東方お仕事記   作:TomomonD

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十六仕事目 破壊を司る妹は彼女なのか?

一十百がスペルカードを持ち奥の扉に向かおうとする。

そのとき、咲夜が一十百に声をかける。

「十百君、ちょっと待って」

「ほぇ? まさか、今度は咲夜さんが…」

「そうじゃないわ。スペルカード、何枚持っているのかと思ってね」

「僕は…五枚ですね」

「…少し心もとないわね。妹様は十枚のスペルカードを所持なさってるわ」

「ふえぇっ! 十枚ですか! むぅ~」

「あなたの動きなら、フランのスペカ二枚に対して一枚でいいんじゃないの?」

「それじゃ遊んだことにはならないと思うんです。一枚に対して一枚じゃないと」

「ふぅ…、本気でフランと遊びとして弾幕勝負をするつもりなのね」

やれやれといった感じでパチュリーはため息をついた。

「力になれることがあれば手伝うけど。何かあるかしら?」

「…スペルカードの素ってありますか? ぜひ譲ってほしいんですけど」

「あるけれど……、ここで作っていくつもり?」

「いえいえ。それと、咲夜さんも持っていたら譲ってくれませんか?」

「枚数なら結構あるから、わざわざ咲夜から貰わなくても…」

「う~ん、なんだか僕のスペルカードって素をくれる人が違う方がいいみたいで」

「?? 詳しく話してもらえる?」

 

 

一十百は今までのスペルカードの入手経緯を話した。

その効果も、弾幕の形もわかりやすく説明した。

それを聞いてパチュリーは納得したようだ。

「なるほど。普通じゃ考えられないけど、実際そうなってるから本当みたいね。小悪魔、門番を呼んできて」

「はいっ」

小悪魔が大図書館から出て行った。

 

するとすぐに紅美鈴と一緒に戻ってきた。

「お呼びですか?」

「ええ。あなたのスペカの素、余ってるかしら」

「何枚か、余ってますけれど…」

「一枚、一十百に渡してあげて」

「私のですか? よくわかりませんが、はい」

そういって、真っ白のスペカの素を一十百に手渡す。

「ありがとうございます、美鈴さん」

「私のも渡しておくわ」

咲夜もスペカの素を手渡す。

「ありがとうございます、咲夜さん」

「私のを渡して、これで八枚ね」

パチュリーも同じように手渡す。

「はいっ。でも、八枚だと二枚足りないですよね…」

「そうね。そういえば、フランのスペカの中で確か一枚だけ変則的なスペカがあったわよね」

パチュリーが確かめるように咲夜に尋ねる。

咲夜も少し考えた後、思い出したように手を打った。

「ええ、そうですね。十百君、妹様のスペルの中には妹様の姿が完全に消えるスペルがあるの。そのときはスペルも、撃てないだろうけれど通常の弾幕も通用しないわ」

「そんなスペルカードがあるんですか。ならそのときは、避けているだけにします」

これで一十百とフランドールと呼ばれたレミリア・スカーレットの妹とのスペカの差は一枚となった。

「う~ん、一枚くらいなら誤魔化せるかなぁ……」

「その前に力尽きることが無いようにね」

「はいっ」

 

 

一十百は一度大きく伸びをすると、ふうと息を吐いた。

「それじゃ、そろそろ行きます!」

「フラン様のことを頼むわね」

「任せてください! それじゃ、行ってきます」

一十百は奥の扉を開く。

中は一本道になっているようだ。

少し先に今までとは違った扉が見える。

木で作られた扉ではなく、鉄で作られた頑丈そうな扉。

「この先に、レミリアさんの妹さんが…」

扉に手をかける。

ズズゥンと音を立てて扉が開かれる。

 

開いた扉の先には、異様な部屋が広がっていた。

ベッドやタンスなどの家具は一通りそろっている。

紅魔館特有の赤色の壁で囲まれているところも普通の部屋と同じだ。

異様というのは、装飾品なのか、それとも本物なのか……、床や壁に転がる骸骨。

頭蓋骨が山のようになっていたり、丸々人一人分の骸骨が壁に寄りかかっていたりしている。

そして、部屋の中央には一人の少女が座っていた。

「あなたは、ダレ?」

振り返った少女は疑問を投げかける。

見た目は普通の少女だ。

金色の髪に赤色主体の洋服を着ている。

唯一普通と違うところといえば、背中から見える翼だろうか。

細い枝に、七色の宝石をつけたような、翼というのにも不自然な翼。

それを除けば普通の少女と変わりない。

 

とにかく問いかけられた疑問に一十百は答えることにした。

「僕は一十百。えっと……レミリアさんの妹さんだよね」

「そうだよ。私はフランドール・スカーレット。それで、どうしてここにきたの?」

「暇そうにしていたから、なんだけど……。本当は忙しかった?」

「ううん、暇だよ。もしかして、遊んでくれるの?」

「もちろん。そのためにここに来たんだから」

その言葉を聞いて金髪の少女はにっこりと笑った。

そして、ゆっくりと立ち上がる。

七色の宝石の翼が大きく羽ばたいた。

ふわりとその姿が浮く。

「遊んでくれるのはうれしいけど…」

「ほぇ?」

「簡単に壊れないでね」

「……ぜ、善処するね」

 

フランと名乗った少女が弾幕を展開する。

全方向に輪となって放たれる。

避けにくい弾幕だが、この程度ならば一十百は苦戦をする事はない。

テンポよく一十百が避けていくのを見て、少女はにっこりと笑う。

「このくらいじゃ、当たらないみたい。よかった~、これなら…」

一枚のスペルカードを取り出した。

初めの一枚で、すでに重い空気を纏っている。

「禁忌『クランベリートラップ』」

スペルカードが発動すると、四つの魔法陣が放たれた。

四つの魔法陣からは一十百を狙うように赤色と青色の弾幕が次々と放たれる。

「一枚目のスペルカードなのに、避けにくい! わっ」

一十百の目の前を赤色の弾幕が掠めていく。

 

このままだと…、危ないかも。

そう思った一十百は、一枚のスペルカードを取り出す。

本当なら一枚目のスペルカードを避けることで一枚分のスペルカード差をなくそうと考えていた。

しかし、大図書館ほど広くない室内と、難易度の高いスペルカードのせいで一枚目からスペルカード戦を余儀なくされた。

「よしっ、いくよっ! 記音『零十区間』」

使ったのはチルノから貰ったスペカの素で作られたスペルカード。

一十百から数字のような弾幕が次々と放たれる。

「なんだか変なスペカ」

バラバラに放たれる数字弾幕を避けながらそう感想を述べる。

二人は相手の放つ弾幕を次々とかわしていく。

 

一枚目のスペルカードが終わろうとしていた。

「意外と丈夫なんだね。なら…」

フランドール・スカーレットはゆっくり手を前に伸ばす。

赤黒い光が集まり、一本の棒のようなものを構築する。

時計の長針を少し曲げたような、槍とも刀とも付かないようなもの。

その棒状のものにスペルカードを重ねる。

「禁忌『レーヴァテイン』」

スペルカードが消え、赤い光が棒状のものに集まる。

そして……、紅い光に包まれた巨大な剣が現れた。

「ふぇえっ! レーヴァテインって確かほくおー神話の剣! 本物じゃないと思うけど…、気をつけないと」

一枚目のスペルカードを放ち終わった一十百は紅く光る剣に集中した。

「いくよー!!」

レーヴァテインが振り下ろされる。

その剣戟が弾幕となって放たれる。

一十百はその威力を見誤ることなく、大きく回避した。

見た目の何倍もの範囲を一瞬にしてなぎ払ったことを考えると、一十百の回避は間違っていなかった。

部屋の中央の辺りにいたはずの一十百は入り口の扉ギリギリまで下がっていた。

「あ、あぶなかったぁ……。本当はここまで下がるはずじゃなかったけど、思いっきり下がっておいてよかった~」

 

一十百が二枚目のスペルカードを用意する。

「土天『曇天色の大地』」

灰色の弾幕が一十百の周りに集まる。

それらは鼠の形をとり、一斉に走り出す。

「う~、鼠嫌い」

嫌そうにレーヴァテインを振り払う。

その一撃で一十百の放った鼠弾幕の半数が吹き飛んだ。

一十百のスペルカード、土天『曇天色の大地』は鼠弾幕が弾け、弾幕をばら撒くことによって初めて本来の威力になる。

今回のように鼠弾幕そのものを消し去られては本来の威力の半分も出せない。

「……うわぁ、これはマズイかも」

それでも残った鼠弾幕が弾け、赤と青の弾幕に変わる。

しかし、その弾幕もフランの持つレーヴァテインにかき消されていく。

結果、フランに届くことになった弾幕はほんのわずか。

難なくそれを回避すると思いっきりレーヴァテインを振り回した。

通常の弾幕ですら当たることを許されない一十百は剣戟と直撃を紙一重でかわしていく。

剣戟の弾幕が当たれば大怪我をするだろう。

レーヴァテインに当たれば……形も残らないだろう。

その恐怖を踏み越え、ギリギリのところを抜けていく。

 

振り回され、振り下ろされ、なぎ払われ……。

そして、何十度目かの時にレーヴァテインから光が失われる。

「あ……」

「ふぇ~、避けきれた~」

一十百がほっと一息つく。

そして、レーヴァテインを振り回していた少女を見る。

少女、フランはニヤリと笑っていた。

その笑顔は微笑ましいものではなく、一十百にとっては気を引き締める笑顔となった。

「ここまで、壊れなかった人間は久しぶり」

「あはは……。まだ、スペルカード二枚目だよね。まだまだ、でしょ?」

「そうだよ。どこまで壊れないか、ためさせて」

三枚目のスペルカードがその手に持たれた。

フランの手には他に三枚のカードが持たれている。

スペルカードとは違う、別のカードだ。

それを上に投げる。

舞いながら空に投げ出されたカードに一十百は見覚えがあった。

ハート、クラブ、ダイヤ……それがカードの真ん中に一つだけ描かれている。

「トランプ?」

「禁忌『フォーオブアカインド』」

スペルカードの光を浴びると、その三枚のカードが形を変える。

その形、いや…その姿は目の前のフランとまったく同じものとなった。

「ほぇっ、増えた!」

四人になったフランドール・スカーレットがいっせいに弾幕を放つ。

初めのころに放ってきた、輪となった弾幕だ。

一人だけなら避けやすい弾幕だが、四人一斉となると話が変わってくる。

弾幕と弾幕の間の距離が一気に縮まる。

これだけでも十分すぎるほどだが、さらに大き目の弾幕を放ってきた。

細かい弾幕に気をとられれば大きな弾幕の直撃する。

逆に大きな弾幕を避けようとして細かい弾幕にぶつかってしまう。

 

この弾幕の嵐の中、一十百は三枚目のスペルカードを取り出した。

「少しでも、弾幕の間に隙間が出来れば通れる! 濁点『ダークオン・ハート』」

一十百の周りにハート状の弾幕が放たれる。

そして、少し前に弾幕の川が流れる。

それを越えたハート状の弾幕は鳥の形の弾幕となり、四人になったフランへと向かっていった。

「意外と速い。でも、当たらないよ」

「あれ? でも、トランプのほうには……当たってる」

鳥の形の弾幕は四人のフランに放たれた。

そのうち、避けたのは一人。

他の三人は、弾幕が当たろうとそのまま弾幕を放ち続けた。

一十百がわずかにできた弾幕の隙間を見つけてかわしていく。

 

少しすると、弾幕の感覚が広くなった。

避けることに集中していた一十百は自分の弾幕が放たれている先を見る。

すると……。

「あ、一人減ってる…」

鳥状の弾幕を受けすぎたのか、四人いたフランドール・スカーレットは三人になっていた。

足元にはぼろぼろになったクラブのトランプが落ちていた。

一十百の狙いが変わる。

「狙うのは、トランプだったあの二人」

一十百は完璧にはスペルカード操作はできない。

けれど、ある程度なら誘導できる。

鳥状の弾幕がトランプだったフランドールに向かっていく。

数十の弾幕を受けるとフランドールの姿が消え、ぼろぼろになったハートとダイヤのトランプが現れた。

それと同時にフランドールの持っていたスペルカードから光が消える。

一十百のスペルカードからも同じように光が消えていった。

 

「三枚目、突破っ!」

「まだまだだよ」

休む間もなく、四枚目のスペルカードが構えられていた。

「禁忌『カゴメカゴメ』」

淡い緑色の弾幕が直線的に放たれる。

その弾幕の軌跡がそのまま弾幕となる。

いつの間にか一十百の周りには、檻のような弾幕が出来上がっていた。

しかし、その弾幕自体動くわけではない。

今までのスペルカードに比べれば楽と、一十百が思った瞬間それは打ち砕かれることとなった。

強い光を放つ緑色の弾幕が囲った弾幕を弾き飛ばしながら一十百に向かって放たれた。

その衝撃は囲っていた弾幕全域に広がり、その弾幕の檻が一斉に崩れ動き出した。

「え、え、ちょっと…うわっ」

油断するつもりはなくても、ほんの少しの安堵が危険に繋がる。

一十百の右肩布を弾幕が破っていった。

もしも、あと数cm一十百に近ければ、腕ごと持っていかれたかもしれない。

急いでスペルカードを用意する。

「囲み崩す弾幕は僕も持ってる! いくよっ! 崩落『多重決壊』」

フランドールの周りに四角い弾幕結界が三重に張り巡らされる。

突如現れた弾幕結界にフランドールの移動が止まる。

直後、音を立てて結界が崩れる。

「私のに似てる…ね」

崩れ去る弾幕結界を右に左に避けフランドールは避けきる。

一十百も張り巡らされ、崩れた弾幕の檻を跳び越えかわす。

 

 

まだ、二人のスペルカードは輝いている。

一十百とフランドール・スカーレットの弾幕ごっこは半分も終わっていなかった。

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

フランドール・スカーレット:レミリアさんの妹さんで、綺麗な羽根をした女の子です。弾幕戦がとっても得意みたいで、強力なスペルカードが何枚もあります! ちょっと危なげな女の子だけど、悪い子では決してないようです。by一十百  ここまで壊れなかった人間って初めてかも!byフラン
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