なのは+『風纏う英雄』   作:黒影翼

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第二十話・それが夢想だと知りながら

 

 

第二十話・それが夢想だと知りながら

 

 

 

Side~高町なのは

 

 

 

私は必死でどうにか速人お兄ちゃんとリライヴちゃんを助けられないか考えていた。

 

はやてちゃんが助かって、守護騎士の皆も戻ってこれた。フェイトちゃんも脱出したから同じタイミングで出て来たと思ったのに…二人はよりにもよって闇の書本体の中にいる。

 

このままじゃ闇の書の本体がとめられない。

 

 

だけど…

 

 

「…防衛プログラムの暴走限界が近付いたら、速人ごとでも星ごとでもアルカンシェルを撃つ。」

 

 

クロノ君の声に思考を止められた。

 

お兄ちゃんごと…撃つ?

 

 

「そんな!!」

 

思わずクロノ君の肩を掴むと、クロノ君は私の手を取って首を横に振った。

 

「放って置けば地球が滅ぶ、それは避けなければならないだろう?」

「でも!!」

 

 

静かに告げるクロノ君。

わかるけど…嫌だった。速人お兄ちゃんが死んじゃうなんて。

と、静かに私の手を握る人がいた。

 

「フェイトちゃん…」

「まだ諦めるわけじゃない、そうだよねクロノ。」

「ああ。」

 

フェイトちゃんの言葉に頷くクロノ君。見ればその手が不自然な位硬く握られていた。

…そうだ、フェイトちゃんの裁判とかとっても頑張ってくれたクロノ君が、そんなの認めたいわけがない。

 

だけど、そういう状況だって覚悟が必要だから言ってくれただけなんだ。

 

「なのはは私を、速人は母さんとアリシアを救ってくれた。今度は私の番。必ず助けよう。」

「フェイトちゃん…っ!!」

 

感激してフェイトちゃんに抱き付いてしまう。

 

必ず助ける…助けてみせる。

私一人じゃないんだからきっと出来るはず。

 

改めて覚悟を決めると、エイミィさんからの通信が入った。

 

「イチャイチャしてるとこ悪いけどあんまり時間は無いよなのはちゃん!何とか策を考えてね!!」

「あ、はい!!」

 

イチャイチャしてるとか言われて少し恥ずかしかったけど、時間が無いからすぐに頭を切り換える。

 

「アレ?何これノイズ?」

「どうしたエイミィ?」

「わかんないけど…なんかちょっとまずいかも。そっちで何か見えない?」

 

闇の書の闇を見ると、その前に三つの魔法陣が展開していた。

 

 

 

浮かび上がった魔法陣から姿を現したのは、私とフェイトちゃんとはやてちゃん…と似た、違う女の子達だった。

私とフェイトちゃんのバリアジャケットがまったく同じデザインなんだけど、色が違う。

 

 

何より眼が、凍りつくように冷たかった。

 

「あれは…」

「彼女達はおそらく、闇の守護騎士プログラム。」

「はぁ!?残骸にんなもん積んでる訳ねーだろ!!」

 

リインフォースさんの説明を切り捨てるヴィータちゃん。

でもこうして彼女達が現れた訳を一番知ってる筈なのははやてちゃんとリインフォースさん以外にいない。

 

「残骸だからだ。防衛プログラムだからな、守護の機能を真似たのだろう。自身の中に組み込んだ者を元に守護騎士とする。」

 

だからきっと正しいんだろう。

私は彼女達と本体を見比べる。

 

「それよりどうする?ノンビリと相手をしている暇は」

「私とクロノ執務官で本体の外装を破る。そうすれば彼らも出てこれるだろう。」

 

私と同じ事を考えてたシグナムさんの言葉をとめるフレアさん。

ヴィータちゃんが鋭い目つきでフレアさんを睨む。

 

「テメーら二人じゃ四層の複合障壁なんて破れるわけねーだろ。」

「黙れ罪人。障壁を破るのは私だけで十分だ。硬く薄いものを破るのは得意分野なのでな。特に障壁は穴があく事も無く抜いた場所から砕け散る。」

 

とりあえず二人が出られれば他の対処もあるはず。だったら…

 

「あの娘は私が引き受けます。ひきつけるのは一人で大丈夫ですから、二人を早く助けてあげてください。」

「それじゃあ私はあの娘かな。」

 

私に続くようにしてフェイトちゃんも自分と同じ姿をした娘を見る。

 

「うーん…なら私はあの娘…って言いたいけど、戦闘やと完全に足手まといやしなぁ…」

 

悔しそうにするはやてちゃんだけど、コレばかりはしょうがない。何にもしてない状態で混ざってもきっと危ない。

 

「広域型に他のメンバーを巻き込ませないのは至難の業だ、守護騎士全員で当たってくれ。フレアなら障壁は破れるし、僕も切り札を受け取ってる。使い魔二人も一緒ならば本体相手でもそう遅れを取らないさ。」

「使い魔って言うな!」

「にゃはは…」

 

方針は決まった。

動かない私達を警戒したまま同じく動かなかった三人にそれぞれ飛んでいく私とフェイトちゃんと守護騎士の皆さん。

 

シューターを撃って離れると、意外にも素直についてきてくれた。

 

 

 

 

本体から少し離れて向かい合う。

 

 

「それにしても…自分の偽者なんてやりにくいね。」

 

誰にでもなく呟いたつもりだったんだけど…

 

「間違いとはいえませんが、少々心外ですね。貴女も『私のオリジナル』呼ばれて見ますか?」

 

目の前の私の姿をした女の子が淡々と答えた。

気持ちなんてまるで見えない声だったけど、話自体は偽者の否定だった。

 

「…そうだね、ごめん。」

「とはいえ、元より名前など無い身ですからかまいません。それよりも始めましょうか。」

 

鏡あわせみたいに構えあう私達。

 

 

「我が銘は星光の殲滅者、始めましょう。私の魔導と貴女の魔導、どちらが上か…」

「全力全開…手加減なしで!!」

 

お互いにデバイスを構えて向かい合い…

 

「ディバインバスター!!」

「ブラストファイヤー!!」

 

砲撃魔法をぶつけあった。

 

 

 

Side~フェイト=テスタロッサ

 

 

 

「よーし!最初はキミだな!!」

 

自分の姿をした青い少女。

何と言うか、物凄く元気だ。

 

「でも何でさっきかかってこなかったの?」

 

話してる時間が長かったから襲いかかられるかと思ったけど、特にそんな様子もなかったので聞いてみる。

すると、彼女は私を真っ直ぐ見て言い切った。

 

 

 

「それじゃかっこよくないじゃないか!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思わず頭が真っ白になってしまった。

この娘本当にあの闇の書の闇の防衛プログラムなのだろうか?

 

「ボクは強いんだぞ!とってもとーっても!!名乗りもしないで余所向いてる奴に攻撃するなんてセコい事する訳ないじゃないか!!」

 

なんだか…悪い娘に見えない。

けど自分の姿はやめて欲しい。正直恥ずかしい。

 

「我が銘は雷神の襲撃者!さぁ!我が太刀を恐れぬのなら正々堂々かかってこーい!!」

 

言いつつ彼女は通常形態のバルディッシュ…に良く似たデバイスを振り上げる。

 

「あの…その形態だと斧だと思うんだけど…」

「いいの!太刀の方がかっこいいだろ!!さぁキミも名乗れ!!」

 

自分と同じ姿で言ってる事が恥ずかしかったり、全然悪い娘に見えないのに闇の書の闇の防衛プログラムだったり、いろいろ複雑な気持ちだけど…

 

 

「時空管理局嘱託魔導師、フェイト=テスタロッサとバルディッシュ・アサルト。行きます!!」

 

 

姉さんとの約束があるから、負ける訳にはいかない。

 

私は空を駆けて彼女と斬り結んだ。

 

 

 

Side~ヴィータ

 

 

 

「あたしらはこいつか。」

「分を弁えよ塵芥が。闇統べる王たる我に貴様ごときが許可もなく口を開くな。」

 

はやての姿をしたそいつは、何ていうかかなりムカつく奴だった。

…あの傍迷惑な暴走体の作った連中だ、潰しちまってもいいよな。

 

「偉そうな事言ってんじゃねーよ出来損ないの暴走体が。そんなに闇が好きなら闇に帰りやがれ。」

「口を開くなと言ったぞ塵芥!!王たる我に言葉を紡ぐのが許されるのは貴様等の主である小鴉のみと知れ。」

 

そう言ってリィンフォースに抱えられたはやてを指す偽はやて。

こいつ好き放題言いやがって…

 

「さて…小鴉よ。貴様ら纏めて我に下る気はないか?雑兵よりは使える貴様らならばそれなりの待遇を考えてやってもいいが?」

 

 

思いっきり両手を広げて嫌味な笑みを浮かべてはやてを見る偽はやて。

どんな返事をするのかと思っていたら…

 

 

 

 

 

 

「世界の半分を…ってか?引っ込め塵芥。」

 

 

はやてはアイツの真似をした。

大物ぶってた偽者が思いっきり表情を歪める。

 

「その決定権があるんはお前やなくてあっちやろ、待遇も何もないわ。」

 

はやては言いつつ未だに障壁の中にいる闇の書の暴走体を指差す。

…そりゃそうか。はやての姿で王とか言うから思わず納得しかけたけど、こいつあたしらの…守護騎士のパクリなんだっけ。

だったら主のはやてとの交渉権なんてハナからねぇな。

 

「皆、任せてええか?」

「はやてのフリしてるだけで重罪だ、キッチリ潰しとくから任せてはやて。」

 

はやてに答えを返すと、強大な魔力を感じる。

 

「おのれ…ほざいたな小鴉!!」

「その小鴉の偽者の癖に威張るのは少し自信過剰過ぎや。」

 

それを最後にリインフォースははやてと共に離れる。

後に残ったのは偽者だけ。

 

「…あくまで抵抗するか塵芥。いいだろう!王の力の前に絶望しながら散るがいい!!」

 

未だに王だなんだと叫ぶ偽者。

守護騎士システムの残骸から生まれたくせにとことん偉そうだなこの馬鹿。

 

「それ以上はやての顔で喋るんじゃねーよデッドコピーが。」

「言っても聞くまい。叩き斬った方が早い。」

「そうね、引き付ける必要も無いわ。」

「これ以上主を汚す前に葬るとしよう。」

 

以心伝心って言うのか、これ以上ないくらいに心がまとまった瞬間だった。

 

 

これ以上このはやてのデッドコピーを見ていたくない。

 

 

「こ…のっ!消し飛べぇっ!!」

 

流石にキレたのか、偽者は砲撃を放ってきた。

さっさと倒すか。こんな奴百害あって一理なしだ。

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

「いや、欲張るもんじゃないなまったく。ははははは!」

 

真っ暗な空間を一通り見渡した後、とりあえず笑ってみた。

リライヴの姿だけは見えるし地面の感覚もあるなんか妙な空間だ。

まぁ無かった所で魔法は使えるみたいだから問題は無いが。

 

「笑い事じゃない!!何が『内部から完全に破壊した方がよくないか』だ!!確かに元を断てば外部への影響も全部収まるけど、そうそう何度も上手くいくはずないでしょ!!」

 

と、リライヴに説教される。

結構涼しい顔してる事が多いコイツがよく怒るもんだ。

 

「ハァ…とにかく脱出しよう。大体破壊するなら管理局の戦艦の砲撃の方がいいよ。艦首砲のほうがさすがに一介の魔導師より攻撃力あると思うし。」

「艦首砲って…そんなもん地上に撃つ気か?」

 

だとしたらシャレにならない。現代兵器じゃあるまいし、少なくともここら一帯の地形が変わるだろう。

と、考え込んでいるとリライヴから溜息が聞こえてきた。

 

「そんなの宇宙で撃てばいいでしょ?広い上に生命の無い宇宙なら何の問題も無い。」

「へ?いや宇宙でって…転移魔法?暴走体ってそんなもん素直に通じる相手なのか?」

 

そんなにホイホイ上手くいくなら戦闘中に使う魔法ってむしろ転移魔法のほうがはやりそうな気がするが…

敵の転移なんて自由に出来るもんなのか?

 

「確かに無条件で簡単に出来るわけじゃないし、転移って言っても移動時間はあるし、開始、終了時の間が大きいから戦闘中に安易に使えるものじゃない。けど魔力ダメージ与えたりして昏倒させたり、そもそもまともな意思の無いもの相手なら普通に使えるよ。」

 

合点がいった。それなら確かに宇宙で破壊するのが理想的だ。

って事は、俺達がここにいたら撃てないか…クロノたちが『断腸の思い』で決断して打ち抜いてくれて家族を泣かすかの二択になる訳か。

さっさと脱出しないとまずいなこれは。

 

「外の状況って分かるか?」

「まぁ一応。闇の書が守護騎士もどきを作ってそれと戦闘中みたい。」

「は?」

 

守護騎士もどきとか言われても意味が分からなかった。

リライヴもどう説明していいか考えているようだったが、現状を考えたのか説明を諦めた。

 

「この暴走体にリンクしてるなのはとフェイトとはやての偽者が戦ってるって感じでいいよ。暴走体が消えれば自然消滅するからさっさと脱出して破壊するのが妥当かな?」

 

あの三人の偽者と言うのがどうにも要領を得なかったが、とりあえずこのままだと…

 

 

 

 

 

ヴィータ達と同じ様な子が三人消える事になるって事だけは理解できた。

 

 

 

「なぁ、何とか切り離せないか?そのリンクとか言うの。」

 

俺の提案の意味を租借するように数瞬間を置いたリライヴは、呆けたような力のない表情で俺を見た。

 

「ちょっと…言ってる意味分かってる?暴走体…闇の書の闇は病気のウイルスみたいなものだよ?病気を治すのにウイルスを別枠で保管して護る医者なんて聞いた事ないよ。ヒーローって言うけど速人はいったいどこまで救う気なの?」

「未来があって幸福を感じる何かがあるなら、それがプログラムだろうとクローンだろうと関係ない。」

 

リライヴの表情に影が差す。

 

…分かってる、綺麗な夢ではあるが所詮は夢想だと。

 

端的に言えば闇の書事件に振り回されてる今この瞬間、何の罪も無い人が事件事故で死んでいるかもしれないんだ。

 

 

 

『全てを救う』なんて絶対に届かない夢物語。

 

 

 

だけど、ハイそうですかと諦められるなら、そもそも今こんな場所にいない。だから…

 

「大体今生まれたんだったら守護騎士より罪状ないんだぞ?交戦中だから公務執行妨害があるだろうがそれで殺されるのかよ。」

 

救いに疑問を持つ事そのものを笑い飛ばして見せる。

 

目を丸くして固まったリライヴは、唐突に大笑いした。

 

「何がおかしいんだよ、お前だって管理局に敵対してまで救い手やってる大馬鹿じゃねぇか。それだけ強けりゃどうとでも生きられる癖に。」

「そうだね、ホント馬鹿ばっかり。でも…うん。速人の言う通りだ。罪状もないのに殺されるなんて変だね。」

 

リライヴははやてにアクセスしていた時と同じように魔法陣を展開する。

 

「今度は完全な暴走体だから、さっきより数多いよ?って言うか、私がつついてる間無限に」

「分かってるって。時間ないから早めに頼む。」

 

リライヴが瞳を閉じた瞬間、周囲が歪んでさっきまでいなかったような化物まで現れる。

 

完全気配遮断やらなきゃ、兄さんとかとの訓練は8時間とかでもぶっ通しでやれるんだが…正直使わないと間違いなく食い殺されるだろうからな。

 

「ま、そのくらいの無茶は当然か。ヒーローだからな!」

『そうですね、それにマスターなら必ずなれます。』

「お、嬉しい事言ってくれるな。それじゃあ第二幕…行くぞ。」

 

心静かに敵の群れを眺め、一瞬の躊躇もせずに飛び込んだ。

 

 




本日はここまでです。
…久々に間に合いました(笑)。
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