デスゲームでの日常を   作:不苦労

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半年近く間が空いた結果、SAO3期始まっちゃいましたね。

今回は番外編です。
『ドライ・ド・ライフ』と『暑さに負けず』の間の話くらいのイメージです。


番外編
女子会


「はい、シリカの分のコーヒー。砂糖は2つでよかったわよね?」

「あ、はい。ありがとうございますリズさん」

「クレハ君が作って行ったクッキーだけだとすぐなくなっちゃうと思って、私もケーキ作ったんだけど、食べたい人いるかな?」

「おおさっすがアーちゃん気が利くネ!聞くまでもなく全員が食べるにきまってるじゃないカ」

 

手慣れた手つきでコーヒーを用意するリズさんと、同じように手際よくウィンドウを操作してフルーツのたくさん乗ったケーキをオブジェクト化するアスナさん。2人のおかげで、机の上にお茶会に必要なものがどんどんと並んでいきます。

 

やっぱりほとんど毎日お茶会に参加してる2人はすごく手際がいいです。

数えるくらいしか参加していないわたしとピナは何をしていいのかまったく分かりません。最初こそ準備を手伝おうと張り切っていたんですけど、あまりにも手際が良すぎて手伝おうとするほうがかえって邪魔になる気がして、今はおとなしく椅子に座って待機しています。じっと座っているのが退屈だったのか、ピナは少し前からソファの上ですやすや眠っちゃってますし。

 

「いやー、クー坊のスイーツもいいけど、アーちゃんのケーキも楽しみだネ。ナ、シーちゃん?」

「は、はい。そうですね、アルゴさん……」

 

わたしの横で足をパタパタ揺らしながら、アルゴさんは楽しそうに体を揺らしています。

 

こうして見ていると、同い年くらいに見えちゃいますけど、年上なんですよね、アルゴさん。具体的な年齢を聞いたことはないですけど、クレハさん達と話している感じだと結構上みたいです。MMOでリアルの情報を聞くのはマナー違反、ということもあって誰も口にはしませんが、かなり謎の多い人ですよね……。

 

そうこうしているうちに、机の上には豪華なスイーツとコーヒーが並べられていきます。

 

「よし、これで全部そろったわねー」

「4人分のお皿とコーヒーも準備できたし、そろそろ始めましょう」

 

準備を終えたリズさんとアスナさんが、わたしとアルゴさんの正面に並んで座ります。

今日のお茶会はいつも通りクレハさんのお店で開かれていますが、参加メンバーはリズさん、アスナさん、アルゴさん、そしてわたしの4人だけです。

 

そうです。今日はとっても珍しい……

 

「それじゃあ!第1回万屋秋風女子会を始めまーす!」

 

女性陣だけの女子会なのです。

 

 

 

 

 

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クレハさんが用意していったコーヒーとクッキー、アスナさんの作ったケーキを食べながら、4人だけの女子会が始まりました。料理スキル完全習得の2人が作った食べ物ということもあって、味は絶品。こんな料理が毎日食べられるんだったら、わたしも料理スキルとってればよかったかな。クレハさんは毎日遊びに来てもいいって言ってくれてるんですけどね。なぜだかちょっぴり緊張してしまうのと、なにもしていないわたしがお茶会だけ参加するのは申し訳なくて、クレハさんに用事があった時に、そのまま参加させてもらった何度かしかお茶会には来れてないんですよね。今日は勇気を振り絞って遊びに来たんですけど、クレハさんは不在みたいでした。

 

「そういえば、今日はどうしてクレハさん達がいないんですか?ずいぶん急いで出かけていたみたいですけど…」

「あれ、シリカちゃんに言ってなかったっけ?クレハ君達がいない理由」

「あたしも聞いてないわよ。家の外でシリカと合流して家に入ろうとしたら、クレハが凄い速さで家から飛び出てったんだから。後から飛び出してきたキリトとクラインとエギルには声かけたけど、クレハを追っかけるのに必死で挨拶くらいしかしなかったし。家に入ったらアスナが1人でお茶会の準備してて、『今日は女子会よー』っていうからそのまま手伝い始めただけだし」

「そ、そういえばそう……だったかな?」

 

アスナさんは完全に忘れていたようで、いつものような明るい笑顔ではなく苦笑いです。こういう感情表現がわかりやすいのは、SAOならではですね。

 

「じゃあそこはオネーサンが説明してあげようじゃないカ!」

「アルゴ?いやいや、あんたあたし達より後に来たじゃない。なんで知ってるのよ」

「まあ細かいことはいいじゃないカー」

「細かいことじゃないと思うんですが……」

 

アルゴさんの情報収集能力は私たちの常識で考えられるレベルじゃないので、今更考え始めるのも無駄かもしれないですね。リズさんやアスナさんも呆れ気味ですが納得しているようですし。アスナさんは答えを知っているようなので、アルゴさんの話を聞いた後にアスナさんに答え合わせをしてもらいましょう。

 

「そもそもクー坊達は最初から出かける予定があったわけじゃないんダ。エギルが持ってきたクエストの情報を聞いて、クー坊が慌てて出かけたってだけなんだヨ。ま、その情報をエギルにあげたのはオレッチなんだけどナ」

「そんなに急がないといけないようなクエストなんですか?」

「いんや全く。クエストに期限が設けられてるわけでも、時間が指定されてるクエストってわけでもないヨ」

「じゃあどうして……」

 

さっぱりわかりません。わたしの知ってるクレハさんといえば、あまり慌てたりうろたえたりするような人ではなくて、いろんな準備をしっかりしてから行動するタイプというイメージです。たまに突拍子もないことをしたり、変なことを言ったりしますけど……。

 

「あー、あたし何となく分かったわ。そんなに急ぎでもないクエストで、ほかの3人より先にクレハが飛び出すようなクエストって言ったら1つしかないじゃない」

「流石リっちゃん。まぁ前にも似たようなことあったらしいからナー」

 

リズさんはもう分かったみたいです。アスナさんも苦笑ですし、たぶんリズさんの考えていることは正解なんでしょう。

 

「えっと…一体何のクエストなんです?」

「まあシリカちゃんには分かり辛いかな。答えを言っちゃうと、そのクエストってコーヒーに関するクエストなのよ」

「コーヒー……ですか?」

 

思わず手に持ったカップを見ちゃいました。確かに、言われてみればクレハさんといえばコーヒー好きというイメージもあります。思い返してみれば、いつ見てもクレハさんが持っている飲み物はコーヒーだったような…。

最初は苦いイメージがあってカフェオレばかり作ってもらっていましたけど、最近コーヒーも飲んでみたいって話をしたら丁寧にわたしの好みの味に合うように調整して用意してくれたりもしました。

 

「そうそう。報酬でコーヒーミルっていう調理器具が手に入るクエストがつい最近見つかったんだヨ」

「クレハ君のコーヒー愛って凄いから、エギルさんから話を聞いた瞬間飛び出していったのよ。そのあとクレハ君抜きでエギルさんの話の続きを聞いたら、そのクエストが大量討伐系のクエストだっていうから、キリト君たちが追いかけて手伝いに行ったってわけ」

「……目に浮かぶわね」

「それであんなに急いでたわけですね」

 

説明を受けると納得の理由でした。クレハさんのコーヒー好きのイメージは、わたしが思っている以上にすごいみたいですね。リズさんはクエストの話を聞いただけでピンと来ていたみたいですし、付き合いが長い人からしたら常識なんでしょうか?

 

「けどコーヒーミルなんてマニアックな調理器具が報酬なんて変わったクエストね。そんなのクレハ以外に欲しがる人いるわけ?」

「言われてみればそうよね……。そもそも料理スキルを取得してるプレイヤーにしか意味のないアイテムだし、料理スキルを使ってコーヒー作ってるのなんてクレハ君くらいじゃない?」

 

確かにリズさんとアスナさんの言う通りですよね…。わたしみたいに料理スキルを持っている知り合いがいれば譲ったりすることもできますけど、ほとんどの人はNPCのショップに売りに行くぐらいしか使い道がないですね。

そんなクエスト…というより、アイテムが作られてることになんだか違和感あります。

 

「あー、それに関してはちょっとオレッチに心当たりがあるかナ」

「なによそれ、あんたそんな情報まであつめてるわけ?」

「いや、これに関しては完全に仮説だヨ。情報を集めたわけでも、裏を取ったわけでもなイ。……というより、ほんとに仮説通りだったとしても裏はとれないかナ」

 

アルゴさんにしては珍しく歯切れが悪い感じです。

 

「おもしろそう。仮説でもいいから聞かせてよアルゴさん」

「そうですよ、わたしも興味あります!」

「ウーン、情報屋としては確証のない情報を公開するのは気乗りしないんだけどナー……」

「いいじゃないただの雑談なんだし。それに、仮説があるって言いだしたのはアルゴよ。ここまで話しちゃったんだから、最後まで話しちゃいなさいよ」

 

アルゴさんは少し考えた後諦めたように小さくため息をつくと、いつものような笑みで話始めました。

 

「……ま、いいカ。みんなはSAOのクエストがどうやって作られてるか知ってるかナ?」

「どうやって……? 最初から用意されてる訳じゃないんですか?」

「なーんか昔クレハに聞いたような覚えもあるのよねー。AIが自動で作ってるみたいな話」

「私はキリト君に聞いたかな。確かカーディナルシステムっていう名前のAIが自動生成してるのよね?」

「大正解!流石アーちゃん」

 

……さっぱり分からなかったです。

そんな私の顔をみてか、こほんとちいさく咳ばらいをしてアルゴさんが詳しく説明してくれました。

 

「カーディナルシステムっていうのは、エラーチェックだったりバグのメンテナンスだったりを全部やってくれるゲームのバランサーのことなんダ。細かい抜け道みたいなものも自動的にチェックして調整してるらしイ。その仕事の1つとして、クエストの自動生成とかもやってル。もっとも、SAOを始める前に雑誌とかで読んだ知識だから、多少は変わってるかもしれないけどナ」

「SAOのゲームバランスはAIが自動で調整してるってこと?」

「そういうことらしいナ。クエストに関しては、SAO内の膨大な情報をもとにして作られるそうダ。クエスト報酬も『全アイテムの内どのアイテムがよくつかわれているか』、『よく消費されるアイテムの種類は何か』みたいな、いろんな情報からSAO内での需要を割り出して調整してるらしいゾ。ま、MMORPGである以上、冒険に関するものが重視されるようにはなってるみたいだけどナ」

 

アルゴさん以外の3人が思わず『へー』っと声をあげてしまうほどアルゴさんの説明とは分かりやすくて、知らない内容でした。SAOを始める前に楽しみで色々調べたりはしてましたけど、中身のことはさっぱりわからなくて詳しく見てはいませんでしたから。

 

「今更だけど、裏ではすっごいことしてんのねーSAOって」

「ほんとですねー。人が直接管理しなくてもこんなに広い世界のバランスがとれちゃってるんですから」

「でも、だったら尚更おかしいんじゃない? SAO内の需要を割り出してクエストを作ってるのに、今回クレハ君たちが受けに入ったクエストって全然需要がないと思うんだけど……」

 

アスナさんの言う通り、コーヒーミルを欲しがるプレイヤーなんてクレハさん以外にいないんじゃ?っていう話から始まったことを考えると、話が噛み合っていないような気がしますね……。

 

「あ!アルゴさんの仮説っていうのは、そのカーディナルシステムっていうのの故障とかで、たまに今回みたいなクエストができちゃうっていうことですか?」

「あーなるほど、そう考えると自然かもね。こんだけ大きな世界を管理してるんだから、そのくらいのバグはあってもおかしくは……」

「ざーんねん、はずれだネ」

 

私の横でアルゴさんがにっこり笑って大きなバツ印を手で作っています。……結構自身あったのに。

 

「今回みたいなクエストがほかにも出てきてたら、オレッチも同じように考えたかもナ」

「え?ないんですか?」

「全くないってわけじゃなんだけどナ。今回みたいに明らかに需要の低い報酬のクエストは今までも何回かあったヨ。けど、そのすべてのクエストにちょっとした共通点があるせいで、シーちゃんの説に説得力がなくなっちゃうんだナー」

「なによ、その共通点って」

 

アルゴさんはいたずらっ子みたいな笑顔を崩さずに話を続けます。

 

「今まで発生した需要の低いクエスト報酬って、全部コーヒーに関するアイテムなんだヨ。今回のコーヒーを作る用のアイテムだったり、コーヒーの材料になる豆だったリ」

「は?」

「え?」

 

リズさんと一緒に間の抜けた声を出してしまいましたけど、どういうことなんでしょう?私はもうさっぱりお手上げ状態です。

 

「それこそバグなんじゃないの?意味わかんないじゃない」

「いや、ちょっと待ってリズ。それならちょっと筋が通った説明ができちゃうかも……」

「え?……うそでしょ?」

 

さっきまで考え込んでいたアスナさんが声を上げたので、3人の視線が一気にアスナさんに集まります。なんとなくアスナさんが呆れたような顔をしてるのが気になっちゃいますけど……。

 

「攻略組で前線に立ってると良く思うんだけど、SAO内のシステムの完成度ってものすごく高いの。あれだけたくさんの人が戦ってるのに、システム的な抜け道って滅多に見つからないし、見つかったとしてもすぐに修正されたり。…たまに普通はやらない様なことして無理やり突破しちゃう人もいるけど」

「……大体誰のこと言ってるかわかるわね」

「キリトさんですかね……」

「アーちゃんも人のこと言えないと思うけどナ」

 

キリトさんもアスナさんも、わたし達じゃ考えられないようなことをよくしますもんね。アスナさんと比べるとキリトさんのそういうところは抜きんでてますけど。

 

「とにかくSAO内のAIで、それもゲームのバランサーなんて重要な機能がバグっちゃうなんてことないと思うのよ」

「そうだナ。オレッチも同じ意見ダ」

「じゃあなんでこんなクエスト、っていうかアイテムができるのよ。需要のチェックとかしてるなら、需要の無いアイテムなんて作る必要ないじゃない。矛盾してない?レアアイテムとかで希少価値の高いものがあるのはわかるけど、コーヒーを作るための機械とか、コーヒーを作るためにしか使えない材料なんて、欲しがる人以前に扱える人がいないわけだし」

 

リズさんの言う通りです。凄く頭のいいカーディナルシステムっていうのがクエストを作っているのに、あまり人が欲しがらないようなアイテムを作っちゃってるっていうのはなんだか変ですよね。

 

「需要ならあるじゃない。現に今も大急ぎでクエストを受けに行った人がいる訳だし。その人はちゃんとそのアイテムを扱えるわよ」

「いや、そりゃあクレハは欲しがるわよ。年中コーヒーばっかり飲んでるコーヒーマンなんだから」

 

コーヒーマンって……。

聞きなれない言葉なのに誰一人否定しようとしないのはなぜなんでしょうか。

 

「じゃあヒントをあげようカ。無意識のうちに別物って考えてるかもしれないけど、『SAO全体の需要』って括りの中には、もちろん『クー坊の需要』も含まれてるヨ」

「そりゃあそうでしょ。クレハもSAOの中にいる訳で、あいつが消費したアイテムも……当然……」

 

リズさんの声がどんどん小さくなっていくにつれて、アルゴさんのニヤニヤ顔がどんどんあからさまになっていってます。あの、何となくわたしにもわかっちゃったような気がするんですけど、つまり……。

 

「クレハが今まで飲んだコーヒーの消費量だけで、カーディナルシステムが需要があるって判断するレベルに到達したってわけ?」

「だーい正解!オレッチの仮説と見事に一致したナ」

 

アスナさんはやっぱり、といった顔でコーヒーを飲んでいます。

つまり、料理スキルでコーヒーを作るのはおそらくクレハさんだけなんですけど、そのクレハさんがものすごくたくさんコーヒーを飲んでいるせいで、カーディナルシステムが多少なり『コーヒーに需要がある!』って思っちゃってるってことですよね。

 

「流石にそれはないでしょ、って言いきれないあたりがクレハの怖いところね。……そりゃあ確かに裏を取ることなんてできないわね。仮説って言ってた意味が分かったわ」

「よくよく考えると、クレハさんがコーヒー以外の飲み物飲んでるの、見たことないです」

「ココアとかカフェオレとかも作ってたみたいだけど、それもコーヒー作りの延長でチャレンジしただけって感じよね」

「ま、クー坊だけってわけじゃないけどナ。現に今ここで4人飲んでるわけだシ。そう考えると、まれにクエスト報酬としてコーヒー系のアイテムが出てきてもおかしくはないだロ?」

 

全員が手元のコーヒーを見つめます。

 

「なんか、私たちもずいぶんクレハ君に影響されたよね……」

「お茶会が日課になってるし……」

「リアルにいたときよりコーヒー飲む頻度ふえたナ」

「わたしなんて、リアルでコーヒー飲んだことなかったですよ」

 

誰も口には出しませんが、みんな同じことを考えていそうです。

 

『恐るべし。クレハさんのコーヒー愛』

『恐るべし。クレハのコーヒー愛』

『恐るべし。クレハ君のコーヒー愛』

『恐るべし。クー坊のコーヒー愛』

 

 

 

 

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女子会が始まってからどれくらいが時間が経ったでしょうか。沈みかけていた夕日が見えなくなって空は真っ黒に染まっています。

 

「それにしてもクレハ達おっそいわねー。大量討伐系のクエストなんてあの4人だったらあっという間に終わるでしょうに」

「イヤー。詳細はオレッチもまだ調査中だけど、結構いろんなNPCのところをたらい回しにされるクエストらしいからナ、そういうところで時間食ってるんじゃないのカ?」

「へー、アルゴがまだ情報を集めきってないなんて珍しいわね」

「こんなクエストの情報集めたって誰も買わないだロ?」

「……それもそうね」

「めずらしくクレハ君が暴走するタイプのクエストだしね。エギルさんが苦労してそうな気がするわ」

「あはははは……」

 

暴走するクレハさんって見たことないので、なんだかちょっと見てみたい気もしますけど、今日聞いた話だとなんだかわたしには手に負えない気がします。

 

「SAOで女子会なんて初めてだったなー。今後はたまに4人であつまってやっていかない?」

「あ、それいいかも!アスナの家だったら広いしできそうだしね」

「たまにはいいかもナ。…女子会って言ってもSAOの話ばっかりしてた気がするけド」

「それはそうだけど、逆に女子会っぽい話ってなんなのよ。あたしはリアルでもあんまりそういうのしたことないから分かんないわよ?」

「私も女子高だったからなー。女子だけっていうのは当たり前の環境だし、わざわざ女子会を開こうとはしてなかったわね。一般的な女子会ってどんな話をするのがいいのかしら」

「うーん、どうなんでしょう?」

「少なくともSAOの話はしないだろうナー」

 

確かに良く分からないですね。女子会って何する物なんでしょう。

わたしも女の子だけでお茶会を開くから女子会ってことで参加させてもらってましたけど、いざ考えると良く分からないです。リアルでは女の子と一緒に遊んだりファーストフードに言ったりしてましたけど、それを女子会っていうのはなんだか違うような気もしますし。

そういえば、昔テレビで見た番組で女優さんとかが集まった女子会番組!っていうのをやってた気がしたような。確かその時話してたトークテーマは……。

 

「恋バナとかしたら女子会っぽい気がしますねー」

「あ、その話しちゃうんだ」

「え”」

「エ”」

 

あれ?アスナさんが『やっちゃったー』って顔しちゃってますし、リズさんとアルゴさんは苦い顔をして固まっちゃいました……。なにかまずいこと言っちゃいましたか?

アスナさんはキリトさんと結婚してますから、恋バナといわれてものろけになっちゃうから良くないのかな?けどアスナさんってあんまりそういうのろけ話とかを積極的にするタイプじゃない気がするんですけど。2人ともすごくお似合いなので回りから色々と冷やかされちゃうこともあるみたいですけど、それも本人たちも本気で嫌がってるわけじゃないみたいですし。

……いえ、わたしもキリトさんに関してはまだ諦めてませんけど!望み薄なのはわかってますけど、まだリアルでのチャンスが残ってますから!けどアスナさんもすごく良い人だし、そんな2人を邪魔するのが辛いというかなんというか。

 

……えーと。わたしのことは置いておくとして、苦い顔をして目を合わせてくれなくなった2人についての方が問題なんですが。

 

恋バナの話題でこんな空気になるなんて思ってもみなかったんですが、なんでなんでしょう。そんなにリズさんやアルゴさんは好きな人の話をしたくないんですかね?2人とも仲がいいし、いつもクレハさんとお茶会したりしてるから、てっきりもうそう言う話はしちゃってるのかと思ってたんですけど。

……あれ?そういえば2人ともクレハさんとよく一緒にいますよね。前にクレハさんに聞きましたけど、クレハさんの武具のメンテナンスはリズさんが専属でやってるみたいですし、お店のお休みの日も一緒にしてました(今日もお休みの日みたいですし)。アルゴさんとクレハさんがコンビで情報集めをしてるっていうのはSAO内でも結構有名な話ですもんね。

 

あれ?もしかして2人ともクレハさんのことが好きってこと?確かにリズさんもアルゴさんもクレハさんに対してはすごく心を開いているみたいですし。そう考え始めると心当たりがある場面がたくさん思い浮かびます。えーと、そうなるとわたしはとんでもない地雷をふんだんじゃあ……

 

「あの、アスナさん。もしかして2人ともクレハさんのこと……?」

「まあ、普通気づくわよね。シリカちゃんが今思ってることが正解」

「……もしかしてわたし、触れちゃいけない話題に触れちゃいましたか?」

「そんなことないわよ。気が付いてないのってクレハ君本人くらいだし。エギルさんとか私くらい付き合いが長い人が見るとあからさますぎて恥ずかしくなっちゃうくらいだもの。お互いこのことに関しては気づいてるみたいだし、リズとアルゴさんの関係がこの話題で崩れることはないわよ。むしろ、問題なのは2人のアプローチをクレハ君が全くと言っていいほど気が付かないってこと」

「そ、そうなんですか……」

 

こそこそ話でアスナさんに確認を取ってみましたが、大当たりだったみたいです。付き合いがそんなに長くないわたしが気付いちゃうくらいなんですから、アスナさんからみればそれはもう当たり前のことなんでしょう。

確かに、クレハさんってそういう話に無頓着というか、人のことを優先して自分のことほっぽっちゃうタイプですもんね。思いっきりあからさまにアプローチしないと気が付いてくれないような気がします。……乗り遅れてアスナさんにとられちゃったわたしが言うのもなんですけど。

 

「そのせいで、この2人と恋バナしようとしてもできないのよ」

「えっと、それはどういう…」

 

意味なんですか?と聞こうとしたところで、リズさんが割って入ります。

 

「聞こえてるわよシリカ」

「アーちゃんもな」

 

2人にジト目でにらまれちゃいました。ちょ、ちょっと怖いです。

 

「あたしだってねぇ、そりゃあアスナみたいな甘酸っぱい恋愛トークしてみたいわよ。けど仕方ないじゃない!『NPCのレストランで綺麗なスイーツ出してくれる所見つけたから今度行こう』って誘ったら、次の日には料理スキルでそのスイーツを完全再現してお茶会に持って来ちゃうようなやつなのよ⁉そんなことされたら今後どうやって誘えば言いわけ⁉」

「そうだゾ!フラワーガーデンでデート向けのクエスト見つけて一緒に行ったのに、終始クエストについての情報収集しかしなイ!そりゃあ普段から2人でクエストの情報収集してるけどサ!わざわざオフの日に誘ってるんだからもうちょっと察してくれてもいいじゃないカ!」

「う、うわぁ」

「この2人と恋バナしようとすると、結局いつも愚痴大会になっちゃうのよ」

 

クレハさん、残念過ぎますよ。キリトさんもなかなかアプローチに気づいてくれない人でしたけど、さすがにそこまではなかったような。しかも今の感じだとそれだけじゃなくて似たようなこと沢山あるみたいです。

 

「2人とも照れ屋で直接的なアプローチをかけてないっていうのもあるけど、クレハ君が鈍すぎるのが大問題なのよ」

「普通気づきそうなものですけど……」

「うーん。私が思うに、クレハ君がクォーターっていうのが原因なんじゃないかなーと思うんだけどね」

「クォーター…ですか?」

 

あまりリアルの話はしたことなかったんですけど、クレハさんってクォーターだったんですね。

 

「私も料理を習ってる時に聞いたんだけど、年に何回かはヨーロッパの方にあるお爺さんの家に行ってたんだって。海外の人たちって日本の人達と比べてすごくフランクでしょう?ハグが挨拶だったり親愛の印に頬にキスしたり。そういう海外にとっての当たり前と、日本人同士の恋愛的距離感がごちゃまぜになってるから、アプローチをアプローチとして気づかないんだと思うの」

「な、なるほど」

「それに付け加えて自己評価の低さも問題かな。クレハ君って極端に自分を過小評価してるから、『自分が好かれている』っていう思考になりにくいんじゃないかな」

 

言われてみると確かに。クレハさんは戦闘でもすごく強くて頼りになりますけど、自分でそれをアピールしたりしませんね。『キリトの反応速度は異常だ』とか、『チームを指揮させるならクラインに任せるといい』とか、人のいいところを教えてくれたりはするんですけど。

 

「ほんっとどうすりゃいいのよ。もう2年近くたつのよ?あーもう!思い出したら腹立ってきたわよ!」

「オレッチなんかβテストの時からだゾ?あーあ、オネーサン自身なくなっちゃうヨ。こーんな美人達が周りにいるのにクー坊ときたらホントに…」

「え、えーとえーと……」

 

2人が落ち込んじゃったというか、やさぐれ始めちゃってるので何とかフォローしようと思ったんですけど、何を言っていいやら…。

 

「アスナさん、どうしましょう」

「そんなに心配しなくても大丈夫よシリカちゃん。いつものことだから」

 

そうは言われてもこのどんよりした2人の空気に耐えられそうにないです。早く帰ってきて!クレハさん!

 

「ただいまー」

 

わたしの願いが届いたのか、店の入り口の方から大きな声が響いてきました。ナイスタイミングです!

 

「いやーそれにしても疲れたな、今回のクエストはよう」

「全くだ。まさかあんなにいろんなNPCのところをたらいまわしにされるとは」

「結局、最期の雑魚モンスターの大量討伐はほとんどキリトとクレハが倒しやがったからな」

「フラストレーションたまってたんだよ。コーヒーミルが貰えるっていうのに、あれだけもったいぶられたんだから少しぐらい暴れても許されるだろ。あー帰ってすぐコーヒーミル使おうと思ってたのに、これは明日にした方がよさそうだな」

 

クラインさん、キリトさん、エギルさん、そしてクレハさん。

みなさんずいぶん疲れた様子で帰ってきました。クエストに出かけてからかなりの時間が経ってますから、当然といえば当然ですけど。

 

「お、おかえりなさい!遅かったですね!」

 

助かりました。アスナさんは慣れてるみたいでしたけど、いつも元気な2人がどんどんやさぐれて行くのはなかなか辛かったですし、原因がわたしの提案した話だったので余計に責任感じちゃいましたよ!

 

「みんなお帰り、ずいぶん遅かったね。そんなに大変なクエストだったの?」

「いや、大変ってことはなかったんだが散々NPCのところを行ったり来たりさせられてな。無駄に時間ばっかり食っちまった。結局問題のモンスター大量討伐もクレハとキリトの野郎がほとんど倒しやがったし、俺とクラインは何のために付いていったんだかな」

「まったくだぜ。飯の一杯でも奢ってもらわなきゃ割に合わねーよ」

「俺は別についてこいなんて言ってないだろ。そもそもそれを言うならお前らだって、今回の報酬はパーティメンバー全員に配られたんだからレアアイテムゲットしてるだろうが。それでチャラだよ」

「う、そりゃあそうだけどよ」

「ハハハ!恩を売ろうとしても、クレハ相手じゃ分が悪いなクライン」

 

クレハさんの言葉に、さっきまで不満そうだったエギルさんとクラインさんが黙っちゃいました。そういわれると、需要が低いといっても一応レアアイテムですし、物珍しさで欲しがる人が出てくるかもしれません。NPCのお店で売るだけでも利益になりますから、クラインさんとエギルさんからしたらむしろ得だったのでは?

 

「じゃあキリト君ももらったの?」

「ああ、コーヒー作りの道具みたいだけど、一応料理スキルを持ってたら使えるみたいだからな。これはアスナにあげるよ」

「ホント?ありがとうキリト君!」

 

キリトさんたちはやっぱり仲良しですね。確かにアスナさんだったら料理スキルを完全習得してますし、使うにしろ使わないにしろ、料理スキル用のレアアイテムはうれしいですよね。

 

「それで?この2人はなんでこんな不機嫌なんだ?俺たちが帰ってきてから一言も喋ってないんだが」

「え、えーとそれは何というか…」

 

『クレハさんが2人のアプローチに全然気づかなくていじけちゃいました』なんて言えるわけないです。リズさんはボリボリ音がなるくらい力強くクッキー食べてますし、アルゴさんはジト目でちびちびコーヒー飲んでますし……2人ともちょっとかわいいですけど。

 

「まあいいか。ほらリズ、お前にこれやるよ」

 

そういうとクレハさんはウィンドウを操作して何かアイテムを実体化しました。すごくきれいな赤色をした大きな鉱石です。お店のライトの光を反射して透き通る鉱石はものすごくきれいで宝石みたいです。

 

「何よいきなり……ってこれヒヒイロカネインゴット⁉超レア鉱石じゃない!」

「前のお茶会の時に欲しいって言ってただろ?フィールドボスのドロップ品で出るって聞いたから、今日の朝取りに行ったんだよ」

 

うわー、リズさんすっごく顔が緩んでます。

 

「あ、あたしが欲しいって言ってたの覚えてて、わざわざフィールドボスまで倒しに行ったの?」

「そりゃあな。まあちょうどクラインのパーティがフィールドボス狩りに行くって言ってたから、タイミングもよかったんだ」

「そう……まあ、その……ありがと」

「ああ」

 

ずっとほしかったレアアイテムが手に入ったってことよりも、クレハさんが自分が欲しがってたものを覚えてくれてたことがうれしいんでしょうね。わたしも好きな人からふいにプレゼントとかもらったらうれしいですもん。しかもわざわざボスモンスターのところまで行ってくれたんですから。

 

「アルゴにはこれな」

「え?オレッチにもあるのカ?」

「あたりまえだろ」

 

今度実体化したアイテムはアルゴさんにあげるみたいですけど、あれなんでしょう?手のひらサイズの…鉢植え?

 

「これってフラワーガーデンで売って奴じゃあ…」

「ああ、この前行ったときに珍しく欲しそうにしてたと思ってな。今回のクエストでフラワーガーデンにも行ったからついでに買ってきたんだ」

「べ、別に欲しそうになんてしてなかっただロ」

「店の前通るたびに歩くスピードは遅くなるし、この鉢植えをチラチラみてるしバレバレだ。どうせ欲しいけど自分のキャラじゃないとか思って買うの恥ずかしがってたんだろ」

「うぐぅ……」

 

アルゴさん、鉢植え握りしめてうつむいちゃいました。…なんだか、年上のはずなのにすごくかわいい。

 

「ま、まあもらっておいてあげようかナ」

「おう、そうしてくれ」

 

口ではいつも通りですけど、顔がゆるゆるになってますよ、アルゴさん。2人ともさっきまでクレハさんの愚痴でやさぐれてたとは思えないくらい照れちゃってます。

 

「ほら、大丈夫だったでしょ?」

「ははは、ほんとですね」

「クレハ君は全然女心を理解してくれないけど、たまに天然でああいうことやっちゃうからずるいのよね」

 

クレハさん、リズさん、アルゴさんはちょっと照れてますけどもういつもみたいな様子で話し始めてます。こうしてみてみると、あの3人はこの中でも群を抜いて仲良しさんですね。結婚しちゃってるキリトさんとアスナさんは除いて、ですけど。クレハさんに対する恋愛模様で3人の関係が崩れちゃったらどうしようかと思いましたけど、この様子だと全然問題なさそうな気がしますね。そう簡単に、この3人の関係性は崩れなさそうです。やさぐられてた2人もすっかり上機嫌ですしね。

 

皆さんを見ているだけで、なんだか不思議な気持ちになります。マスコット感覚でわたしに近寄ってくるプレイヤーや、ビーストテイマーというだけで理不尽な嫉妬をぶつけてくるプレイヤー達とは違う。付き合いもそんなに長くないのに、なぜだか心から信頼できる人たちに囲まれている今のわたしを、昔のわたしはきっとうらやましがるでしょうね。

 

「どうした?そんな寂しそうな顔して」

「え?そ、そんな顔しちゃってましたか?」

 

確かにちょっと後ろ向きなことを考えちゃってましたけど、まさか顔に出ちゃっているとは。SAOは表情がわかりやすくて便利だなんて思っていましたけど、これは周りの人から見ても同じなんでした。

 

「自分だけ土産が無くて寂しかったのか?悪いな、今日来るって知らなかったんだ」

「い、いえいえ!そういうわけじゃないので全然大丈夫ですよ」

「ならいいんだが……。あ、そういえばずっと前からシリカに渡そうと思って物があったな。今回の土産ってわけじゃないけどちょうどいいタイミングだ、今渡してもいいか?」

「え?あ、はい、それは全然問題ないですけど」

 

わたしに渡すもの?クレハさんに何か頼んでた覚えはないんですけど……。

そういいながらクレハさんが取り出したのは、バラみたいなオレンジ色の花の束でした。50本ぐらいがきれいな白い布で束にされていて、絵本とか昔のおとぎ話で王子様がもっているみたいな大きくてロマンチックな花束です。

 

「うわぁ…すっごく綺麗」

「ビーストテイマー専用のアイテムらしい。テイムモンスターが寝る場所に広げておいてやると、次の日1日バフがつくそうだ。使用制限回数があるみたいだから使い時は考えた方がいいぞ」

「けど、いいんですか?みたところ、かなりレアアイテムにみえるんですけど」

「偶然ドロップしただけだから気にしなくていい。俺が持ってても使えないからな」

「そう、ですか。ありがとうございます!ピナも喜ぶと思います」

 

クレハさんから綺麗な花束を受け取りました。…肝心のピナはあれからずっと寝てるんですけどね。

 

「シリカにはいつも世話になってるからな。ささやかなお返しだ」

「え?そんな、わたしは何にも……むしろわたしがクレハさんにお返ししないといけないくらいで」

「そんなことはないぞ、俺の周りの奴ときたら、攻略組のトッププレイヤーだったり攻略組兼道具屋だったり、情報屋だったり人気鍛冶職人だったり、特殊なポジションにいるやつばっかりだ。ま、シリカもビーストテイマーっていう特殊な立場な訳だが、シリカから聞く中層プレイヤーの一般的な情報がどれだけ役に立っていることか」

「…そうなんですか?確かに、中層プレイヤーが困ってることとか、伸び悩んでる原因とかの話は前にしましたけど」

「その情報がかなり重要なんだよ。SAOの中で一番多いのが中層プレイヤーだ、その中層プレイヤーが求めてるものが分かるってのはかなり助かる。もとからモチベーションの高い攻略組よりも、中層プレイヤーを奮起させて戦力を上げることの方が難しいんだ。実際シリカからもらった情報のおかげで、何組かの中層プレイヤーが今じゃ準攻略組レベルまで育ってる。まぁそういう打算的な考えを除いても、シリカには助けられてるよ。ここにいるのメンバーもいっつもシリカに会いたがってるしな。リズなんか『シリカはいつ来るんだー』っていっつも言ってるし、アルゴは『そろそろシーちゃんの話聞きたいなー』とか遠回しに俺に誘うように催促してくるしな」

「そんな……」

 

そんなふうに思ってくれてたんですね……。

 

「遠慮してるのか忙しいのかは分からないが、シリカさえよければなるべく遊びに来てくれると助かる。逐一あいつらをなだめるのも面倒だし、なにより俺もシリカが来てくれた方がにぎやかで楽しいしな」

「はい……はい!絶対また来ます!明日も来ます!」

「ああ、そうしてくれ」

「ありがとうございます。クレハさん」

 

クレハさんに言ってもらった簡単な言葉で、今まで遠慮していたことが馬鹿らしくなってきました。SAOに閉じ込められて、こんなにうれしかったことがあったでしょうか。ピナが死んだあの時、キリトさんに手を差し伸べられた時と同じくらい、うれしい。今後どんなことがあっても、もしSAOがクリアされたとしても、この人たちとの繋がりだけは無くしたくない。わたしはずっとこの人たちのそばにいたい。クレハさんに渡された花束を抱きしめながら、わたしはそんなことを思っていました。

 

「おークレハ、ずいぶん大胆なプレゼントだな。花束なんてまるでプロポーズみたいじゃねえか」

「ぷ、ぷろっ⁉」

「面白半分で変なこと言うなよ。お前の分のコーヒー入れてやらないぞ」

「おおっとそりゃ勘弁」

 

エギルさんがニヤニヤしながらそんなことを言ってきました。全く意識してませんでしたけど、確かにそう見えますよね、今のわたしって。なんだか、自覚するとものすごく恥ずかしくなってきました。クレハさんには全くそんな気がないってことはわかってるんですけど、そういう問題ではなくただ照れくさいというか…

 

「フーン…よかったなーシーちゃん」

「ホントねー。綺麗な花束ねー」

「り、リズさん?アルゴさん?あの…目が怖いんですけど」

 

さっきまであんなにうれしそうな顔してたのに、今度はなんだかすごく悪い顔してます。面白いおもちゃを見つけたみたいな。

 

「そういえばさっきは全然シリカの話してなかったわよね。続きしましょうよ続き」

「それはいいナ、なんだったらオレッチがシーちゃんの恥ずかしいマル秘情報のはなしでもしようカ?」

「あら、いいわねそれ」

「え、ちょっとなんですかそれ」

「…私もちょっと興味あるかも」

「アスナさんまで⁉」

 

全く心当たりはないんですけど、情報源がアルゴさんっていう時点でもう嫌な予感しかしないのでぜひやめてほしいです。

 

「そんなに警戒しなくてもダイジョウブだっテ。フリフリスカートの装備品を初めて着たときに、リアルで人気だった美少女戦隊アニメの変身ポーズを鏡の前で練習してたとかそんなレベルだからナ」

「な、なんで知ってるんですかぁ⁉」

 

しかもそれって結構最近の話ですし!……そういえば確かにあの時って情報収集のためにアルゴさんとパーティ組んで35層のクエストに参加してた時だったような。アルゴさんはちょうどお風呂に入ってたのでバレないと思ったのに!は、恥ずかしい……

 

「ふふ、シリカちゃん可愛いわね」

「アルゴの情報力はえげつないからなぁ……」

「ま、聞いてる分にはおもしれえからいいけどな」

「キ、キリトさん聞いちゃダメです!アスナさんもクラインさんも面白がってないで止めてくださいよぉ!」

 

キリトさんもクラインさんも全然止めてくれる気配がないです。確かにわたしも他人事だったらダメだって思いながらも止めはしないかもしれませんけど、今はまさに自分が恥ずかしいので止めてほしいです。

 

「他人事みたいに言ってるけど、キー坊はこの前アーちゃんに内緒で無駄なレアアイテム買ってたよナ。クラインは毎日挨拶してくれる女の子がいて『絶対俺に気がある!モテ期到来だ!』って息巻いてたのに、実はNPCだったシ」

「う、うわぁ…クラインさん、それはちょっと」

「おいキリの字!あのバカ鼠を黙らせるぞ!」

「任せろクライン!捕まえてそれ以上喋らせるな!」

「ニャッハッハー!遅い遅い!」

 

キリトさんとクラインさんがアルゴさんを捕まえようとしますけど、アルゴさんの動きが速すぎて全然捕まる様子がないです。あ、逆にキリトさんがアスナさんに捕まっちゃいました。アスナさんすっごく笑顔ですけど、目が全然笑ってないのですごく怖いんですが、たぶんさっきアルゴさんが言ってたレアアイテムの件で怒ってるみたいですね。正座させられちゃってます。

リズさんとエギルさんは面白がってクラインさんがアルゴさんを捕まえられるか賭けようなんて話してますし、なんだかもうぐっちゃぐちゃです。……わたしの恥ずかしい情報が暴露された意味ってあったんでしょうか。

 

「どうでもいいけど、お前ら俺の店で暴れるなよ」

「ははは、やっぱりにぎやかですね。クレハさんのお店」

「主に俺以外の奴らがな。こういうのは嫌いか?」

「いいえ。むしろ、大好きですよ」

「そりゃあ良かった」

 

ちょっと恥ずかしい思いもしちゃいましたけど、この人たちと居たいって気持ちは変わりません。さっきクレハさんに言った通り、明日も絶対に来ようと思います。その時は、このお花のお礼を何か用意しないといけないですね。お礼のお礼ってことになるので、少しおかしな気もしますけど。

この人たちとのにぎやかな日常の中に、わたしももっと入っていたいです。

 

「てめぇアルゴ!机の上を飛び越えるのはずるいだろ!」

「クラインあと30秒以内に捕まえろ!500コルかかってんだぞ!」

「アルゴー、店の外に逃げるのは無しだからね!」

「ニャハハハハ!まかせろリっちゃん」

「キリト君。この前無駄遣いしないって話したよね?」

「いや、それはその……つい魔が差してというか」

 

けど、流石にこの状態は……いろいろと大変そうというか何というか。

 

「……あいつら止めるの手伝ってもらっていいか?」

「…自信はないですけど、頑張ります」

 

この人たちと一緒にいたいんですが、このままいくと、わたしはクレハさんと同じ苦労人のようなポジションになってしまう気がします。

 




番外編でした。
おそらくもう1話番外編を挟んだ後にALO編に行こうかなと思ってます。

もしまだ見てくれている人がいれば、お楽しみに。
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