停止する世界の中で自らの命を顧みず戦う。

それがヒーロー。

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ワールド・フリーズ

 その日、世界は止まった。

 

 まるで凍り付いたかのように止まった世界の中、俺だけが取り残された。

 

 襲ってくる化け物たち。目の前で食い殺される動かない人々。

 

 そんな状態でよく気を失わなかったなと思うほどだ。

 

 もう俺も無理だ、殺されると思ったその時、凍り付いた世界の中で銀色の戦士が俺を助けてくれた。

 

 その人は目の前の化け物を一瞬で倒すと俺に一枚のカードを渡してくれた。

 

 それは絵が灰色に染まっているカードだったけどその人はこう言った。

 

『それは君が真の勇気を手に入れた時に発揮する魔法だよ』

 

 

 

 

 

 

「くぁぁ~……眠い」

 現在の時刻はPM0:00、俺――榊・槐(えんじゅ)は美術の授業をサボったという行いに対しての罰という事で学校の屋上から見える景色を絵に描けと言われているんだがなんせ、俺に絵の才能は全くないのでビルがいくつも宙に浮いていたり、木がビル並みの大きさになっていたりとすさまじい前衛美術になっている。

 ただ、俺の絵には一人の人間も姿が存在しない。

 その理由は十年前に起きたあの事件が理由となっている。

 ワールド・フリーズ―――後にそう呼ばれるようになったあの未曾有の大災害が発生し、地球の人口は七十億あった物が一週間で三十五億人にまで半減してしまった。

 ワールド・フリーズとはその名の通り、世界が凍ってしまう。凍るといっても本当に凍るんじゃなくてまるで凍ったかのように世界が停まるからワールド・フリーズ。

 その間は人間は一切動けないし、意識がない。だから記憶も存在しない。

 なのになんでワールド・フリーズということが今常識となっているかといえば世界が停まっている間に世界が破壊されているからだ。

 目の前にいた人がいない、ビルが崩壊している、道路に穴が開いているなどの現象が起きている。

 十年前、俺はその時に死ぬはずだった。

 でも俺はあの時、銀色の鎧を纏っている人に助けてもらった。一枚のカードを託されて。

 結局、このカードがいったい何なのか、なんで俺はあの時これをあの人に託されたのか全く分からない。

 ただ言えることはこのカードを持っている時にワールド・フリーズに遭遇した時、俺は意識がハッキリと保てるようになった。

 最初の一週間は金縛りにあったみたいに動けなかったけど今じゃ普段通りに動くことさえ可能だ。

 

「本当になんなんだ……このカード」

 絵は灰色になっていてよく見えないし、電子マネーが使えるようなものでもないし……でも捨てることが出来ていないんだよな。

 またあの銀色の戦士に出会えるかと思ったら捨てきれないというか。

「はぁ……止まった?」

 ため息をついた瞬間、さっきまで吹いていた風が突然止んだので慌てて下の方を見てみるとさっきまでサッカー部が試合をやっていたというのにまったく部員が動いていない。

 わ、ワールド・フリーズだ。世界が停まったんだ……っていうことはあいつらが

 

 

 

 ――――コアァァ!

 

 

 

 そんな野太い叫びが聞こえたかと思えば上空を巨大な翼竜が通過し、高いビルに止まり、周囲に火球を放ちながら無差別に破壊していく。

 ヤ、ヤバイ……俺もどうにかして避難しないと。

 慌てて屋上から階段を使って降りて学校の外へと出て怪物から遠ざかる方向へ走り始めるがさっきから空から火球が降り注いできて地面に着弾していく。

 

「うわぁ! し、死ぬ! 絶対に死ぬ!」

 周囲で爆発が起きる中、どうにかして逃げ続けるがある時を境にして火球が上から降ってこなくなった。

 な、なんだ? あいつも気が済んで帰ったのか?

 そう思って物陰からコソッと顔を出してみるとまだあの怪物はいることはいるけどまるで空中にいる何かを追っているかのように顔を左右に揺らしている。

 直後、化け物の体で連続した小さな爆発が起きたかと思えば化け物が口から火球を放つと何かにあたったのか空中で火球が爆発を起こす。

 

「なんなんだ……あいつ一体何を……とりあえず逃げるが勝ちだ!」

 その場から逃げ出そうとしたその時、背後で何かが地面に叩き付けられたような音が聞こえ、慌てて振り返ってみるとそこには黒い鎧を身に纏っている人らしきものが地面に横たわっていた。

 ……似てる……俺を助けてくれたあの銀色の戦士に……。

 黒い鎧を着た奴が一瞬、光ったかと思えば鎧が消え去り、黒髪の女の子の姿に戻った。

 

「なんでよ……なんであいつごと気に勝てないのよ!」

 女の子は悔しそうに叫びながら地面を殴りつける。

 そうこうしている間に化け物が女の子に向かって向かってくるのが見え、慌てて逃げ出そうとするが女の子のことがどうしても気になる。

 今ここで俺が逃げれば俺は助かる……でもあの子は確実にあの化け物に殺される……俺は……。

 

 

 

『それは君が真の勇気を手に入れた時に発揮する魔法だよ』

 

 

 

 

 

「ちょ!? なんであんた」

「良いから! 掴まってろ!」

 

 女の子を担ぎ、その場から逃げ出す。

 なんで俺こんな顔も知らないような赤の他人助けてんだよ……このままじゃ明らかにあの化け物に追いつかれて俺も女の子も殺されるかもしれないっていうのに。

 女の子を抱えながら走っていると頭上を大きな影が通り過ぎ、慌てて見上げると巨大な化け物が上空で方向転換し、まっすぐこっちに向かってくる。

 女の子と一緒にその場に伏せた直後、凄まじい風圧がのしかかってくる。

 その時、何が地面に落ちた音が聞こえ、ふとそれを見てみるとスマホのような四角形のデバイスにカードを通すような切れ込みが入っている機械が落ちていた。

 その時、ピーンと来た。

 ――――もしかしたらこれを使えば助かるかもしれないと。

 

「ちょっとあんた! 何する気!?」

「分からない……でもやるしかないんだ」

 

 ヒーローに貰ったカードをポケットから出してみると今まで絵が全く見えない灰色がかったものだったのにいつの間にか色がついており、銀色の鎧が描かれている。

 ……そういうことか。使ってみる。

 

「あ、あんたなんでそのカードを」

「貰った……行くぜ」

『ARMOR・ACTIVE』

 

 切れ込みにカードを滑らせた瞬間、デバイスからそんな音声が聞こえてきたかと思えば周囲に光の粒子がどこからともなく出現し、俺の肌に張り付くと光の粒子が銀色の鎧へと変化し、それが全身に付着するとまるで仮面をかぶっているかのような視界になり、目の前に様々な数値やカーソルが出てくる。

 

「嘘……一般人が」

「おぉぉぉ! こ、これって」

 

 その時、アラームがけたたましく鳴り響いたかと思えば視界に上方向のカーソルが表示されており、顔を上げてみるとこっちに向かって怪物が向ってきている。

 

「やり方わかんねえけどやってやるぅおぉぉ!?」

 直後、まるで誰かに背中を強く押されているかのような勢いが発生し、怪物に向かって飛んでく。

「ど、どうなってんだよこれ! こ、この野郎!」

 どうにかして体勢を保ちながら近づいてくる相手の顔面めがけて拳を突き出した瞬間、相手にめり込むとともに真っ赤な血が噴き出す。

 怪物が悲痛な叫びをあげながら翼を羽ばたかせて上空へと飛翔する。

 

「い、行ける! いけるぞぉぉぉぉぉ!」

 叫びながら怪物を追いかけるように俺も上空へと飛んでいき、怪物の尻尾を掴むと体をよじ登り、頭頂部を何度も殴りつける。

「この! この! 落ちろ!」

 拳を叩きつけたり、ひじ打ちをしたりするが怪物は全く動じず、右往左往に体を曲げる。

「ぎぃぃぃぃ! 引っ張られるぅぅぅぅぅ!」

 

 直後、掴んでいた手が離れ、空中に放り出されたかと思えば相手がその場で回転し、鞭の様に放たれた尻尾が俺の脇腹に直撃してそのまますさまじい勢いで地面に叩き付けられた。

 …………い、痛くない? あんな速度であんな高さから落ちたのに。

 

『破損率三パーセント。WEAPON使用を推奨します』

「は、はい? なんだよ……分かんねえっとぉ?」

 突然、腰の辺りにある鎧の部分が開いたかと思えばそこから一枚のカードが射出され、慌てて受け取ると鋭い爪のようなものが書かれている。

 こ、これを使えっていうのか……よ、よーし。えっとこれか。

 腕に装備されていたさっきのデバイスにカードをスキャンした瞬間。

 

『Claw ACTIVE』

 そんな音声が響いたかと思えば俺の両腕に光の粒子が集まっていき、それが伸びると粒子がはじけ飛び、両腕に鋭い爪が装備された。

 

「おぉぉぉ! カッコいい! って言ってる場合じゃない! 行くぜ!」

 こちらへ向かってくる怪物めがけて飛んでいき、相手の口から放たれてくる小さな火球を避け、すれ違いざまに鋭い爪で相手を切り裂くと赤い血が飛び散る。

 それを何度も繰り返す。

「であぁぁぁ!」

 爪を相手の翼に突き刺し、無理やり下へと引き下ろすと翼が引き裂かれる音がするとともに怪物の悲痛な叫びが木霊し、怪物は回転しながら道路に向かって落ちていき、地面に大きな穴をあけて落ちた。

 

「ど、どうすりゃ止めを刺せるんだ」

『FINAL・BLAST』

 そんな音声が響いたかと思えば鎧の腕の部分に向かってどこかからか光が通っていき、クロー全体が赤く輝きだす。

 こ、これで良いのか……よし、行くぜ! 止めだ!

 一歩大きく踏み出した瞬間、背中を強く押し出されるような衝撃が発生し、地面を滑るようにして怪物めがけて速度を上げていきながら近づいていく。

 お前らなんかに……お前らなんかにこの世界は壊させねえ!

 

「だぁぁぁぁ!」

 軽く跳躍し、降下の勢いのままクローを交差して相手を切り裂いた瞬間、怪物の体に赤い切れ込みが入るとともに悲痛な叫びが木霊し、怪物が大爆発を上げて消滅した。

『Refoam』

 そんな音声とともに鎧が光の粒子となって消滅し、元の姿に戻った。

 これが……俺の力。

 

「ちょっとあんた! なんで一般人のあんたが使える訳!?」

「し、知らねえよ」

「はぁ? とにかく来てもらうわよ」

 そう言われると同時にガチャンと言う音が手首の方で聞こえるとともに冷たい感触がし、手首の方を見てみると真黒な手錠がされていた。

「………えー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――これは君が真の勇気を手に入れた時に発動する魔法だよ。


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