東方お仕事記   作:TomomonD

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今回は、冬弥様、ゆーむ@狐巫女様のお二方とコラボさせていただきました。
ありがとうございます。

ネタはあるのに、筆が進まない。
しかし、進むときは一気に進むがネタが微妙になる……。
あちらと立てればなんとやら状態です。

とはいえ、こんなところで止めるわけにもいきません。
夏も終わりかけてますけれど、全コラボキャラクターを出すまではやめませんから!

まあ、逃げの一手として“ほら、秋夏祭りだし、秋に入っても大丈夫じゃないか(笑)”とかいうのを考えてます、ハイ。


冬弥様、ゆーむ@狐巫女様。
なにぶん、拙い文章ですので、修正箇所等がありましたら、メッセージをいただけると幸いです。



夏季特別企画七話 倒れる露店、酔える雰囲気

空には星と月が輝く。

その下では、別世界の住人を交えた、大きな祭りがおこなわれている。

 

祭りの中、一十百は右へ左へと走り回っている。

一つは、露店の確認。

お客も増え、秋夏祭りも本番といったところだ。

全ての露店を開き、このお祭りの参加者が目一杯楽しめるようにしていく。

 

もう一つは、別世界からのお客様への挨拶だ。

気が付かないうちに、かなりのお客様がこちらに来ていたようだ。

一十百は可能な限り挨拶をしようと思っている。

わざわざ来ていただいたのだ、それくらいは当たり前といったところだろう。

 

 

祭りの中を走り回っていた一十百の足が止まる。

見慣れない姿を見つけたようだ。

 

赤いジャケットに黒のTシャツ、黒髪に茶髪混じりの短髪の青年だ。

やはり別世界のお客は、どこか幻想郷とは違う雰囲気を感じる。

とにかく、まずは挨拶をしないといけませんね。

そう思って一十百が声をかける。

 

「あの、別世界からいらした方でしょうか?」

赤いジャケット姿の青年は一十百に声をかけられ振り返る。

怪訝な表情をしていたが、どうやら質問の意味を理解したらしく、一度頷いた。

「ああ。こことは違う場所から来たからな。別世界ってことで間違いはない」

「やっぱりそうでしたか! えと、このお祭りの主催者の一十百です。秋夏祭りにようこそ!」

そう言って一十百が一礼する。

「俺は、霧林 冬弥。よろしくな」

赤いジャケット姿の青年、霧林冬弥も軽く一礼した。

 

祭りを案内するという事で一十百は、霧林冬弥と共に露店並びを歩いている。

案内すると言っても、どこにどの露店があるかを一緒に見て回るだけだ。

「う~ん、これだけたくさんのお客様が来るのでしたら、露店の位置が乗った地図を作っておくべきでした」

「まあ、あれば便利だったかもしれないな」

「次、お祭りを開催することがあれば、その時はしっかりつくっておくことにします」

 

そんなことを話しながら歩いていると、二人の足が止まった。

とある露店の周りだけ、異質な空気が漂っているのだ。

死屍累々の惨状がそこの周りに広がっている。

ある者は露店の横に倒れ、またある者は木を背にして動かなくなっている。

倒れている者達から呻き声が聞こえるので、生きてはいるようだ。

 

「……おいおい、なんだよこの露店」

「えと、この露店って……、確か……」

一十百が横の幟をみる。

そこには“Dの露店屋台”としっかり描かれていた。

「やっぱり、異世界からのお客様の御一人、ドラゴンさんの露店ですよね」

「DってDragonのDなんだな。てっきり、DeathのDかと思ったぞ」

「あはは……。でも、何があったのでしょうか? すみませ~ん」

一十百が露店内に声をかける。

 

すると……。

「いらっしゃ……おっ! 十百じゃないか。どうだ、一つ買ってくか?」

中からドラゴンが出てきた。

片手には、お祭りらしく笹の葉をプラスチックパックの代わりに使った、たこ焼きのようなものが持たれている。

ふわりと湯気が立ち、ソースの香りが漂ってくる。

「うわ~、おいしそうです! 一つくださいな」

「おう。ちょっと待ってな」

手慣れたもので、ささっとたこ焼きを作り上げた。

 

しかし、それを見ていた冬弥は少し違和感を感じる。

たこ焼きって……あんなに白かったか?

焦げ目はついていたけれど、たこ焼きにしては随分と白かったような……。

 

「ほい。できたぞ」

「わ~い」

一十百はドラゴンからたこ焼きを受け取ると、そのまま一つ口に入れた。

もぐもぐと美味しそうに食べている。

「なんだか、もちゃもちゃしていて、不思議な触感です。変わったたこ焼きですね」

「材料が特別だからな! 普通の人には作れないたこ焼きだ」

「お、おい。その、特別の材料って……なんだ?」

 

一十百の持っているたこ焼きが、何かに似ていることに気が付いた冬弥。

嫌な予感はするものの、ドラゴンに尋ねる。

ドラゴンは胸を張って一言。

 

「スキマの目玉」

 

ドラゴンの背景に“ババ―――ン”と文字が現れる。

そして渾身のドヤ顔である。

「やっぱり目玉か! その、スキマってのはよく知らないが、それをたこ焼きとして売るのはどうかと思うぞ!」

「もっちゃ、もっちゃ」

「いや、十百。お前も美味しそうに食べるなよ!」

 

その一言で、一十百はハッとした表情になる。

そして、スキマのたこ焼きを一つ楊枝で刺すと、それを冬弥に向けた。

「はい。どうぞ」

「いやいや、俺も食べたいって意味じゃなくてだな……。この死屍累々の元凶はそれだろ」

一十百は辺りを見回す。

確かに、周りに倒れている者達は、皆同じようにスキマのたこ焼きを持っている。

それを見て一十百は何かに気が付いた。

 

「……はっ! まさか、皆さん……。よく噛まずに食べて、喉に……」

「そうじゃねえって!! おい、誰か! 常識のわかる奴!!」

「「呼んだ?・呼びました?」」

「お前ら以外のことだよ!!!」

 

霧林冬弥は、一十百と別れて行動することにしたようだ。

もう少し、まともな奴がいるはず、といって別の露店並びの方へと歩いていった。

少し疲れた表情をしていたが、大丈夫でしょうか……。

「あっ、そう言えば! ドラゴンさん。それ、紫さんにばれたら怒られますよ、たぶん」

「ばれたら大変だが、ばれなきゃ大丈夫だ」

「なるほど……」

凄い理屈だが、一十百は納得したようだった。

 

「それでは、僕も行きますね。お店頑張ってください」

そう言って一十百は露店並びを歩いていった。

 

 

やはり、夜になればなるほど、お客が増えているのがわかる。

一時間ほど前に通った場所も、人通りが倍くらいに増えている。

これだけ人が多くなると、別世界からのお客を探すのも一苦労だ。

人の間をすり抜けるように、一十百が露店並びを歩いていく。

 

そんな中、人だかりが出来ている露店がある。

前は、金魚すくいの露店だったけど、今回は……。

一十百がその露店の幟を見る。

“砲的屋”と書かれている。

その幟を見て、ポンと一十百が手を打った。

「そう言えば、射的屋の景品が寂しいから、ちょっと大きめの物に変えた露店がありました! 分かりやすいように“砲的屋”に名前を変えたんでしたっけ」

 

一十百が作った、この砲的屋。

射的屋と同じコルク銃を使うのだが、対応する景品が……巨大なのだ。

小さ目の物で、チェーンソー、アンティーク柱時計、幻想郷の賢者の銅像と、射的の景品にしては、すでに大きすぎる。

大きめの物になると、コンバイン、ゼンマイ式全自動洗濯機、トラックと、どうやって持ってきたと先に尋ねられるであろう、桁違いの大きさだ。

これ故に、この露店並び最大難易度の露店だ。

一応、攻略方法もあるようだが、コルク弾でどうやって撃ち落とすんだと聞かれそうな程、不可能に近い露店だ。

 

一十百が人ごみの外側から、そっと覗きこむ。

何人かが挑戦しているようだが、やはり景品の大きさのため、絶望している人がほとんどだ。

しかし、景品が巨大で取れないだけなら、足を止める人がいるくらいのはず。

それが挑戦する人、期待を込めて見物する人、次は俺だと意気込む人……と、かなりの人数が集まっている。

つまり、誰かが景品を取ったのだろう。

決してやさしい難易度ではないこの射的。

一体誰が……。

気になった一十百は、近くで見物している男性に尋ねる。

 

「あの、誰かが景品を落としたんでしょうか?」

「ああ、今さっきね。確か、アンティーク柱時計と、銀食器のセットを撃ち落としていったよ」

声をかけられた男性はそう答えた。

一十百が用意した景品の中では小さ目の景品の方だが、ここの景品を落とせたのは正直に言って奇跡に近い。

 

「あのっ、その人は何回くらい挑戦していました?」

「一回だよ」

「い、一回ですか!?」

一回の挑戦で撃てるコルク弾は25発。

多いように思えるが、景品の巨大さから考えれば、少なすぎるくらいだ。

「いったい誰が……」

「名前は分からないけれど、片手に厚めの本を一冊持っていた、黒髪で和服の男性でしたよ」

 

一十百は、その男性に心当たりがあった。

多分、八幡載斗という別世界からのお客様だろう。

和服の男性はかなりの人数いるが、厚めの本を持った和服の男性となれば、それなりに人数が限られる。

 

「載斗さん、かなぁ」

「おや、知り合いでしたか? 見ているこちらが息をのむくらい、素晴らしい射手でしたよ。それと、確か“持ちきれないからこれくらいでいいか”と、余ったコルク弾を隣の人に渡していたみたいですし」

初対面のこの男性がそこまで言うのだ。

きっと少し前、この露店では大きな歓声が上がっていたのだろう。

見たかったです……。

少し残念そうに、一十百が肩をすくめた。

 

 

「そう言えば、お兄さんは挑戦しないんですか?」

「あまり得意でなくてね。こういうのは雰囲気に酔うのが一番ですよ」

「雰囲気に酔うですか……。変わった言い回し……って、あっ!」

一十百は、とある雰囲気に気が付く。

今、目の前にいる男性、どことなく雰囲気が他の人たちとは違う。

髪の色は黒だが、肌は色白で、人里の住人ではないことが分かる。

 

「えと、もしかして、別世界の方……でしたか?」

一十百の問いかけに、目の前の男性は一度頷く。

「はい。ここではない幻想郷でBARを営んでいるものです」

「BARですか! 僕もお酒が飲める歳になったら行ってみたいなぁ」

「おや、珍しいですね。幻想郷にいる方ですから、歳など気にせずに飲んでいるかと思いましたよ」

「まったく飲まないわけじゃないんですけれど、酒場やBARに行ける程、たくさんは飲めないんですよ」

 

少し前、博麗霊夢、霧雨魔理沙と共に酒盛りをしたのだが、グラス数杯ですぐに酔いが回り、そのまま眠ってしまったのだ。

その時になって、自分はお酒に弱いという事を初めて自覚したのだった。

一十百が難しい表情をしているのを見て、BARの店主は柔らかな物腰で語りかける。

 

「お酒は自分が飲みたいだけ飲むのが一番です。それに、酔うだけがお酒の楽しみではないですからね」

「なるほど……。酔うだけがお酒の楽しみではない、ですか」

さすがBARの店主といったところだろう。

何気ない一言に、強い説得力がある。

きっと、この店主さんの経営しているBARの客質はとてもいいんでしょうね。

一十百はにっこり微笑む。

 

「もし、僕がそちらの幻想郷に足を運ぶ機会があれば、“寄って”みたくなりました」

「BARですからね。“酔って”いただければ、それだけで私は満足です」

くすくすと一十百と店主が笑いあう。

「お酒自体が苦手でも、扉を叩いてみてください。このお祭りのように、雰囲気に酔えるようなBARですから」

「はい! あっ、そうでした。大切なことを忘れてました」

一十百は一歩下がり、片手を自分の胸に当てる。

 

「秋夏祭りにようこそ! 主催者の一十百です。今日は楽しんでいってくださいね、店主さん」

 

 

一十百は店主に手を振り、別れを告げる。

まだまだ、出会っていない別世界のお客様がいらっしゃるはず。

しっかり挨拶をしないといけませんね!

そんなことを思いながら、露店並びを歩いていった。

 




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

異世界のお客様7:霧林冬弥さんです。赤いジャケットに黒いTシャツの青年です。外の世界から来た外来人さんだと思われます。秋夏祭りを案内していたのですが、途中で別れちゃいました。少し疲れたような表情をしていましたが、大丈夫でしょうか?by一十百  誰のせいだと思ってるんだよ……。by冬弥

異世界のお客様8:店主さんです。異世界の幻想郷でBARを経営しているらしいです。柔らかな物腰と、丁寧な言葉使いが、良店主であることを裏付けてくれています。きっと、この店主さんの経営しているBARには色々な人が来ているんでしょうね。楽しそうです。by一十百  もし、足を運ぶことがあれば、お気軽に扉をお開きください。by店主
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