東方お仕事記   作:TomomonD

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四十九仕事目 真紅の槍、血塗られた魔剣

蝙蝠の翼をもった少女と、青い骨の翼をもった少年が空中で向かい合う。

 

 

「それじゃ、いくわよ!」

レミリアから赤色の弾幕が放たれる。

その弾幕をかわしながら一十百も鳥型の弾幕を放つ。

「空も飛べるようになったから、もしかしたらと思ったけど……。ショットが撃てるようになってるなんてね」

レミリアは少し驚いた表情をしたが、すぐにいつも通りの余裕に満ち溢れた表情に戻り、鮮やかに一十百の弾幕をかわしていった。

 

 

二人の弾幕が暗い森を照らしていく。

弾幕をかわすのが得意な一十百だが、ショットはそれほど得意ではなく、思ったようにレミリアの方へと飛んで行かない。

対するレミリアの弾幕は確実に一十百目掛けて放たれる。

しかし、それでも一十百に当たることはなかった。

 

「さすがに当たらないわね。なら……」

レミリアはスペルカードを取り出す。

その時、一瞬、自分が起こした異変の時の事を思い出す。

そう言えば、あの時も人間に止められたっけ……。

でも、今回はどうかしらね。

「神罰『幼きデーモンロード』」

レミリアが高々とスペルカードを掲げた。

バシュンという音と共にスペルカードが発動する。

レミリアの周りから多くの光線が放たれ、その中のいくつかが屈折する。

そして、レミリア自身からいくつもの弾幕が放たれる。

さすが、元異変の首謀者といったところだ。

一枚目のスペルカードから難易度の高い弾幕が放たれる。

 

「ふえっ、よっと……。さ、さすがレミリアさん。ならこっちも!」

光線状の弾幕をかわしながら一十百がいったん地面に降り、スペルカードを構える。

「時空『過去と現在と未来へ向かう懐中時計』」

一十百のスペルカードが輝き十字の光の弾幕がレミリアに向かって放たれていく。

レミリアは回転する光の弾幕の隙間を縫うように避けていく。

どちらのスペルカードも難易度が高く、少しでも気を抜けば被弾してしまう程のものなのだが、二人に弾幕が当たることはなかった。

段々とスペルカードの光は弱まっていき、そして一枚目のスペルカードが終わった。

 

 

「さすがに、一枚目で被弾するってことはなかったわね」

「むぅ、そう簡単に負けませんよ」

二人がいったん体勢を立て直す。

そして、ほぼ同時に二枚目のスペルカードを構えた。

その時、一十百の周りに淡い光が灯り始める。

「あら? 少しは本気になってくれたのかしら?」

青く淡い光が一十百に宿るのは、彼が本気になっていると、前に霊夢から聞いていたレミリアはニヤリと微笑みを浮かべる。

しかし、当の本人である一十百は少し驚いた表情をしていた。

「えっ……。この光って、いつもの青い光とは違う。これは……蛍?」

 

いつしか、一十百の周りを囲うように蛍がゆっくりと飛んでいた。

その蛍たちが光を振りまきながら一十百の元に一枚のカードを持ってきた。

「これって、スペルカードの素……。じゃあ、この蛍たちは……」

一十百がリグルの方を振り返る。

「スペルカードの素があれば渡してあげてって、チルノとルーミアが言ってたから。それ、使って」

なんだか、面白いものが見られるんじゃないかと、リグルは期待した眼差しを一十百に向けていた。

一十百は一度頷いてスペルカードの素を受け取る。

すると、蛍とは明らかに違う光がスペルカードの素に集まっていった。

 

「……よし。これなら!」

一十百が新たに作り出したスペルカードに構えなおす。

「ふん。どれほどの物ができたのか見せてもらうわ!」

レミリアが二枚目のスペルカードを振り上げる。

一十百もスペルカードを振り上げた。

「獄符『千本の針の山』」

「現象『時代違いのバタフライ効果』」

ほぼ同時に二つのスペルカードが輝く。

 

レミリアからは細い針のような弾幕と、ナイフのような弾幕が放たれた。

スペルカードの名前通り、針の山のようなスペルカードだ。

一十百はそれをかわしながら自分の放った弾幕を見る。

そこには一匹の蝶がひらひらと舞っていた。

その蝶が羽ばたくと小さな弾幕が三つほど放たれた。

「えっ、これだけ?」

「大したことのないスペカだったみたいね」

しかし、その放たれた弾幕は段々と大きくなり、レミリアの目の前に行くころには普通の弾幕の十倍ほどもある巨大な弾幕となっていた。

「ちょ、ちょっとっ!」

急いでレミリアが急降下する。

間一髪のところで巨大弾幕の直撃をかわすことができたようだ。

レミリアはそのまま地面付近まで降下し、一度地面を強く蹴った。

その反動でさっきまでいた位置まで一瞬で戻ってきた。

 

一十百のスペルカード、現象『時代違いのバタフライ効果』は一十百にも操作することができないようで、蝶の気まぐれで難易度が大きく変わるようだ。

色々な方向に跳べば、いつしか巨大弾幕の壁ができるかもしれないが、同じ場所で羽ばたき続ければ、何もせずとも避けることができる。

 

今回は、どうやらレミリアの方に運が向いていたようだ。

一十百の放った蝶は、放たれた位置からほとんど動かずに羽ばたくだけだ。

その間にも一十百目掛けて、針の弾幕やナイフの弾幕が飛び交う。

「ふえっ、危ない」

「いつまで避け続けられるかしら?」

僅かな弾幕の隙間を一十百はすり抜けていく。

次第にスペルカードの光が弱まっていく。

結局、一十百の放った蝶の弾幕はほとんど動かず消えていった。

 

 

「さすがは一十百といったところね。ここまで、よく避けきったものだわ」

レミリアが最後の一枚のスペルカードを手にする。

「次がラスト……。なら、これで」

一十百も、スペルカードを手に取る。

その時、一十百の周りに青い光が揺らめいた。

光は一十百のスペルカードに吸い込まれていく。

「なるほど……。それが、うわさに聞く青い光ね。いいわ、こちらもそれ相応のスペルカードでお相手するつもりだったし」

レミリアがスペルカードを片手で握るように構える。

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

スペルカードが赤く輝き、そのまま赤い光の槍になる。

今までの数で圧倒するような弾幕とは違い、一撃必殺のようなスペルカードだ。

「うわっ、あれは……。フランちゃんのレーヴァテインと同じようなスペルカード!?」

急いで一十百がポケットからペーパーナイフを取り出す。

手に持ったスペルカードをそれに重ね発動させる。

「魔剣『ダーインスレイヴ』」

ペーパーナイフが姿を変え、血塗られた魔剣が一十百の手に握られた。

 

ダーインスレイヴを強く握り、一十百が大きく地面を蹴った。

ほぼ一瞬でレミリアの正面まで飛び上がる。

「!!」

「やあぁぁ!」

一十百が空中にいるレミリアに向けダーインスレイヴを振り下ろす。

ただの妖怪なら、確実に虚を突かれ一撃で終わっていたのだろう。

しかし……。

「くっ……」

「止められたっ!」

レミリアは赤い光の槍で一十百の魔剣をしっかりと受けきっていた。

そして、その反動を殺さないように、一気に地面に降り立った。

 

「さすがと言わざる得ないわ。でも、これで、終わり!」

ダンと地面を強く踏みしめ、レミリアの赤い槍が空にいる一十百目掛けて投げられた。

空気を切り裂き、狙い違わず一十百の元へとスピア・ザ・グングニルが向かっていく。

一十百はほぼ一瞬でダーインスレイヴを構えなおす。

そして、しっかりと両手で握る。

「たあぁぁぁああ!!」

振り下ろされた魔剣と、赤い槍が空中で火花を散らす。

 

段々と、一十百が後ろに押されていく。

「う、受けきれないっ」

魔剣が押され、直撃を覚悟した時、頭の中に魅魔の声が響いた。

「十百。今、お前さんは空を飛んでいるんだ。“浮いて”いるんじゃない、“飛んで”いるんだよ。しっかりとした足場があるだろう?」

「えっ……」

一十百が何もない空間を踏みしめるように、足に力を入れる。

グッと、まるで地面があるような感覚がそこにはあった。

 

「本当だ……。これなら……」

押されていた一十百が、一歩大きく踏み出した。

その一歩分の踏ん張りがレミリアの放ったスピア・ザ・グングニルを押し返していく。

「そんな……」

「これで、どうだっ!」

一十百が大きくダーインスレイヴを薙ぎ払った。

キンと甲高い音が鳴り響いた。

スピア・ザ・グングニルは力なく空から落ち、地面に突き刺さると同時に粉々に砕けていった。

 

ゆっくりと一十百が地面に降りてくる。

「どうですか、レミリアさん」

レミリアは少しだけ唖然としたような表情になったが、すぐにカリスマ溢れる笑みを浮かべた。

「負けたわ。本当に、人間ってのはわからないものね」

レミリアは負けたのにどこか満足そうに頷いたのだった。

 

 

「それじゃ、レミリアさん。今回の異変の事は僕たちに任せてください」

「わかったわ。そう言う約束だものね」

そう言うと、レミリアは一十百に一枚のカードを渡した。

真っ白のスペルカードの素である。

「これって……」

「私相手に三枚使ったのでしょう? そこの蟲からの一枚だけじゃ辛そうだから、私からも一枚渡しておくわ」

「ありがとうございます!」

にっこりと一十百がほほえみを浮かべる。

 

「それじゃ、私は戻るけど……。一十百、一つだけ忠告しておいてあげるわ」

「ほぇ? なんでしょうか」

「今回の異変の首謀者にたどり着くまでに、たぶんかなりの面倒事に巻き込まれるわ。それも、私みたいに異変を解決しようとした者たちのせいでね」

「それって……」

「まあ、そうなったら、今回みたいに少ない枚数で弾幕勝負をするといいわ。あまり消耗しなくて済むし、時間もかからないからね」

「わかりました」

そう言うと、レミリアは夜空へと飛び去って行った。

 

「お嬢様が迷惑かけたわね」

「いえいえ。咲夜さんも気を付けて戻ってくださいね」

「ええ。そういえば、変わった服装ね。それが飛べるようになった原因なの?」

「そういうわけじゃないんですけど……。う~ん……」

一十百がどうやって説明しようかと悩んでいると、咲夜が軽く首を振った。

「無理に説明はしなくていいわ。お嬢様が潔く退いてくれたのだから、しっかりこの異変を解決してね」

「はい!」

咲夜も安心したようにうなずくとレミリアの後を追って夜空へと飛んで行った。

 

 

「それじゃ、僕はもう行くから」

一十百が飛ぼうとすると、リグルが思い出したかのようにポンと手を打った。

「そうだった。この先に行くなら、たぶんミスティアに会うと思うんだけど、チルノとかの名前を出せばたぶん通してくれると思うよ」

「ミスティア?」

「夜雀のミスティア・ローレライ。暗い森とかでよく歌ってるんだけど、夜とかだと鳥目にされるかもしれないから、少し危ないんだ」

「へ~、そうなのかー」

「……それ、ルーミア?」

「ちょっと、やってみたかっただけ」

一十百が両手を開いてルーミアのポーズをする。

リグルは、一度ため息をついてから話を続ける。

「ミスティアもよく遊ぶ友達だから、たぶん何もしないで通してもらえると思うよ」

「わかった。それじゃ!」

一十百はタンと軽く地面を蹴り、夜空へと飛び上がった。

 

そして、そのまま夜の森を飛んで行った。




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

現象『時代違いのバタフライ効果』:僕の十三枚目のスペルカードです。蝶型の弾幕が一つ現れて、羽ばたくごとに相手に向かって小さな弾幕を放ちます。その弾幕は飛んでいくごとに大きくなって、相手の方に達するくらいになるとかなりの大きさの弾幕になります。問題は、蝶の弾幕が動かないと避けられやすいスペルカードになっちゃうことくらいですね。by一十百  意を決して、一気に一十百に近づくことでも回避できそうね。byレミリア

十四枚目のスペルカード:レミリアさんからもらったスペルカードの素です。今回の異変中に使えるようになると思います。by一十百

夜雀の噂:チルノ達の友達のミスティアっていう夜雀がいるそうです。鳥目にすることができるそうなので、夜に会うとちょっと大変かもしれません。by一十百
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