東方お仕事記   作:TomomonD

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四十三仕事目 青光妖魔弾幕夜行

月が消えかけた空を二つの影が飛んでいく。

一つは黒い翼を羽ばたかせ、とてつもない速度で飛んでいく。

もう一つの影は、白い光を纏い流星のような速度で一直線に飛んでいく。

 

 

「さすがに追いつけないぜ……。こっちはスペカまで使ってるのに…」

流星の主は霧雨魔理沙。

どうやら『ブレイジングスター』を使って博麗神社に向かっているようだ。

もう一つの影の主は射命丸文。

幻想郷最速の名は伊達ではなく、魔理沙をあっさり引き離し博麗神社に向かっていった。

 

この二人が博麗神社に向かったのは訳があった。

まず射命丸文だが、完全に記者の勘である。

妖怪の山にある自宅に戻り、一息ついたときに何かを感じ取った。

急いで外を見るも、何の変哲もない。

しかし、記者としての勘を信じ、異変が起こった時に最も早く行動する一十百の元に向かった。

 

対する霧雨魔理沙は、ある奇妙な出会いをしたため、一十百に話を聞こうと博麗神社に向かっていた。

その時、自分の真横を射命丸文が通り過ぎて行ったので、これは何かあるとスペカを発動させ追いかけていった。

 

 

そのころ博麗神社では、封印の解けたルーミアと青い光で作り上げた骨の翼をもった一十百が向かい合っていた。

互いに距離を取り、弾幕勝負の用意ができたようだった。

 

「それじゃ、いくよ~」

ルーミアから次々と弾幕が降り注ぐ。

半扇状の弾幕と、交差する弾幕がほぼ同時に放たれていく。

「これって、いつもルーミアの使ってるスペルカード! 普通の弾幕でそれが両方とも! おっと」

その弾幕をぎりぎりで一十百が潜り抜けていく。

スペルカードも発動していない状態でこれほどとなると、スペルカードが発動したら……。

タンと一十百が大きく距離を取る。

近くにいてはスペルカードを使われた時、全容が把握できない上に回避までの時間が短くなる。

今の状態のルーミア相手にそれは危険だと判断したようだった。

 

「それじゃそろそろ……」

「よしっ。ここからが本番!」

二人がスペルカードを構える。

 

 

「紫、どう?」

「まだかかりそうね」

紫が一枚の札に霊力を込めている。

どうやら、ルーミアの力をもう一度封印するための新しい札のようだ。

前と同じような赤いリボンのような札だ。

「本当に封印できるわよね」

「やってみないとわからないわ。でも前に一度封印できたのだからもう一度できるはずよ」

「まあ、そうなのかもしれないけど……。でもね、紫。あのルーミアだって多少なりとも成長してるのよ。前と同じってわけにはいかないわ」

「……そうよね」

何だか紫が少し前の事を思い出すように軽く目を細めた。

 

「あややや……。やはり記者の勘に間違いはありませんでしたか!」

シュタンと夜空を切り裂いて射命丸文が霊夢たちの所に降り立った。

「ちょっと、なんでここにきてるのよ?」

「記者の勘です。しかし……」

射命丸文が一十百とルーミアの方を見る。

「正直言って、あの二人がこれほどの威圧感を出している弾幕勝負が見られるとは思ってませんでした」

「珍しく一十百が本気っぽいからね」

「十百さんの本気ですか……」

「まあ、全力というか……、たぶんスペルカードがいつもと違うから、本気なんだと思う」

「なるほど。噂には聞いていましたけれど、実際見るのは初めてです」

そう言って射命丸文がカメラを構える。

そして、一旦その動きが止まる。

 

「……十百さんの背中に骨のような翼があるんですけど」

「あれね。よくわからないけど、青い光でそう見えてるだけっぽいわよ」

「そ、そうなんですか? てっきり、十百さんがとうとう人間をやめてしまったのかと」

「「………」」

「どうしてそこでお二方は黙ってしまうのでしょうか…」

そこで紫と霊夢がお互いの顔を見る。

「霊夢、一十百君って人間よね」

「なんで私に聞くのよ?」

「だって、一十百君といる時間は一番長いし」

「それはそうかもしれないけど……。まあ、本人曰く、人間らしいわ」

「そ、そうですよね。ちょっと人より力持ちで、私と同じくらいの速さで走れて……」

そこまで言って文の表情が引きつる。

自分の一十百の事が記載されているメモを見なおす。

「すでに、この時点で人間か怪しいのですが…」

「何を今さらなことを」

「まあ、気を取り直して、しっかり撮影させて…」

 

「暗黒『ストームブリンガー』」

「魔剣『ダーインスレイヴ』」

 

射命丸文がカメラを構えた先で、ルーミアの手の漆黒の大剣が黒い炎を纏う。

同時に一十百の持っていた何かが赤色の光を帯び、一つの血塗られた魔剣が姿を現した

漆黒の大剣と血塗られた魔剣がぶつかり合った。

その衝撃で紫が博麗神社に張った結界が一瞬歪む。

 

「え゛…」

「ちょ…」

「……へ?」

三人がその一撃を見て完全に止まった。

文は唖然、霊夢は驚愕、紫は呆然と言ったところだ。

「あ、え、はい? あれですよね。十百さん達は弾幕勝負をしてるんですよね」

「………ええ」

「弾幕勝負って、当たり所が悪くない限り命を落とすことはないはずですけど…」

ゴウゥとまた衝撃が通り抜けていった。

「あれって、当たったら、終わりですよね」

 

 

一十百とルーミアの弾幕勝負は、接近戦という珍しいものになっていた。

二人の作り出したスペルカードはどちらも剣をイメージしたものだったため、どちらも近づかなければ本来の力を出すことはできない。

 

ルーミアのスペルカード、暗黒『ストームブリンガー』。

元々持っていた大剣に黒い炎のようなものが灯り、不思議な文様が刀身に現れる。

それをそのままスペルカードとして扱っているようなものだ。

 

対する一十百のスペルカード、魔剣『ダーインスレイヴ』。

一十百の持っていたペーパーナイフに赤い光が集まり、血塗られた剣に変化する。

フランの使っていた、禁忌『レーヴァテイン』のように弾幕と剣が一体になったようなスペルカードだ。

 

「やぁぁあ!」

「たぁぁあ!」

一十百もルーミアもどちらも楽しげにスペルカードの剣を振りまわす。

どちらも弾幕勝負を楽しんでいる、ほほえましい光景なのだが……。

その両方のスペルカードの威力が破格のため、その二つがぶつかり合うたびに博麗神社に張られた結界が歪む。

十数度、大剣と魔剣がぶつかり合う。

そしてその二つが同時にはじけ飛んだ。

 

「うわっ!」

「スペルカードが弾け飛んじゃったか…」

二人がいったん距離を取る。

そして二枚目のスペルカードを構えた。

一十百の青い骨の翼と、ルーミアの黒い闇の翼が大きくひらかれる。

 

「蒼炎『リヴァイア』」

「黒翼『夜色の新月』」

二人のスペルカードが発動する。

一十百のスペルカードは、爆風『爆炎の都』の変化したもののようだ。

広げられた翼の先から渦巻く爆炎が二つ放たれる。

青い炎の軌跡がすべて弾幕に変わっていく。

その弾幕を潜り抜けて、ルーミアの弾幕が放たれる。

黒い球体状の弾幕が一直線に一十百に向かっていく。

弾幕をバックステップでかわす。

 

しかし、そこで一十百がルーミアのスペルカードの弾幕を理解する。

「前が……見えないっ」

黒い弾幕が通りすぎた空間が闇に包まれてしまっている。

そのため前から飛んでくる弾幕が一切見えない状態になってしまったのだった。

「それならっ!」

グッと足に力を込める。

そして、神社の石畳を強く蹴り、高々と飛び上がった。

「上っ!?」

「そこだっ!」

どうやらルーミアも自分の弾幕のせいで一十百の姿を見失ってしまっていたようだった。

一十百が飛び上がったのを視界の端でとらえたのか、すぐにそこに向けて弾幕を放ってきた。

一十百も青い炎の弾幕をルーミアに向けて放つ。

 

今までの接近戦と違い、弾幕勝負らしい弾幕の撃ち合いになっている。

一十百は空を飛ぶことができないので、一度高く飛び上がっては弾幕を撃ち合うような状態になっている。

空中ではそれほど動けないため、ルーミアの弾幕を避けるのがなかなか困難である。

一十百もルーミアも次々弾幕を放っていく。

前ほど威力は高くないようだ。

 

「やっとついた……ぜ?」

「やぁっ!!」

博麗神社を覆っていた結界の前で霧雨魔理沙がいったん停止する。

そこに向けて一十百の青色の炎が放たれた。

本当はルーミアを狙ったのだったが、自由落下中に放ったため多少狙いがそれたようだった。

青色の炎が博麗神社の結界にぶつかる。

その瞬間、霧雨魔理沙の視界全てを青色の爆炎が包み込んだ。

結界があったため怪我ひとつしていないが、その威力の高さを間近で見ることができた。

「……これって、弾幕勝負だよな」

ゆっくりと魔理沙が地面に降り立つ。

結界は神社を包むように展開されているが、どうやら鳥居のあたりだけは通り抜けられるようだ。

二人の弾幕がこちらに飛んでこないことを祈りながら霧雨魔理沙は鳥居をくぐった。

 

 

「霊夢、どうやら、お客さんみたいよ?」

「こんな時に……って、魔理沙?」

「れ、霊夢。えっと……これは何事なんだぜ?」

「色々あったのよ」

そう言って霊夢は一十百とルーミアの方を見る。

魔理沙も同じほうを見つめた。

「……一十に、羽が生えてないか」

「そう見えるだけよ」

「もう一人の相手って……ルーミアか?」

「そうよ」

「………本当に、何があったんだぜ?」

魔理沙が半分心配そうな表情をし始めたので、霊夢も仕方なく説明することになった。

 

 

「なるほど……」

説明を聞いた魔理沙は一安心といった表情で座り込んだ。

「それで、なんでアンタもここに来たのよ?」

「お、そうだった。ちょっと一十に聞きたいことがあってな。それと、そこのスキマ妖怪にも」

「あら、貴女から聞かれることなんて身に覚えがないけど」

「外来人の…」

そこまで魔理沙が言った時、一十百とルーミアの声が神社に響き渡った。

 

「極星『レヴァル・ハーミステート』」

「常闇『アビス』」

 

一十百の周りに光の球体が現れる。

ルーミアの周りに黒い靄が集まっていく。

ほぼ同時に二人が腕を振り下ろした。

一十百の流星の弾幕がルーミアの黒い靄を貫いて飛んでいく。

ルーミアの靄の弾幕が一十百の弾幕を飲み込み一十百向かっていく。

二つの弾幕が高速でぶつかり合う。

その弾幕をぎりぎりの所で二人はかわしていく。

二人の弾幕は確実に相手を狙っているのだが、撃っている量が量なのでそのうちのいくつかが霊夢たちの方に飛んで行った。

 

「こ、こっちに来てるぜ!!」

「夢符『封魔陣』」

「境符『四重結界』」

霊夢と紫が同時にスペルカードを発動する。

囲うような四つの結界と、壁のような結界が目の前に現れる。

「これで…」

魔理沙が安心したような表情を浮かべた瞬間、一十百の弾幕がその結界を易々と貫いた。

その弾幕は魔理沙の目の前に落ちる。

 

「「………」」

「紫……。手を抜いた、ってことはないわよね」

「ないわよ。霊夢、貴女は?」

「そこまで余裕なかったでしょ」

二人が自分の張った結界を見る。

そして、その先に見える一十百とルーミアの弾幕がこちらに向かってくるのが見えた。

「…れ、霊夢。逃げたほうがいいような気がするぜ」

「言われなくたって!」

霊夢、魔理沙、紫、文が急いでそこから離れる。

直後、二人の弾幕がそこに降り注ぐ。

霊夢と紫の張った結界はあっさりと二人の弾幕に貫かれた。

 

 

「……紫。早く完成させないと、私たちの身が危ないわよ」

「わかってるわ。急いでるじゃない」

「おお、こわいこわい」

「おい、天狗が壊れた! 急いだ方がいいぜ」




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

魔剣『ダーインスレイヴ』:僕の十二枚目のスペルカードです。僕の持っているペーパーナイフにスペルカードを重ねて発動します。剣戟は弾幕になりませんけど、剣自体が強い弾幕として使えます。同じ名前の剣を僕の部屋の箪笥の中にしまっているんですよ。by一十百  ちょっ……なんてものを持ってるのよ…。by紫

蒼炎『リヴァイア』:爆風『爆炎の都』の変化したスペルのようです。十百さんの作り上げた青い骨の翼から、青色の炎の弾幕が回転しながら放たれます。その軌跡がすべて弾幕に変わるようです。弾幕の大きさや、その速度のため避けるのにはかなりの集中力が必要になりそうです。by文  結界がなかったら、危なかったぜ……。by魔理沙

宵闇のルーミアのスペルカード:黒い大剣の弾幕、暗黒『ストームブリンガー』。弾幕の軌跡が暗闇になって見えなくなる、黒翼『夜色の新月』。黒い靄がかなりの速度で放たれる、常闇『アビス』。どれも一瞬の判断と的確な対応が必要なスペルカードです。by一十百  私のスペカはもう少しあるから、期待してていいよ。byルーミア
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