東方お仕事記   作:TomomonD

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五仕事目 ほおずきみたいに可愛い少女

少年が駆け抜けていく。

目的がないため、そこまで急ぐ必要はない。

それでも少年は駆け抜けていく。

一十百には歩くのも走るのも変わらないようだ。

恐ろしい体力の持ち主である。

 

 

少し走って、到着したのは森。

神社から少し行ったところの森だ。

「森には妖怪がいるんでしょうけど……、ここを抜けることになった時のために慣れておかないと」

中に入っていくと、太陽の光が森の葉に遮られ少し薄暗くなった。

妖怪の中には太陽の光を嫌うものもいる。

そんな妖怪たちにとって、この生い茂る木々はありがたいものだろう。

「木漏れ日が幻想的です。ピクニックには少し危ないですけど、いいですね」

始めのころは辺りをうかがいながら歩いていたのだが、段々と慣れてきたようで今は無警戒で歩いている。

 

森を半分くらい進んだところだろうか。

謎の黒い球体がふわふわ飛んでいるのを見つけた。

「ふぇ? 妖怪さんかな?」

段々と黒い球体は一十百に近づいてくる。

けれど……。

ゴン!

「あ…」

なぜか正面にあった木にぶつかり、落ちた。

「いたた~」

霧を晴らすように黒い球体が消え、中から金髪の少女が現れた。

赤いリボンをした小柄な少女だ。

少し幼いといったほうが妥当かもしれない。

「だ、大丈夫? 正面からぶつかったみたいだったけど……」

「それなりにいたかった。それよりも……」

少女が立ち上がる。

じっと一十百の事を見る。

赤色の瞳に一十百の姿が映る。

「あなたは食べてもいい人類?」

「???」

一十百が周りを見回す、もちろん誰もいない。

そして、その言葉が自分にかけられたものだと気が付く。

「えっ! ぼ、僕?」

「うん」

「……ダメだよ。僕には主がいるから、食べられるわけにはいかないんだ」

「そーなのかー」

ダメといわれてあきらめる妖怪も珍しい。

しかし、うなだれている所を見るとガッカリしているようだ。

「……でも、味見くらいはいい?」

「ダメ。つまみ食いはよくないよ」

自分が食べられるかどうかの瀬戸際なのだが、まったく動揺する様子もなく話している。

「う~ん、なら……」

そういって金髪の少女が少し距離をとる。

「弾幕ごっこで勝ったら食べる!」

「あぅえぇ!! う~ん、弾幕って僕撃てないんだよ。スペルカードなら使えるんだけど……」

一十百が説明するが……、どうやら少し遅かったようだ。

 

金髪少女から少なくない量の弾幕が放たれる。

「おっと……」

一十百の回避率は並ではない。

外の世界ではこの回避率と速さだけで裏の道を歩いてきたようなものだ。

確かに少女の弾幕は、始めて弾幕ごっこをする人には辛いかもしれない。

けれど……。

「わは~、あたらないのか~」

「これくらいなら、当たらないよ」

無駄な動きもなく少女の撃つ弾幕を次々とかわしていく。

さすがに少女のほうもこのままじゃ当たらないと悟ったのか、一枚のカードを取り出した。

「あれはっ! スペルカード!」

「いくよ~、夜符『ナイトバード』」

少女が右手左手を順に振るっていく。

それにあわせて、扇状に広がった弾幕が展開される。

今までの弾幕に比べると格段に難しい。

 

しかし……。

「ほっ、よっと、おっと」

「これでも、あたらないの?」

「当たらないよ。当たったら一回でおしまいだからね」

扇状に展開された弾幕の中を大きな動きをせずにかわしていく。

一歩間違えば直撃するようなギリギリの回避も次々とこなしていく。

「よ~し、そろそろ反撃するよ! えと、箒星『シューティング・ブルーム』」

一十百がスペルカードを高々と掲げる。

光と共に次々と流星が少女の弾幕を貫いていく。

流星の速度は落ちることなく少女に降り注いだ。

「わわわ~」

避けることに専念したのか、少女の弾幕が止まる。

一十百が放った流星は、少女を狙うのが大半だが、ランダムに別方向に飛んでいくのがいくつかある。

狙って飛んでくる流星のみに集中していると、逃げた場所に先に放たれている流星にぶつかる。

「さ、さきまわりされたぁ!」

丁度、金髪の少女もその状況に陥ったようだ。

少女はタンと地面を蹴ると大きく空へと飛び上がった。

 

いままで一十百は空中を飛び回る敵を相手にしたことはない。

小柄な少女が空中を飛び回ると二次元的な戦いから三次元的な戦いに変わってしまう。

慣れていない空中戦、さらに初めての弾幕ごっこ……。

使い勝手のいいスペルカードだが、空中戦になった瞬間に狙いが甘くなり始めた。

「うう、なかなか難しい……」

「これは、ちゃんすみたい!」

金髪の少女が二枚目のカードを取り出す。

「闇符『ディマーケイション』」

少女から交差する弾幕が円のように放たれる。

今までとは違い、交差するタイミングを読み損なえば二つの弾幕に挟まれることになる。

「ほいっ、たぁ」

しかし、回避に特化した一十百がその交差のタイミングを読み違えることはないようだ。

 

一つ目の交差の円をくぐると、扇状に放たれた弾幕が全て一十百の位置に向けて飛んできた。

「ええぇ!」

驚いたような声を出しているが、慌てて避けるようなことはない。

ただ一歩右に動いただけだ。

全ての弾幕が元いた位置を通過していく。

当たるかすれすれの場所だが、臆することなく的確に避けていく。

「これも、あたらないのか~」

 

「よし、段々わかってきた!」

そう言うと一十百が二枚目のスペルカードを掲げる。

「崩落『多重決壊』」

空中にいる少女を包むように三重の弾幕が展開される。

「むぅ、動きにくい」

「やった、これなら……」

少女を包んでいた弾幕がカシャンと音を立てて崩れる。

「えっ、崩れてきた!」

いきなり崩れてきたので少女も対応が遅れた。

一重目の弾幕を避けることはできたのだが、二重目の弾幕を無理な体勢でかわしてしまった。

そして、三重目の弾幕にぶつかった。

 

「あぅ……」

空中でバランスを崩し、地面に向かって落ちる。

妖怪なのだろうから、大怪我をすることはないだろうが……。

少女は地面にぶつかる衝撃耐えるため、目を閉じた。

ポスッ……。

地面にしては、随分と痛みがない。

「ふぅ、間に合った。怪我はない?」

目を開けると、今まで弾幕を撃ち合っていた人間の顔が目に入った。

「だ、大丈夫だよ」

「よかった~。無事で何より」

そう言って金髪少女をゆっくりとおろす。

少女の落ちた場所は一十百からそれなりに離れていた。

一十百の走力があってこその救出劇だ。

 

「う~ん、食べ損ねた」

「ふぅ、食べられなくてよかった」

ざんね~んと言いながら少女が両手を広げて一回転した。

すると、ひらりと白いカードのようなものが一枚落ちる。

「あれ? 何か落ちたよ」

「あ、それルーミアのスペカ」

一十百が拾って渡す。

今までの弾幕とは違った絵が描かれている。

「これは?」

「ルーミアのスペカ。月符『ムーンライトレイ』」

「まだ他にもあったんだね。それで、るーみあ?って言うの?」

「うん。ルーミアだよ」

「僕は一十百。よろしくね」

「よろしくなのか~」

そういって二人は握手をした。

 

スペカを拾ってあげたときに一緒に白いカードが落ちたので拾ってあげると……。

「あまってるから十百にあげる」

と言って渡してもらったようだ。

一十百もまたスペルカードを増やすことが出来そうなのでありがたく貰っておいた。

「ルーミア、この先って何があるか知ってる?」

「湖があるよ」

「湖か……。行って見ようかな」

「せっかくだからついて行くのだ~」

 

 

午後の木漏れ日の日差しを受けて湖に向けて歩いていく。

湖は思ったよりも近く、すぐ到着することができた。

太陽の光を水面が反射してキラキラと光っている。

「おお~、思った以上に広い!」

「広い~」

のどかでお弁当を食べたい気分になるようなところだ。

周りを見渡すと、なにやら人影が見える。

「あれ? 誰かいるみたいだ」

よく見ると、二人組みのようだ。

遠くでからでよく見えないが、一人は水色の髪、もう一人は緑色の髪をしているようだ。

その二人が見ている先には……。

「あの妖怪は!!」

霧雨魔理沙の家の前で倒した鼠妖怪が三匹、二人の行く手をふさいでいた。

「うわぁ、助けないと!」

「いそげ~」

ルーミアが地面をけり、ふわりと浮かんだ瞬間には一十百の姿はなく、既に二人のところまで走り届いていた。

「は、はやすぎるのか~!!」

 

一十百の接近に一番早く気が付いたのは緑色の髪の少女だった。

それに伴って水色の髪の少女が気が付く。

そして鼠妖怪も気が付いた。

しかし、鼠妖怪が気が付くときには既に一十百の用意は出来ていた。

「箒星『シューティング・ブルーム』」

一十百の超加速状態で地面を大きく蹴る。

タンという音を残して一十百の姿が消える。

二人組みの少女も、三匹の鼠妖怪も一十百の姿を見失った。

唯一、遠くから見ていたルーミアのみが一十百の姿を捉えていた。

「たかいのか~」

飛ぶことが出来ない一十百も、超加速状態で跳べばそれなりの高さまで跳ぶ事ができる。

そして、跳ぶ瞬間に発動しておいたスペルカードが放たれる。

文字通り降り注ぐ流星となって、斜め上方から鼠妖怪に向けて放たれる。

姿を見失ったことによって動きを止めていた鼠妖怪たちは降り注ぐ流星の嵐の直撃を受け三方向に吹き飛んだ。

 

「ふぅ、二人とも大丈夫ですか? ……て、あれ?」

スタンと降りてきた一十百が見たものは、少女二人の背中に生える羽だった。

一十百は人間の少女が襲われてると思っていたので急いできたのだが……、どうやらこの二人は人間でないようだ。

緑色の髪の少女の羽は薄透明の蝶とも蜻蛉とも違う妖精特有のものだ。

水色の髪の少女の羽は六つの氷の結晶を合わせたような変わった形をしている。

「よ、妖精さん、だった?」

「た、助かりました!」

「アンタ、いいところに来た!」

それなりにピンチであったことには変わりないようだ。

「やっとおいついた~」

ルーミアも何とか追いついたようだ。

飛べるため最短距離で移動できる、そのため早く着いたようだ。

 

「「「ギィィ……」」」

「まだ生きてる……」

「あいつらしぶといんだ」

鼠妖怪がゆっくりと近づいてくる。

低級妖怪とはいえ、野生の獣並みの知能は持っている。

今の一撃で相手の力量も大体把握した。

じりじりと距離をつめる。

「う~ん、どうしようか。逃げる?」

「そうしようよ、チルノちゃん」

「ダメだ!」

どうやらチルノと呼ばれた妖精はどうしてもあの鼠妖怪を倒したいようだ。

「……そこまで言うなら仕方ないね。でも、僕のスペカは打ち止めだよ」

「もう一枚あるじゃなかったっけ?」

「さっきルーミアに使っちゃってまだ使えないみたい」

「そーなのかー」

仕方がないので一十百が一歩下がる。

 

「えと、二人は弾幕って撃てる?」

「撃てるんですけど、避けられちゃうんです」

「スペカとかじゃないと当たらないんだ」

どうやら低級妖怪の中でも速度に特化した妖怪のようだ。

一十百の箒星『シューティング・ブルーム』は確かに速度のある弾幕だ、そのため命中したのだろう。

「困った……。あれ?」

一十百がスペルカードを確認すると、今さっきルーミアから貰ったスペルカードの素が光り輝いている。

「これは……」

「スペカをここで作ったの!?」

「よし! いけるかも!」

光り輝いたスペルカードがさらに輝く。

「いくよ! 濁点『ダークオン・ハート』」

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

ルーミア:闇を操る妖怪さん、たぶん人間を食べるみたい、あうぅ。でも両手を広げて、そーなのかーってやってくれるのが可愛いです。by一十百  そーなのかー。byルーミア

弾幕ごっこ:今までは空を飛んだりする人と戦ったことがなかったんで上手くできませんでした。練習すれば上手くなると思います!by一十百
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