なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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幕間・出張!エメラルドスイーツ!

 

 

 

幕間・出張!エメラルドスイーツ!

 

 

 

Side~八神はやて

 

 

 

人が来ないようにした状態で、私はシャーリーと向かい合っていた。

 

「んー…なのはちゃんから聞いとった分の過去を話したんはともかく…正体不明のムービー再生はさすがに不用意すぎるな。」

「はい…本当にすみませんでした…」

 

さすがのシャーリーも今回は落ち込んでいる。

保存容量にまで気が付いてウイルスならと対応しようとしてくれたのは優秀な部分含めて嬉しいけど、ムービーだったからってそのまま再生せんでもええやろ…

 

「けど、なんかペナルティつけるにしてもなぁ…このムービー、本来無い事になっとる奴やから、まさか『正体不明のムービー再生しました』何て書類作るわけにもいかんし。」

 

ま、詰まる所部隊としてはどうしようもないな。

 

「今度からは本当気をつけてな?」

「は、はい!」

 

背筋を伸ばして敬礼するシャーリー。

私はそんなシャーリーを前に、前屈みで頬杖をつくといった思いっきり姿勢を崩した状態を取る。

 

「ところで、ちょっと友達と一緒に食べたいスイーツがあるんやけど…奢ってくれんかなぁ?」

「………是非奢らせていただきます。」

 

要は命令とか脅迫でなければいい訳で、『お願い』聞いて貰うくらいはええやろ。

 

…腹黒狸って思わんように。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

処刑事件の翌日午後、雨降って地固まると言った状況で皆のテンションが高くなっていたと言うのに、前線メンバーはなぜだか広めの一室に集められた。

しかもはやてが堂々と鎮座している。大丈夫なのか機動六課?

 

「訓練予定もあったとは思うけど、折角シャーリーが奢ってくれる言うからここは皆堪能していって貰おうと思って集まったんや。悪いけどつきおうてな。」

 

はやての一言と集まったメンバーで、アッサリ疑問は氷解した。

あぁ…隠してるものを部隊の失態として処理できないからこんな形になったのか。

道理でシャマル先生とかリインまでいると思った。

 

しかし…よくフレアまでいるな。

 

『参加自由やとフォワードの皆い辛いやろ?速人君の事知っとるメンバーは強制や。』

『成程ね…』

 

視線を移した俺に気づいたのか、念話で事情を教えてくれるはやて。

 

ついでと言っては何だが、こういうの趣味じゃないあいつにとってはいい罰にもなる。

問題発言したばっかだしな、真意はともかく。

 

さて…結構財布に痛い目見せられてるだろうし、逆に言うとそれだけ豪華な物だろう。

稼ぎ頭が見た目中学生のアリシアという余裕があっても贅沢するのが情けなくなる状況ではろくな事もできて無いし、多少いいものなら見ておいて損は…

 

 

 

「エメラルドスイーツです、ご注文の品お届けにまいりました。」

「っておいっ!!!」

 

 

 

思わず立ち上がってしまった。

 

何も知らない皆は不思議そうに俺を見ている。

けど、ホイホイ管理局来ていい筈が…

 

「迎えにはザフィーラについてって貰たし、そんな心配せんでもええよ。」

「すみません主…あ、並べてしまってよろしいでしょうか?」

「ええよ。」

 

俺が唖然とする中、はやてとフレイアが短いやり取りを交わすと…

 

 

後から、全身をローブに包んだ子供サイズの誰かがぞろぞろと長方形の箱を両手に持って入ってきた。

 

 

何の儀式だー!!

 

 

身を隠すのに何かあったら解ける変身魔法ではなく、窮屈に着込めば着たままでも活動可能なローブにしてるのは俺の提案だが、今それをやられるとさすがに不自然極まりなかった。

 

しかも…四人いる。

 

「それ脱いでええよ、元々そのつもりもあった訳やし。」

「そうですか、では失礼します。」

 

はやての指示の元、一斉にローブを脱ぎだす四人。中にはおなじみ宵の騎士三人と、アリシアが…

 

ディアーチェを除き、メイド服姿で居た。

もうだめだ、何から突っ込んだらいいか分からん。

 

と、そんな時…

 

「ど、どういう…事なんですか?」

 

エリオが、何かを恐れるような表情で立ち上がっていた。

…あ、そう言えばエリオの出生ってフェイトと同じなんだっけか。

幼いとは言え色以外なのは、フェイト、はやてそっくりの三人に加えて、スタイル以外フェイト似のアリシアまでいるんだ。

万が一同じならと考えたら穏やかじゃないだろう。

 

「皆については話すから、とりあえず落ち着いてなエリオ。」

「あ…す、すみません…」

 

いくら落ち着かなかろうと、部隊長にたしなめられては大人しくならざるを得ないのだろう。不安げな表情のまま座りなおすエリオ。

 

「話の前にケーキ分けとこか。お茶片手に軽く進めてこ。あ、皆も適当に座ってくれてええよ。ケーキも多めに頼んだしな。」

「そ、そうですね…」

 

明るいはやての横で苦笑するシャーリーさん。

…確かに、人数分近い数のホールケーキなんて多め以外の何者でもない。

ただ、前線メンバーや家の宵の騎士の三人は魔力の生成にも栄養が必要だし、その気になればと言うか、誰かが飽きて放り出した時はレヴィ辺りが全部食いだすだろう。

腐らせる事は無いわけだしいいか。買わされたシャーリーさんにはご愁傷様と言っとこう。

 

『何もかもは話さないよな?』

『闇の書に関してはレアスキルで出せる情報限られとるからな。触らん程度にや。』

 

全部話すと必然的にはやての情報まで漏れる事になるのだが、さすがにそれは分かっているらしい。

はやては、かいつまんだ簡単な説明を始めた。

 

アリシアについてはフェイトの姉で、俺に助けられて以来一緒に居るとだけ説明。

宵の騎士については、なのは達を模して生み出され敵対していたが、リライヴの助けを借りて救った事と、出生と能力の高さから局の内外問わずに狙われる可能性があって危険な事を説明した。

 

「だって言うのに、お前等よくもまぁ管理局にホイホイ来れたもんだな…」

 

若干呆れていたのだが、ディアーチェがこれでもかと言うほど不満げに俺を見てくる。

…あれ?俺何かした?

 

「貴様が一度も様子見にも帰ってこないからだろうが。」

「ほうらよ、ひゅへるはへあっへるひ。」

「レヴィ、飲み込んでから喋りなさい。と言うより喋るのが困難になるような量口に入れないでください。」

 

どうやら帰ってこなかったのが不満らしい。

そんなに長い事留守にした訳でも無いし、肝心のリライヴがいつ出てくるか分からないって理由でここにいるのに簡単に帰れないんだが…

 

「まぁ速人が簡単に帰れないのは分かってるよ。だ・か・ら、折角部隊長様じきじきに呼んでくれた訳だし堂々と顔見に来ようと思って。」

「それに主は時間があったとして気遣って顔を出してくれるか疑問ですし。」

 

アリシアはともかく、随分酷い言い様だなフレイア。

兄さんじゃあるまいし。

 

「えっと…シュテルちゃん…でいいかな?」

「呼び捨てでも構いませんが…見た目通りの年齢では無いので子供扱いは少し困ります。」

 

スバルがシュテルに声をかける。

もう説明自体は終わったし、こうなった以上仲良く越した事は無い。

皆もそのつもりなのか誰も止めず…

 

 

 

「じゃあ…シュテル。なのはさんの身体ってどんな感じ?」

「っんぐ!!!!」

 

 

 

切り出されたのは、ある意味とんでもない質問だった。

口にしていたケーキを盛大に噴出しかけたなのははプライドかそれを無理して堪えるが、今度は息を詰まらせたらしい。

 

多少熱いだろう紅茶を煽るなのは。そんななのはの背中をフェイトがさすっていた。

 

「だ、大丈夫なのは!?」

「ぇほっ…けほっ…ご、ごめんフェイトちゃん…なんとか…」

「テメェなんて事聞いてやがる!!」

「やるなスバル。フォワードで初めてなのはをここまで苦しめたぞ。」

「え?え?」

 

なのはの反応やヴィータの怒声の意味が分からないのか困惑しているスバル。

と、シュテルは至極真面目な顔のまま…

 

「残念ですがマスターの妹に当たる容姿だからか経験はありません。他の男性と交わるつもりは特に」

「オメーも真面目に答えてんじゃねー!!!」

 

答え始めたシュテルが言い切る前にヴィータが思いっきり叫んだ。

無理も無い。

 

そして、シュテルにそこまで言われて自分の質問がとんでもない意図で解釈されていると悟ったスバルは、これ以上ない程赤面して手と首をブンブンと振り出した。

 

「ちち、違うんです!すみません!そんなつもりじゃなくて!!」

「運動能力ですか?低いですね、残念なほどに。」

「な、何を次から次へととんでもない話をしてるの!!」

 

これ以上下手な事を暴露される前にとなのはが慌ててシュテルを止める。

素直に質問に答えている体を取っているが、大方スバルの聞きたい事を大体察した上で遊んでいるんだろう。

 

しかし…誤解させてからかう事はあっても直接的な嘘はあまり言わないシュテルだが…

 

残念とか言ってたのマジなのだろうか?

だとするとアリシアだけ警戒していればいいと言うものでもなくなってくるんだが…ああ家が恐い。

 

と、落ち着いたところでスバルが質問を詳しく切り出した。

 

「なのはさんって凄い強いけど、戦闘スタイルとかも一緒なんでしょ?使ってて…って言うと変だけど、どんな感じなのかな…って。」

「そう言う事ですか。」

 

今理解したように呟くシュテル。

同時に、まわりも変な意図がなかったことがわかって落ち着いたようだ。

 

「素晴らしい魔力と技法だと思いますよ。運動能力が壊滅的に低いので近接戦闘に難がありますが、視力や体力が低いと言う訳でも無いので私としては重宝しています。」

「悪かったね…運動できなくて…」

 

連続で言われてかなのはが軽く拗ねる。

そんななのはを他所に、スバルの問いかけは続く。

 

「違和感とかないの?」

「なのはのコピーを作って乗り移ったわけではなく、これは『私』の身体ですから。」

「あ…ごめん…」

 

失礼な質問だったと思ったのか謝るスバル。

だが、別にシュテルは表情を変えない。

 

「貴女方は同じ管理局員ですが、違う思いを持った違う人物です。私は私ですが、私がなのはのコピーであるのも事実ですから間違いではありません。その程度の事ですから気にする必要はありませんよ。」

 

当たり前のように告げるシュテル。

だが、それに表情を変える二人がいた。

 

フェイトとエリオ。

 

クローンとして生まれて自分が何なのかと思っていたであろう二人は、アッサリ言ってのけたシュテルに感心したようだった。

 

だが…腕を組んで凄まじく偉そうにしたディアーチェによって、すべて台無しになった。

 

 

「ただ元になっただけの話だ。我を見れば分かるだろう?この王たる気質溢れる我とそこの小烏では比較にならぬ程の差がある事くらい。」

 

 

物凄く偉そうに喋るディアーチェだが、皆から返って来たのは沈黙だけだった。

と言うか、シュテルの割り切ったいい感じがあっという間に台無しになったようで普段より温度差が酷い。

 

 

雰囲気ぶち壊しだな。らしいと言えばらしいので俺はいいんだが、皆冷めてるなぁ。

 

 

レヴィが何かどうでもよさそうにひらひらと手を振る。

 

「気にしなくていいよ、いつもの王様病だから。」

「何だと貴様!ええい塵芥共が!黙ってないで何とか言え!!」

「こらこら。お前のそれに耐性あるのは身内だけだから気をつけろって言ったろ?」

「貴様もか!我を病人みたいにたしなめるな!!」

 

慣れてる俺達以外の反応は冷めたもので、一人空回りするディアーチェ。

何と言うか、少し可哀想にすらなってくるなぁ…

 

「あの…王ってどういう事なんですか?」

「出番だぞ解説。」

 

おずおずと質問を切り出したキャロだったが、ディアーチェはシュテルを一瞥してそう告げるとそれきり何も言わなかった。

 

「属性や在り方…といった所でしょうか。なのはが不屈と呼ばれるのと似たような物です。私は『理』で…」

「ボクは『力』だ!」

「それでディアーチェさんが『王』何ですね。」

 

シュテルの説明に続いて名乗るレヴィ。

そこまで話した所で分かったらしいキャロから、確認の意を込めて放たれた質問にシュテルは小さく頷く。

 

「自由度高すぎる駄々甘の主さんが止めないからこんな状態のままなんだけどね。」

「まぁそう言うなって。」

 

なのはが俺のせいだと視線をくれるが、俺は軽く流した。

実際ディアーチェは、細剣の扱いとか乗馬とか踊りとか笛とか、貴族の嗜み的な事の修得には真面目に取り組んでいる。

一般に受けが悪いから禁止…なんて、それこそ暴君だろう。

 

「さてと、仕事もあるしこれくらいでお開きにしとこか。」

「えー、私とフレイア質問なかったんだけど。」

 

急に切られたアリシアが拗ねるが、本来こんな事してる時間じゃない。

大体ケーキも食べ終えてるしいい加減お開きにしてもいいだろう。

 

「はは。帰りにザフィーラに送って貰えばこの部屋と速人君は暫く使ってくれてええから勘弁してな。」

「俺も使われるのな、マスターなのに。」

 

軽く肩を竦めると、皆から笑いが零れた。

 

 

 

Side~リインフォース=ツヴァイ

 

 

 

「お姉ちゃん達を呼んだのは、どうしてですか?」

 

戻る途中、はやてちゃんにそう聞いてみる。

はやてちゃんは軽く肩を竦めた後、少し寂しげに笑う。

 

「戦力強化狙い…やと思った?」

「そんな事は…ただ、流れだけで呼ぶには少し無理がある気がしたです。」

「リインは優秀やなぁ。」

 

褒められたんだけど、私は理由を話して欲しかった。

分かっているのか、はやてちゃんは説明を始めてくれた。

 

「あの子等を管理局に従わせるなんてのは不可能やし、そこまで露骨な事や無いけど…あの子達は強い、それも飛びっきりに。そして、速人君の方針を受け入れておる以上、局だけの問題ならともかく町に被害でも出そうになれば間違いなく動く。」

 

それは何となく私も分かった。

きっと純粋な意味で誰かを助けたいと思うほどに優しくは無いけど、速人さんの事は認めている。

 

「そんな時にフォワードの皆とばったり会って、押し問答繰り返されたらたまらんからな。速人君の事知れたならついでに入るし、知らんまま敵対する位なら教えとこ思うて。」

「成程…」

 

ちょっと不思議に思った程度の私と違って、はやてちゃんは色々と考えていたみたい。

 

「それに…逆もある。彼女達が狙われる可能性も否定できん以上、それがもし管理局の決定で無いのなら知り合いが多いほうが助けやすい。二度も……死なせはせん。」

「はやてちゃん…」

「これだけ暗躍しとると胡散臭い事極まりないけどな。いつかバチ当たるかもしれんな。」

 

はやてちゃんはそう言って笑う。

 

関係ないくらいの時から重ねられた闇の書の罪を全部背負うと決めているはやてちゃんは、時々こんな悲しそうな笑みを漏らす。

だから、私も頑張らないといけない。

祝福の風の名を受け継いだリインフォースとして、力と繋がりを失ってしまったお姉ちゃんの変わりに。

何より…八神家の一人として、はやてちゃんの幸せを願っている身として…

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

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