私の書いている別の小説の主人公が幻想郷に迷い込みます。
爆炎の魔法使い、夕焼け色の友人、年下好みの転生者さんです。
彼はいつもなら、一十百の主のログ豪邸に住んでいます。
これは、ルーミアの封印が解けてしまう日の昼ごろの話。
魔法の森の中を白と黒の服が歩いていく。
ある意味このあたりで有名な魔法使い、霧雨魔理沙だ。
片手にはバスケットを持っている。
中には魔法の森特有のキノコがたくさん入っているようだ。
「これくらいあればよさそうだぜ」
食べるためなのか、実験に使うためなのか……。
とにかく、バスケット一杯にキノコを採ったためいったん自宅に戻ることにした霧雨魔理沙。
しかし、その帰り……。
「ギィィ」
「またお前らか」
ここ一年くらいで急激に増えだした、鼠妖怪。
しっかり料理するとなかなかおいしく、一匹からとれる肉の量もまあまあという弱小妖怪の一種。
まあ、この辺りでこの妖怪を調理できるのは一十百くらいのものだが……。
「お前たちも懲りないな。弾幕勝負のルールも理解できないようじゃ、私に勝つことはできないぜ」
「ギイィ」
鼠妖怪は目の前に三匹。
油断さえしなければ問題はない程度だ。
霧雨魔理沙から星の弾幕が放たれる。
それを鼠妖怪は潜り抜け一気に距離を詰めた。
「やっぱり速いぜ。でも……」
鼠妖怪が弾幕を潜り抜けた先には、ミニ八卦炉を構えた魔理沙が立っていた。
「速いだけで、まったく考えられてないからな。これで終わり!」
ミニ八卦炉からマスタースパークが放たれる。
鼠妖怪は正面からマスタースパークを受け、一匹は木に叩きつけられ、一匹は吹き飛び、一匹は粉々になった。
「ま、こんなもんだぜ」
魔理沙は得意げにミニ八卦炉を軽く放り投げキャッチする。
その時、後ろの茂みが大きく揺れた。
「なっ!」
魔理沙が振り返った時には、すでに鼠妖怪が飛びかかってくる瞬間だった。
弾幕もスペルカードも間に合わない……。
目前に鼠妖怪の牙が迫る。
魔理沙は覚悟したように目を閉じた。
しかし、その瞬間、大きな爆発音が聞こえた。
「な、なんなんだぜ…」
恐る恐る目を開けると、飛びかかってきた鼠妖怪が大きく吹き飛ばされている。
それも、右半身が吹き飛んでいるという状態だ。
「…え、な、何が…」
「やっと人にあえたか。おい、ここは……え゛」
ガサガサと茂みをかき分けて出てきたのは、夕焼け色の長い髪の男だった。
背は…結構高い。
特徴的なのは、黒い杖を持っていることくらいだ。
キリッとした緑色の瞳が霧雨魔理沙を見下ろしていた。
「た、助かったぜ。ありがとうな」
「………」
何やら夕焼け色の髪の男は困ったように眉間に手を置いている。
「どうしたんだぜ?」
「いや……その……、一ついいか?」
「なんだぜ?」
「霧雨…魔理沙か? マスタースパークの…」
「そうだぜ。普通の魔法使いの霧雨魔理沙だぜ」
そう魔理沙が言うと、夕焼け色の髪の男は頭を抱えてしまった。
「なぜだー! いつの間に幻想郷に! あれか、紫か! あのスキマが何かしたのか??」
「お、おぉぅ!? いや、落ち着くんだぜ」
「ドウルゥナディルンディスカァ!!」
「いやいや、なんて言ってるか分からないから落ち着け。まずは落ち着くんだぜ」
一応、命の恩人でもあったため、霧雨魔理沙は夕焼け色の髪の男を自宅に案内した。
今はお茶のようなものを飲みながらいろいろ話している。
「……つまり、外の世界から来たと」
「まあ、そういうわけだ。何とかして帰らんと、妹とか弟子とか従者とかが心配しそうだからな」
「で、何て名前なんだぜ?」
「うん? ああ、まだ名乗ってなかったな。俺はクロム・クロロ・クロラージュ。爆炎の魔法使いだ」
「……爆炎の魔法使い? どこかで聞いたような…」
霧雨魔理沙が少し考える。
外来人ってほかにいたか?
そう言えば一十も外来人だったぜ、すっかり忘れてた。
そこまで考えて思い出す。
一十百の話で出てきた夕焼け色の親友の名前がクロラージュと言っていたような……。
「もしかして、一十って知ってるか?」
「え゛……一十って一十百のことか?」
「ああ、やっぱり知ってるのか」
「な、なんで一十百の事を知ってるんだ?」
霧雨魔理沙は今まであったことをクロラージュに話した。
その話を聞いてクロラージュは頷いたり、転びそうになったりと色々なリアクションをとった。
「まあ、そういうわけで、一十は博麗神社にいると思うぜ」
「一十百がそんなに活躍を……。う~ん、まあ、前からポテンシャルは高かったから、条件さえ合えばこういった活躍をすると思っていたが…」
「会いにいかないのか? 親友なんだろ?」
「いや、別にここで会う必要はないな。外の世界に帰れば会えるだろうし」
「今帰れなくって困ってるんじゃなかったか?」
「あ、そうだった……。まあ何とかなるだろ」
なるのか?と疑問に思ったのだが、あえて魔理沙はつっこまないようにした。
「それで、これからどうするつもりだ? 帰る方法でも探すのか?」
「いや……、帰る方法は一十百に頼むとして、行きたいところがあるからな」
「? どこだ? 一応、助けてもらったし、送ってやるぜ」
「霧雨運送か……。まあ、いいか。行きたい場所は紅魔館。まあ、ある意味、テンプレなんだがな」
「てんぷれ? 一十の作ってくれた揚げ物の親戚か?」
「それは、何か違う気がするんだが……。まあ、とにかく紅魔館に行きたい」
「よし。わかったぜ」
そう言って霧雨魔理沙は箒を持つ。
そして、もう片方の手にはしっかりとロープが持たれていた。
「……やっぱりそう運ぶのか?」
「一十くらい小柄なら、後ろに乗せられるんだけど。まあ、クロラージュの場合は無理だぜ」
「まあ、うん。わかってた」
そう言って二人は外に出る。
外には……鼠妖怪が十数匹待ち受けていた。
「なっ…」
「お、おう。仕返しか何かか」
「ギィィ!!」
鼠妖怪の声が響く。
入口を囲むように待ち受けられてしまっては、うかつに外に出るのは危険だ。
「くっ……。こいつら…、速いからな。普通の弾幕程度じゃ当たらないんだ」
「……ちょい、魔理沙。下がってろ」
そう言ってクロラージュが左手で魔理沙の行く手を遮った。
右手には出会った時に持たれていた杖が握られている。
「ま、待つんだぜ。確かに、クロラージュは強いのかもしれないけど……。この量のこいつらを相手にするのは、分が悪いぜ…」
「入口を囲むように待ち受けたのは悪手だったな、鼠。魔理沙のマスタースパークなら一方向に伸びるレーザーみたいなものだから、その陣形はよかったかもしれないけどな」
魔理沙の言っていることを全く聞かずにクロラージュは杖を構えた。
鼠妖怪も獲物が出てきたのを逃すはずもない。
一斉に飛びかかってきた。
「間に合わないっ…」
「遅いっ!! 火の爆風!!」
クロラージュの杖から巨大な火球が現れ、それが爆発しながら回転していく。
ほぼ一瞬で魔理沙の目の前は爆炎の海になった。
飛びかかってきた鼠妖怪は焼け焦げ、様子をうかがっていた鼠妖怪は何も出来ぬまま黒こげになっていた。
爆炎が収まると、そこには鼠妖怪の形をした灰だけが残っていた。
「ふぅ。まあ、ざっとこんなもんか」
「………」
「うん? どうした、魔理沙?」
「…いや、すごい奴だったんだな、と思っただけだぜ」
「そうか? 俺は一十百の主のログ豪邸に住んでる人の中じゃ、弱い方だったんだがな」
「ええっ!? そんなに、すごいところに住んでるのか…」
一十があれだけの実力で誇らしげにしないのがわかった気がするぜ……。
「それじゃ、紅魔館まで頼む」
魔理沙とクロラージュは魔法の森の上空をそれなりの速度で飛んでいく。
魔理沙はいつも通り箒に跨るように、クロラージュはロープでぐるぐる巻きにされて吊るされている。
「いや~、空の旅はなかなか気持ちがいいな」
「……もう少し、いや何かつっこむべきじゃないのか?」
縛って運んでいる魔理沙のほうが唖然とするほど、クロラージュは平然と空の旅を楽しんでいた。
「霧雨空輸はロープでぐるぐる巻きで移動と相場が決まってるからな。別に慌てることでもない」
「誰がそんなことを言ってたんだぜ!?」
「いや、まあ、知ってる人は知ってる有名な空輸だ」
何か釈然としないんだぜ……。
はぁ、とため息をついて魔理沙は箒を飛ばす。
「あ、そうだった。スカートは押さえなくていいのか?」
「えっ? ………見えた?」
「いや、まだ。上手く見えないもんだな。あれか? 絶対領域とか言うものの力か?」
「見ちゃだめだぜ。絶対に見ちゃだめだぜ!」
「ほら、それは、フラグというもので…」
「あわわ、えと。ほら、アレだぜ。見るとマスパだぜ…うん」
「う~ん、マスパは怖いな。てか、もう少し前に吊るしてくれれば、ばっちり見えるのにっ」
そんなことをしていると紅魔館が見えてきた。
「ほ、ほら、紅魔館だぜ。着陸の用意をするぜ」
「うん? 着陸って……、まさか、このまま下ろすつもりか!! 無理、無理だから、引き摺られるって!!」
「着陸よ~い!」
「ヤメロー! シニタクナーイ!」
両手を縛られた状況で一気に地面が近づく。
ズザザーと地面をする音が聞こえる。
「何とか到着だぜ。で、無事か?」
「おい、魔理沙。死ぬところだったぞ、まじで。何とか無事だけどな」
クロラージュはしっかりと着陸することができたようだ。
……すごい運動神経だぜ。
色々あったようだが、無事に紅魔館の前に到着することができたクロラージュ。
ロープを解いてもらい、一度大きく伸びをした。
「それじゃ、私は戻るぜ」
「おう。空輸サンキュー」
空に軽く浮かび上がった魔理沙に大きく手を振る。
「あ、そうだった。今度、色々と魔法の話を聞かせてほしいぜ」
「わかった。そのうちな」
霧雨魔理沙が自宅に着くころにはすでに日は沈み、空には星が輝きだしていた。
「……変わった、来客だったぜ」
自宅のドアに手をかけた。
「そうだ、一十に少しクロラージュの事を聞いてみるか」
何か思いついたように、霧雨魔理沙はもう一度箒に跨る。
そして、星の瞬く夜空へと飛び出していった。
「さてと、どうやって入ればいいんだ?」
「Zzz……」
「起きるまで、待つか」
今回の出来事・霧雨魔理沙の証言より抜粋
クロロ・クロム・クロラージュ:爆炎の魔法使いで一十の親友らしいぜ。凄まじい魔法をあっさりと使えるくらいの実力があるみたいだぜ。少し話してみたけど、悪い奴じゃなさそうだぜ。by魔理沙 面倒がこっちに来てる気がするわ……。byレミリア