東方お仕事記   作:TomomonD

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二十二仕事目 白と赤を繋ぎ青を越える

幻想郷に木枯らしが吹くようになる。

秋が訪れ、博麗神社の周りにも紅葉が訪れてきている。

 

 

博麗霊夢はうとうとと縁側で午後の暖かな日差しを浴びて昼寝をしているようだ。

「すうすう…」

そして、その夢はどこか遠い場所をさまようような夢のようだった。

 

「?? 私なんで、こんなところにいるのかしら」

周りは森に囲まれた道を歩いている。

今まで見なれてきた風景とは違う、初めて見る風景だ。

「幻想郷にこんなところあったかしら?」

ゆっくりと、歩みを進めると一つの建物が見えてきた。

木で作られた大きな館だ。

 

その館に近づくと、不意にどこかから強い気配を感じる。

妖怪退治を専門としていた霊夢はその気配を受け、懐から札を取り出そうとする。

しかし……。

「!! 札がない……。そんなはず…」

どこを探しても札も、スペルカードもない。

強い気配はどんどんと近づいてくる。

そして……、その強い気配が目の前に降り立った。

「くっ……、どうしてないのよ!! ……えっ」

霊夢が正面に視線を戻す。

そこには、黒く巨大な狼がこちらを見下ろしていた。

鋭い視線は威厳に満ち溢れ、その姿は禍々しくもあり、同時に神々しくもあった。

間違いなくただの狼ではないだろう。

多くの妖怪を見てきた霊夢にはわかる。

今まで見てきたどの妖怪よりも遥かに強く、圧倒的であった。

もし、札とスペルカードがあっても、到底かなわなかったわね…。

諦めて霊夢が目を閉じる。

けれど、いつまでたっても自分を襲う牙や爪の感覚がこない。

ゆっくりと目を開けると、そこにはしっかりと自分を見据えている黒狼がいた。

その口がゆっくりと開かれる。

「……忘れ閉じられた世の巫女よ。私の主を…頼むぞ。その礼として、いつか私が力を貸そう」

「えっ……、何のこと?」

霊夢が尋ねようとすると、世界が暗転する。

 

「はっ!!」

気が付けば縁側で横になっている自分がいた。

「……夢?」

それにしては随分とリアルな夢だったわね。

霊夢は自分の手を胸の上に置く。

心音はまだ高鳴っている。

「ただの夢……だと思うのは楽観的すぎるわね」

 

 

そのころ、一十百は紅魔館を訪れていた。

目的は線路の設置だった。

「つまり、この紅魔館と博麗神社を繋ぐ道を作りたいと、そういうわけね」

「はい! レミリアさんが博霊神社にいらっしゃるとき、雨や日の光に邪魔をされ大変そうだったので」

「この前見せてもらったけれど、あの鉄の箱に乗って移動するわけね」

「はいっ!」

確かに日の光は日傘でどうにかなる、しかし雨になるとそうはいかない。

まあ、毎日博麗神社に行くわけではないので、雨の日に外出しなければいいだけなのだが……。

「わかったわ。その線路とかいうものの設置を許可するわ」

「ありがとうございます!」

一十百は図面を広げる。

それは紅魔館の敷地が書かれており、赤いラインで線路の位置が書かれているものだった。

「このあたりに設置して、ここから紅魔館まで屋根つきの駅を作る予定です」

「随分大がかりな作業になりそうね」

「ふぇ? そうでしょうか? たぶん二、三日で完成しますよ?」

「相変わらず早いわね…」

「それでは、一度戻って材料を取ってきますね」

そういって、一十百が退出しようとする。

「ちょっと待ちなさい。帰る前に一度フランに会ってあげて。暇そうにしていたから」

「あぅぅ…、弾幕ごっこは無理かもしれないですけど、わかりました」

一礼して、一十百が退出した。

 

 

紅魔館におけるフランドール・スカーレットの部屋は地下にあるものだったが、前の一件以来その部屋は使われなくなり、新たに二階の一部屋がフランの部屋となった。

一十百がその部屋をノックする。

「フランちゃん、いる? 一十百です」

「十百! 待って、今あける!」

かちゃりとドアが開き、満面の笑顔のフランが立っていた。

「久しぶりだね。元気そうでよかった」

「うん! でも、暇だよ~」

 

フランはやはり弾幕ごっこしたかったようだが、室内でやるとかなり荒れてしまうということで別の遊びをすることになった。

色々ある中、一十百が選んだのは……。

「どう?」

「すごい! 私もやってみたい!」

一十百の手には細い縄が持たれている。

そして、部屋の中央では木彫りの円状のものが回転していた。

つまり、独楽である。

一十百が今さっき作ったもので、片手と同じくらいの大きさのものである。

「この縄をこう巻いて…」

「こう?」

「あとは、さっき僕がやったみたいに思いっきり引っ張る」

「えいっ!」

フランの投げた独楽は一十百のようにうまく回らず、よたよたと周りすぐに倒れてしまった。

「う~……」

「まあ、こればかりは練習しないとうまくならないかも」

「練習すればうまくなる?」

「もちろん!」

「でも、これだけじゃすぐに飽きちゃわないかなぁ」

少し、一十百が考える。

 

そして、何かを思いつく。

「独楽ってただ回すだけじゃないんだよ。フランちゃん、レーヴァテインだっけ、あれを持ってくれる? スペカの状態じゃないほうで」

「こう?」

時計の長針のようなものをフランが持つ。

「そのまま動かないでね」

一十百が独楽に縄を巻いていく。

「?」

「いくよっ! ほいっ!」

ヒュンと風を切る音が聞こえ、独楽が空中に放たれる。

落ちてきた独楽はフランの持ったレーヴァテインの先端で落ちることなく回転していた。

「わ~! すごい!」

「独楽って、ただ回すことしかできないけど、おもしろいでしょ」

「うん!」

回転が揺らいで落ちてきた独楽をフランがキャッチする。

 

「僕は線路を作らないといけないから、そろそろ戻るね」

「もう帰っちゃうの?」

少しだけフランがさみしそうな表情をする。

「…うん。そうだなぁ、そうだ!」

一十百は手に持っていた縄をフランに渡す。

「これはフランにあげるよ。だから練習してみて」

「……うん!」

ギュッとフランが縄を握る。

「次来てくれたとき、十百が驚くくらいに上手くなってるから!」

「楽しみにしてるよ!」

そういって一十百は手を振って退出して行った。

 

 

一十百が博麗神社に戻ると、霊夢が難しい顔をして縁側に座っていた。

一十百が帰ってきたことすら気が付いていなようだ。

「…霊夢さん?」

「………」

呼びかけても返答がない。

相当考え込んでいるようだ。

「う~ん、お茶入れますね」

そっと横にお茶を置く。

「ありがと」

「ふえっ! 気が付いていたんですか!」

「そりゃ、気が付くでしょ」

 

何を考えていたか尋ねてみると、少し考えた後、霊夢は自分が今さっき見た夢の事を話した。

その話を聞いて、一十百は思い当たる節があるのか何かを描き始めた。

一枚目の絵を見て、博麗霊夢は驚いた。

自分の夢に出てきた館と全く同じ絵がそこには描かれていた。

「一十百、これって……!」

「霊夢さんが見た館って、これですか」

「そう! でも、なんで…」

「じゃあ、もしかして…」

そういって、一十百は二枚目の絵を見せる。

霊夢の目が大きく見開かれる。

そこには自分が見た、あの禍々しくも神々しい狼が描かれていた。

「!! これよ!」

「やっぱり…」

「一十百、これ一体なんなの?」

「一枚目の館は、僕の主のログハウスです」

「あなたの主? ……てことは、外の世界の風景、ってこと?」

「はい。なんで霊夢さんが外の世界の夢を見れたのかは分からないですけど……」

「それで、この狼は?」

「これはポチです」

「はい?」

霊夢の頭に大きな?マークが浮かんだ。

「ポチ?」

「はい! 僕の愛犬です」

「えっ!! あれを飼ってるの?」

「そうですけど……」

その時になって思い出す。

“私の主を……頼むぞ”と確かに言っていた。

つまり、一十百がこっちにいることを知っている。

「ねえ、ポチ……だっけ。あの狼って話せるの?」

「人の言葉ですか? 話せませんよ。それと、狼じゃなくて犬ですよ」

「狼でしょ?」

「犬ですって」

霊夢がはぁ~とため息を吐く。

 

一十百のものの見かたは普通の人とは違う。

今回もその類だろう。

「でも、なんで私がその夢を見たのかしら?」

「ポチが何か伝えたかったんじゃないでしょうか? 僕の主が言うには、とても強い力を持っているらしいので」

「伝えたかったこと?」

ゆっくりと自分の夢を思い出す。

力を貸すと言ってきたような気がする。

何かの時に力を貸してくれるのだろうか?

それなら心強いのだが……。

「どうやって力を貸すつもりかしら?」

「ほぇ?」

「何でもないわ」

霊夢は少し遠くを眺めた。

あなたの主は心配しなくても立派に生きてるわよ。

 

「そういえば、紅魔館に行ってたんじゃないの?」

「はい。レミリアさんの許可がもらえたので、博麗神社と紅魔館を繋ぐ線路を作ることになりました」

「……線路ってことは、あの電車とかいうものを動かすの?」

「はい! 霧の湖を迂回して、紅魔館までの」

「随分…長いわね…。何年かかるのかしら」

「ふぇ? そんなにかかりませんよ。二日、三日くらいで完成の予定です」

「はやっ!!」

「それでは、さっそく行ってきます!」

どこから出したのかわからないような工具を持って、一十百は博麗神社の階段を下りて行った。

「本当に三日くらいで仕上げるつもりかしら?」

 

 

霊夢の期待と心配通りに、ありえない速度で線路の開拓は進み……。

三日で霧の泉を迂回する線路、紅魔館の屋根つきの駅の二つを完成させた。

「本当に完成させるなんてね…」

「まあ、一十百ならやると思ってたわ。それで……これは?」

「テープカットです! 博麗神社と紅魔館を繋ぐ線路の完成を祝して、霊夢さんとレミリアさん、それと霧の湖を迂回するからチルノにこのテープを切ってもらいます」

「だから呼ばれたのか! さすがあたい!」

紅魔館の前にリボンがかけられて、一十百の手から三人にはさみが渡される。

「外の世界だと、こんなことをやるの?」

「はい! せっかくですから」

「まあ、それほどの事でもないしやりましょう」

「それじゃ、切ってください!」

チョキンと三つのはさみの音が重なる。

こうして、博麗神社と紅魔館を結ぶ線路は無事作られたのだった。

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

霊夢さんの夢:僕の主のログハウスとポチを見たそうです。外の世界の夢を見るのは初めてだそうですから、ポチが何かを伝えたかったんだと思います。by一十百  結構、怖い夢だったわよ……。by霊夢

独楽:フランちゃんが暇にならないように作った独楽です。練習してくれるといいなぁ~。by一十百  練習してるよ~、期待してて!byフラン  私もやってみようかしら?byレミリア

博麗神社‐紅魔館の線路:無事に完成しました! これでレミリアさんが行き来しやすくなります。霊夢さんや魔理沙さんも観光するつもりで、ぜひ乗ってください!by一十百  切符代を取れば、少しは儲かるかしら?by霊夢  ケチ巫女だぜ……。by魔理沙  確かに便利だったわ。byレミリア
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