題があって、A社に営業行く必要があって、就活5回目をやらなくちゃ、いや小学校を確認しなくちゃ、あぁそうだあのバカまた教室にとんでもないものを持ってきてたなさっさと処分しないと、あの古典の先公とんでもないもの持ってきやがって奪うのにどんだけ時間かかるんだ、あの猫どもどこで操られてるんだ、修学旅行水族館行くから楽しみだな、なんでまた小学生からやり直すことになったんだ、あいつがしぬ、またあの邪神の仕業なのか、もうやめてくれ、しにたくない……』
『……しん、や?』
どういうことなのか、どうしてあんなうわ言が漏れていたのかはわからない。どうしてあんな言葉が出てきたのか。どうして小学生のはずなのにあんな言葉が出てきたのか。救急車が来ることにはすでにうわ言もなくなった信也に聞くすべは、もうなくなったのかもしれない。
「……もうすぐ、今日も終わるんやな」
ふと時計を見ると、針はもうすぐ12時を指すぐらいの時間だった。次の日は自分の誕生日だ。いつもならしんやのお父さんとお母さん、しんやが祝ってくれていたが、しんやは入院、しんやのお父さんとお母さんは仕事で帰ってこられるかわからない。
「……1人になるのも、久しぶりやな」
今ここにいるのは、たった1人。そう実感した瞬間、体が震える。呼吸も荒くなってくる。怖い。恐い。こわい。いやだ、1人はいやだ。
「……我慢や。我慢しやんとあかんのや」
自分に言い聞かせるように、震えを止めるために自分の体を抱きしめる。しかし、そうしたところで何も変化が起こるはずもなく、時計の針が進む音が静かな部屋の中で響き渡るだけだった。
そして、時計の針が12時を指した時、それは突然起こった。
「……えっ?」
戸棚から光が漏れ始める。そしてその光は独りでに動き始め、それが鎖のついた本だとわかったのは自分の前まで浮いてきたときだった。
「なんっ……!?」
何が起きているのかを理解する前に、鎖が千切れとんだ。白い粉のような何かが4つ、本から吐き出される。様々な大きさの白い山が作り上げられ、それを囲むようにして光る何かが回り始める。
何か聞こえる。まるで歌うように聞こえてくるそれがなんの言語なのか、どこから聞こえてきているのかわからなかったが、ただ1つ感じるのは、この音がただただ疎ましいものだということだけだった。いや、疎ましいなんてものじゃない。この声は、この歌は、この音は、この世にあっていいものではない。
動くことができない。足が動かすことができないこともあるが、それ以上に目の前で起きている現象が理解を超えていて動くという発想に、未知という恐怖から逃げるという発想にたどり着かない。
そして目の前の白い山が人の形を作っていき、そして音が聞こえなくなったころには3人の女と少女、1人の男がはやてに向かってひざまついていた。
「夢より我ら夜天の主の元に集いし騎士」
「主在る限り我らの魂尽きることなし」
「この身に命在る限り我らは御身の元に在り」
「我らが主、夜天の王、その大いなる使者の下に」
はやてはなんとなく理解した。これまでの変わらなかった日常は、ここで終わるんだということを。そしてはやては気づかなかった。この出会いが今までのものすべてを
ア イ デ ア ク リ テ ィ カ ル
ヴォルケンズの口上について
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もっとひねってくれよぉ
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まぁこの程度なんじゃない?
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これはないでしょ…
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にゃる!しゅたん!にゃる!しゅたん!