東方お仕事記   作:TomomonD

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第二異変 来ない春と妖精達
二十四仕事目 いたずらと異変解決に全力をかけて


季節は巡る。

秋から冬に、そして春へと。

しかしその年の春は……とても遅いこととなる。

 

 

「雪、やまないなぁ」

一十百が薄暗い空を見上げて呟く。

雪が降り、博麗神社を白く染め上げていく。

はぁ~、と手に息を吹きかけ温める。

「まだ、春は来ないのかなぁ」

一十百はポケットからカレンダーのようなものを取り出す。

幻想郷の暦を一十百がわかるように変えたもののようだ。

それを見ると、既に五月……、雪など降る季節ではない。

 

「幻想郷の冬は長いんですね……」

「いや、そうじゃないと思いますよ」

上のほうから声かけられる。

一十百が見上げる前に、ストンと誰かが降りてきた。

「あ、文さん。おはようございます」

一十百の前に降り立ったのは鴉天狗の射命丸文だった。

暖かそうなマフラーと毛糸の手袋をしている。

一十百の手編みである。

秋の終わりごろに一十百が射命丸文にプレゼントしたものだ。

 

「これは異変だと私は思っているんです」

「異変ですか?」

「はい。私も幻想郷に長く住んでいますが、これほど冬が長かったことは初めてです」

「ふえっ……、そうなるとやっぱり……」

「はい。これは何者かが起こした異変という事になります」

一十百は少し考える。

本来、異変ならば博麗霊夢に伝えるべきなのだが……。

「…わかりました。ちょっと調べてみます」

「あや? 博麗の巫女の力は借りないのですか?」

「霊夢さんばかりに頼るわけにもいきませんから……。居候としてこのくらいのお手伝いはしないと」

「さすが十百さん! 異変を解決したら、ぜひ取材させてくださいね」

「はい。頑張ってみます!」

タンと一十百は石畳を蹴って、博霊神社の階段を駆け下りていった。

「これで十百さんが異変を解決したら、いい記事が書けそうですね」

射命丸は、いまだ薄暗い空を見上げた。

 

 

一十百が異変を解決するため、最初に向かったのは霧の湖。

大妖精とチルノに会うのが目的である。

「さすがにいないかなぁ」

霧の湖に着いてもそこには人影がなく、しんと静まり返っていた。

 

しかたなく一十百が引き返そうとすると、何かの視線を感じた。

一十百が辺りを見回しても誰もいない。

「あれ? 確かに視線を感じるんだけど……」

集中して辺りを見回す。

それでも一十百の目には自然の風景しか見当たらなかった。

その時、一十百の死角になる場所から雪玉が飛んできた。

もちろん飛んできた雪玉は一十百には見えていない。

しかし、その雪玉は一十百に当たることなく空を切った。

一十百は地面すれすれに姿勢を低くし、雪玉をかわしたようだ。

「今、何か飛んできた気がしたんだけど……。雪玉?」

弾幕戦で一十百がたまに見せる勘のみを頼りにする回避行動である。

今回もその勘で雪玉をかわしたようだ。

 

少し一十百は考え、ポンと軽く手を合わせた。

そっと一十百は雪玉を作る。

そして、もう一度誰かが雪玉を投げてくるのを待つ。

さっきと同じように別の方向から雪玉が飛んでくる。

それをぎりぎりの位置でかわす。

「そこっ!」

そして飛んできた方向に向けて手に持った雪玉を投げる。

 

ただの雪合戦のようにも見えるのだが……、唯一違ったものがあった。

それは一十百の投擲力だった。

足元の雪は投擲の反動で大きく吹き飛び、放たれた雪玉は大砲のような速さで飛んで行った。

一十百の狙いは雪玉を投げた本人だったのだが、見えない相手なので少し狙いを違え近くの木にぶつかってしまった。

雪玉が木にぶつかるとベキョッ…と鈍い音がした。

ぶつかったショックで雪玉は弾けとんだ。

残された木の幹は雪玉が当たったとは思えないほど歪み、その威力がどれほどのものか一目でわかった。

「あうぅ、外しちゃった。よ~し、もう一回!」

一十百がもう一度、雪玉を作ろうとするといきなり目の前に三人の妖精が姿を現した。

空から降りてきたわけでも、速く走ってきたわけでもなく、文字通りいきなり現れたのである。

赤い服、青い服、白い服を着た三人の妖精である。

三人とも、半泣きの状態だ。

「ふぇっ? どうしたの? 君たちは?」

 

 

一十百が詳しく話を聞いてみると、この森に住んでいる妖精で、光の三妖精というらしい。

赤い服にオレンジ色の髪を二つに束ねた妖精がサニーミルク、青い服に長めの黒髪の妖精がスターサファイア、白色の服にロールした金髪の妖精がルナチャイルドらしい。

いたずらしようと一十百にむけて雪玉を投げたのだが……、投げ返された雪玉の威力を見て大妖怪にいたずらしてしまったのではと思ったらしい。

二投目が来る前にあやまれば助かると思ったので姿を現したそうだ…。

「えっと……僕は人間だよ。大妖怪どころか、妖怪でもないから」

「うそっ!」

その話を聞いて三妖精は何やら話し始めた。

なにやら、サニーミルクが提案を持ちかけたようで、ほかの二人がその提案を聞いているような感じだ。

そして話がまとまったのか三人が同時にうなずいた。

 

三妖精が一十百のほうに向きなおる。

「???」

「コホン。私たち光の三妖精はこれからここを通る人間たちに向けて大きないたずらを仕掛けようと思っているの」

「その手初めてとして、まず……」

「あなたを弾幕戦でコテンパンにしてあげます」

三妖精がそう言ってふわりと浮きあがる。

「僕は異変解決をしなくちゃいけないのに……まあ、お相手するよ! それで……、三人いっぺんに勝負?」

「それだと一瞬で勝負が付いちゃうでしょ? だから一人ずつで相手してあげる! まず、この私、サニーミルクが相手をしてあげる」

「よ~し、負けないよ!」

一十百が大きく伸びをする。

そして、ゆっくりとサニーミルクのほうを見る。

一十百の纏う雰囲気が少しだけ変わった……。

 

 

弾幕勝負が始まるとサニーミルクは飛び上がり、全方向に向けて炎の玉のような弾幕を放ってきた。

太陽の名前を付けているだけあり、全方位に向けて次々と弾幕を飛ばしてきた。

「よっ、ほい、たぁ」

しかし、この程度の弾幕は一十百は経験済みであり、大した苦労もせずに避けることができた。

「やっぱりこの程度じゃ当たらないか、なら」

そう言って一枚目のスペルカードを取り出す。

「瞬光『フェイタルフラッシュ』」

サニーミルクに光が集まる。

そしてそれが弾けると、その光が弾幕となって放たれた。

今までの弾幕よりも速く、避けにくいものだ。

本来の一十百ならそれほど危険視するほどの物ではないのだが、足元が雪という条件があるためいつものような動きはできない。

 

一十百も対抗するためスペルカードを取り出した。

「そっちが太陽なら、こっちは炎で対抗! いくよっ!」

取り出したスペルカードが輝く。

「爆風『爆炎の都』」

一十百のスペルカードから巨大な爆炎が渦を巻き放たれた。

サニーミルクの弾幕が爆炎に包まれ消えていく。

一十百は妖精という種族の事をよく調べている。

しかし、それはあくまでも知識のみ。

他の種族に比べると妖精は……弱い。

それは弾幕の威力にも言えることで……。

「ちょ、ちょっと! きゃぁ!」

弾幕から弾幕に炎が移り、いつしかサニーの元まで届いてしまったようだ。

急いで弾幕を止め、雪の中にダイブした。

おかげで真っ黒こげにならずに済んだようだ。

「あ、あれ? 思ったより……威力が高かった? 怪我してない?」

「うう~、相手に情けをかけられるなんて…」

 

 

「サニー、交代!」

今度はスターサファイアが相手のようだ。

放たれた弾幕は、見覚えがあるものだった。

前に紅魔館の地下室でフランと弾幕ごっこをやった時の、最後のスペル……QED『495年の波紋』にとてもよく似ていた。

弾幕の威力も速度も密度もフランには遠く及ばないが、放たれる弾幕の形だけがとてもよく似ていた。

一十百にとってはこの程度の弾幕は簡単に突破できてしまう。

「やっぱり無理ね。ならこれでどう?」

スターサファイアがスペルカードを取り出し、そして放つ。

「星符『スターライトレイン』」

小型の星状の弾幕が雨のように降り注いできた。

今までの弾幕と違い、速度と量が多い。

いくら妖精の弾幕とはいえ直撃すればそれなりのけがを負ってしまうだろう。

この後に異変解決をする予定の一十百にとって、ここでけがを負うわけにはいかない。

 

一十百は二枚目のスペルカードを取り出した。

「一枚目はちょっと威力がありすぎたから……、これで。自分の弾幕に似てればたぶん避けやすいよね」

星の弾幕をかわしながらスペルカードを発動させる。

「ANS『111通りの結果』」

一十百の周りから正方形状に弾幕放たれる。

それが回転して広がっていく。

屋外のためそれほど跳ね返らず、確かに避けやすくはなっているのだが……。

「なんか、だんだん速く……。きゃっ」

仮にも一十百がフラン相手に作り出したスペル。

妖精には少し荷が重かったようだ。

だんだんと密度が上がる弾幕を避けきれず、大きくかわしたときにバランスを崩した。

そしてそのまま雪の中にダイブしてしまった。

「無事?」

「なんとか……」

 

 

「あとは私がやるわ」

最後はルナチャイルドが空へと舞った。

放たれた弾幕は黄色に輝く弾幕。

それらが二つに分かれ時間差で降り注ぐ。

さらに、ルナチャイルドから円状に弾幕が放たれる。

避けにくそうに思えるが、やはり妖精の放つ弾幕。

どうしても密度や速度がそれほどない。

またもや一十百に掠ることはなかった。

「まあ、期待はしてなかったけど……。それじゃ、いくわよ」

ルナチャイルドがスペルカードを構える。

「月光『サイレントフラワー』」

花形の弾幕がルナチャイルドから曲線状三方向に放たれる。

それらの花弁がそのまま弾幕となり飛んできた。

花形の弾幕が作られるまでの時間はあまりなく、油断していると当たる可能性もあった。

 

当たるわけにもいかないので一十百は三枚目のスペルカードを取り出した。

「えっと……、二枚目は弾幕の密度が濃かったから難しかったみたい…。なら、これで大丈夫かな?」

今まで手加減をするような弾幕戦がなかったため、手加減をどうすればいいのかわからない。

悩んだ末に三枚目のスペルカードを発動させる。

「時空『過去と現在と未来へ向かう懐中時計』」

巨大な三つの十字弾幕が現れ、時計回り、反時計回り、そのままでルナチャイルドに向かっていった。

確かに弾幕自体の密度はあまりないスペルなのだが……。

十字弾幕の大きさが大きさのため避けにくい。

さらに下手をすると回転している弾幕としていない弾幕に挟まれるような状態にもなってしまうため、決して簡単な弾幕ではない。

「えっ? いやぁ~」

挟まれるのを回避したルナチャイルドは勢い余って雪の中にダイブしてしまった。

「えっと、平気?」

「平気じゃないけど…無事」

 

 

「こうなったら、三人がかりで挑むわ!」

サニー、スター、ルナの三妖精が同時に空に舞った。

「やっぱりそうなるんだね……。よし、気合を入れなおして、勝負!」

一十百が気合を入れなおす。

三妖精は自分の弾幕を同時に放ってきた。

一つ一つは避けやすい弾幕でも、三つそろうとかなり避けにくいものとなる。

それに合わせて一十百の動きが今までは比べ物にならないほど機敏になる。

今まで避けるほうには手を抜いていないつもりだったのだが、無意識のうちに手加減していたようだ。

その動きを見て三妖精は唖然とする。

これほど弾幕の密度が上がったのにまったく当たらない。

 

「こうなったら……、二人とも!」

サニーミルクがほかの二人を呼び寄せる。

スターサファイアもルナチャイルドも何をするかわかっているようで、すぐにサニーミルクの近くに集まった。

「準備はできたわ」

「これで、とどめ」

「いっくよー!!」

三妖精の周りに強い光が宿る。

「「「協力技『フェアリーオーバードライブ』」」」

太陽、月、星の三つの光が合わさり、周りの弾幕を弾き飛ばしていく。

その光を纏ったまま、三人が一十百に向けて一直線に向かってきた。

「ふぇっ! そんなのあり?」

タンと一十百が大きく地面を蹴り、距離を取った。

一十百が今までいた場所を桁違いの威力の光が通り過ぎる。

雪は弾き飛ばされ、土の地面が見えている。

 

「はずした! ならもう一回!」

巨大な光は大きく曲がると、一十百に向かってきた。

一十百は大きく息を吸い込む。

そして一枚のスペルカードを取り出す。

「実戦では使ったことないけど……、あれを止めるにはこれしかない!」

一十百が両手で押し出すようにスペルカードを発動させる。

「完激『バスタースパーク』」

一十百の重ねた両手から三妖精よりはるかに強力な光の砲撃が放たれた。

 

太陽、月、星と異世界の光が霧の湖を一段と輝かせた。

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

春のこない異変:文さんの話だと、ここまで春が遅れるのは異変らしいです。霊夢さんばかりに頼るわけにはいきませんから、何とかして解決したいです!by一十百

サニーミルク:光の三妖精の一人です。元気いっぱいで、太陽の名前通りの女の子です! 三人のリーダーみたいな感じで、決断力とかがあるんだと思います。なんでも、いたずらを提案してるのは私、らしいです。by一十百  ほ、本当に人間?byサニー

スターサファイア:光の三妖精の一人です。どことなく、おしゃれとかが得意そうな女の子です。いたずらとかをするときは辺りの偵察とかをするらしいです。たまにさぼったりしてる、らしいです。by一十百  手加減くらいしてほしかったわ…。byスター

ルナチャイルド:光の三妖精の一人です。どちらかというと、知的な感じがします。『文々。新聞』を読んでいるらしく、意外なところで共通点がありました。たまに、おいていかれることがあるそうです。by一十百  意外と面白い記事が多いのよ。byルナ
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