東方お仕事記   作:TomomonD

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五十五仕事目 赤色と青色の弓使い

一十百と赤色と青色の服の女性が向かい合う。

「悪いけど、あなたにも力ずくで出て行ってもらうわ」

「そういうわけにはいきません。何としても、夜の間に満月を返してもらいますよ」

 

一十百は空中を一度蹴り、いったん距離を取る。

三日月の杖を一回転させ、左手で構える。

「それじゃ、覚悟してくださいね。えっと……」

「永琳よ。八意永琳。覚えておいて損はないんじゃない?」

一十百は一度頷いた。

 

「それじゃ、永琳さん。覚悟してください!」

その一言が合図のように、一十百と八意永琳から弾幕が放たれた。

一十百の弾幕は、扇状に放たれる鳥型の弾幕。

対する八意永琳の弾幕は放たれた弾幕が一度内側に戻り、そして円を描きながら放たれるものだった。

弾幕の速度は一十百の方が断然早い。

しかし、弾幕の量は、八意永琳の方が圧倒的に多かった。

その弾幕の隙間を縫って、一十百が右へ左へ飛ぶ。

一十百の弾幕も確実に八意永琳を捉えているはずなのだが、ギリギリのところでかわされてしまっている。

幾つもの弾幕が交差し、幻想の空間に弾幕が溢れていく。

 

 

「さすがにスペルカードも使わずには勝てないわね」

そう言って八意永琳が一枚のスペルカードを構えた。

一十百もスペルカードを構えたが、いったん距離を取った。

「どうしたんだい? このまま、スペルカード合戦に持ち込むんじゃないのかい?」

「それだけだと……、あの人には勝てない気がします。ですから、少ししてから使います」

グッとスペルカードを掴む。

淡い光がスペルカードに灯っていく。

いつでも使えるようにしておくみたいだね。

さて、どこまで、相手のスペルカードを避けきれるか……。

 

「神符『天人の系譜』」

八意永琳の持っていたスペルカードが輝く。

そして、そこから弾幕が扇状に放たれていく。

同時に、赤い光線状の弾幕が点と点を結ぶように放たれ広がっていく。

さながら、樹系図といったところだろう。

 

一十百はこのスペルカードの特性をほぼ一瞬で理解した。

光線状の弾幕も、扇状に放たれた弾幕も、八意永琳の近くならさほど問題はないと。

特に八意永琳の真横、もしくは斜め前のあたりなら……。

そう思って一十百が近づく。

 

しかし、その作戦は阻まれることになった。

光線状、扇状の弾幕のほかに、大きな弾幕が放たれいていたのだった。

その弾幕は八意永琳の後方半円状に放たれている。

つまり……。

「真横には行けないっ!」

一十百は空中でブレーキをかけ、一気に遠ざかる。

大きな弾幕の直撃は避けたものの、他二つの弾幕の飛び交う空間に戻ってしまった。

それも、ほぼ急いで戻ったため、弾幕の確認もできていなかった。

気が付けば、扇状に放たれた弾幕がすぐそこまで来ていた。

急いで一十百はスペルカードを発動させる。

 

「極星『レヴァル・ハーミステート』」

次々と一十百から流星が放たれる。

目の前に広がった弾幕を切り裂き、一十百がかわせるだけの幅を作りあげた。

「これならっ!」

タンと空中を蹴り、弾幕の隙間を駆け抜ける。

放たれた流星はそのまま、八意永琳を狙って飛来した。

八意永琳はその流星を見事にかわしていく。

一十百も、調子を取り戻したようで、次々と弾幕をかわしていく。

段々と二人のスペルカードから光が消えていった。

一枚目のスペルカードで二人が被弾することはなかったようだ。

 

 

「さすがに魔理沙が負けたっていうのもわかるね。並みの使い手じゃないよ」

「気合を入れていきましょう!」

一十百がスペルカードを構える。

淡い光が集まっていく。

「こっちも、そろそろ攻めさせてもらうわ」

八意永琳もスペルカードを構える。

ほぼ同時に二人のスペルカードが輝いた。

「死人『深淵のコープスマター』」

「蘇生『ライジングゲーム』」

 

一十百のスペルカードは夜雀のミスティアからもらった物のようだ。

一十百の周りに黒い球体のような弾幕が幾つも放たれる。

その弾幕が人の姿を取る。

そして、ゆっくりと八意永琳の方に向かって動き出した。

それはまるで死人の行進のようだった。

 

それを遮るように八意永琳のスペルカードから弾幕が放たれる。

青い弾幕がいきなり一十百の前に現れ、消えていく。

同時に八意永琳から螺旋状に弾幕が放たれる。

一気に近づこうとしていたなら、直撃は避けられなかっただろう。

 

「さっきの教訓が生きたね」

「はいっ」

一十百は大きく動くことなく、八意永琳から放たれる弾幕をかわしていく。

その間に一十百が放った人型の弾幕がじわじわと八意永琳に近づきつつあった。

「こんな速度じゃ、避けてって言ってるようなものよ?」

そう言って、八意永琳はゆっくりと左に避ける。

それに合わせるように、人型の弾幕はしっかりと八意永琳の方に向かっていく。

面倒くさそうに、ゆっくりと前に出る。

 

追尾してくると言っても、それほど強い追尾力を持つ弾幕は珍しい。

右や左に追尾できても、前後、上下にはあまり追尾できないのが弾幕の特徴だ。

故に、追尾弾幕を振り切る策として、追尾弾幕の後ろに回ると言うのはとても有効なのだ。

この弾幕もこれで……、そう思って振り返る。

しかし、まるで弾幕が生きているかのように人型弾幕の向きが変わり、ゆっくりと八意永琳の方に向かって歩き出した。

「ちょっと……、どこまでついてくるのよ」

右に左に、上に下に、前に後ろに……。

どれほど動いても、人型弾幕の追尾が途切れることはなく、常に八意永琳を追いかけ続けた。

 

「くっ……しつこい。本当にどこまでついてくるの!」

長い追尾弾幕だったが、スペルカードの光が弱まり、そして消えていった。

いつしか、八意永琳のスペルカードの光も消えている。

「二枚目のスペルカードでも被弾しませんか……」

「くっ、面倒な追尾弾のせいで、思ったように弾幕が放てなかったわ」

一十百と八意永琳が三枚目のスペルカードを構える。

 

 

「そろそろ、決着をつけたいところね」

「まだまだ、負けるつもりはありませんよ?」

一十百が淡く輝いたスペルカードを高く放り投げる。

八意永琳がスペルカードを構えたまま、弓を引いた。

「天落『万天落下』」

「神脳『オモイカネブレイン』」

二人のスペルカードが強く輝いた。

 

一十百のスペルカードは、博麗霊夢からもらったスペルカードの素で作られた、崩落『多重決壊』の変化したもののようだ。

高々と放り投げられたスペルカードから壁のような弾幕が放たれる。

まるで弾幕で空が作られた作られたように見える程の量の弾幕がかなり上空に放たれた。

 

対する八意永琳は引いた弓をスペルカードと共に放つ。

すると、矢が落ちた場所から四本の光線状弾幕と高速弾幕が放たれた。

光線弾幕が作り出した空間には高速弾幕が放たれないようで、そこに入ることができれば安全のように見える。

一十百も急いでその空間に入り込む。

すると、光線弾幕が大きく回転し始め、同時に八意永琳が青色の弾幕を次々放ち始めた。

 

「ううっ、思ったように動けない……」

一十百は広い空間を駆け回り弾幕を避けるのが得意なのだが、八意永琳のスペルカードはそれができないようなものばかりだ。

光線弾幕の間をゆっくり移動しながらギリギリのところで八意永琳の放った弾幕を避けていく。

 

「そろそろ、ですね」

「なんのことかしら?」

一十百がそう言った瞬間、カッシャーンと言う音が上空で鳴り響いた。

「なに、今の音……」

八意永琳が上を見上げる。

すると、弾幕の空が崩れながら降り注いできた。

「な、なんて弾幕の量っ!」

幾つもの弾幕が塊で降り注ぐ。

落ちてくる速度もなかなか速いが、それ以上に弾幕の量が桁違いに多い。

単純に落下するだけのスペルカードなのだが、その量のせいでかなりの難易度だ。

八意永琳も上空を確認し、降り注ぐ弾幕の順を考え、避けていく。

どちらのスペルカードもかなり難易度の高いスペルカードなのだが、被弾することなく二人はかわしていく。

スペルカードから光が消えていく。

 

 

「くっ……。まさか、ここまでやるとは思っていなかったわ」

「ふぇぇ…。スペルカードの相性が悪いみたいで、あまりのんびりはしていられなくなってきました」

一十百が次のスペルカードを選ぼうと、ポケットに手を入れる。

次のスペルカードは……えと、あれ?

 

その時になって、一十百が大事なことを思い出した。

得意なスペルカードがほとんど残されていないと。

一十百は所持しているスペルカードの枚数が多いが、そのすべてを得意としているわけではない。

最も得意としているのは、一番初めに手に入れた、箒星『シューティング・ブルーム』である。

他には、魔剣『ダーインスレイヴ』や、変化したスペルカードの轟天『雷鳴轟き裂ける大地』などが得意な部類に入る。

しかし、そのすべてを使い切ってしまっている。

そうなると、多少苦手なスペルカードを使わざる得なくなってしまうのだ。

 

「あぅぅ……」

「そっちが来ないのなら、こっちから行くわ!」

一十百が迷っている間に八意永琳がスペルカードを掲げる。

「天呪『アポロ13』」

八意永琳の周りに弾幕が円状に放たれる。

そして、一度、八意永琳の手元に戻り、一気に放たれた。

始めに放ってきた弾幕によく似ているが、明らかに弾幕の量が多くなっている。

 

「あっ……」

次のスペルカードを選ぶのに集中していた一十百は目の前に広がる弾幕を見落としていた。

急いで避けるも、無理な体勢で避けてしまった。

さらに、避けた方向が悪く、次の弾幕が迫りつつあった。

「これは……避けられないね……」

「……ならっ!!」

一十百が取り出したスペルカードを左手に持ち、両手を胸の前でクロスさせた。

 

「覚醒『リーインカーネイション』」

元のスペルカードは、紅魔館の門番の美鈴からもらった、情景『虹にかかる賛辞』のようだ。

一十百が足をそろえ、両手を横に突き出す。

そして、視線をななめ上空に向けた。

その直後、スペルカードから虹色の光が衝撃と共に放たれる。

一十百を覆い尽くそうとしていた弾幕は一瞬にしてはじけ飛び、何もない空間がそこに出来上がった。

しかし、発動したばかりだというのに一十百のスペルカードから光は消えている。

どうやら、弾幕消しのみのスペルカードのようだ。

 

弾幕が消えたことに驚いた魅魔だが、それ以上に驚いたことがあった。

それは……、今の一十百のスペルカードのポーズである。

「私と同じ格好で、弾幕を消すのか……」

魅魔と同じように、魔理沙、アリスもその姿に驚く。

「あ、あれは魅魔様の……」

「確かアイツが弾幕を消すときにするものと同じ!?」

二人は驚きつつも、一十百の事を見守る。

 

「……弾幕を消すだけの、スペルカード」

八意永琳は自分のスペルカードを見る。

先ほどまでしっかり光っていたスペルカードからすでに光が消えつつある。

スペルカード一枚で、相手のスペルカードを一枚封殺する……。

正直、弾幕勝負の後半に出されたのは、つらいわね……。

ふぅ、とため息をついて、一十百に向かい合った。

 

「そろそろ決着をつけてあげるわ」

「………」

一十百は考え事をしているのか、八意永琳の声が届いていないようだ。

「覚悟はいいかしら?」

「……えっ? あ、はい」

「……聞いてた?」

「たぶんですけど……」

(確実に聞いてなかったわね)

やれやれと、八意永琳が弓を構える。

 

「次が最後のスペルカードになるわ。あなたも全力で挑むことね」

「もちろんです! 覚悟してください」

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

八意永琳:赤色と青色の服に長い銀色の髪が特徴的な女性です。落ち着いていて、実力も高く、才色兼備な女性です! 今回は異変の首謀者と異変を解決する側という事で敵対してしまいましたが、今度ゆっくり話し合ってみたいです。by一十百  今度色々、話し合ってみようかしら?by永琳

死人『深淵のコープスマター』:夜雀からもらったスペルカードが変化したものらしいわ。黒い弾幕が人型になって、ゆっくりと追いつめてくるスペカね。速度こそないけれど、永久追尾とそれなりの弾幕量で追いつめてくるわ。死人弾幕は頑張れば壊せるらしいわね。by永琳

天落『万天落下』:霊夢からもらったスペルカードの素で作ったスペカ、崩落『多重決壊』が変化したものだぜ。かなり高いところに弾幕の天井を作り、少しするとそれが崩れてくるみたいだったな。元のスペカに比べて、一度に降ってくる大きさ、降ってくる量、降ってくる範囲がかなり上がってるみたいで、難易度の高いスペカだぜ。常に上を見るか、降ってくる順番を考えて行動するかの二択だな。by魔理沙  私は後者で避けさせてもらったわね。by永琳

覚醒『リーインカーネイション』:紅魔館ってところの門番からもらったスペルカードが変化したものらしいね。周りの弾幕を消すと共に、相手のスペルカードの発動時間を大幅に削る効果があるようだね。一度きりとはいえ、被弾を防ぐにはもってこいのスペルカードだね。まあ、発動時の格好が私そっくりだったのは、偶然って奴かね……。by魅魔  昔の嫌な思い出が……、はぁ……。byアリス
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