東方お仕事記   作:TomomonD

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十四仕事目 赤く染まる地下室は誰のため?

幻想郷にもひと時の平和が訪れている。

夏の日差しとともに何事もない毎日が送られている。

 

一十百は一通りの家事を済ませると、とある場所に毎日向かっている。

前の異変の元凶でもあり、赤々とそびえる巨大な館、紅魔館。

なぜ、一十百が紅魔館に毎日通うようになったのかというと、その原因は妖精メイドである。

妖精とは、人間に比べると総じて頭が悪い。

それはメイドの仕事にも影響してしまっている。

しかし数日前、一十百が遊びに来たとき妖精メイドと一緒に手伝いをした。

次の日から、妖精メイドたちの動きが見違えるようになった。

まあ今までが今までなので、まだまだ上出来とは言えないが、それでも目に見えて手際が良くなっていた。

今まで紅魔館の仕事を自分の能力を使いほぼ一人でやっていた十六夜咲夜にしてみれば、これは大きな発見であった。

メイド長でもある十六夜咲夜はこの異変にいち早く気づき、一十百に妖精メイドたちの指導を頼んだのである。

一十百はすぐに了解した。

このあたりで何か幻想郷でのお仕事を探そうと思っていた一十百にしてみても、とてもよい申しであったのは間違いない。

それ以来、一十百はほぼ毎日紅魔館に赴くようになった。

 

 

「……ということよ」

「なるほどねぇ…。おかげで昼食がさみしくなってるんだけど…」

「まあ、仕方ないんだぜ」

博麗神社には、霊夢、魔理沙それとレミリアが集まりのんびりとした午後を送っている。

異変解決から数日が経ち、レミリアが博麗神社に来るようになった。

人間たちと話し合うのが楽しいのか、それとも窮屈な館の外に出て羽を伸ばしたいのか、目的ははっきりとしていない。

「レミリア、毎回思うんだけど……、紅魔館の主なのにここにいていいの?」

「大丈夫よ、咲夜は優秀だもの」

「それもそうだけど、主不在でいつも通りの日々が送れる紅魔館って……ねぇ」

「主の必要性が問われるんだぜ」

「それに、一十百もいるでしょう。咲夜の実力と一十百の統率力があれば多少の外敵程度じゃ入ることすら難しいでしょうからね」

「一十が紅魔館を乗っ取ることができそうで怖いぜ」

「そんなことしないでしょう?」

「まあ、そうよね……」

 

のんびり話していると雲行きが怪しくなってきた。

あれほど晴れていたのにいきなり雨が降り出してもおかしくないような空模様だ。

「これは降り出しそうね……。洗濯物取り込まないといけないかしら」

「しっかし、いきなりだぜ。今までいやになるほどの快晴だったのに」

「これは……、パチェの魔法…? でも、わざわざなんで…」

よく見ると、紅魔館の周りだけに大雨が降っている。

「吸血鬼って雨…というよりも流水が苦手だっけ?」

「これじゃ、帰れないじゃない」

「とうとう主を追い出しにかかったか?」

「…あれは追い出すってよりも」

「中から出さないようにしてる、って感じね?」

「もう出てきてるぜ?」

「……あ」

雨をみて、レミリアが何か思い出したようだ。

その表情がだんだんと暗く、冷たいものに変わっていく。

「どうしたのよ?」

「面倒なことになったわね」

「何がだぜ?」

「ちょっと、身内が暴れてるのよ。正直、壊すことにかけては私よりはるかに上手なのがね」

「それは面倒ね」

「いつもならここまでする必要はないのに、今日はどうしたのかしら?」

「機嫌でも悪いんじゃないのか?」

「ま、ありえるわね」

「「ありえるのか……」」

そこまで言ってレミリアはふぅと腰を掛ける。

「とにかく雨がやむまでは私は行動できないから」

「まったく、紅魔館もひどい主を持ったわね」

「同意見だぜ」

「まあ、咲夜に任せるわ。たぶん……あ、そういえば、一十百もいるんだったわね」

「……それって、もしかして」

「一十の性格だと、もしかするんだぜ」

「人間じゃ…まあ咲夜も人間だけど、相手にならないわ。最悪、パチェが実力行使で止めるでしょ」

「レミリア、一十百を過小評価しすぎよ。あのメイドとの弾幕戦で一発たりとも当たらなかったんだから」

「確かに、一十って避けることに関してはかなり上手いからな」

「まさか、パチェじゃ止められないって?」

「そう言ってるのよ」

「まあ、喘息もちにはつらいだろうな」

そう言って二人が立ち上がる。

「行くわよ」

「ちょ、ちょっと……私は雨を越えられないんだって…」

「着くころにはやんでるぜ」

「しかたないわね、身内の不備を他人に任せるわけにもいかないものね」

レミリアもしぶしぶ立ち上がった。

 

 

魔理沙が言った通り、三人が紅魔館に到着するころには雨も上がり今まで通りの強い日差しが差し込む天気になっていた。

「……中国がいないわね」

「門番も雨宿りかしら?」

「たぶん昼寝でもしてるんだぜ」

「まあ、いいわ。雨が上がったってことはパチェが別のことに力を入れたってことだから」

「一十百相手に本気になったのかしらね?」

「一十が弾幕勝負してることは確定なのか?」

「まあ、確定でしょうね」

三人が紅魔館の扉を開ける。

「お嬢様…」

「!! 咲夜。咲夜がここにいるってことは……」

「ええ、お察しの通りです」

「アレの相手は……彼には重すぎると思うわ」

「それが……」

 

咲夜の話を聞くにつれて一十百の行動が明らかになってきた。

暴れだしたレミリアの妹、フランドール・スカーレットを止めようと地下の部屋に向かう。

そこでパチュリーと遭遇。

どうしても止めると言って通ろうとするため、弾幕戦が行われる。

今日のパチュリーの体調はすこぶる良く、ほぼ全力でのスペルカードを使うことができた。

対する一十百は、一枚たりともスペルカードを使う気がないと先に公言したらしい。

「それで……一十百は?」

「確かに一枚たりともスペカを使わず、パチュリー様のスペカを避けきりました」

「……そう」

「ほら、言ったじゃない。一十百を過小評価しすぎだって」

「でも、なんでわざわざスペカ使わなかったんだ? 使ったって問題はなかったと思うぜ」

「十百君は妹様と……その、遊ぶつもりで向かったようで」

「はい?」

「なんでも…“暇だから暴れてるんですよね? なら、何か暇つぶしをしてあげれば機嫌も直りますよ!”…だそうです」

「それで、フランが何の遊びを好むか聞いたわけね」

「はい」

「なんて答えたのよ?」

「弾幕ごっこと」

それを聞いて一十百の行動がやっと理解できたようだった。

「つまり、全力で遊ぶために一枚たりともスペカを使わなかったと……」

「はい」

「まあ、もう行ってしまったならいいわ。追いかけるわよ」

「わかってるわよ!」

「急いだほうがよさそうだぜ……。なんか、すさまじい衝撃が響いてくるぜ」

 

 

地下室前の大図書館には、パチュリー、小悪魔、美鈴の三人がいた。

「こんなところにいたのね」

「レ、レミリア様!」

「まったく、あなたの本業は門番でしょうに……。まあ、心配なのはわかるけど」

「それもそうなんですけど、今さっき呼ばれてつい…」

「呼ばれた?」

「レミィ、私が呼んだのよ。一十百に渡しておこうと思ってね」

そう言ってパチュリーが見せたのは真っ白のスペカ。

「それは、スペルカードの素ね。でも、そんなものなら別に…」

「一十百にとってはそこの門番から貰うスペカの素とパチュリーから貰うスペカの素はまったく別物よ」

「??」

「一十は持っていた人のスペカに近いスペカを作り上げるんだぜ。だからこそ、そこの中国を呼んだんだろ?」

「まあ、そうよ」

「あの~、私の名前は…」

「とにかく、彼のスペカを増やすために私が呼んだのよ」

「そうだったのね」

「これで、一十のスペカって何枚だ?」

「私、魔理沙、ルーミア、チルノ、あと…鼠妖怪のと…パチュリー、中国かしら」

「私のも渡しておきました」

「て、ことは八枚か……。結構多いな」

「フランは…確か十枚のはず。もしも、スペカ合戦になるとしたら、不利ね」

「不利というなら、通常弾幕を放てない一十百はもともと不利よ」

「……なんで行かせたのよ」

やれやれと魔理沙が両手ひらひらさせる。

「まあ、一十ならなんとかなると思うぜ。止めても聞かないだろうし」

「見に行ってみるしかないわね」

「咲夜、パチュリーはここに残って。中国、あなたは門番の仕事に戻りなさい」

「あの~、私の名前は…」

「行くわよ!!」

三人は地下への階段を下りていった。

「私は紅美鈴ですって…」

「わかったから早く門番の仕事に戻りなさい」

 

三人が下に向かうにつれて、衝撃音が段々と大きくなってくるのがわかる。

「結構派手にやってるわね」

「手加減とかしないから、派手になるのは仕方ないわ」

「今になって一十の命が危うい気がしてきたんだが……」

「まあ、腕くらいですめばいい方ね」

「おいおい…」

地下の一番奥の扉が見えてきた。

他の扉と違い、頑丈な作りになっている。

「あの奥よ」

重い扉が開かれる。

その瞬間、跳ね返ってきた弾幕次々と飛び出してきた。

「あぶなっ!!」

「奥って、進めないじゃない!」

「そんなことわかってるわ。ここまでが限界ね…」

「ここでこれだけの弾幕が飛び交ってくるって事は、中はこれの何倍もの弾幕が飛び交ってるってことだよな…」

その時、衝撃音にまぎれて確かに声が聞こえてきた。

同時に二人、一人はよく聞き馴染んだ声、一十百のものだ。

もう一人は、まだ幼さが残るような無邪気な女の子の声。

「禁弾『スターボウブレイク』」

「情景『虹にかかる賛辞』」

同時に発せられたスペルカード発動宣言。

程なくして、虹色の弾幕が次々と扉から放たれていった。

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

妖精メイドたちの指導:咲夜さんに頼まれたので紅魔館の妖精メイドたちに指導をしています。掃除のやり方だったり、洗い物だったり、食事の運び方だったり、色々です。僕なんかが教えて大丈夫なんでしょうか? ちょっと心配です。by一十百  目に見えて妖精メイドたちの実力が上がっているわ。これからもよろしくお願いするわ。by咲夜
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