東方お仕事記   作:TomomonD

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今回は、喜怒様、VectorHunk様のお二方とコラボさせていただきました。
ありがとうございます。

私の技量的に、一話につき、二コラボが限界という事がわかりました……。
なんて軟弱なのでしょう……グフッ。

全コラボキャラクターを出す前に夏が終わってしまう!
とにかく、全力で仕上げますので、もう少しお待ちください。


喜怒様、VectorHunk様。
なにぶん、拙い文章ですので、修正箇所等がありましたら、メッセージをいただけると幸いです。


夏季特別企画五話 銀の酒豪、銀の剣士

日が山の向こうに沈む。

夜になりつつある博麗神社は、色々な人でにぎわっていた。

 

主に人里から来た方々が大半なのだが、パッと見ではそうは見えない。

蝙蝠のような羽の生えた少年、頭が馬の男性、角の生えた老人……。

博麗神社で百鬼夜行でもしているのかと思えるような光景だ。

 

さて、そんな中、博麗神社の鳥居が輝く。

人里からの電車は、鳥居の中の虚数次元空間を経由しないよう、別の線路を博麗神社の階段の下に設置してある。

つまり、鳥居が輝くという事は、異世界からのお客が来たということだ。

夜になりつつある空の下、鳥居が輝くとかなり目立って、いろいろと厄介事が起きる可能性があった。

しかし、今日は博麗神社での祭り。

人里から来た人々は、光る鳥居を博麗巫女の演出だと思い込んだようだ。

鳥居に向け拍手や歓声が送られる。

 

 

歓声の中、一十百は鳥居に近づく。

いつもなら汽笛が聞こえるはずだが……、聞こえてこない。

「あれ?」

一十百が首をかしげていると、後ろから声をかけられた。

「あら、またお客さんかしら?」

「あっ、紫……さん! それ、とっても似合ってますよ」

そこには、浴衣姿の八雲紫がいた。

大きな対極図の描かれた、白と紫色の浴衣だ。

少女としてではなく、女性として着こなすことができるのか、大人の女性の雰囲気を纏っている。

「ふふっ、ありがと。せっかくのお祭りだから、着てみようと思ったのよ」

そう言って八雲紫は扇子で口元を隠すように微笑む。

そして、鳥居の方を見る。

 

「汽笛の音がしないわね」

「はい。電車が止まるってことはないですから、線路の上を徒歩で向かっているのでしょうか?」

「と、徒歩!? だって、あの虚数次元空間って、危険なんじゃ……」

「危険ですけど、線路の上でしたら、ある程度は安全です」

一十百が言う“ある程度は安全”って、多分、アレよね……。

私たちで言う、死ぬほど危険とほぼ同じよね。

そんな中をあっさり歩いてくるなんて、どんな人が来るのよ……。

 

八雲紫の頭の中で、これから来る異世界人のイメージが膨らむ。

そうね、体格は筋骨隆々で傷だらけ、身長は三メートル前後……。

白髪で、荒れた世界を拳と鋼の意志で突き進む、男……いえ“漢”ね。

そして、フォォォ……とか、ゴゴゴゴ……とかいう文字が、背景に現れているような……。

そこまで考えて、ぶんぶんと首を振る。

そんな凄まじいのが来たら大変だわ!

 

「一十百君。ちょっと、ま……」

「あ、いらしたようです!」

八雲紫の制止する声を遮って、一十百の明るい声が響く。

間に合わなかったと八雲紫が頭を抱える。

一十百の期待と、八雲紫の絶望を背負って、ゆっくりと鳥居から人影が現れた。

 

 

「えっ?」

出てきた人影を見て、八雲紫がキョトンとした声を上げる。

予想していた姿とは似ても似つかない異世界人がそこにはいた。

流れるように腰まである銀髪、スラリとした体格、そして女性と見間違えるほどの整った顔立ち……。

大半の女性からため息が漏れるであろう、美男子がゆっくりと鳥居から出てきた。

長い銀髪とは対照的な、黒い布地に赤い雲の描かれた着物が、一層その姿を映えさせている。

 

「あっ、やっぱり! 輪廻さん、お久しぶりです!」

「おっ、百。久しぶりだな」

輪廻と呼ばれた異世界人が一十百の頭を撫でる。

「えっと……。一十百君、知り合いの方?」

「はい! こちらの方は八意 輪廻さんです。少し前、異世界の交差点のプラットホームに一度明かりがついたんです。もしやと思って、そこで待っていたら……」

「彼が来た、という事ね」

そうです、と一十百が頷く。

 

「でも、輪廻さん。どうして、徒歩で来たんですか? 電車来ませんでした?」

「いや、電車は来たぞ。でもな、電車の中の空気がちょっとな……」

何だか面倒くさそうな表情で八意輪廻が未だ輝いている鳥居を見つめた。

「空調整備に異常でもあったんですか?」

「空気が……甘かった」

「甘い? えと、芳香剤でしょうか? う~ん、そんなの取り付けたかなぁ……」

「いや、物理的に甘いわけじゃなくてだな……。こう、雰囲気的に甘かった」

コテンと一十百が首を横に倒す。

どうやらわかっていない様子だ。

 

そこへ、ガタゴトと電車が走る音が聞こえてくる。

「どうやら、来たみたいだな」

鳥居から電車が現れ、いつものように扉が開く。

「なんだ、先についていたのか? 電車より徒歩のが速いって、どういう事だ?」

電車から降りてきたのは、朱色の髪の男性。

背丈は輪廻より少し低い程度。

八意輪廻と気軽に話しているところを見ると、二人は知り合いのようだ。

少し遅れて、電車からもう一人降りてくる。

水色の髪に、和服。

背丈は一十百とそれほど変わらない少女だ。

 

「えと、輪廻さん。そちらのお二方は?」

「うん? ああ、そうだった。百は初対面だったな。それじゃ、二人とも簡単に自己紹介してくれ」

輪廻に促されて、朱色の髪の男性と水色の髪の少女が名を名乗る。

「俺は及川 喜怒だ。よろしく頼むぜ」

「及川 氷麗です。よろしく」

「はい! 一十百です、今日はお祭りを楽しんでいってください!」

一十百も片手を胸に置き、一礼した。

 

 

「さてと、それじゃ俺らは先にふらふらさせててもらうぜ」

そう言って喜怒は氷麗の手を引いて、露店外に歩いていった。

氷麗も置いて行かれないように、軽く駆け足でついていく。

「……甘い空気ね」

「……だろ? あれと一緒の電車は、辛いからな。仕方なく歩いてきたってわけだ」

紫と輪廻は二人の後姿を見て、疲れたように呟いた。

 

「あ~もう、こうなったら酒だ! 思いっきり飲むぞ!」

「えっ? もうお酒飲むんですか? まあ、輪廻さんはあまり酔わない方ですけど……」

一十百は少し悩んだ表情をしたが、彼なりの祭りの楽しみ方があるのだろうと思い、一度大きく頷いた。

「お酒を売ってるところなら、この露店の少し先にありますよ。でも、飲みすぎちゃだめですよ」

「大丈夫だ。足りないことはあっても、飲みすぎになる事だけはないぞ」

「おお~、酒豪の一言だ」

一十百が軽く拍手をする。

 

「それじゃ。またあとでな~」

八意輪廻も、駆け足で露店並びへと向かっていった。

「もう少し後になったら、ドラゴンさんの開いている屋台に誘ってみようかなぁ……」

一十百もそんなことを呟いて、露店並びの方に歩いていった。

「私は……、そうね。彼とは別の所を見て回ることにしましょう」

八雲紫は一十百が進んだ方向とは別の露店の方へと歩みを進めるのだった。

 

 

一十百が催した、この秋夏祭り。

博麗神社の敷地を限界まで使って、楽しめるようにできている。

露店の数も、一十百が頼んだ五つだけではなく、それの数倍はあるだろう。

まあ、無人露店もいくつかあるが……。

 

そんな露店の中、一十百が特に力を入れたのは、いわゆる娯楽の露店だ。

ダーツに射的、輪投げに金魚すくい、他にも多数……。

人里の子どもたちが楽しめるようにと、いろいろ工夫を凝らしていると言うわけだ。

 

一十百が露店並びを歩いていると、とある露店に人だかりができている。

「あそこは、確か……金魚すくいの露店だったと思いますが……」

一十百も気になったので覗いてみる。

すると、黒髪混じりの銀髪の何者かが次々と金魚を掬っているのが見えた。

背中側しか見えないので、男か女かは分からない。

しかし、その背に書かれた『侍』の一文字がとても際立って見えた。

近くで見ている子供たちからも一匹掬うごとに歓声が沸く。

 

何匹掬ったのかは分からないが、その銀髪の何者かがすっと立ち上がった。

「十分楽しめたし、もういいよ」

そう言うと、掬った金魚を数匹だけ袋に入れ、すっと人ごみの中に消えていった。

近くで見ていた人がその姿を見失う中、一十百はその姿をしっかりと捉えていた。

 

さっきの人……、どこか現代風の雰囲気がした。

つまりそれは……。

一十百が駆け足で人ごみの中を走っていく。

そして、何とかその背に書かれた『侍』の文字に追いついた。

 

「あのっ、ちょっと待って下さい!」

「何だい?」

一十百の声に歩みを止めると、端正な顔立ちの少年が振り返る。

黒髪混じりの銀髪がなびく。

それだけで、振り返る女性も現れるだろうと思えるような容姿だ。

輪廻さんといい、この人といい……、銀髪の方はカッコいい方が多いですよね……。

女性でも、咲夜さんとか、妖夢さんとか……素敵な女性がいますし。

一十百は、そんなことを考えていたが、まず一つ聞かなければいけないことを思い出した。

 

「あっ、えと、もしかして、外からいらした方でしょうか?」

「外……。そうでもあるし、そうでもないともいえるかな。一応、幻想郷出身だからね」

「幻想郷出身……。もしかして、別の幻想郷から!?」

「……やっぱりそうだったか。少し前と雰囲気が違っていたから、もしやと思ったんだけれど……。ここは別世界の幻想郷か」

一十百は大きく頷く。

どうやら、銀髪の少年は薄々とそのことに気が付いていたようで、納得したような表情を浮かべた。

 

「えと、今日は秋夏祭りにようこそ! 主催者の一十百です」

「僕は魂魄妖刀。よろしく」

一十百と魂魄妖刀はしっかりと握手をした。

「あれ? 魂魄って苗字、妖夢さんと同じ……」

その一言を聞いて、妖刀は少しばつの悪そうな表情を浮かべた。

「まあ、別世界だからあまり関係はないのかもしれないけど……。妖夢や幽々子様、あと紫さん達には会わないようにしているんだ」

その表情を見て、一十百も察したようで大きく一度頷いた。

ここでわざわざその理由を追及する必要もないだろう。

せっかくのお祭りなのだから、目一杯楽しんでほしいと一十百はそっと思う。

 

「えと、妖刀さんはこれからどうします?」

「そうだな……。まだ、来たばかりだから、一通り露店を見て回ることにするよ」

「わかりました。もう少し夜が深まったら開店する露店もあるので、是非楽しみにしていてください」

「そうさせてもらうよ。それじゃ」

そういって、魂魄妖刀はスッと人ごみの中に紛れていった。

 

 

一十百はいったん博麗神社の階段のところまで戻る。

人里からの人たちは電車で来るので、この階段を使わないのだが、いつも博麗神社にくるメンツはここを上ってくる。

つまり、お出迎えをしたいと言ったところだ。

提灯の明かりに照らされた階段は、なかなか風流があり、これだけでも十分祭りに来た雰囲気がある。

 

階段を下りていくと、見たことのある少女が階段を上ってくるのがみえた。

真っ白の洋服に、赤い宝石のようなワンポイント、そして真っ白の髪。

妖怪『いちたりない』の少女、一璃菜がゆっくりと階段を上ってくる。

「あっ、一璃菜! 久しぶり」

「なっ、なんでアンタがここにいるのよ!?」

びしっと指を突き付けて一璃菜が言う。

 

かつて、妖怪『いちたりない』としての能力を逆手に取られ、あっさりと事を運ばされたことがある。

さらに、その能力の対処法まで見つけられてしまった。

それ以来、この人間を避けて畏れを集めてきた。

つまり、苦手意識を持ってしまったのだ。

 

「一璃菜。もしかしてお祭りに?」

「そうよ! 人間がたくさんいるから、畏れも集めやすいでしょ?」

「……そういうのは、せめて浴衣に着替えてからね」

「えっ……。も、持ってないわよ、浴衣なんて……」

「大丈夫。こんな時の為に、作っておいたから」

そう言って、一十百は一璃菜の手を握る。

「えっ、ええっ!? な、何?」

「さあ、霊夢さんの所に行きますよ!」

そう言って一十百はそのまま博麗神社本堂へ向けて、一直線に走り出した。

 

「ちょ、ちょっと、いやぁぁぁ……」

半ば引きずられる形で、一璃菜は悲鳴を残し、本堂へと向かわされたのだった。

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

異世界のお客様3:八意輪廻、及川喜怒、及川氷麗の三人です。喜怒さんと氷麗さんは夫婦らしいです。お二人とも仲がよさそうで、少しうらやましく感じます。輪廻さんは、あの容姿なので、引く手数多だと思うのですけれど……。お酒を飲みに行ってしまいましたが、後で合流してみることにします!by一十百  おっ、珍しい酒があるな!by輪廻  そういや、輪廻はどこに行ったんだ?by喜怒  気が付いたらいなくなってたね……。by氷麗

異世界のお客様4:魂魄妖刀さんです。侍と書かれたジャケットと黒髪混じりの銀髪が特徴的な方です。剣士さんなのか、刀を帯刀していました。金魚すくいがとても上手で、大勢の人に囲まれていましたね。色々と事情があるそうですが、このお祭りを楽しんでいってほしいです。by一十百  別世界の祭りだけれど、楽しんでいくつもりだよ。by妖刀
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