東方お仕事記   作:TomomonD

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十二仕事目 赤い館の大修理

無事、赤い霧は消えた。

一十百の朝にも“いつも”が戻ってきた。

 

 

「……霊夢さん、魔理沙さん」

「いいのよ」

「ほっといても大丈夫だと思うぜ」

一十百が心配そうな表情を浮かべている。

対して博麗霊夢、霧雨魔理沙はやれやれといった表情だ。

 

一十百が心配していることは、紅魔館……の修理のことである。

紅魔館の窓、大図書館、廊下、テラス、扉、家具……他多数。

かなり派手に戦ったため色々と壊してしまったようだ。

破壊した割合は、霊夢6割、魔理沙3,5割、一十百0,5割。

派手さや威力を重視する魔理沙の破壊率が低いのは、大図書館で異変解決を放棄していたためである。

霊夢の6割というのも異変解決のためといえばそうなのだが……。

実際、弾幕勝負で破壊したのは、その半分程度。

残り半分は、移動で扉を蹴破る、八つ当たりで壁を壊す、移動が面倒だからと天井を破壊など、別に壊さなくてもいい部分までしっかり破壊しつくした結果だ。

そのため、異変解決した次の日……つまり今日、紅魔館はかなり大変なことになっているだろう。

 

「やっぱり、僕お手伝いに行ってきます!」

タンと石畳を蹴って一十百が博麗神社を駆け抜けていった。

「行っちゃったぜ……」

「はぁ~、ほんっと良い性格してるわ」

ため息を一つ吐いて、博麗霊夢も立ち上がった。

「え、まさか手伝いに行くつもりか?」

「一十百だけに任せてられないし……。それに、これで一十百の実力が評価されて、紅魔館で働かない?とかなったら大変よ!」

「やっぱり、そうなるのか。それじゃ!」

箒に跨った魔理沙の肩をがしっと霊夢がつかむ。

振り返った魔理沙の目に映ったのは、にっこりと笑う霊夢の表情だった。

「どこに行くつもり?」

「私は片付けとかは苦手なんだぜ!」

「行くわよ!」

魔理沙を半ば引きずる形で霊夢も紅魔館に向かっていった。

 

 

一十百はすでに紅魔館の門前まで到着していた。

途中の霧の湖をしっかり迂回して、これだけ早く到着できるのは一十百の桁違いの走力あってこそ。

「あれ、あなたは確か……」

「あ、美鈴さん! おはようございます」

「あの時の! 昨日の今日でどうしたんですか?」

「いろいろ壊してしまったんで、修復のお手伝いを…と思って」

「壊したのはあなたじゃないような……」

「まあ、だれが壊したかは問題じゃないですよ」

にこっと一十百が微笑む。

「そういえば、身体大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。頑丈ですから! 伊達に門番をやってませんよ」

にっこり美鈴が笑う。

一十百もその表情をみて、ホッとしたような表情になった。

紅魔館の修理の人手の心配もそうだが、それ以上に怪我をさせてしまった紅美鈴や十六夜咲夜のことの心配のほうが大きかったようだ。

 

「それで、中に入れてもらえますか? もしかしたら、部外者立ち入り禁止になってしまってますか?」

「そんなことはないと思います。ちょっと聞いてみましょうか?」

「手伝うというのなら別に追い返すつもりはないわ」

「ふぇっ! 咲夜さん、いつの間に!」

今までいなかったはずだが、門のところにいつの間にか十六夜咲夜が立っていた。

どうやら時間を止めてやってきたのだろう。

「それで、修復作業手伝ってくれるのかしら?」

「はい! もちろんです」

「……あなたに言っても無駄かもしれないかもしれないけど、普通異変の首謀者の家がどうなろうと放っておくものじゃないかしら?」

「そうでしょうか? 家って、大切なものですよ! 僕は家族をつなげる絆の一つだと思ってますから……。それを壊しっぱなしというわけにはいきませんよ」

その一言を聞いて、十六夜咲夜と紅美鈴が顔を合わせる。

そして、クスッと笑いあう。

「ほぇ?」

「いや、随分大切なことをあっさり言うんだなぁ、と思って」

「今の言葉、お嬢様が聞いてたらそれなりの評価がもらえたと思うわ」

「??」

「まあいいわ、ついてきて」

「はい!」

 

 

一十百の修復レベルは幻想郷の常識すらはるかに超えるものだった。

紅魔館に入ってわずか三十分で扉の修復を終わらせ、一時間で霧雨魔理沙が荒らした大図書館を完全修復させ、二時間で博麗霊夢が破壊した天井と壁、廊下の修理を終わらせ、休憩十五分の後、二時間と十五分でテラスを修理し、三十分で割れた窓と家具の修理を終わらせた。

途中から修理に参加した博麗霊夢と霧雨魔理沙は開始二十分で唖然。

さらに十分後、手伝い不可能と理解しくつろいでいた。

十六夜咲夜ですら自分の能力を使い止めた時間の中、修理に励んでいたのだが……。

一十百が止まった時間の中、超高速で動き続けているのを見て、三時間で諦めることとなった。

結果、元の紅魔館に戻るまでに費やした時間は一十百到着からたった六時間半。

一十百が紅魔館に来たのが、だいたい朝の八時半だったため、すでに午後三時には作業が終わっていた。

さらに、ここから一十百の掃除が始まり、広大な紅魔館を二時間で掃除しつくした。

半壊状態の紅魔館はこうして完全修復+αされ、夕日を浴び再び赤々と佇むこととなった。

 

「はい! これにて、紅魔館の大修復おしまいです!」

「……あ~、おつかれ」

「だから手伝えないって言ったんだぜ」

「私ですら見てるだけしかできないなんて…」

霊夢は完全に遠い目、魔理沙はやれやれといった表情、咲夜は驚愕と唖然が混じり合ったような状態だ。

「それより、なんで汗ひとつかかないのよ? あれだけ走り回ってたんだからもっと疲れた表情をしても…」

「ほえ? だって、ただの修復じゃないですか。こう見えても僕、三日で三階建てのログハウスを作ったことあるんですよ。これくらいじゃ疲れませんよ」

一十百のその話を聞いて三人が同時に一言。

「「「……人外ね・だぜ・だったのね」」」

「人間ですって!」

 

一十百が椅子に座って少しすると、誰かが廊下を走る音が聞こえてきた。

「咲夜! 紅魔館が……って、なんでいるの?」

扉をバンとあけて入ってきたのは淡い青色の髪をした少女。

背中には蝙蝠の翼、全体的に桃色のふわりとした洋服、そしてとある種族特有の鋭い眼光。

「…たしか、咲夜さんの主の……」

「へぇ……変わった人間?がいるものね」

「あぅ、今の発音完全に疑問符がついてる気がします」

そこまで言って一十百は急いで椅子から立ち上がった。

そして、胸に手を置き一礼。

「挨拶が遅れました。外の世界に主を持つ執事の一十百です、此度は損傷を与えてしまったこの紅魔館の修理のため訪れました」

たまに一十百が出す完全執事の雰囲気があたりを包み込んだ。

 

まるで時間が止まったかのような、そんな時間が流れた。

「…はっ! 咲夜、今時間を…」

「止めてません。確かに似たような感覚でしたけど…」

「そう。コホン、この館の主レミリア・スカーレットよ。紅魔館修復の件は礼を言うわ」

「いえいえ」

「しかし、外の世界に主ね…。あなたの主に少し興味が出たわ。簡単でいい、話してくれないかしら?」

レミリアはそう言うと椅子に腰かけた。

「そういえば、私も聞いたことないわね」

「私もだぜ」

霊夢も魔理沙も一十百の主という存在に興味津々のようだ。

「ほぇっ? そうですね……。僕には主がいるんですけど、その主に主がいるんです」

「主に主? 変わってるわね」

「まず僕の主のことですけど、背の高さはこれくらいで、髪の色は薄緑色で、これくらいのナイフを携帯している…」

「ちょ、ちょっと待って!」

霊夢がいきなり話を止める。

「どうしました?」

「背の高さ……低すぎない?」

一十百が示した主の背の高さはだいたい40㎝前後といったところ。

確かに小さすぎるといえば小さすぎる。

「そうでしょうか? これくらいで間違ってないと思いますけど…」

「主って、人間……じゃないわよね」

「はい! 殺人人形《キリングドール》という種族です」

「ドールって……人形か!」

「そうですよ」

さも当たり前のようにあっさりと肯定したが、通常の思考ではありえない発想だ。

「……えっと、何か複雑な事情があったのかしら?」

気の毒そうに十六夜咲夜が尋ねる。

「ほぇ? 僕が従者にしてほしくて頼んだんですけど……、複雑な事情はないと思います」

「そ、そう…」

いろいろ言いたいことがあったようだが、期待した回答が返ってこないとわかったのか諦めたような表情で納得することにしたようだ。

 

「それで、その主の主…僕からすると大主になるんですけど、その方は背はレミリアさんくらいで、髪は魔理沙さんみたいな金髪でストレート、厳しいところもあるけれど立派な大主さんです」

「なるほど。それで、人間じゃないわよね。その主も」

「はい! 種族は…」

「吸血鬼、かしら?」

そこまで黙って聞いていたレミリアが初めて口を開いた。

「はぅっ! はい、その通りです! でも、なんでわかったんですか?」

「…まあ、私の能力もあるけど……、それ以上に強い気配を感じたから、かしら」

「強い気配ですか……」

「まあ、同族ならではの勘といったところね。正直に言って、敵にはしたくないわ。同じ吸血鬼として」

「それほどなの?」

レミリアと激戦を繰り広げた霊夢が尋ねる。

一度の弾幕勝負で相手の力量はだいたい把握できる。

少なくとも、レミリアは弱くない。

むしろ、かなりの強敵の部類に入るほどの力の持ち主だ。

それが敵にしたくないほどの実力なのか

「う~ん、僕には本気がどれくらいなのかはわからないです……。あ、でも七割くらいでこの館より大きな鬼…というよりも神様みたいのを氷漬けにして粉々にしちゃいましたから…」

「「「「え゛……」」」」

四人とも完全に目が点状態。

その表情を見て、初めて一十百は理解する。

自分の主がどれほど実力者なのか。

「あ、えと……すごい方なんですね。まだ執事を初めて短い期間とはいえ、知りませんでした、あはは」

「あはは、じゃないわ! そんなとてつもないほどの実力のある吸血鬼の執事なの?」

「正直信じられないぜ」

「でも、十百君の実力を見るに……それくらいの実力はあると思うわ」

「外の世界は随分と広そうね」

四人がため息を吐く。

とても疲れた表情をしているのをみて、一十百が一言。

「お疲れでしたか?」

「「「「誰のせいだと思っているの!!」」」」

「ふぇえ!?」

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

紅魔館の大修復:異変を止めるために壊してしまった紅魔館を修復しました。中に入ってみると、とても広くて全部はまわりきれませんでした。でも、修復はちゃんとやったので紅魔館の方々には迷惑をかけずに済みました!by一十百  主に仕えるものとして、ある意味尊敬するわ。真似はできないけど……。by咲夜  咲夜には人間のままでいてほしいわ。いろんな意味で。byレミリア

レミリア・スカーレット:紅魔館の主で咲夜さんの主の吸血鬼さんです。小柄な女の子の姿をしていますけど、とても鋭い気配と高いカリスマ性を感じます! さすがは一つの館をまとめ上げるほどの方です!by一十百  機会があれば、あなたの主と話をしてみたいわね。byレミリア

二人の主:外の世界にいる僕の主です。元気にしているかなぁ……。by一十百  大丈夫なんじゃないの?by霊夢  まあ、すごい主だしな。by魔理沙  マア、今ノトコロ問題ナイゼ。シッカリヤレヨ。by???  安心しろ、一十。お前ばかりに頼るわけにもいかないからな。by???  あら? 外の世界からの干渉かしら? まあ、問題はなさそうだから放っておきましょう。by紫
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