東方お仕事記   作:TomomonD

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二十三仕事目 編み、繕い、新たな出会い

肌寒い風が幻想郷を駆け抜けていく。

冬の訪れが近いことを表していた。

博麗神社では、冬の用意を着々と進めていた。

 

 

「これで、掘り炬燵が完成しました!」

「本当に作ったの? ……できてるし」

「冬の間はここに居候させてもらいたいぜ」

一十百はこたつを作ろうとしたのだが、電気がないため電動こたつは使えない。

そうなると、旧式の掘り炬燵を作るしかない。

なら作ろうと、いうことになった。

霊夢もだんだんとその発想に慣れてきたのか、完全に一十百に任せる形にしておいた。

 

次の日には出来上がっていたようだった。

冬への試運転を兼ねて三人で温まっている。

今日はかなり寒く、ちょうどよかったようだ。

「温かいわね~」

「本当にここに冬の間住みたくなるぜ」

「温度もちょうどよさそうですね。初めて作りましたけど、うまくいってよかったです」

「「初めて!?」」

「ふぇっ! そうですよ。ほら、外の世界には電気がありますから、掘り炬燵を作る機会はあんまりなかったんですよ」

 

 

一十百は二人にお茶を入れると外を見る。

落ち葉も増え、本格的な冬が近いように思える。

「そういえば、ルーミアとかチルノとか大妖精は寒くないのかな?」

「わからないけど……、チルノは平気でしょ、確実に」

「そうでした」

「まあ、妖精は自然があるから生まれるって聞いたことがあるぜ。だから、季節の移り変わりとか、こういう寒さなら平気なんじゃないのか?」

「妖怪だってだてに人より丈夫じゃないわよ。この程度の寒さくらいなら問題ないでしょ」

「そうなんですか……」

それでも一十百は心配のようなのがわかる。

やれやれと魔理沙がお茶を飲む。

「そこまで心配ならマフラーとか作ってあげたらいいと思うぜ」

「マフラーですか? ……なるほど」

「ついでに私のも作ってほしいぜ!」

「魔理沙……、あんたそっちが目的ね」

「この時期、空を飛ぶと結構寒いんだぜ」

「まったく……、それなら外に出なければいいのに。そう思わない一十百」

霊夢が振り向いたときには、すでに超高速で一十百がマフラーを編んでいた。

一十百の手元がブレて見えない。

そして、マフラーが次々と出来上がっていった。

 

「よしっ!」

「「………」」

「あれ? どうしました?」

「いや、もう今さら驚かないけど……。すごいわね」

「ふえっ? そうですか?」

一十百はいくつか作ったマフラーのうち一つを魔理沙に渡す。

淡い青色のベースに黄色の星の模様のマフラーだ。

それと一緒に同じ青色ベースのミトンの手袋を渡す。

「はい! どうぞ、魔理沙さん」

「いや~、ありがとうだぜ」

「霊夢さんにも、はい」

一十百が霊夢に渡したものは、白色のみで網目に細かな装飾のしてあるマフラーとセーターの二つだった。

「あ、ありがと」

「霊夢さんの服装って寒そうですから、ぜひ使ってくださいね」

「確かに、その巫女服は寒そうだぜ」

「寒いわよ。着てみる?」

「遠慮するぜ」

 

一十百は作り上げたマフラーや手袋を持って立ち上がった。

「それでは、霧の湖まで行ってきます!」

そういって霧の湖のほうに走って行った。

「霊夢……、手作りだぜ。なんだか、うれしいよな」

「そ、そりゃね。でも……、こういうのって、普通私たちが作って渡すものじゃない?」

「……作れないぜ」

「私も無理かも……」

二人はもらったマフラーや手袋やセーターを見る。

繊細に編まれており、あの速度で作ったとは思えないほどよくできたものだった。

「霊夢。私は思うぜ、一十はきっといい嫁になる」

「私もそう思うわ」

 

 

さて、そのころ……。

「だから僕は男ですって!! ……って、誰もいませんよね」

一十百は足を止めてそう言った。

なんとなく、そういわなくてはいけない気がしたようだ。

「こんなところで、のんびりしてるわけにはいかないんでした。霧の湖まで行かないと」

「あれ~、十百なのか~」

ふわふわと空からルーミアが降りてきた。

「あ、ルーミア」

すとんと一十百の前に降りる。

夏の時期に会った時と変わらぬ服装だ。

「ルーミア、寒くないの?」

「それなりに寒いのか~」

「やっぱり寒いんだ…」

一十百は持ってきたマフラーをルーミアの首にかける。

「はい。これで、すこしは温かいよ」

「わは~、もふもふなのか~」

ルーミアに渡したマフラーは黒が主体にとても薄い青色で月と星が描かれているものだ。

それと一緒に一十百は毛糸のベストをルーミアに渡した。

「これでよし」

「あったかなのか~」

 

 

一十百はルーミアと一緒に霧の湖を目指すことにした。

「やっぱり妖怪でも寒いものは寒いよね」

「妖怪でも冬は寒いのか~」

霧の湖の周りは一段と涼しく、どことなく寂しいような感じがする。

今までなら、良くも悪くも周りに妖怪たちの気配があったのだが、今はそれも少なく感じる。

「チルノ~、大妖精~。いる~?」

「あ、十百!」

「こんにちは」

一十百とルーミアがいる位置よりも少し東側の森の中からチルノと大妖精が歩いてきた。

 

「久しぶりだね」

「お久しぶりです」

「チルノ、今って寒い?」

「あたいは氷の妖精だよ。寒いわけないよ!」

「まあそうだよね。大妖精は? 自然が妖精を生み出してるから、寒くない……わけではなさそうだね」

「だんだんと涼しくなってきましたから、このままの格好ですと少し寒いです」

「あれ? ルーミア、それなに? なんか、カッコいい!」

「十百からもらったのか~」

「ええ~、いいな~。あたいも何かほしい!」

「チルノは寒くないから大丈夫だと思ったけど、はい! 作ってきてよかった」

一十百はマフラーを取り出す。

チルノの髪の色によく似た水色のベースに白色で氷の結晶の模様が編みこまれたもののようだ。

「はい」

「やったぁ! どう、大ちゃん?」

「とっても似合ってるよ、チルノちゃん」

「大妖精にもあるよ、はい」

薄黄緑色のベースに、深緑色の葉っぱが描かれているマフラーだ。

「あ、ありがとうございます」

「そうそう、あとチルノにはこれ。大妖精にはこれ」

そう言って一十百が渡したのは、耳あての付いた帽子とチョッキだった。

帽子はチルノに、チョッキは大妖精にのようだ。

「チルノは厚着する必要はないから帽子。大妖精はチョッキ」

「あたい、それかぶる!」

「このチョッキ、羽が外に出るんですね! とっても着やすいです」

 

 

一十百は三人と冬の過ごし方について話し合っている。

まずルーミアだが、冬の間は自分の家に戻って、外出を控えているらしい。

家と言っても木の穴のようなものや、草を合わせたようなものらしい。

冬の間のみ、人間以外のものを多く食べて春まで待つらしい。

チルノはいつも通りに行動するらしい。

なんでも冬に起きてくる友達がいるらしく、その友達と遊んで暮らすらしい。

大妖精はルーミアと同じようになるべく外出を控えるらしい。

やはり妖精や妖怪でも寒いものは寒いようだ。

「十百は?」

「僕は……、霊夢さんの所でのんびり過ごします。たまに紅魔館にもお呼ばれするかな」

「へ~、たまに遊びに行きたいのか~」

「来てくれるとうれしいな。お茶とかお出しできると思うよ」

「今度行ってみる!」

「その友達も誘って、来てくれるとうれしいな」

 

 

一十百は笑顔で三人に別れを告げると、博麗神社に戻るため森を歩いていた。

すると、どこかでガサガサと音がする。

「ふぇっ! まさか、また鼠妖怪かなぁ……」

一十百は警戒して周りを見る。

ガサガサと茂みをかき分ける音が聞こえる。

どちらの方向から聞こえてくるか、集中……。

「そっちの、茂みかな」

一十百はスペルカードを構えながらそっと茂みを分ける。

すると中には……、金色の髪の誰かが倒れていた。

よく見ると赤いリボンをしている。

「だ、大丈夫ですか?」

背の高さは……40㎝前後、人間ではないだろう。

一十百もそのことに気が付く。

そしてそっと抱え上げる。

どうやら少女の姿をした人形のようだ。

眺めの金髪ストレートの髪に赤いリボンが特徴的な人形だ。

よくみたらスカートの裾が茂みに引っかかって動けなくなってしまっていたようだ。

 

「これでよし。でも、少し汚れちゃってる……」

一十百がポケットからハンカチを取り出す。

そっと人形の汚れをふき取ってあげたようだ。

次に取り出したのは裁縫セット、服の端が綻んでしまっているのをササッと直す。

そして最後に小さな櫛をとりだし、髪を整え服を軽くはたく。

少し前までは汚れていた人形が数分しないうちに新品同様に元に戻った。

「これでよし! 大丈夫?」

人形はまるで意志を持っているようにコクリと頷いた。

「一人で大丈夫?」

もう一度頷く。

一十百は微笑んで、人形を地面におろしてあげた。

人形は一十百のほうを一度振り返ると手を振り、そして遠くの空に飛んで行った。

「変わった人形さんだったなぁ。無事に帰れるといいなぁ」

一十百も歩いて博麗神社に向かっていた。

 

 

一十百が神社に戻ってみると、博麗霊夢、霧雨魔理沙のほかにもう一人お客が来ていた。

「あら、一十百。おかえり」

「ただ今戻りました。あ、お客様ですか? こんにちは」

「こんにちは。あなたが一十君ね、魔理沙から聞いているわ」

金髪で赤いリボンをカチューシャのように髪に巻き、スラリとした少女が少し微笑んで話しかけてきた。

「ふえっ? 魔理沙さんから?」

「ああ、そうだぜ。そうだ、紹介が遅れたぜ」

そう言って魔理沙は金髪の背を少し押した。

「私はアリス・マーガトロイド。人形を使う魔法使いよ」

「ほぇ? 人形をですか? ……もしかして、金髪の赤いリボンを付けた、このくらいの…」

「あら? 上海をしっているの?」

「今さっき……、あっ」

一十百の視線の先には数体の上海人形が存在した。

けれど、その中の一体に見覚えがあった。

「よかった、無事に帰れたみたいだね」

その上海人形は立ち上がると、一礼をした。

「?? この子とどこかであったの? ついさっきここに来たんだけど…」

「はい! 実は…」

 

一十百がその上海人形との出会いを説明した。

「一十百のお人よしは人形でも関係ないのね」

「だって可哀そうじゃないですか。動けなくて困ってたんですよ」

「まあ、それでこそ一十だぜ」

「この半自立行動型上海を救ってくれたみたいね。ありがとう」

「いえいえ」

 

「それで……」

アリスの目がきらりと光る。

「少し聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

「ほぇ? なんですか?」

「この、マフラーとかセーターとかを編んだのってあなた?」

「は、はい」

「上海の服の裾がきれいに縫われてたけど、それも…」

「茂みに引っかかって綻んでいたので僕が直しましたけど……、ダメでしたか?」

「そうじゃないの。正直言って、私が前に作ったのよりはるかに上手かったから。どんな人が編んだのかって思ってね」

そう言ってアリスは一十百が助けた上海のスカートの裾を見る。

「この繕ってくれた部分だって、とても上手く繕われてる。縫い目がほとんど見えないもの」

「えへへ、人形師のかたに褒められるなんて光栄です」

「同じ女性として、その優しさと器用さは見習いたいわ」

その一言で霊夢と魔理沙の表情がやっちゃったというものに変わった。

「「あちゃー……」」

「え? え? 私、何か間違った?」

「アリスさん。僕、男です、ぐすん」

「……うそ」

「本当ですよ~」

 

こうしてまた一人、一十百の性別を間違えた人が増えたのだった。

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

手編みの防寒具:マフラーとほかの色々なものを編みました。みなさんが使ってくれるとうれしいです!by一十百  手編み……ね。大切に使わせてもらうわ。by霊夢  温かい感じが伝わってくるぜ。by魔理沙

アリス・マーガトロイド:魔法の森に住んでいる金髪の人形魔法使いさんです。かわいい人形さんをたくさん作っている、優しそうなお姉さんです。by一十百  今度、家に来て洋服づくりを手伝ってもらおうかしら?byアリス
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