ありがとうございます。
祭りも深夜帯です。
これは、アレですね。
明け方ごろまで続くパターンです。
実は、この祭りのフィナーレは花火……と考えていたのですが、とあるコラボキャラクターさん(まだ出てないです)の特徴を見て、“あっ、この方なら、フィナーレを飾っていただける!”と思ったので、急遽路線変更しました。
目標では、後三話程度でしょうか……。
まあ、あくまで目標ですが。
夢物語様、クライスト様。
なにぶん、拙い文章ですので、修正箇所等がありましたら、メッセージをいただけると幸いです。
一十百がミスティアの屋台を後にし、博麗神社本堂に戻る。
霊夢は数時間前に、ひと眠りすると言って眠ってしまったようだ。
そのため、博麗神社本堂の辺りはとても静かだ。
祭りが終わる朝方には起きてくるのだろう。
一十百は、賽銭箱の後ろにある階段に腰かける。
そんな風にのんびりと休んでいると、カランと下駄のような音が聞こえてくる。
それも、一つではなく二つ……。
スッと一十百が立ち上がる。
暗くて見え辛いが、確かに人影が二つ此方に向かってくる。
「そう言えば、まだお祭りで会ってなかったですね」
一十百はその二つの人影に近づく。
「こんばんは、レミリアさん、フランちゃん」
二人の人影は、レミリアとフランの二人だった。
二人とも、浴衣姿でお祭りに参加しているようだ。
レミリアの浴衣は赤色の浴衣であり、所々に蝙蝠の絵が描かれている。
紅魔館の主らしい浴衣だ。
対するフランの浴衣は、白色の浴衣。
柄も、絵も描かれていない、文字通り真っ白の浴衣だ。
「二人ともよく似合っていますよ」
一十百はにっこりと微笑む。
「わーい、褒められた! 頑張って着て来てよかったね、お姉さま」
「そ、そうね」
フランが言った“頑張って着て来て”というのは本当の事だろう。
すでにレミリアの浴衣は着崩れつつある。
やはり、和服を着なれていないのか、かなり動きにくそうな様子だ。
「一十百。その、霊夢はいるかしら?」
「霊夢さんですか? 少し前にお休みになられたと思いますけど……」
「ええっ、もう寝たの! う~、わざわざ来てあげたのに、起きてなさいよ~」
「そ、そう言われましても、時間が時間ですし……」
時すでに深夜。
一般的の人なら眠っている時間帯だ。
「こうなったら、意地でも起こして……」
「……誰を意地でも起こすって?」
バンと襖が開き、眠そうな目をこすりながら霊夢が出てきた。
「ちょ、起きてるじゃない!」
「起こされたのよ! あんたたちの話声でね!」
そう言って、霊夢はじっとレミリアをにらむ。
そして、面倒くさそうにため息を吐いた。
「レミリア、ちょっと来なさい」
「な、何?」
「そんな着崩した浴衣でフラフラしない! 着付けしなおしてあげるから、さっさと来る」
「え? えっと、霊夢?」
「ああ、面倒くさい!」
がしっと霊夢はレミリアの腕をつかむと、そのまま本堂の方へと引きずって行った。
残された一十百とフランは顔を見合わせる。
「どうしようか?」
「お姉さまは霊夢と一緒に露店を回りたかったみたいだし、いいんじゃないかな」
そう言って一十百の腕を引く。
「だから、フランたちはフランたちで楽しもう!」
フランに腕を引かれて、一十百は露店並びに戻る。
中央露店並びを二人は歩いている。
フランからすれば、こういうお祭りは初めてがいっぱいなわけで……。
「こっち、こっち!」
「引きずらないで~」
吸血鬼ならではの怪力で、一十百を右に左に引きずりつつ、次々露店を見て回る。
そんな中、一十百の視界の端にメイド服の何者かが映る。
この祭りの中メイド服を着ているとなると、十六夜咲夜だろうか。
「ちょっと、フランちゃん。止まって!」
「えっ、何?」
フランが足を止める。
引きずられていた体勢を起こし一十百が辺りを見回す。
すると、視界の端に映った人物が確認できた。
緑色の少し長めの髪、背中には妖精特有の羽、そして咲夜に似たメイド服を着ている。
後姿なので誰なのかは分からないが、少なくとも十六夜咲夜ではない。
とはいえ、着ているメイド服は、間違いなく紅魔館のもの。
つまり、何かしら紅魔館に関係するメイドなのだろう。
「紅魔館の妖精メイド、かなぁ? さすがに、僕も全員の顔を覚えてるわけじゃないから……」
「でも、今日はみんな紅魔館でのんびりしてるはずなんだけど」
「とにかく声をかけてみよう。あの、そこの妖精メイドさん」
一十百が祭りの喧騒にかき消されない程度の声で話しかける。
「私ですか? なんでしょ……え? フ、フラン様!?」
声をかけられ振り返った妖精メイドは、フランの姿を見て驚きの声を上げた。
「えっ、なんでお外に!? レミリア様がお許しになったんですか!?」
「そうだけど……。そんなに驚くことかなぁ」
フランが少し悩んだような表情を浮かべる。
確かに、外に出る許しが出たのは今日が初めてだ。
しかし、レミリアとの仲は以前とは比べ物にならないほど良好であり、それは紅魔館にいる者達なら容易に気が付けるだろう。
「それなのに、そこまで驚くってことは……。えと、ちょっと、自己紹介をしてくれない?」
「あ、はい。えっと、紅魔館の副メイド長をしている、大妖精のユメです」
「……副メイド長?」
「はい。主に咲夜さんの補佐と、午後のお茶会の担当をしてます」
一十百とフランが顔を見合わせる。
「副メイド長なんていたっけ?」
「僕が紅魔館で指導していた時にはいなかったけど……。あっ、もしかして!」
ポンと一十百が手を打つ。
「もしかして、大きな花火を見たりしなかった?」
「見ました! とっても綺麗でしたよ」
「やっぱり。という事は、ユメちゃんは別の幻想郷から来たみたいだね」
「(^∇^;)?」
どうやら理解できていないようだ。
確かにいきなり異世界に飛ばされたのだから、こういう反応が普通だろう。
一十百は一度頷くと、ゆっくりと説明し始めた。
「……と言うわけなんだけど」
「な、なるほど~。つまり、そこにいらっしゃるフラン様は、フラン様ですけれどフラン様ではないと……」
「ま、まあそんなところかなぁ」
上手く伝わったかは分からないが、伝わったものだと信じ一十百は頷いた。
「それで、ユメちゃんはどうする? 忙しそうなら、すぐに帰りの電車を手配するけど……」
「急いでいた訳でもないですし、お祭りを楽しんでいきます。いろいろ美味しそうな香りもしてきますし」
少しうっとりとした表情で、ユメは周りを見渡す。
そんなユメに一十百とフランは、にこやかな視線を送った。
その視線を受けて、慌ててユメは指をピンと立てた。
「あ……。えっと、アレですよ。紅魔館の皆さんへのお土産のためですからね」
「そうだね~」
「うんうん」
「あの~、お二人とも信じてないですよね」
「「うん」」
「即答ですか!? ちゃ、ちゃんとお土産は買っていきますよ。そのついでに、食べ歩きをしようかなぁ~、と……」
ユメは視線を二人から外してそう言うのだった。
「そ、それじゃあ、私はこれで」
ユメは軽く手を振って、露店並びを博麗神社本堂の方に向かって歩いていった。
「変わった妖精メイドだったね」
「そうだね。でも、紅魔館の方々を大切に思っているみたいだったし、いい副メイド長だったね」
「こっちの紅魔館にも、副メイド長が来ないかな?」
「フランちゃんも副メイド長がいてほしいの?」
そう言われて、フランは一度頷く。
「だって、咲夜一人だと大変そうだったから」
「う~ん、確かにそうなんだよね。そうなると……」
そろそろレミリアさんに、件の話をしないといけないかなぁ……。
そんなことを思いながら、また一十百はフランに引きずられていくのだった。
深夜帯に突入しつつある秋夏祭り。
お客もほとんど妖怪だ。
血の気の多い妖怪もいるようだが暴れるようなことはなく、思ったよりも普通に祭りは続いている。
そんな中、一十百はフランに引きずられているような状態が続いている。
「今度はこっち!」
「ええっ!? ちょっと、待って、待って」
ズルズルと引きずられてはいるが、一十百のバランス感覚なのか、引き摺られつつも上手く歩いているように見える。
「……あれ?」
フランが露店のために足を止めたとき、一十百がある気配を感じ取る。
別世界からのお客様特有の気配だ。
また引きずられ始める前に辺りを確認する。
すると、幻想郷に住む者達とは少し違った、いわゆる外の世界の服装の青年が露店並びを歩いているのが見えた。
赤いチェックの上着に黒のシャツ、そしてデニムのズボン姿の黒髪の青年だ。
見失わないうちに、急いで声をかけないと!
「フランちゃん! ちょっといい?」
「なに? 知り合い?」
「まあ、そんな感じかな。挨拶してくるね」
「わかった~」
一十百は青年に声をかける。
「あの、もしかして、別世界からいらっしゃった方でしょうか?」
「たぶんだが、そうだな。別の幻想郷から来た、水無月 朧だ」
「今回のお祭りの主催者の一十百です。秋夏祭りにようこそ!」
水無月朧は一十百、フランと共に中央露店並びを歩く事にしたようだ。
「このお祭りって、変わったものが多い気がするんだが」
「そうでしょうか? まあ、中央露店並びは色々と力を入れていますから」
「十百! あっち、あっち!」
さすがに引きずられ続けるのは大変だと思ったのか、一十百はフランを肩車している。
フランも“えっ! いいの!?”と喜んでいたので、問題はないだろう。
一十百の頭上でフランが行きたい方向を指し示す。
その方向には、巨大な水槽が一つ置かれていた。
「おっ、金魚すくいか? お祭りらしい露店だな」
そう朧が言った瞬間、水槽の上をザバンと何かが跳ねた。
明らかに、金魚ではない大きさだ。
どう見積もっても、五メートルはあった。
「えぇぇぇっ!! 何だよあれ!」
「何って“巨ん魚すくい”ですけど……」
「きょんぎょすくいぃぃ!? どうやって掬うんだよ」
「……気合、かな?」
「無理だろっ!!」
一十百達が水槽に近づく。
何が入っているのか分からないが、かなり巨大な水槽だ。
高台が設置されており、そこに上って掬うようだ。
水槽の横には掲示板のようなものが設置されており、掬った人が直筆で名前を書く、いわば殿堂入りのようなものだ。
「えと、掬った方は……一人ですか」
「いるのか! 誰だよ!!」
一十百がその名前を読み上げた。
「魂魄妖刀さん、ですね。そう言えば、別の露店でたくさん金魚を掬っていましたし、こういうのも得意なんですね」
「へ~、すごい人なんだね」
「いや、すごいですむのかソレ?」
唯一の常識人である朧が、はぁ~と深いため息を吐く。
「掬った魚は、バショウカジキ(2m級)、ホホジロザメ(5m級)、ステラーカイギュウ(8m級)ですか。さすがですね」
「まてぇぇぇぇ!!」
さすがにスルーは無理だと、朧がつっこむ。
「もうこの際大きさはスルーしよう。でもよ、おかしいのが二匹いるんだが!! やばい肉食のサメと、絶滅したはずの生物が、なんで露店屋で掬えるんだよ!!」
「……気合でしょうか?」
「そう言う意味じゃねえぇぇぇぇ!!」
この後、水無月朧は疲れた表情で、中央露店並びを後にするのだった。
「次はあっち!」
「おっけ~」
一十百とフランは中央露店並びをゆっくりと歩いていく。
そろそろ日付が変わる、そんな時間帯の出来事だった。
今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋
異世界のお客様13:ユメちゃんです。種族は大妖精、紅魔館の副メイド長をやっているみたいです。紅魔館の皆さんの事を大切に思っていて、フランちゃんが外に出れたことを喜んでいるようでした。美味しい物に目がないのか、食べ物の露店の方に向かっていきましたね。やっぱり、紅魔館には副メイド長は必要かもしれませんね。by一十百 モグモグ、お土産何にしようかな~。byユメ
異世界のお客様14:水無月朧さんです。赤いチェックの上着、黒いシャツ、デニムのズボンと、外の世界らしい服装をしています。別の幻想郷から来てくれた、外来人さんですね。いろいろ驚いていたみたいですけれど……、いたって普通のお祭りのはずですよね。by一十百 いや、普通の祭りじゃないことは確かだ。by朧