東方お仕事記   作:TomomonD

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今回は、スコーン様、廷吏 妖魔様のお二方とコラボさせていただきました。
ありがとうございます。


フィナーレが見えてきました。
長かった秋夏祭りも、そろそろおしまいです。

ただの大花火がフィナーレ……ではちょっと寂しい。
そう思った一十百は、別世界からのお客様の力を借り、フィナーレの用意をするようです。


スコーン様、廷吏 妖魔様。
なにぶん、拙い文章ですので、修正箇所等がありましたら、メッセージをいただけると幸いです。



夏季特別企画十一話 剣は身を守るもの、執事は主を護るもの

フランを肩車したまま一十百は中央露店並びを歩いていく。

 

いつの間にか露店が増えていたりするのが、この秋夏祭り。

一十百が主催したとはいえ、そのお祭りは事態の参加は自由であり、他人の迷惑にならなければ露店を開くのも自由だ。

まあ、露店を開く場合、博麗霊夢に後で場所代を取られてしまうのだが……。

 

「露店が増えてる。やっぱり、自由に使って下さいって書いておいた露店を、上手く利用してくれた方々がいたみたい」

「へ~、そう言う露店って、変わったものを売ってくれてるのかな?」

「どうだろうね。もしも、別世界から来たお客様が露店を開いてくれてたら、こっちでは珍しいアクセサリーとか、置物とか……あれ?」

 

フランと話していた一十百が一旦言葉を切る。

一十百の目線の先に、変わった露店が開かれていた。

露店の幟には“無限の剣製”と達筆な字で書かれている。

 

 

一十百がその露店の前まで進む。

露店の名前に恥じず、中にはいろいろな種類の剣が置かれていた。

西洋の剣、東洋の刀、護身用の短刀、ペーパーナイフに至るまで、まさに“無限の剣製”といったところだろうか。

 

「お、いらっしゃい。まさか、まだ人間のお客さんがいるとは思わなかった」

露店の中から女性の声が聞こえ、スッと前に出てきた。

和服姿の黒い髪の女性だ。

一十百は、その姿を見て、少し驚く。

髪の色や瞳の色、服装は違えど、別世界のお客様である鈴科月光の容姿に似ている。

自分と同じ姿の方は世界に三人いると言われていますし……他人の空似ですよね。

一度はそう思ったのだが、やはり気になってしまう。

 

確認した方がいいですよね……。

「えと、貴女は?」

「八意 空だ。ここの露店の店主をやってる。“ご自由にお使いください”って書いてあったから、使わせてもらってるってわけだ」

や、八意……さんですか。

鈴科月光とは関係ないことが分かったが、今度はその苗字が気になってしまう。

 

一十百の知っている八意と言う存在は二人。

永遠亭の八意永琳と、別世界のお客様である八意輪廻である。

もしかして……三人兄妹!

……って、そんなわけないですよね~。

一旦、心の整理をつけた一十百は、ふぅとため息を吐く。

 

「えと、今回のお祭りの主催者の一十百です。露店を有効活用して頂けたみたいで、何よりです」

「おっ、主催者? ということは、あの花火を上げたのも君か?」

「はい! ……って、もしかして別世界からのお客様ですか」

一十百が驚いて空の顔を見る。

今まで気が付かなかったが、確かに別世界のお客様特有の気配を纏っている。

「ああ、そうだ。あの花火を見て、ちょっと遊びに来たってわけだ」

 

 

一十百と八意空が話していると、一十百の上でフランが足をバタバタさせた。

「十百、おろして~。フランも近くで見たい!」

「あ、ちょっと待って。よっと」

一十百が姿勢を低くすると、ひょいとフランが降りてきた。

降りると、フランは店に並んだ刀剣の数々をじ~っと見つめる。

装飾が付いた短剣など、アクセサリーとしても十分な見栄えのするものが多い。

 

少しして、くるりとフランが振り返る。

「たくさんあるけど、こんなにいっぱい、どうやって運んだの?」

「運んだわけじゃないよ。ここで創ったんだ」

八意空が片手を前に突き出す。

すると、光が棒状に集まっていく。

光が消えたとき、その手には一振りの刀が握られていた。

「おお~!」

「大方の刀剣なら創れる。まあ、特殊な力を持ったものとかだと、疲れるけどな」

それを聞いて一十百の表情が明るくなる。

同時に目の中に星が瞬き始める。

これは、何かを期待するような目だ。

 

「あの! 脇差くらいの長さの刀で、こう、力を開放するとはるか先まで伸びるような刀って作れます?」

「……え゛、それって、『神鎗』の事か? まあ、創れなくはないが」

「是非、創っていただけませんか!」

「創ってもいいが、使いこなせるかは別だぞ。霊力とか、鍛練とかが必要なはずだからな」

そう言って、八意空が両手をかざす。

今までよりも強い光が集まっていき、一振りの脇差が姿を現した。

「まあ、一応創っては見たが、使いこなすのは無理じゃないか?」

そう言って、八意空は脇差を一十百に手渡した。

「これが……本物」

手渡された脇差を一十百はキラキラと輝く目で確認していく。

 

「十百、それって、そんなにすごい剣なの?」

「そうだよ。見た目はただの脇差だけど、力を開放するみたいなことをすると、刀身がかなり伸びるんだ」

「へ~、どれくらい? 10mくらい?」

一十百が首を横に振る。

「もっと長く伸びるよ」

「ええっ! そんな小さいのに、もっと伸びるの? どれくらいまで伸びるの?」

フランも期待に目を輝かせる。

 

一十百はにんまりと目を細め、一言。

「十三光年や」

「そんなに伸びるの! すごい!!」

「長っ!! 単位が違うだろ!! てか、わざわざ顔まで似せるなよ」

 

 

「それじゃ、伸ばしてみよう!」

一十百が斜め上に脇差を構える。

それを見て、八意空がため息を吐く。

「さっきも言ったけど、霊力や鍛錬が無いと、伸びないぞ、ソレ」

「いえいえ。やってみないとわかりませんよ」

一十百が一度深呼吸をする。

 

「それじゃ、いきますよっ! いころせ! かみのナントカ!!」

「オイ、せめて、そこはちゃんと言えよ!!」

八意空のつっこみが入るのと同時に、一十百が持っていた脇差が夜空目掛けて一直線に伸びていった。

先端はすでに見えず、長くなった刀身が夜空を二つに分けているようだった。

 

「すご~い! 本当に伸びた!!」

フランが両手を上げて喜ぶ。

「え゛、なんで伸びたし……?」

「伸びると思えば、伸びるものですよ」

「いや、そんなことはないだろ!?」

 

 

一十百とフランは露店“無限の剣製”を後にする。

持たせとくと危なそうと言う理由で、先ほどの脇差は回収されてしまった。

 

「十百~、次はどこに行く?」

「そうだね~……!! この気配は!」

直感的に、一十百がキッとした視線で博麗神社本堂の方を見る。

「ど、どうしたの?」

「本堂の方から、かなり実力の高い執事の気配がする」

「……そんなことまでわかるの?」

一十百が一度頷く。

 

一応、一十百は執事なのだ。

主の元に年単位で帰っていないが、執事なのだ。

どう見てもメイドにしか見えないが、執事なのだ。

本人曰く、“まだまだ未熟者”らしいので、より実力の高い執事に会い、その立ち振る舞いを少しでも自分の経験にしようとしているらしい。

 

それに幻想郷には執事はいなかったはず……。

もしかしたら、別世界のお客様がいらっしゃったのかもしれません。

これは、いいチャンスです!

 

「僕はいったん本堂に戻るけど、フランちゃんはどうする?」

「う~ん、いろいろ見たら戻るから、先に戻ってて」

「わかった」

タンと一十百が地面を蹴る。

その瞬間、一十百の姿は消えていた。

 

「……そんなにすごい人が来てるのかな?」

フランは一度首をかしげると、露店並びを歩いていった。

 

 

キッとブレーキ音のような音をさせて一十百が止まる。

靴から煙のようなものが出ているが、気にしていないようだ。

一十百が止まった場所は、博麗神社本堂と露店並びの間の小さな広場。

ちょっとした休憩場所とでも言ったような所だ。

その場所には二つの人影が佇んでいた。

 

「何者だ?」

先に声をかけてきたのはスラリとした男性。

整った顔立ちであり、執事服に身を包んでいる。

先ほど一十百が感じ取った、かなり実力の高い執事の気配の持ち主だろう。

 

「こんばんは」

もう一つの人影は女性。

白い髪をポニーテールにし、浅葱色の浴衣に身を包んでいる。

隣に執事がいるという事は、この女性が主なのだろう。

 

「こんばんは~。別世界からのお客様ですね! 主催者の一十百です! 秋夏祭りにようこそ!」

「私は星羅 芽衣。大きな花火が見えた後、急に駅ができたから驚いたよ。まあ、面白そうだから、電車に乗ったんだけどね」

「私はキシ。お嬢様にお仕えしている。まさか、別世界から呼び出されるとは思わなかった」

 

一十百は芽衣とキシを交互に見る。

「やっぱり執事さんでしたか……」

二人には聞こえないような小さな声でつぶやく。

 

実際に直接会って話してみると、その実力がひしひしと伝わってくる。

何気ない会話の中でも、隙を見せない立ち振る舞い。

万が一でも、主である星羅芽衣に危害がいかないようにすると言う心掛けが伝わってくる。

同時に、己自身も執事として主に恥をかかせぬよう、常に精進していることも分かる。

時代を重ね、他の執事から一目置かれるような、そんな執事特有の気配が纏われている。

僕もこういう気配を纏えるようになるのかなぁ……。

 

「……ねえ、キシ。私の勘違いじゃなければ、なんだか彼、尊敬のまなざしを向けてきてない?」

「気のせい……ではないですね。出会って、まだ数分。尊敬されるような事は何もしていないと思いますが」

「そうだよね。う~ん、アレかな。ほら、別世界の人の価値観とか?」

「そうなのでしょうか。何か別の意図を感じますが……」

二人の話は、考え事をしている一十百の耳には届いていないようだった。

 

 

「え~と、十百君だっけ? ちょっといい?」

「はい。なんでしょうか?」

「私たち別世界から来た人でも、祭りの出し物っぽいことをやっても大丈夫かな?」

「もちろんです! 露店を開いている人もいますし」

ポンと手を合わせ、一十百が微笑む。

 

「芽衣さんは、どんな出し物を?」

「演奏会、というよりも、ライブ……かな」

「ライブですか。 ……えっ、ライブ!! その手がありました!!」

ぱぁあと一十百の表情が輝く。

そして、グッとガッツポーズ。

何やら、一十百なりに何かを思いついたようだ。

 

「芽衣さん! 是非、ライブをやってください!」

「え、まあ、主催者である十百君が許可してくれるんなら、やるけど……」

「場所はここでいいですよね。音響板とか、舞台とか、そう言うのはお任せください。しっかりと作っておきますんで!」

トンと一十百が微笑みながら自分の胸を叩く。

どうやら、生半端なものではなく、それなりのステージが出来そうである。

 

「なんだか、すごい高待遇だね」

「裏があるなら承知せんぞ」

「別に裏はないですよ。ただ、インパクトが欲しかったので、ちょうどよかったなぁと」

「インパクト? 何の?」

「このお祭りのフィナーレです!」

一十百の楽しそうな声が、静かな広場に響き渡った。

 

 

一方そのころ……。

「ふぎゃっ……」

「また裾を踏んだわね。慣れてないなら、浴衣で来なければよかったんじゃないの?」

「祭りはこういう格好って、咲夜とフランが言ってたのよ!」

慣れない浴衣に四苦八苦しているレミリアと、やれやれといった霊夢の姿が露店並びで見られたそうな。

 

 

「お嬢様、ファイトです」

「あの~、助けてあげるべきでは?」

「貴女も副メイド長なのだから、しっかりと見守っているのよ」

その少し後ろでは、瀟洒なメイド長と、妖精の副メイド長が二人を見守っていたとか。




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

異世界のお客様15:八意空さんです。露店“無限の剣製”を出店している、和服の女性です。剣を創る事が出来るみたいで、色々な剣を売っていました。特殊な力を持った剣も創れるようで、僕も一本作ってもらいました! なぜか没収されてしまいましたが……。by一十百  なんだか、危険そうだから回収しておいた。by空

異世界のお客様16:星羅芽衣、キシのお二人です。凄腕の執事の気配を持つキシさんとその主の芽衣さん。いつか、僕もあんな風な風格を纏って、主の横に立ちたいです。芽衣さんには、今回のお祭りのフィナーレを飾るライブを開いてもらう予定です! 頑張って用意をしないと!by一十百  十百君って……変わってるよね。by芽衣  なぜだか、尊敬のまなざしを感じるのですが……。byキシ
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