東方お仕事記   作:TomomonD

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今回は、夢物語♪様のコラボキャラクター、メルティ・ローレライ(オリジナルキャラクター)ちゃん、朱鎌蟹様のコラボキャラクター、白狼爪牙(東方白狼録より)さん、が登場します。

今回はステージ2です。
一十百の存在する幻想郷には異世界からのお客様がそのまま長期滞在することがあります。
そんなお客様に、異変の協力者としての協力を持ちかけた一十百。
利害の一致から、協力してくれることとなった存在。

今回の協力者は、一十百がいる幻想郷の中で指折りの実力者です。
そんな実力者に対し勝負を挑んだのは、一人の少女。
実力差は誰が見ても絶望的……。
しかし、実戦でなく、弾幕勝負でなら、彼女にも勝機があります。


夢物語♪様、朱鎌蟹様。
修正箇所等がございましたら、お気軽にメッセージをお送りください。


特別異変八話 幼い歌姫は歌に未来をのせて

一十百の協力者……。

その中で、最も強力な存在とはいったい誰なのか……。

 

確率を支配し、相手のすべての攻撃を反らす一璃菜。

自然界の属性を惜しげもなく使い、強力な技を繰り出す人里離。

爆炎を司り、本気になれば空と大地を同時に焼くことができるともいわれる、クロラージュ……。

下手をすれば、一人ひとつずつ異変を起こしてもおかしくはないほどの実力者たち。

この三人でも、十分すぎるほどだ。

 

しかし……、今回、八雲紫が別世界の協力を仰いだ原因は彼らではない。

幻想郷の賢者を震え上がらせた存在は別にいるのだ。

戦いという面においては、彼こそが一十百の協力者の中で最強だろう……。

 

 

妖怪の山が震えあがる。

圧倒的な妖力が、麓から立ち上る。

明らかに外からの存在を拒むような、妖力の結界ともいえるほどの量の妖力が揺らめく。

少し強い程度の実力者では、近づく足を止めてしまう。

本能的に、分かるのだ。

ここへ来てはいけないと……。

 

その妖力の原因は、ここに存在する協力者にある。

本来、他人と関わることを避けている彼はこの異変に協力する気など毛頭なかった。

けれど、自分の領分が無断で踏み込まれようとするなら話は別だ。

一十百と話し合いの上決まったの約束は、ここに来る異変の解決者を追い払う、という簡単なもの。

異変に協力するのではなく、外敵の排除。

たとえ、それが幻想郷の賢者でも変わらない。

彼、白狼爪牙は妖怪の山の山道の前に立ち、無断で入ろうとするものを力を持って退けてきた。

未だ、訪れた解決者は八雲紫のみ。

彼の実力は、まだこの幻想郷に知れ渡っていない。

 

 

そこへ近づきつつある影が一つ。

これだけ放たれている妖力に気がつかないとなると、主に戦闘を得意としない者、もしくは圧倒的な実力を持ち、強敵と会い見えようとする者のどちらかだ。

 

不幸にも、今回は前者だったようだ。

帽子をかぶった小柄な少女が、楽しげな歌を口ずさみながら軽くスキップをして近づいてきていた。

 

「待て。これ以上先に進むな」

白狼爪牙が先に制止の声をかける。

相手が誰であろうが、この先に進ませるつもりは無い。

まだ幼い少女ならばなおさらだ。

この先は妖怪の山、むやみに踏み込めば無事では済まない。

 

しかし、少女は腰に手を当てて、胸を張る。

「こう見えても、私は妖怪だよ。妖怪の山にいる妖怪くらいなら大丈夫だもん」

確かに、目の前の少女からは僅かながら妖力が漏れている。

しかし……。

決して強い部類ではない、むしろ弱小妖怪に分類される方だろう。

妖怪の山に存在する妖怪を相手にするには少しばかり力不足だ。

それ以前に、厄介事を持ち込まれるのを嫌う白狼爪牙がここを通すわけはない。

 

「何故、この山に登る? 尋ね人でもいるのか?」

「そうじゃないよ。空の色が変だからなるべく高いところに向かおうとしてるんだ。これって異変っていうんでしょ」

「……つまり、貴様はこの異変を解決するために、この山に登ると」

「そうだよ。私も異変を解決してみようかなと思ってね」

そんな気軽に異変は解決できるものではないが……。

言葉で言っても引き返すような存在でもあるまい。

白狼爪牙は少し考えつつ、じっと目の前の少女を鋭い視線で射抜く。

 

「貴様、名は?」

「私? 私はメルティ。メルティ・ローレライ。こう見えても、私は妖怪……」

「それは聞いた」

「あれ? そうだっけ?」

やれやれと、白狼爪牙が首を振る。

 

もう少し話の分かる奴、もしくは戦意をむき出しにしているような輩ならば、力で追い払ったのだが……。

どうにも調子が狂う。

 

白狼爪牙は確かに強い。

しかし、目の前の少女に対して本気を出したら、結果は見えている。

それどころか、一割の力を持って相手をしたとしても、大怪我を負わせかねない。

白狼爪牙は冷徹である、しかし決して冷酷ではない。

可能ならば、無傷でこのメルティとかいう少女を追い返したところなのだが……。

こういうのに限って変に頑固だ。

 

 

「メルティと言ったな。貴様、身を守る術を持っているのか? 異変を解決するとなれば荒事は避けられないぞ」

「弾幕勝負なら得意だよ! この前、チルノちゃんに勝ったし、お母さんにも何回か勝ってるし」

「……貴様の母は、どんな妖怪だ?」

「えっと、夜雀だよ」

 

夜雀と言えば、歌で人間どもを惑わせる夜の妖怪だな。

だが、昼ではただの鳥。

強力な妖怪ではない。

それに、チルノと言えばあの霧の湖に住む氷精。

そいつに勝ったことを誇らしげにしているということは……。

深いため息が白狼爪牙から漏れる。

 

大方、このメルティが言う弾幕勝負というのは、遊びの域を出ないものだろう。

命を賭す実践とは、かけ離れている。

そんな奴の相手をしろというのか……。

こんなことならば、協力するのを考えたほうが良かったか。

面倒くさそうにメルティの事を睨む。

 

その時、白狼爪牙の瞳にとあるものが映り込んだ。

細い枝に色とりどりの実を宿した髪飾り。

あれは、蓬莱の玉の枝……。

冷たい感情が湧き、ギリッと奥歯を噛み潰す。

 

「ひっ……」

一瞬とはいえ、白狼爪牙から漏れ出た殺気は、メルティ・ローレライを震え上がらせるには十分すぎた。

 

いきなり目の前に死という絶対的な存在が降り注げば、恐怖が身を包むのは当然。

ましてや、今まで勝負はしたことがあっても、命のやり取りまで発展することの無かった少女に向けて放たれたのだ。

恐怖を越えて、全身が凍りついたように動かなくなってしまった。

金縛りといったところだろう。

 

ただ、大妖怪から放たれた殺気に当てられたのだ、ただの金縛りでは済まない。

呼吸も止まり、息ができなくなる。

下手をすればそのまま心臓まで止まり、命を落としていたかもしれない。

しかし運よく今回は妖怪としての本能が僅かにそれを阻止した。

けれど、未だ呼吸はできないまま。

自分でもどうしていいか分からず、ただただ立ち尽くすのみ。

意識を失いかける瞬間、ゴンと頭に痛みと衝撃が走る。

 

「いたっ!?」

「ふん、正気に戻ったか」

「あっ、けほっけほっ……」

急激に入ってきた酸素に多少むせるも、二度三度深呼吸をして落ち着きを取り戻す。

どうやら、今の軽い一撃で殺気に当てられ強張った身体の呪縛が解けたようだ。

 

「この程度の殺気で身体が強張るなら、この先には行くな」

「でも……私はこの異変を解決したい!」

「そこまで何故こだわる? 貴様に対してはほとんど害のない異変だろう」

「だって、友達に自慢できそうだから……」

思わず滑りそうになる白狼爪牙。

そんな下らんことの為に……。

今さっき命を落としかけたというのに、そのことをすでに忘れているとでも言うのか?

ああ、面倒だ。

 

 

「わかった、そこまで言うのなら……相手をしてやる。俺を倒せた、いや一発でも被弾させることができたなら、この異変の首謀者がいる場所のヒントを教えてやる」

白狼爪牙が構えを取る。

 

しかし、相手をすると言っても、下手に殺気を出せば先ほどと同じような状態になってしまうのは目に見えている。

さらに、十分に手加減をしなければ一撃のもとに沈めてしまうかもしれない。

いや、手加減をしても沈めてしまう可能性さえある。

 

接近戦、および徒手や蹴りのような物理的な攻撃は控えるか。

そうなると……弾幕のみで相手をするしかないか。

それも、かなり手加減したものにしておかないとな。

スペルカードも、今回は控えるか。

……どれだけ手加減すれば対等な勝負になるんだ。

勝つのはたやすい。

だが、殺さず、壊さず、なお勝つのは難しいとはよく言ったものだ。

深く静かに集中する白狼爪牙。

 

対するメルティ・ローレライは、準備運動をするように屈伸をしたり伸びをしたり、身体を解している。

相手はかなりの実力者だということは何となくわかる。

 

どれくらいすごい人かは分からないけど、絶対に勝てない弾幕勝負なんてないから大丈夫。

いつもみんなとやっているような勝負をすればいい。

タンタンと軽くジャンプをして、準備万端と言った様子だ。

 

 

「それじゃ、いっくよ~!」

タンと両足で地面蹴り、ふわりと浮きあがったメルティ・ローレライから、音符状の弾幕がふわふわと揺れながら放たれる。

弾幕の速度こそ遅いものの、放たれる量と、その不規則な動きは、このメルティという少女がただの弾幕使いでないことをひしひしと感じさせる。

 

「なるほどな。実戦こそ経験していないが、弾幕勝負をするものとしては一人前か」

足に妖力を纏わせ、蹴りを放つ白狼爪牙。

蹴り抜いた先から妖力が拡散し、次々と的確に音符弾幕を貫いていく。

妖力弾はそのままメルティ・ローレライへと向かっていく。

それを、くるりと回ってかわすメルティ。

 

「さすがに当たらないか」

「そんな簡単には当たらないよ。私だって、負けたくないもん」

メルティ・ローレライがスペルカードを取り出す。

氷の紋様がスペルカードを包むように現れる。

 

「氷歌『小さな冬みつけた』」

スペルカードが輝く。

メルティ・ローレライから水色の音符弾幕がいくつか放たれる。

ふわふわとある程度飛んだ音符弾幕は、そこで弾け氷の結晶のような弾幕を作り出す。

作り出された氷の結晶のような弾幕はかなり大きく、下手をすれば被弾しかねない。

白狼爪牙は一度大きく退く。

 

「はぁっ!」

ゴウゥと大気を切り裂き、白狼爪牙の右手が引き裂くように薙ぎ払われる。

妖力は力になり、そのまま威力に変わる。

たったの一撃で、すべての氷の弾幕が砕けて散っていく。

同時に、その一撃で巻き起こった衝撃波がメルティに襲い掛かった。

 

「くぅぅ……きゃっ」

パリンという音と共に、メルティ・ローレライが吹き飛ばされる。

何とか空中で体勢を立て直すも、スペルカードは今の衝撃波でスペルブレイクしてしまったようだ。

 

 

「まだまだぁ!」

しかし、そんなことでへこたれるメルティではない。

即座に二枚目のスペルカードを取り出す。

 

「月歌『手のひらを新月に』」

メルティの両手に光が集まる。

その両手を白狼爪牙にかざすと、そのまま光線となり放たれた。

さすがに手に光が集まった時点で予測できたのか、白狼爪牙は容易くその光線弾幕をかわす。

しかし、メルティ・ローレライのスペルカードで作られた光線は、ただ直線状に放たれるだけではなかった。

扉を開くように、メルティ・ローレライが両腕を外側に動かす。

それに合わせて、光線弾幕も外側に向け扇状に薙ぎ払われていく。

 

「見た目より、攻撃範囲は広いか……」

グッと地面を蹴り、薙ぎ払われた光線弾幕を飛び越える白狼爪牙。

「……だがな、欠点がある。それも、かなり重大なものだ」

白狼爪牙はメルティ・ローレライの正面に立つ。

そこでピタリと動きを止めた。

 

「二回目っ!」

前と同じようにメルティの両手から光線弾幕が放たれる。

そのまま正面にいた白狼爪牙に直撃……することはなかった。

両手を前にかざし、そこから光線を放つ。

この光線弾幕の放ち方だと、光線と光線との間に身体一つ分ほどの幅が存在する。

その空間に半身引いた白狼爪牙がいる。

つまり、このスペルカードは……。

 

「真正面に立たれた相手には、まったく効果がないということだ」

「えっ? あれっ? なんでっ?」

光線弾幕を出しては薙ぎ払う、それを何度も繰り返すメルティ・ローレライ。

そして何度目かの時、はっとした表情になる。

「これ、チルノちゃんのスペルカードと同じ弱点があった!」

「今さら気がついたのか……。今までよく普通に弾幕勝負できたな」

白狼爪牙がヒュンと手を振るう。

そこから放たれた妖力弾が光線弾幕の間の空間を抜け、メルティ・ローレライに直撃する。

パリンという音が響く。

 

「いたた、またスペルブレイクした。このままじゃ、負けちゃう……」

メルティが被弾している量はそれほど多くない。

実際はスペルカードが被弾を肩代わりしているので、ほぼ無傷に近い。

しかし、スペルカードが無くなれば、その時点で負けが確定してしまう。

それほど多くのスペルカードを持っていないメルティ・ローレライ。

手持ちの枚数的に、決め手となる一枚を使わざる得なくなってしまった。

 

 

「よ~し、私の一番のスペルカード、行くよっ!」

大きく一度、空中でバックステップをし、バッと右手を真横に広げる。

くるくるとその手にスペルカードが回転しながら収まる。

 

「激唱『幻想郷のライブマスター』」

高らかに宣言したメルティの声と共にスペルカードが輝く。

スペルカードの光が棒状の形に集まりだし、メルティの右手の中で徐々に形作られていく。

 

いつしかスペルカードの光は収まり、メルティの右手に銀色の棒が持たれていた。

棒の先には銀色の網目状の球体が取り付けられている。

拡声器……、つまりマイクだ。

そのマイクに向けて、メルティが声を吹き込む。

すると、螺旋を描くように音符弾幕が次々と放たれていく。

放たれた音符弾幕は、ある程度飛ぶと、いくつかの小さな音符弾幕に分かれ、辺りに散らばっていく。

同時に、メルティ・ローレライの周りから次々と光線弾幕が放たれていく。

 

「物量系のスペルカードか。だが、この程度ならば問題はない」

向かってくる弾幕に向け、白狼爪牙が腕を薙ぎ払う。

強大な妖力を纏った腕は、それそのものが武器であるかのごとく音符弾幕を次々と砕いていく。

さらに、威力を落とすことなく、纏った妖力が弾幕となりメルティ・ローレライに向けて放たれた。

音符弾幕を貫き、一斉に妖力弾がメルティに襲い掛かる。

避けようのないほどの妖力弾、このまま容赦なくメルティは被弾……。

 

そう思われていたのだが、不思議なことが起きる。

まるで何かに共鳴するように、メルティ・ローレライの周りの空間が揺らめく。

そして、その空間に触れた瞬間、妖力弾は静かに消えていった。

威力だけなら、あっさりとその空間も貫くと思われていた妖力弾が次々と消えていく。

 

「どういう事だ? 今までなら、これでスペルブレイクしていたはずだが……」

どちらにしろ、スペルカードであることには変わりない。

ならば、これで終わりだ。

 

空中を蹴り、さらに高く跳びあがる。

グッと白狼爪牙の右手が握られる。

溢れていた妖力がその握った右手に集まり、強く輝く。

その妖力の塊によって輝く右手を振り下ろした。

今までの妖力弾などとは比べ物にならないほどの圧縮された妖力の塊が、降り注ぐ流星を思わせる勢いで放たれる。

下手な中級妖怪を一瞬で消し飛ばすのではないかと思わせる一撃だ。

それがメルティ・ローレライの周りに展開された揺らめく空間に突き刺さる。

その瞬間、妖力の塊は一瞬にしてはじけ飛び消えていった。

 

「何っ! 今の一撃が通用しないだと……」

飛んでくる音符弾幕を砕き、光線弾幕を避けつつ、白狼爪牙は考える。

弾幕自体はそれほど強力なものではない。

しかし、あの空間は明らかに大妖怪のそれに匹敵するほどの防御力を誇っている。

明らかにあの小娘、メルティ・ローレライの力ではないな。

ならば、いったい……。

そこで白狼爪牙は何かに勘付いたようだ。

 

「そうか! ようやく理解した。その空間は、この幻想郷が、ルールが味方したものか。まさか、中級妖怪でもない貴様がそのスペルカードを持っているとは思わなかった」

全力を込めて歌っているのか、メルティ・ローレライからの反応はない。

 

スペルカードの中で異質な種類のスペルカード、耐久スペル。

決められた時間の中でなら、使用者には全く弾幕が通じなくなる強力なスペルカードだ。

弾幕勝負をする者の中でも、かなりの実力者が持つようなものなのだが、それをメルティ・ローレライは持っていた。

理解できれば後は簡単、避け続ければいいだけだ。

 

白狼爪牙は、放たれている弾幕を次々とかわしていく。

このままなら問題なく、時間切れによるスペルブレイクとなっただろう。

しかし、数多くの弾幕勝負を楽しんできているメルティ・ローレライが一番と言ったスペルカードだ。

そのまま、静かに終わることはなかった。

このスペルカードが使われた初めの方に比べると、放たれている弾幕の量が明らかに増えてきている。

さらに、光線弾幕の量も増え、色とりどりの紙ふぶきのような弾幕まで追加されている。

 

「耐久スペルの上に、発狂持ちか! 厄介極まりない、スペルカードだ」

光線弾幕をかわし、音符弾幕を砕き、紙ふぶきのような弾幕を吹き飛ばす。

次々と襲いくる弾幕をすべて捌いていく白狼爪牙。

 

 

どれくらいの間この攻防戦が行われただろうか。

メルティ・ローレライから音符状の弾幕が放たれなくなった。

揺らめいていた空間もいつしか無くなっている。

 

「そんなぁ、あれを避けきられるなんて……」

「確かに、今までのスペルカードに比べれば、十分すぎる難易度の物だった。それは認めるが、被弾まではいかなかったようだな」

「ううぅ、これ以上すごいのは……、このっ!」

最後のあがき、とでもいうのだろうか、手に持ったマイクを白狼爪牙に向け放り投げるメルティ。

もちろんそんなものに当たることはない。

少し右にずれ、そのマイクをかわす。

マイクは回転しながら妖怪の山に隣接する森の中に落ちて行った。

 

「こ、ここでまで来て諦められないもん!」

メルティ・ローレライが先ほどと同じように、弾幕を展開する。

しかし、やはりというべきか、先ほどのスペルカードが決め手だったようで、先ほど以上の弾幕は展開されない。

 

「これ以上は無駄だな。これで、終わりにするか」

妖力を足に込め、蹴り放とうとする。

まだスペルカードを使っていない状態のメルティに当たれば、確実に勝負は決まるだろう。

足を振り上げ蹴り放つ……。

しかし、次の瞬間、白狼爪牙の後頭部に何か固いものがぶつかった。

 

「っ……。なんだ、一体」

別に大した衝撃ではない。

しかし何が当たったのだろうか。

 

「あっ、今当たったのって、私のスペルカードのマイク……」

「そんなはずはないだろう。ただの金属の棒と化したものが戻ってくるとでも言うのか?」

「でもっ! ほらっ」

メルティ・ローレライが空を指差す。

白狼爪牙が見上げると、くるくると回転しつつ遠くに飛んでいくマイクの姿が確かに映った。

ぶつかったためなのだろうか、それとも時間的な問題なのかは分からないが、回転していたマイクは弾幕が消えるように空中に溶けていった。

 

「……ありえん」

「でも、被弾したよね! 私の勝ちだよね!」

あれはメルティ・ローレライの弾幕の一種。

それが後頭部にぶつかった……。

何故それがこちらに戻ってきたのかは謎だ。

奇跡か、それとも、別の何かか、真偽は分からない。

しかし、確かに被弾したのだ。

 

「……釈然としないが、約束は守ろう」

スッと白狼爪牙は森の先を指差した。

「この森の先に、紅魔館という建物がある。そこにいけ」

「紅魔館に? そこに異変の首謀者がいるの?」

「そこにはいない。だが、そこにいる妖精が異変の首謀者の居所を知っている」

「わかった! 必ずこの異変を解決してみせるよ! それじゃあね」

ブンブンと手を振ると、メルティ・ローレライはゆっくりと紅魔館の方に向かって飛んで行った。

 

 

その姿が見えなくなると、白狼爪牙は下の森を睨む。

あのマイクという物、勝手に戻ってくるようなものでもあるまい。

ならば、それをこちらに向かって投げた存在がいるはずだ。

「……面倒事を増やしてくれた礼は、その身を持って受けさせてやるとするか」

ゆっくりと地面に降り立った白狼爪牙は、その森に足を踏み入れる。

 

また一つ、厄介な出来事が起ころうとしていた。




今回の結果

白狼爪牙VSメルティ・ローレライ

勝者:メルティ・ローレライ


~白狼爪牙からひと言~
幼いながら、弾幕勝負の腕前は中々の物だ。
実戦を経験したことはないようだが、弾幕の放ち方やスペルカードの有用性などはしっかり考えられていた。
遊びと言えども、馬鹿にはできないな。
弾幕使いとして一人前になるのもいいが、歌にもそれなりの自信ありと見えた。
せっかくある才能だ、それを伸ばしてみるもの良いだろう。

~TomomonDからひと言~
実戦ではなく、弾幕勝負ということでの決着です。
幼い女の子に、一十百のいる幻想郷最高峰の大妖怪と実戦で勝負しろなんて言えるわけないですよ。

作中で、手加減してくれている白狼爪牙さんですが、プラスマイナスの点数は変更してません。
勝手に点数を変更するのはこのコラボ中ではタブーですから。
オリジナルキャラクターでも勝利できるという一例ですね。
メルティちゃんの設定は、爪牙さん相手だとマイナス点を獲得してしまうことが結構ありました。
ピンポイントで、その人たちに関わり合いがある、と書かれていた時は、正直驚いたほどです。

さて、残るはステージ1のみ。
異変を起こした側、まさかの全敗となるか。
それとも、青くなってしまった紅魔館にいる彼女が、初防衛成功となるか。
どちらになるかは、次回のお楽しみです!
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