東方お仕事記   作:TomomonD

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六十四仕事目 果てまで届け、夕焼けの閃光

迷いの竹林に一筋の赤い閃光が走る。

弾幕を吹き飛ばし、その延長線上にある竹をすべて粉々にしていった。

 

その閃光を見たのは、放った本人である一十百と、受けた本人である白い髪の少女。

そして、近くで見ていたレミリア・スカーレットの三人のはずだった。

しかし、その閃光は遠くの別の場所で、とあるペアがしっかりと目撃していた。

 

そのペアは、アリスと妖夢のペア。

急いで帰ろうと走り出した妖夢の前をその閃光が横切ったのだ。

あと一歩、踏み込んでいたら、巻き添えを食らっていただろう。

圧倒的な威力の弾幕を見て、ぺたんと妖夢が力なく腰を落とした。

「……ひぇ」

「大丈夫!?」

アリスが慌てて駆け寄る。

妖夢が怪我をしていないのを確認すると、ほっとしたような表情を浮かべた。

 

「怪我がなくてよかったわ」

「……ぐすっ。ァリスさん、怖かったですよぅ」

ぽろぽろと妖夢が泣き出してしまったので、アリスはその横に座る。

「よしよし。少し落ち着くまで、横にいてあげるから。それからゆっくり帰りましょ」

「……はいっ」

軽く妖夢の頭を撫でながら、アリスはさっきの赤い閃光の飛んできた方向を見る。

満月で多少明るいとはいえ、はるか先は暗くてよく見えない。

「いったい、何が起こってるのかしら……」

不安そうにアリスはそう呟いた。

 

 

さて、そのころ……。

白い髪の少女と一十百の弾幕勝負は続いていた。

 

「不死『火の鳥 -鳳翼天翔-』」

白い髪の少女がスペルカードを発動する。

燃え上がる弾幕で作られた火の鳥が一十百に向けて放たれる。

羽が舞い散るように、火の鳥自体からも弾幕が放たれた。

 

「こんなものが、当たると思うな」

一十百は飛んでくる火の鳥の弾幕の正面に立つ。

そして、ほんの少しだけ右にずれた。

燃え盛る火の鳥の弾幕の隙間をあっさりと潜り抜ける。

「所詮、弾幕を重ねて作っただけの傀儡にすぎないようだな。それもすでに見飽きた、さっさと散るがいい」

 

赤色の揺らめきが一十百のスペルカードに吸い込まれていく。

揺らめいていた光が、鋭い光に変わる。

「終告『十二枚翼のキセキ』」

一十百のスペルカードが輝く。

すると、弾幕で作られた鳥が六羽、一十百の周りを回る。

ゆっくりと一十百が右腕を高く上げる。

「格の違いを、その目に焼き付けろ!」

バッと一十百が右手を振り下ろした。

すると、弾幕の鳥が一斉に羽ばたき、そのすべてが白い髪の少女目掛けて飛んで行った。

 

「この程度なら……」

白い髪の少女は、弾幕で作られた鳥を何とか避けることができたようだ。

「この程度? そうだな、この程度なら避けて当然だろう?」

「え……」

しかし、次の瞬間、弾幕の鳥が通った場所を膨大な量の弾幕が流れていった。

その弾幕は、容赦なく白い髪の少女を飲み込み、粉々にしていった。

「この程度だ。まあ、避けて当然。避けられなければ、砕け消え去るのみ」

 

 

「『リザレクション』」

先ほどと同じように光が集まり、白い髪の少女が復活する。

「さすが不死人。砕け散っても、もとにもどれるか」

「はぁ、はぁ……。なんて威力だ……」

「ほぅ。どうやら、不死とはいえ消耗はするようだな。なら分かりやすい。その身が地に伏し、動かなくなるまで叩き落とせばいいだけだ」

腕組みをし、ニヤリと一十百が笑う。

そして、タンと後ろに一歩分飛びのいた。

 

「次は……これを使うか。あの悪霊がいなくても、使えるだろう」

ゴゥゥと一十百から赤い光が溢れだす。

明らかに先ほどとは比べ物にならないスペルカードが使われるのは目に見えていた。

白い髪の少女は急いで次のスペルカードを発動する。

「藤原『滅罪寺院傷』」

スペルカードから札型の弾幕が規則正しく放たれていく。

一十百の後ろからも、同じように札型の弾幕が放たれる。

「これでどうだ!」

「くだらん。所詮これも子供騙し。当たると思っているのか?」

一十百は後ろからくる弾幕を、後ろを確認もせずに次々と避けていく。

その間にも、あふれ出した赤い光はスペルカードに吸い込まれていく。

 

そして、一十百のスペルカードがとてつもない光を放ち始める。

「やっとか。耐えて見せろ、不死人」

一十百が高々とスペルカードを放り投げた。

そしてパチンと指を鳴らす。

すると、スペルカードから赤色の光が溢れだし、辺りを染め上げる。

その光はいつしか、空も染め上げ、星空が夕焼け空に変わっていく。

 

「な……、なにが、起こっているんだ?」

「おい、聞いていなかったのか? 耐えて見せろと言ったんだ」

辺りを見回していた白い髪の少女は、ハッとなり一十百の方に向き直る。

一十百の右手の上に夕焼け色の光が集まっていく。

その光が大きく、強く輝くほど、辺りが暗くなっていく。

そして……。

「三度目だ。耐えて見せろ、不死人!」

一十百がダンと地面を踏み込み、集めた光を押し出すように、右手を前に突き出した。

 

「黄昏『トワイライトスパーク』」

周りの竹林を巻き込み、夕焼け色の光が解き放たれた。

直線状にある全ての物を消し去り、夕焼け色の光が走る。

竹林を切り裂き、その先にある平原を両断し、さらに遥かその先にある山を文字通り真っ二つにした。

 

シュゥゥ……と静かに光が消えていく。

光が消えると、その一撃の爪痕をしっかりと見ることができた。

一十百のいる地面が半球状に軽くへこみ、そこから一直線上には何もなくなっていた。

地面も同じように抉られ、遥か彼方まで一本の道ができてしまった。

「少し加減するべきだったな。後でスキマ妖怪が小言を言いに来そうだ」

 

「……何、これ?」

竹林の陰に隠れてみていたレミリアがその一撃の威力を見て、震える。

自分と弾幕勝負をした時の一十百がいつも通りの時でよかったと、心の底から思うのだった。

 

 

一十百が黄昏『トワイライトスパーク』を使う少し前……。

霊夢と魅魔のペアが永遠亭にたどり着いていた。

「あら? 弾幕勝負の音が聞こえたものだから、てっきり貴女がやってるかと思ったのだけど……違ったみたいね」

キョトンとした表情で輝夜がそう言った。

「私じゃないわよ」

「私でもないね」

霊夢と魅魔が答える。

 

「でも、そうなると、誰かしら? 時間的に、紫のペアはまだだろうし、一十百のペアももう竹林を出てる頃だし……」

そうなると、魔理沙くらいしか心当たりがないわね。

そんなことを考えていると、急に周りが明るくなり始める。

「な、何!?」

「これは、まさか……」

夕焼け色に染まりつつある空を見て、魅魔が難しい表情をする。

「何か知ってるの?」

「いや、こういうスペルカードを知ってる、みたいなもんさ」

「……誰のスペカよ?」

「十百のだよ」

「それって、つまり……」

霊夢が何かを言おうとした瞬間、とてつもない光が少し先の竹林を粉々していくのが見えた。

その光は竹林を越え、はるか先まで伸びていった。

 

光がおさまると、竹林に静寂が訪れた。

「………」

「………」

「やっぱり、十百に間違いないみたいだね。私の時より、かなり威力が上がっていたみたいだけれど……」

そう言って魅魔が少し遠くの山を見る。

 

山の一部が大きく抉れているのを見ると、それだけで相当な威力だったと一目でわかった。

こんな威力のスペルカードを使うなんて、相手はいったいなんだったんだろうね……。

まあ、これじゃ、塵も残らなかったと思うけどね。

 

「霊夢、そろそろ戻ろうじゃないか」

「………」

「霊夢?」

魅魔が霊夢の顔を覗き込む。

霊夢は瞬き一つしないで、そのまま止まっているようだ。

「あ~、こりゃ駄目だ。じゃ、担いで帰るよ」

ひょいと霊夢を担ぐと、魅魔はゆっくり来た道を戻っていった。

 

「……あ、あれ? いつの間にか、あの巫女と悪霊がいなくなってる!?」

少しして、蓬莱山輝夜が気が付く。

既にその時には二人はいなくなっていた。

 

 

黄昏『トワイライトスパーク』が放たれ、平原を両断し、山を抉った頃……。

丁度、魔理沙と咲夜のペアが竹林に到着しようとしていた。

空の色が夕焼け色に変化したのを見て、魔理沙はこの前のスペルカードの事を思い出す。

異変かと思って身構えた咲夜にそのことを伝える。

一十百のスペルカードだと伝えられた咲夜はホッとしたように胸をなでおろす。

しかし、その瞬間、竹林から光の砲撃のようなものが放たれ、竹林はおろか、隣接していた平原、果ては遠くに見える山、そのすべてを両断していった。

 

「……十百君のスペルカード、って本当なんでしょうね?」

「ほ、本当だぜ! でも、あの時よりも、桁違いに威力が上がってる……。あの時は魅魔様と一緒であれだけのだったはずなのに……」

「まあ、考えていてもしょうがないわ。それに、お嬢様の事も気になるわ」

「確かにそうだな。急ぐとするぜ」

 

 

光の発生地点である一十百の場所にも静寂が訪れつつあった。

一十百はパンパンと土ぼこりを払うと、レミリアの方に振り向いた。

「戻るぞ」

「え、あ……、そ、そうね」

コクコクとレミリアが頷く。

その時、一十百の後ろに白い光が集まり出す。

「一十百! 後ろ!」

「……ほう」

レミリアが慌てて後ろを指差したので、一十百が振り返る。

そこに集まりつつある光を見て、少し驚いた声を出した。

 

「『リザレクション』」

「正直、驚いた。まさか、あれが直撃しても復活できるとは。不死というのは、虚言ではないようだな」

「かはっ……、うぐっ……」

「とはいえ、少しは効果があったようだな」

一十百が次のスペルカードを構える。

 

「どうする、まだ続けるか?」

「……もちろん。輝夜とばかり戦っていたせいで、少し感覚が鈍っていたのかもしれない」

白い髪の少女は、どこか清々しい表情で次のスペルカードを構える。

「自分と同じように、殺しても死なない、殺されても死なない相手としか勝負していなかったからなぁ……。でも、今回は違う。下手をすれば、死ぬかもしれない勝負。これでこそ、自分の限界に挑める!」

その言葉を聞いて、一十百はフンとつまらなさそうに鼻を鳴らす。

「どう思うかは貴様の勝手だ。どうせ私が勝つ」

タンと地面を蹴り、双方が距離を取る。

 

そしてほぼ同時にスペルカードを発動させた。

「虚空『虚数次元空間』」

「不死『徐福時空』」

竹林を舞台とした弾幕勝負は、まだ半分も終わっていないようだ。

 

 

そのころの博麗神社。

「紫。今、向こうの方ですごい光が見えたけど?」

「………」

「紫?」

「………」

「あら~、固まっちゃってるわね。じゃ、おつまみはもらうわね。うん、おいしい」




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

一十百(赤)のスペルカード:いつもよりも威力が上がり、弾幕やスペルカードの質も少し違っているようだな。この威力は、スペルカード本来の力を引き出して使ってるにすぎん。後は気持ち次第といったところか。手加減や情けを捨てれば、これくらいの威力は簡単に叩き出せる。覚えておくことだ。by一十百(赤)  あれ? 僕の字で何書かれてます。書いた覚えはないんですけど……。by一十百
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