東方お仕事記   作:TomomonD

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四仕事目 黒翼の新聞記者

毎日朝はやってくる、それが自然の理である。

朝というのは一日を始める上でとても重要な時間でもある。

 

 

一十百の朝は、基本的に家事に費やされる。

境内の掃除、神社の掃き掃除、朝食作り……他多数。

今日も日の出と共にお客が来るかもしれないということで、掃除は念入りにしたようだ。

朝焼けに照らされた博麗神社はとても神秘的に見えたはずだ。

 

「う~ん、この朝の澄んだ空気が美味しいです。みんなは元気かなぁ~」

お日様に向けて伸びをしていると、遠くに一羽の鳥が見えた。

太陽をバックに見ているため、シルエットでしか見えないが……。

「あれ? あの鳥……大きい?」

疑問に思っていたその時、その鳥は急に速度を上げ博麗神社に真っ直ぐ向かってきた。

「ええぇ! は、速い!!」

そして、光をまといながら一十百の前に降り立った。

山伏の帽子、高下駄、首からはカメラ……。

カメラがなく、鼻がかなり長ければ天狗と一十百でもわかっただろう。

けれど……。

「あ、おひゃようございます! 天使……さんですか?」

この容姿で、天使と間違えるのもある意味すごいが……。

「いえ、天使じゃないですよ。鴉天狗の射命丸文です」

「ほえ? 鴉天狗さんでしたか。では、あらためて……おはようございます、博麗神社にようこそ。僕は一十百です」

一十百は深くお辞儀をした。

 

「それで、今日はご参拝ですか?」

「いえ、博麗神社が新しくなったとの噂を確かめにきたんです。おお! 確かに改装したみたいですね」

「改装……う~ん、お掃除しただけなんですけど……。そういえば、文さんは、記者さんですか?」

「はい。『文々。新聞』というものを発行してます。購読されてはいかがですか?」

そういって、腰元から一刊とりだした。

「ふむぅ……。おお~」

感嘆する声を出すものの、一十百は一瞬見ては次のページにと、パッとしか見ていないようだ。

そして最後のページまで見終わったようで、しっかりとたたんで射命丸に手渡した。

「とっても、興味深い記事が多かったです! 人里での新しいお団子屋の開店とか、不思議な霧の発生とか、珍しい写真もたくさんありましたし!」

「あややや? あの一瞬でそこまで読めたんですか?」

「ええ。しっかり読まさせていただきましたよ。速読は僕の得意とするところです」

どうやら、一十百はパラパラとページをめくるだけでなく、しっかりと読破していたようだ。

恐ろしい速読力である。

「僕はこの幻想郷に疎いみたいですから、ぜひ購読させてください。月間契約ですか? それとも年間ですか?」

「どちらでも! まさか、博麗神社が購読してくれるとは思っていませんでした」

 

一十百は年間契約で『文々。新聞』を購読することにしたようだ。

その後、いろいろ話しているうちに、一十百が外の世界から来た人であり、この博麗神社の改装も一十百が大きくかかわったということも分かったようで、しっかりと取材もしたようだ。

「いや~、ありがとうございます。いろいろと記事に出来そうなことが聞けましたよ」

「いえいえ、文さんも頑張ってください!」

「はい、それでは!」

タンと射命丸が地面を蹴ると、既にそこからはいなくなっており、遥か遠くにその影が見えた。

「幻想郷にも、ああいう人がいるんですね。なんにせよ、これで幻想郷に少しは詳しくなれそうです!」

そういいながら、一十百は途中だった掃き掃除を始めた。

 

 

「へっ? 鴉天狗の射命丸文の新聞?」

「はい」

朝食をとりながら今日の朝の出来事を博麗霊夢と話している。

「文の新聞って『文々。新聞』とかいうのじゃないの?」

「はい! 面白い記事がたくさんでしたよ!」

「半分くらい適当だっていう噂があるから鵜呑みにしちゃだめよ」

「ふぇ? そうなんですか?」

「まあ、信じて読むのも面白そうだぜ! あ、この魚うまい!」

「……で、何でまた魔理沙がいるのよ!!」

いつの間にか朝食におじゃましているような感じで霧雨魔理沙が話しに入ってきていた。

しかし、しっかりとご飯やお味噌汁などが出ている。

一十百のなせる早業である。

 

「いや~、昨日の朝食が忘れられなくてな。ちょっとお邪魔してるぜ!」

「だから、ただ飯食べに来るんじゃないわよ!!」

「いや、ちゃんと朝食に貢献してるぜ! ほら、そこのキノコ料理の材料を持ってたんだぜ」

確かに少し大きめのキノコが薄くスライスされ軽く焼き目がつけられている料理や、他の山菜とも一緒に出されている。

お味噌汁にも、小型のキノコが入っている。

「魔理沙さんのおかげで朝食が豪華になりましたので、ご一緒にと」

「……はぁ、まあ、確かにこのキノコ美味しいからいいけど。少し舌にピリッとくるのがいいわ」

そう言いつつ、お味噌汁に入ったキノコを食べる。

「だろ~! 私のオススメだぜ! って、食べたのは今日が初めてだけどな」

「まったく、それでこれが毒キノコだったらどうするのよ」

「そんなわけないぜ! こうやってしっかり……」

「いえ、毒キノコですよ。これはたしか、マダラアカナダケ……でしたね。丸々一つをそのまま食べたら、大変なことになるくらいのキノコです」

「「……え゛」」

 

朝食のお味噌汁に入ってるのが毒キノコという発言に二人が止まる。

それも、この大きさでかなり危険というくらいの毒性らしい。

それをあっさりとお味噌汁に入れている一十百も一十百だが。

「……え、あの、大丈夫なのよね?」

「大丈夫ですよ! そうじゃなかったら朝食に出しませんよ」

「いま、かなり危ない橋を渡った気がするぜ」

「しっかりと毒抜きをしてるんで大丈夫です。さっき霊夢さんが言ったピリッとする感じは害がない程度の毒ですね」

一十百はそういって美味しそうにお味噌汁をすすった。

 

「ま~り~さ~、適当にキノコ拾ってきたでしょ!!!」

「謝るから、許してほしいんだぜ!」

朝食中に札や星の弾幕が飛び交う。

 

そんな光景を見て一十百は少し微笑みながら、数日前の…外の世界での朝食の風景を思い出していた。

自分の主……実際は主の主なのだが、その主と夕焼け色の親友が朝食中こんな風に魔法を飛ばし合ったりしていたのを頑張ってとめたなぁ、と。

 

「懐かしいです。ってあれ?」

いつの間にか二人の姿が見えなくなっていた。

さっきまで頭上や目の前を飛んでいた弾幕も見えなくなっている。

「どこにいったんでしょうか? お庭でしょうか?」

ゆっくりと立ち上がり縁側まで出てみた。

すると……。

「こうなったら覚悟!」

「さすがに反撃させてもらうぜ!」

二人が同時にカードを構えた瞬間だった。

「あわわっ! 二人とも止まってください!」

誰よりも速くスペルカードを発動させたのは一十百だった。

「箒星『シューティング・ブルーム』」

バシュンという音と共にカードが弾け、いくつもの白色の流星(中身は箒)が霊夢と魔理沙に向かって放たれた。

「えっ!」

「いきなり!」

しかし二人ともこの手の攻撃に慣れているのか、完全に不意をつかれた弾幕も難なくかわしていく。

 

少しすると一十百の手元にカードが再構築され、流星弾幕は消えていった。

「お、驚いた。まさか、躊躇無しで撃ってくるなんて」

「まあ、弾幕ごっこ初心者だし、あのスペカも昨日作ったばかりだしな」

そういいながら二人が空から降りてきた。

「お二人とも、ダメですよお庭で暴れちゃ」

「「いや、早々にスペカ使った人に言われたくないわ・ないぜ」」

「?」

そこまでいって、博麗霊夢が何かに気が付く。

「ねえ、一十百。あなたって弾幕うてないの?」

「さっきのお札とか星とかですか? 撃てないです。これが使えたからもしかしたらと思ったんですけど……」

「スペカが使えて弾幕が使えないっていうのも変わってるぜ」

「いろいろ試したんです。でも、だめでした……」

一十百の表情を見るに、かなりいろいろ試したようだ。

「でも、スペカは使えるのよね」

「はい」

「それって、どうやって作ったの?」

「えと……」

 

 

一十百は昨日起こったことを詳しく話した。

「……というわけです」

「何が厄介な相手よ。ただの下級妖怪が厄介なわけないじゃない!」

「なんとなく面白そうだったからつい、な」

「ま、それのおかげで色々わかりそうだからいいわ」

そう言って霊夢は一枚の真っ白のカードを出した。

「あ、魔理沙さんが持っていたのとそっくりです」

「これはスペルカードの素材のようなもの。これに自分の考えた弾幕を記録させることによってスペルカードとして機能するようになるわ」

霊夢は一十百にそのカードを手渡した。

 

「私の考えだと、一十百、あなたは意識しないでスペルカードを作り出したはず。ならもう一枚くらい作れるんじゃないかしら?」

「適当なんだぜ……」

「それも、魔理沙の持っていた素材からできたスペルカードは、箒星のようなものだったわ。星とかって、魔理沙のスペルよね」

「偶然だと思うぜ」

「そうとも限らないわ」

「それに、アレは断じて箒星じゃないぜ! アレは箒だぜ!」

「ず、随分こだわるわね」

 

そんな話をしている間に一十百の持っていたカードが光り輝き始めた。

「あっ……」

「ほら。思ったとおり」

「マジかよ……」

一十百のカードから光が消えるとそこには色の付いた四角が三つ描かれていた。

「これは……」

「私のスペカは結界を意識してあるから、それに近いものなんじゃないの?」

「ためしに使ってみるほうがわかりやすいぜ」

「そうですね、では! いきます!」

バッと一十百が腕を振り上げる。

振り上げたカードが輝く。

「崩落『多重決壊』」

空中に向けて放たれたのでわかりやすい。

どうやら、対象を囲うように外から赤、青、緑の弾幕が作られる。

スペルカードに描かれたように四角く囲っているようだ。

 

「へぇ、やっぱり結界みたいね。それにしても、普通の弾幕の結界じゃない」

「私のときはあんなのだったけど、これは普通みたいだぜ」

二人が安心しきってみていた瞬間に、三つの四角の弾幕がカシャーンと割れたような音を立てて崩れた。

もし、対象を囲っている状態だったら、崩れた弾幕が不規則に落ちてくるので、面倒なスペカだっただろう。

「え? なに? 崩れた?」

「“けっかい”……って、そっちの決壊!! 崩れるほうなのか!」

「えと、霊夢さんのみたいなスペカでしたか?」

なんとなくやりきった表情の一十百が振り返る。

対称的に、霊夢の表情はやりきれないという感じだ。

「み、認めないわ! アレは結界じゃない。結界違いよ!」

「私がこだわりたい理由が少しはわかってもらえたんだぜ」

 

一十百のスペルカードはこれで二枚となった。

通常の弾幕が撃てない以上、この二枚が彼の唯一の武器だ。

しかし……。

「それ、なるべく使わないで。なんとなく、博麗神社の巫女としてやっちゃった感があるわ……」

「おいおい、そりゃ可愛そうだぜ。せっかくできたスペカなんだから、諦めて渡すべきだぜ」

「魔理沙、アンタは諦めたの?」

「もう、諦めたんだぜ……」

霧雨魔理沙がふぅとため息をつく。

それを見て、博麗霊夢も諦めたようだ。

「……うん、私も諦めるわ。たぶん、放っておいたらもっと変なのが出来そうだものね」

「良かったな、一十」

「はい!」

一十百は二枚のスペカを見比べて、にっこりと微笑んだ。

「あの笑顔……曲者よね」

「断れない雰囲気をだすからな~」

「?」

「なんでもないわよ」

 

 

「一十百、さすがに神社にいるだけじゃ暇でしょ? ちょっとくらい散歩してくれば?」

「……う~ん、暇ではないんですけど、このあたりに地理に疎いとこれから大変そうなので、お言葉に甘えさせていただきます」

一十百がぴょんと縁側から降りた。

「ちゃんとスペカ持っていくんだぜ。妖怪とかに会ったらそれで撃退すればいい」

「最悪、逃げればいいわ」

「はい! 行ってきま~す」

手を振りながら、一十百は博麗神社の階段を下りていった。

 

「……魔理沙、まだ十百と会ってから二日くらいだけど、たぶん何かに巻き込まれるわよね」

「そう思うぜ。まあ、幻想郷なりの厳しさがわかるんじゃないか?」

なんだか物騒なことを言っていたようだが、その声は一十百には聞こえなかった

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

射命丸文:鴉天狗の新聞記者さんです。幻想郷のことを詳しく知るために『文々。新聞』を一年契約しました~。by一十百  ぜひ、今後ともご贔屓に!by文  年契約!!by霊夢

崩落『多重決壊』:僕の二枚目のスペルカードです。三色の弾幕が四角い結界のようになって相手を包み込みます。でも途中で崩れて相手に弾幕が降り注ぎます。by一十百  これは断じて結界じゃないわ!by霊夢
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