東方お仕事記   作:TomomonD

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今回はいつもの後書きの後に、ちょっとしたコラボ企画について、お話があります。

是非、皆様のご協力をお願いします。



夏季特別企画三話 開催の合図

今、紅魔館の中は二つの出来事で大変なことになりつつある。

一つは、一十百が訪れたことによって引き起こされた、時間停止。

もう一つは、お祭りの事でのレミリアとフランの二人の口論。

……つまり、いま紅魔館を騒がしている事件の発端は一十百にあるのだが、それを追及する人はいなかった。

 

 

「十百君。どう、終わりそうかしら?」

時間を止めた世界の中、十六夜咲夜が一十百のいる部屋に行く。

その部屋の中心では、一十百が次々と洋服のようなものを作っていた。

他にも、お面のようなものや、劇でもするのかと思えるような仮装道具のようなものが一十百を取り囲むように幾つも点在していた。

 

咲夜の言葉が聞こえないほど集中しているのか、一十百は一心不乱に洋服を作り続けている。

「……聞こえてないわね。まあ、今回のお祭りは彼一人で準備しているらしいし、時間がないのは仕方ないことよね」

咲夜は床に落ちている物の一つを拾う。

牛の頭そのもの……と言うしかないほど、リアルに作られた被り物だ。

まるで生きているかと思えるほど上手く作られている。

今にも動き出しそうで、ある意味怖いわね……。

 

「彼は、こんなものを作って、どうするつもりなのかしら?」

足元に転がっている角のようなものを拾い上げる。

カチューシャに角がついているだけの簡単な仮装道具のようだ。

しかし、カチューシャの部分はともかく、角の部分は本物の質感を持っており、作りも完璧と言わざる得ないものだ。

 

 

「……できたっ!」

「えっ!?」

今まで、超高速をはるかに凌駕した速度で裁縫をしていた一十百が立ち上がる。

いきなり立ち上がったものだから、咲夜もさすがに驚いたようだ。

「あれっ? 咲夜さん。いつからそこに?」

「少し前からいたけれど……。とにかく、どうやら終わったみたいね」

「はいっ! 咲夜さん、ありがとうございました。おかげで無事に終わりました」

一十百が周りに散らばったものを手早く一カ所に集めた。

 

「さてと、それじゃ、僕はレミリアさんを説得してみます」

「……やっぱり、妹様をお祭りに行かせてあげるつもりだったのね」

一十百は一度頷く。

「紅魔館に御留守番は寂しいじゃないですか。僕はみんなにこの秋夏祭りを楽しんでもらいたいんです」

「まあ、それはそうだけど……。お嬢様がお許しになるとは思えないわ」

「だからこそ、僕が説得しに来たんです」

トンと軽く自分の胸を叩いた。

そして、にっこり微笑んだ。

「安心して任せてください!」

 

 

一十百がレミリアの部屋に向かう。

その扉を軽くノックした。

「一十百です。少しお話があります」

「一十百!? ちょ、ちょっと待ちなさい!」

ドタバタと何か中で慌てているような音がする。

その後、すぐにズダーンと何かが倒れたような音が聞こえる。

「……う~」

「あ、あの、レミリアさん……。その、大丈夫ですか?」

「も、もう少し待っていなさい!」

中の事は気になるが、待っていろと言われたのだったら仕方がない。

一十百は扉の横で待つことにした。

 

少し待っていると、中での音は静かになり、ゆっくりと扉が開いた。

「コホン。入ってきなさい」

「失礼します」

一十百がレミリアの部屋に入る。

さながら玉座の間のような、そんな雰囲気がある部屋だ。

大きな椅子に座ったレミリアの姿はとても威厳溢れている。

……涙目でなければの話だが。

「あの……、大丈夫ですか?」

「少し、痛かったわ」

 

大方、裾でも踏んで転んだのだろう。

それも、たぶん盛大に転んだのだろう。

鼻の頭が赤くなっているのを見ると、顔面から転んだのだろう。

……痛そうです。

「何か、失礼なことを考えてないかしら?」

「ふえっ! いえいえ、そんなことはないですよ。ビターンって、前のめりに転んだのかなぁ……と思っただけです」

「……それは失礼なことに入らないのかしら?」

「転ぶのは誰にでもありますし」

それもそうね、とレミリアが頷く。

 

 

「それで、今日は何の用かしら? さっきまでは咲夜と話をしていたみたいだったけど」

「フランちゃんの事です」

その一言で、レミリアの表情が真剣なものに変わる。

姉妹として仲直りは出来たとはいえ、数百年続いてしまった関係はそう簡単には元に戻らないのだろう。

まだ、心のどこかに、わだかまりのようなものがあるのだろう。

 

「今日の祭りにフランを行かせてほしいと」

「はい」

「……そう言う話は、せめて前置きくらいは入れるべきよ」

「レミリアさん。二者択一の決断は一瞬です」

少し微笑んだ後、一十百の表情が真剣なものに変わる。

あまり人前では見せることのない、冷たく非情さを感じさせるような、執事の表情だ。

「二度は尋ねません。レミリアさんの一言に僕は従うだけです」

「うっ……」

 

その瞬間、レミリアは色々なことを考えた。

フランの事、紅魔館の事、お祭りの事、一十百の事、博麗神社の事、自分の事……。

行かせるか、引き留めるか、ただその二択のはずなのに、答えが出せない。

誰かに助けを求めようにも、これはどう考えても自分の問題であり、助けを求めるのはお門違いというものだ。

 

どれほど考えただろう、一時間……いや、少なくとも三時間は考えたように思えた。

レミリアが、絞り出すように一言紡ぐ。

「……行かせるわ。フランも、少しは外の世界を知るべきだもの」

その言葉を聞いて、一十百は深く頭を下げる。

そして、もう一度頭を上げたとき、いつもの一十百の微笑んだ表情がそこにあった。

「ありがとうございます、レミリアさん」

一十百の笑顔を見て、レミリアが疲れたように大きくため息を吐いた。

 

「どうして、こう、貴方は私が作った運命の道をすり抜けてくるのよ」

「今日は時間がなかったですし、抜け道を使わざる得なかっただけですよ」

「……そう。それなら悪いことをしたわね。答えを出すのに時間をかけちゃって」

「えっ!?」

一十百が驚いた声を上げる。

そして、ポケットから小さな懐中時計を取り出した。

その針が動いているのを確認して、首をかしげた。

 

「あの、レミリアさん……。これほど早く決断したのに、時間をかけたって……」

「えっ? だって、少なく見積もったって、一時間は優に過ぎてるでしょ?」

「……まだ、三分もたってませんよ?」

「えええっ!」

はぁ~、とレミリアは二度目の深いため息を吐いた。

 

 

「それでは、僕は最後の準備があるので、博麗神社に戻ります」

「わかったわ」

そう言って一十百が扉を開いて出ていく。

その背に向けて、レミリアが一言投げかけた。

「これだけの決断をさせたんだから、しっかり楽しめるお祭りにしなさい」

「もちろんです!」

タンと一十百が紅魔館の廊下を駆け抜けていった。

 

一十百がいなくなったのを確認すると、レミリアがパンと軽く手を叩く。

「お呼びでしょうか、お嬢様」

「ええ。これ、とてもじゃないけど、一人で着られないわ。手伝いなさい」

レミリアが椅子の後ろに隠した何かを取り出す。

それは、紅魔館を表しているような赤い浴衣だった。

どうやら、一十百が来る前に自分で着ようとして、上手くいかなかったようだ。

 

「間一髪、だったわよ。本当に……」

「十百君なら、着付けくらい手伝ってくれたと思いますが?」

「さすがに、そういう訳にはいかないわ。紅魔館の主たるものが、帯を踏んで思いっきり転んだなんて……、やっぱり恥ずかしいじゃない!」

「そうですね」

にっこり微笑んで、咲夜はレミリアの着付けを始めたのだった。

 

 

一十百が博麗神社に戻る。

既に、秋夏祭りの準備は終わりつつあった。

 

「あら、一十百。帰ってきたみたいね」

「はい! 準備は出来ましたし、材料も揃いました」

一十百のポケットから大きな布の袋が取り出される。

「これが、今回の秋夏祭りを無事成功させるものです」

「中身はなによ?」

霊夢も少し気になるようで、じっと布の袋を見つめる。

「中身は……こういう物です!」

一十百が袋の中から一つ取り出す。

 

取り出したのは、妖精の羽を模したものだ。

ただ、本物と区別がつかないほどよく出来ている。

背中につけたら、そのまま妖精になれるのではないかと思える程だ。

「ま、まさか……。仮装!?」

「はい!」

「……萃香の角とか、チルノの羽とかを、仮装だと誤魔化すつもり?」

「そうです!」

「む、無理じゃない?」

「そうでしょうか?」

 

霊夢が絶対に無理と言い切れないのには理由があった。

そう、単純に一十百の作り上げた仮装道具の出来が良すぎるのだ。

祭りの騒がしい中で、皆がこれをつけていたら、確かに妖怪と区別はつかないだろう。

まあ、妖力でバレバレなのだが、人里の人が妖力を察知できるわけもない。

つまり、これは隠し通せる可能性もあるという事だ。

「う~ん、ギリギリね。七割くらいで成功する、ギリギリね」

「七割も成功するなら問題ないですよ」

一十百がグッとガッツポーズをした。

 

 

段々と西日になりかけ、空に赤みがかかり始める。

まだお客は来ていないが、露店や屋台に火が入り、だんだんと祭りの雰囲気になり始める。

パチンと一十百が指を鳴らすと、提灯に灯がともる。

 

「さてと……。それじゃ、最後の仕上げです」

「仕上げ? まだやる事あったかしら?」

「はい」

一十百がスゥと息を吸い込む。

そして大きな声で、とある人の名前を呼んだ。

「八雲紫さ~ん!」

「呼んだかしら?」

スキマが開き、八雲紫が顔を出した。

「ちょっと、お話が……」

 

一十百が八雲紫にそっと耳打ちした。

一十百の話を聞いて、八雲紫は驚いた表情をする。

「そ、そんな事、可能なの? ……まあ、あなたなら可能でしょうけど」

八雲紫が腕を組んで悩む。

そして、やれやれと言った感じで頷いた。

「わかったわ。今回だけよ」

「ありがとうございます!」

 

「ちょっと、何を話してるのよ?」

一十百の常識はずれの行動に対する霊夢の勘はとても鋭いようで、今回も何かを感じ取ったようだ。

ジト目で一十百の事を見る。

「一~十~百……。この期に及んで何を企んでるの?」

「えっ? その、大きな花火を上げようと思って」

「花火? なんで花火なんてあげるの? 夕日になったとはいえ、まだ明るいわよ?」

「えと、秋夏祭りの開催を幻想郷中に伝えるんです。その合図みたいなものですよ」

何か隠してるわね。

それも、たぶん、面倒事……。

まあ、たまには目をつぶってあげますか。

 

「ふ~ん。まあ、いいんじゃないの、花火くらい」

「やった! それじゃ、打ち上げますね」

霊夢と紫が周りを見る。

花火と言えば、発射台が必要なのだが、そのようなものはどこにもない。

それなりに大きい筒状のものが必要になるはずだが……。

 

その時、ド――――ンと大きな衝撃が周りに響き渡る。

二人がその音に気が付き真上を見上げた。

そこには、夕焼け空のなか、しっかりと見ることができる、巨大な花火の花が咲いていた。

 

「博麗神社、秋夏祭り! ただ今より開催しまーす!!」

一十百の声は、花火の音と同じくらい幻想郷に響きわたった。




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

仮装道具一式:どうしても時間が足りなかったので、咲夜さんの時間停止空間の中で作り上げました。結構自信作です。たぶん、ただの人には見抜けないんじゃないかなぁ……。by一十百  確かに、これは見抜けないわ。by咲夜

秋夏祭り開催の花火:僕特性の花火です。七尺玉という、とても大きなものを使っています。実はこの花火、開催の合図だけでなく、別の事のために打ち上げたんです。えへへ……。 とどけ! 異世界、平衡世界の果てまで! 祭りの会場への道は出来た! さあ、一夜限りの祭りを心の底から楽しみましょう!!by一十百



博麗神社、秋夏祭り!

一十百の打ち上げた花火により、一時的に世界線が揺れ、此方に来れるようになりました。

つまり、コラボしてくれる方を大募集します!!

この秋夏祭りをより楽しむため、皆様のご参加を心よりお待ちします!


あまり長くなるといけないので、詳しい情報はTomomonDのページの活動報告に記載させていただきます。
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