東方お仕事記   作:TomomonD

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変色異変コラボ回、始まりました。

今回は、からすそ様のコラボキャラクター、緋閃妖夢(東方幻影斬 緋閃より)さんが登場します。

本当だったら、登場するコラボキャラクターが二人だったりしたのですが……。
一十百の協力者の説明をしたら、意外と長くなってしまい、今回は一人となってしまいました。
こうなってしまったのも、今回出てくる異変の協力者のせいです。

どうしてステージ6がこいつなんだ!?
……とか言わないでくださいね。


からすそ様。
修正箇所等がございましたら、お気軽にメッセージをお送りください。


特別異変四話 斬炎、彼女の剣閃は揺るがない

世界線が揺らぐ。

それにいち早く気が付いたのは、異変の首謀者であった一十百だ。

 

「ええっ! あの花火は……、異世界のお客様を招くために僕が作った物の使い残り……」

グッと一十百は拳を軽く握る。

「あれはたぶん紫さんが打ち上げたはず。そうなると……、異変の解決者が一気に増えますね」

どこか、やる気に満ちた表情で一十百は頷く。

 

「でも、そう簡単には負けませんよ! 全力を持って挑んできてください!」

声高らかに、一十百が腕を振り上げる。

この時から、この異変は幾つもの世界を巻き込んだ異変となった。

 

 

一十百の協力者……。

一十百が直々に力を貸して下さいと頼むほどの、破格の実力を持った存在たち……。

 

……と、解決者たちはそんなことを考えるだろう。

だが、それは間違いになりつつある。

確かに八雲紫を退けた実力者はいる。

しかし、それ以外はどうだろう?

本当に、破格と言えるほどの実力者なのだろうか?

 

 

花火の音が鳴り響いた。

その音に驚き、一人の協力者が森の中から空を見上げる。

桃色の空は依然変わりなく、静かなものだ。

空を見上げた協力者は首をかしげた。

 

「なんだ、花火か? 異変の開催の合図……にしては遅いような」

腕組みをして頭に?マークを浮かべる。

全くわからないという表情をして、懐から黒い杖を取り出した。

「何にしろ、一十百に頼まれたんだ。あっさりとここを突破されないようにしないとな」

 

一十百の協力者……そのうちの一人が、この青年だ。

一十百には黙っているが、この青年、転生者と呼ばれる存在だ。

夕焼けを映したようなオレンジ色の長い髪。

背も高く、それなりの容姿も持ち合わせている。

 

ここまでなら、一般的な転生者なのだが……。

神に恵まれなかった彼は、転生時の特典をほとんどもらえなかった。

本当に僅かながらの魔力、それだけ……。

そのわずかながらの特典を、ただひとえに自分のめざすロマンのためだけに昇華させ、魔法使いとしてどうにか存在している。

 

神から与えられた名は、嘲笑われるようなようなトリプルC……。

そう、クロム・クロロ・クロラージュ。

知る人ぞ知る、爆炎の魔法使いだ。

 

一十百に“親友っている?”と尋ねれば、必ずこの爆炎の魔法使いの名が出てくる。

同じ質問をこのクロラージュに尋ねれば、逆の答えが返ってくる。

一十百が信頼し合える親友、それがクロム・クロロ・クロラージュだ。

 

 

今回の異変、何故彼は協力したのか?

 

一つは大切な親友の頼み。

これを断るほど、クロラージュは腐ってはいない。

実力こそないものの、親友の頼みなら話は別だ。

たとえ、この身を犠牲にしても……はさすがに嫌なので、できる限り行うということにしている。

 

もう一つの理由は、ここが幻想郷だから。

美人との弾幕勝負は憧れる。

それ以上に、美少女との弾幕勝負はいいものだ。

そして、それ以上にッ、美幼女との弾幕勝負は最高だッ!!

つまり、幻想郷の誰が勝負に来ても、役得、眼福。

この二つの理由で彼はこの異変に参加した。

 

……後者の理由を見てもらえれば分かる通り、彼は残念系転生者なのだ。

気さくで、相手の大事な一線は決して踏み越えない、そんな心優しい青年だ。

親友を大切にし、外の世界にいる妹(仮)や弟子を本気で守る、そんな正義感溢れる青年だ。

足りない実力を、鍛練と志(ロマン)で補う、努力の転生者だ。

……だが、残念系転生者だ。

 

コミカル役、三枚目、ギャグ担当……と不名誉な看板多数。

何度も言うが、とても残念系転生者だ。

 

 

そんなクロラージュの前に、いきなり一柱の光が降り立った。

「な、なんだ!? ドラゴンメテオ……じゃないよな」

空から急に降り注いだ光の柱。

その光が消えると、一人の少女の姿がそこにはあった。

 

幻想郷を……いや、東方Projectを知るクロラージュは、その少女に見覚えがあった。

白玉楼の庭師、魂魄妖夢……。

しかし、髪はボサボサ、服装もどこかの制服だろうか、かなりだぼだぼの制服だ。

それにどこか、明らかに、何かが違う……。

直感的にクロラージュはそう思ったものの、まずは挨拶と相手の名前を確認することにした。

 

「え、えっと、魂魄妖夢……か? なんか、俺の想像していた妖夢と、違うというか……。ま、まあそれはどうでもいいか」

「ここは、幻想郷……。私の知る幻想郷とは少し違うようですが……」

「そりゃ、ほら、今は異変だからだろう? それを解決しに来たんじゃないのか?」

「異変……解決?」

どこか話がかみ合っていない気がする。

それに、やはりこの目の前にいる魂魄妖夢は、魂魄妖夢でないような気がする。

そんなわけのわからないことをクロラージュは考える、

 

 

「あのさ、もし違ったら聞き流してくれていいんだけど……。もしかして、魂魄妖夢とは別人?」

「……その質問に答える前に一ついいですか?」

「なんだ? 答えられることなら答えるぞ」

「この幻想郷に、転生者どれくらいいますか」

その一言で、クロラージュはポンと手を叩く。

「やっぱり、妖夢とは別人か~。どうも変だと……」

「質問の答えになっていません」

鋭い視線と、凛とした声がクロラージュを射抜く。

何か、逆鱗に触れてしまったのかと、クロラージュは焦る。

 

「す、すまん。えっと、どれくらい……ってそんなにいるのか転生者? 少なくとも、俺はそうだけど」

「……そうですか。では、貴方はなぜこの幻想郷に?」

「そりゃ異変の手伝いだ。空とか木とかを見てみればわかるが、異変だ。それの手伝い……、まあ転生者に分かりやすく言うと、ステージのボスみたいなものだ」

メタ発言……とでもいうのだろうか。

けれど、転生者にしてみれば分かりやすい説明の仕方と言ったところだ。

 

「まあ、異変を起こしてるのが俺の親友だからな。その親友が手伝ってくれってわざわざ頼んでくれたんだ。手伝わないわけにはいかないだろう」

「……それが、あなたの本音ですか?」

「そうだが」

自信満々にクロラージュは頷く。

その答えを聞いて、どこか目の前の魂魄妖夢に似た少女の鋭い雰囲気が少し和らぐ。

 

「あとは、美少女との弾幕勝負ができるからな」

「……はい?」

「いや、弾幕勝負、それも異変を解決しに来るとなれば、あのメンツの誰かだろう。その誰もが美少女。眼福だし、弾幕勝負も楽しめ……」

……そこで、クロラージュの言葉が止まる。

 

当たり前だ、目の前の少女から身も凍るほどの殺気が漏れ出しているのだ。

今さっきまでの、少し和らいだ雰囲気が、滅多切りになっていくのがクロラージュの目に映る。

あ、やば……、なんか、地雷を踏んだっぽい。

冷や汗が流れる。

 

「あ、ま、まった! 弁解の余地が欲しい」

「…………」

沈黙が恐ろしい。

だが、このままだと、確実に斬られる。

せめて、何とか事を収めないと。

異変を手伝って、死んでしまいましたなんて笑えない。

ない頭をフル回転させ、一つの言い訳を考え付く。

 

「俺のストライクゾーンは、あのメンツよりも、もっと年下だ! だから、問題は……」

 

その瞬間、目の前に斬撃が走る。

直感的に一歩退かなければ、間違いなく首が飛んでいた。

 

「やはり、転生者など、そんなものばかり……。ここで、魂魄妖夢が……いえ、私、緋閃妖夢が貴方を殺す」

「NO! ウェイト!! スットプ!!!」

 

クロラージュの発言がどうもギャグに見えるが、死を間近にするとこんな感じになるのかもしれない。

手を前に出して、必死に止まるように説得する。

しかし、あの発言の時点で手遅れだ。

容赦なく緋閃妖夢の斬撃が放たれる。

それを紙一重で……いや、ほぼ掠りながらかわしていく。

 

 

「くっ、一旦落ち着いてもらうほかないか! 正直言って、女の子に魔法を叩きつけるのは気が引けるが……」

クロラージュの黒い杖がわずかに輝く。

次の瞬間、焔の矢が次々と放たれた。

クロラージュの唯一の特技、無詠唱魔法だ。

大怪我はさせたくないが、このままでは自分が真っ二つ。

仕方なしに、焔の矢を放ったのだった。

 

「こんなもの……」

だが、相手が悪い。

この緋閃妖夢、手加減して勝てるはずなどなく、怯ませるのですら一苦労なほどの相手なのだ。

焔の矢はあっさりと両断されていく。

本来なら矢は爆発し、爆風でさらなる一撃を与えるのだが、爆風そのものも切り裂いていく。

 

「ちょ、ちょ……。無理! 実力の次元が違いすぎる!」

「覚悟っ!」

目の前に緋閃妖夢の斬撃が迫る。

間違いなくそのままクロラージュは両断されるはずだった。

 

しかし……。

「いない! どこに……」

両断されたはずのクロラージュの姿はどこにもない。

斬った感覚もない。

この距離で、かわした?

意外に強敵か……と緋閃妖夢が思った時、ゴズンと鈍い音が斜め後ろから聞こえてきた。

何事かと、即座に振り返る。

 

すると、そこには顔面から木に突っ込んだクロラージュの姿があった。

……なんて間抜けな。

そんな呟きが漏れてきそうなほど、滑稽な姿だった。

 

「い、いつつ……。や、やっぱりこれ、ブレーキがきかないな」

「今のは……縮地法」

「いや、瞬動術って言うやつだ。ただし、俺は下手だからこうなる」

顔面を片手で抑えつつクロラージュが振り返る。

本来なら、そんなことをしている間に斬殺されてもおかしくはない。

しかし、緋閃妖夢の斬撃は止まっていた。

 

「どうした?」

「貴方は、もしここで私を倒せたとして、その後はどうするつもりですか?」

「どうするって、そりゃ、異変の手伝いだな」

「……それが終わったら、何をするつもり?」

「そんな先のことまで考えてない!」

 

クロラージュにしてみれば、一寸先は闇ならぬ、一寸先は死の状態なのだ。

異変の手伝いを終えるまで、この身が無事でいられる保証などないのだ。

まずはこの異変中、生き残る事が一番だ。

その他の事を考える余裕などないのだ。

だからこそ、堂々とそう答えた。

 

「…………」

緋閃妖夢のジト目と沈黙が痛い。

そして、何やら呆れたようなため息を吐き、緋閃妖夢が刀を鞘に戻す。

「えっと、なんで刀をしまった?」

「単純に、貴方を斬る必要が無くなっただけです」

「へっ?」

「……貴方に幻想郷がどうにかできると、少しでも思った私が馬鹿だった気がします」

「ひどいな。でも、まあ、確かにそうかもしれないな」

そう言ってクロラージュは腰を下ろす。

殺される心配が無くなったため、緊張の糸が解けたようだ。

 

 

「緋閃妖夢、だったっけ? やっぱりこの後は異変の首謀者の所に向かうのか?」

「いえ、それは別の人に任せます。私は一度、この幻想郷を見て回るつもりです」

「やっぱり、転生者が気になるのか……」

緋閃妖夢が軽く頷く。

 

一十百がいるこの幻想郷は、まあ平和だよな。

でも、この緋閃妖夢がいた幻想郷は平和じゃなかったのかもしれないな。

だけど、それは彼女の問題だ。

俺がどうこう言う必要もない。

せめて、この異変の間だけでも、楽しく過ごせるように応援させてもらうぞ。

 

「貴方みたいなのばかりなら、手を焼く必要もないのですけどね」

「ちょい、せっかく心の中でエールを送ったの言うのに、このざまだよ」

「それでは……」

「あ、ちょっと待った」

「まだ何か?」

 

クロラージュが立ち上がって右手を差し出す。

「今回は誤解から始まった勝負。結果も一方的な状態だったけど……。次会えたときは、もう少し善戦してみる、期待しておけ」

「……期待はできませんね。けれど、次会った時、貴方の考えが少しでも道を外したものになっていたら、次こそ斬ります」

そう言って、緋閃妖夢はクロラージュの手を軽く握る。

そして、手を離すと、そのまま遠い空に消えていった。

 

 

緋閃妖夢がいなくなったの確認すると、クロラージュは大の字に倒れた。

「……どうなってんだよ―――――!!! この異変は――――――!!!」

クロラージュの甘い考えはあっさりと打ち砕かれ、あるのは過酷な現実だ。

「一十百、もっと簡単な相手をこっちによこしてくれ~!」

その声は誰にも届くことはなかった。




今回の結果

クロラージュVS緋閃妖夢

勝者:緋閃妖夢


~クロラージュからひと言~
実力が違いすぎる。
頭を撫でる暇すらなかった……。
まあ、この異変の間は過去のしがらみを忘れて、楽しんでいってほしいな。

~TomomonDからひと言~
まさか、いきなりクロラージュの相手が女性だとは思いませんでした。
一応、ステージ6なので、結構勝ちにくくしたつもりなんですが、相手が女性のため前提条件がすべて崩れました。
救済措置のプラス点を全く利用せずに50点も引き離されるとは……。
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