東方お仕事記   作:TomomonD

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秋夏祭り編、ラスト!


どうも私はフィナーレを書くのが苦手なようで……。
全く筆が進まなかった。
いや~、やっぱり何事も終わると寂しいですね。

とはいえ、終わらせないわけにもいきません。
終わるからこそ、次の楽しみがあるというものですから!


コホン。

コラボに参加していただいた皆様、本当にありがとうございました!
皆様の個性豊かなキャラクターのおかげで、この秋夏祭り編も大変賑わいました。

今後、また何かの機会でコラボを募集するかもしれません。
そのときも、是非、ご参加ください!


夏季特別企画最終話 フィナーレ!

賑わっていた秋夏祭り。

露店並びに多くの人、妖怪が集まり、賑わっていた。

それももうすぐ終わり。

今や、露店並びには、ほとんど人の姿がない。

静かに露店が佇むだけになってしまった。

 

そんな中、とある場所だけは、恐ろしいほどの人で埋め尽くされつつあった。

 

 

「ふぅ、何とか誘導できましたね」

「……え? ちょっと多くない?」

博麗神社本堂の少し前に設置されたステージの後ろで、一十百と星羅芽衣が話し合っている。

そっと、ステージの後ろから覗いてみると、人、人、人……。

この祭りにこれほどの人が来ていたのかと思える程の、圧倒的人数で埋め尽くされていた。

ざわざわと、人混み特有のざわめきが響いてくる。

 

「かなり席を用意したはずだったんですけれど……、ギリギリでした。本当に足りてよかったです」

「そんな大舞台を私任せてよかったの? 十百君なら、もっと変わったフィナーレを用意しそうだったけど……」

「僕が考えていた、フィナーレは大花火でした。でもそれじゃ、ちょっと寂しいと思っていましたし。それに何より……」

「何より?」

そっと一十百は集まった人を見て、少し満足そうに頷く。

「ここまで盛り上がったのは、別世界のお客様の力もあると思うんです。だから、別世界のお客様がフィナーレを飾る、それもいいと思ったんです」

「なるほどね~」

「お嬢様。準備が整いました」

サッと、キシが現れ、一礼する。

 

ステージ上は闇に包まれたまま、外側からは見えない状態だ。

一十百の発想で、合図があるまでステージ中央にルーミアがいるだけなのだが……。

「えと、キシさんがドラム。芽衣さんがヴォーカル兼ギターだとしても……、ちょっと寂しいですね。せめて、ベースとキーボード、欲を言えば、合いの手のような特別なパーカッションが欲しいところですね」

「いつもはもっと小さめの演奏会だったから、気にならなかったけど……」

「作ったステージが大きすぎましたね」

 

一十百が作り上げたステージは、二人だけで演奏するには少し大きすぎるものだった。

飛んだり跳ねたりのパフォーマンスができるくらいの広いステージに、二人だけというのはどこか寂しい。

フィナーレを飾るライブなのだから、もっと派手にしたいところ。

 

「こうなったら、楽器が得意なあの方々を呼びましょう!」

「楽器が得意って……あ」

星羅芽衣も、思い当たる節があったようだ。

一十百がコホンと咳払いをし、一言口ずさんだ。

「てててて~♪」

「呼んだ?」

「ほえっ! は、速いですね……」

一十百の横からひょいと、メルラン・プリズムリバーが姿を現した。

 

幻想郷で楽器が得意と言えば、プリズムリバー三姉妹。

その演奏の実力もなかなかのもので、一十百も少し前の異変の時に、演奏を聞かせてもらったことがあった。

「えと、実は……」

一十百はメルランに今の状況を話す。

 

 

「なるほど」

「つまり、私たち三人で足りない分の楽器を補えばいいんだね」

「……私たちの腕の見せ所」

「あれっ? ルナサさん、リリカさん、お二人ともいつの間に?」

いつの間にか集まっていた、ルナサ・プリズムリバーとリリカ・プリズムリバー。

どうやら三人とも協力してくれるようで、一十百もほっと一安心である。

 

「私はキーボードでいいとして、ルナ姉と、メル姉は?」

「弦楽器なら、上手く演奏できるはずだからベースで」

「じゃ、私がパーカッションかな。余裕があったらトランペットで、音の底上げ」

担当の楽器も決まり、準備ができたようだ。

「それじゃ、芽衣さん。お願いします」

「しっかりと盛り上げてくるね!」

そう言って、星羅芽衣がステージに上がる。

キシも準備ができたようで、待機している。

プリズムリバー三姉妹も各々の配置に着く。

 

「フィナーレを飾るライブの準備は整いましたね」

一十百がルーミアに合図を送る。

真っ暗の中でも分かるように、ルーミアの手にひもを結び付けてある。

それを引くことによって合図を送るのだ。

ひもを引かれたルーミアは、一十百に言われた通りゆっくりと上昇していく。

すると、まるで暗幕が上がるかのように、ステージ上が明るくなる。

ざわついていた観客たちから、割れんばかりの拍手が送られる。

 

そんな拍手の中、リズムを取るようにキシのドラムが鳴り始める。

それに合わせるようにプリズムリバー三姉妹の楽器も歌うように演奏され始めた。

そして、星羅芽衣の透き通るような声が、ギターの音と共にライブ会場に響き渡った。

観客席からも、感嘆の声が上がる。

別世界のお客を交えた、大きな祭りを締めくくるライブが始まった。

 

 

そのころ、ライブ会場から少し離れた場所……。

一十百はルーミアに合図を送った後、そっとライブ会場を離れ、ある場所まで来ていた。

幾つもの大きな筒が立ち並んでいる広場だ。

 

「さてと……、そろそろ打ち上げてもよさそうですね」

にっこり微笑んで、一十百が少し遠くに見える、博麗神社を眺める。

そして、ポケットに手を入れ、マッチ箱を取り出した。

「さあ、打ちあがれ~!」

高らかにそう言って、マッチを擦った。

しかし、火が灯らない。

 

「あれ?」

カシュッ、カシュ……、ボキッ。

「あ、折れちゃいました」

次のマッチを取り出し、擦る。

けれど、火は灯らない。

そんな事をしている間に、一本、また一本とマッチは折れていった。

 

そして、十数本のマッチが折れた頃、気が付く。

「これ、湿気ってますね。困りました、他に火種は……」

別の火種を探そうと、持っていたマッチをポイと放り投げる。

すると、マッチは空中でいきなり燃え上がった。

「えっ!!」

一カ所に集めておいた折れたマッチも同じように燃え上がる。

明らかに、マッチの火力を超えた炎が立ちのぼる。

 

「これは……」

「こんなところで何をやってるかと思ったら、これは花火か?」

懐かしい声に驚き、一十百が振り返る。

そこには、夕焼け色の髪の背の高い青年が立っていた。

何年もあっていない別世界の親友。

一瞬で、懐かしさと、嬉しさの感情が溢れ、一十百の頬を一筋の涙が伝った。

それを見て驚いたのは夕焼け色の髪の友人。

「え、な、何故に涙? なにか悪い事でもしたか?」

「あ、久しぶりに会った物で、ついホロリと来てしまいました」

ついっと、指で涙をぬぐい、一十百がにっこり笑う。

 

「お久しぶりです、クロラージュさん。えと、一年半ぶりくらいですね」

「俺からすると数日前にあったばかりなんだが……。まあ、元気そうで何よりだ」

そう言ってクロラージュは一十百の頭を撫でる。

「皆さん元気ですか? この頃戻ってなかったので、少し心配でしたけど」

「いつも通り、騒がしく毎日を過ごしてるな。だから、安心してくれ」

それを聞いて一十百はホッとした表情を浮かべた。

 

 

「しっかし、一十百はこっちにいていいのか? 可愛い子と虹川三姉妹がライブをしていたようだけど」

「ええ。これを打ち上げないといけませんからね」

トンと、地面に突き立っている筒を軽くたたく。

「それ、花火の打ち上げ台か?」

「はい! あ、そうでした。ちょっとこれに火を灯してくれませんか?」

そう言って一十百はポケットから大きめの松明を取り出した。

「……相変わらず、すごいポケットだな。まあ、いいか」

クロラージュが持っていた黒い杖を振るうと、松明に赤々とした炎が灯った。

一十百は松明を一回転させ、左手に持ちかえた。

 

「ありがとうございます。それじゃ……、打ち上げましょう!」

近くにあった筒の一つに松明をかざす。

パチパチと、導火線に火が付く。

その火が導火線を伝い、筒の中に吸い込まれていく。

そして……、ボンと何かが爆発したような音が鳴り響いた。

その直後、筒から空に向けて一直線の白い煙が立ちのぼり、爆音と共に夜空に大輪の花が咲いた。

 

「た~まや~!」

「よ~し、一気に打ち上げますよ!」

一十百が松明を持って、突き立った筒の間を駆け抜ける。

次々と導火線に火が付き、花火が撃ちあがっていった。

 

 

ライブもそろそろ終わりに近づいてきた頃、大きな音が空に響きわたった。

ステージのバックに花火が打ちあがったのだ。

まるで、祭りの最後飾るライブのフィナーレを盛り上げるような、そんな花火だ。

花火の音に合わせるように、ライブ会場に一層熱が入る。

歌い手、演奏者、ステージ、お客、そして花火……。

賑やかで不思議なお祭りを締めくくるに相応しいライブが、大花火に合わせてさらに盛り上がっていった。

 

 

「それじゃ、これが最後の花火ですね」

そう言って一十百がラストの花火の筒を指差す。

「デカァァァァァいッ説明不要!!」

クロラージュがそう叫ぶ。

他の花火の筒と比べると遥かに巨大な筒がそこに存在していた。

 

「いや、なんだよこれ」

「僕がフィナーレ用に作っておいた大花火、七尺七寸玉『胡蝶蘭月』です!」

「な、七尺ぅ!! えっと、普通の花火って、大きいのでも三尺玉だよな……。オイオイ……」

「この大花火で、世界線をもう一度揺るがせて、別世界から来た皆さんを元の場所に送り届けないといけませんから」

そう言って、一十百が松明を高々と放り投げる。

くるくると回転しながら、松明は筒の中に吸い込まれていった。

 

次の瞬間、ボッと空気が震え、まるで白い柱が夜空に突き立ったように、煙が立ち上った。

ヒュルル……と、甲高い音を響かせながら、光の玉が高々と上がっていく。

その光の玉が点になるほど高く上がった時、一瞬、強い光が夜空を照らした。

ド―――――ンと大きな衝撃が周りに響き渡る。

 

「すげぇ……」

クロラージュがそう一言呟く。

夜空を覆い尽くすのではないかと思える程、巨大な花火が花開いたのだ。

ただ巨大なだけではなく、色とりどりの光を放ちながら、夜空を染め上げていった。

四方八方に舞い飛ぶ光は、流星のようにも、舞う蝶のようにも見えた。

「しっかりと打ちあがりましたね。これで、秋夏祭りも終わりです」

一十百は、そっとそう言うと、一度大きく伸びをした。

 

 

「さてと、それじゃ、俺は帰るかな。一十百は、どうする?」

「僕は秋夏祭りとかの片付けがありますから」

「そっか。ま、たまには戻ってこいよ」

「はい! それでは!」

一十百は秋夏祭りの片付けをするために、ライブ会場に戻っていった。

 

一十百がライブ会場に戻ってみると、大半の妖怪たちは帰ってしまったようだ。

けれど、別世界のお客はかなり残っているようだった。

ライブを終えた星羅芽衣とキシを囲むように集まっている。

「あ、十百君。おつかれ~」

「芽衣さんもお疲れ様でした」

ペコリと、一十百は礼をする。

 

一十百は集まってくれた別世界の人を見渡す。

似たような幻想郷から来てくれた人たち。

外の世界から来てくれた人たち。

全く別の世界から来てくれた人たち。

そんな、まったく接点のない人たちが、一カ所に集まってお祭り。

そのお祭りを最後までやり遂げられました!

一十百はにっこり微笑んで、両手を真横にして博麗神社に響く声で高らかに宣言した。

 

 

「これにて、秋夏祭りは終了です! 皆さん、長い間、お疲れ様でした~!! ありがと~!!」




今回の出来事・一十百メモ帳より抜粋

フィナーレライブ:別世界のお客様にとても人気だったようです。さすがは芽衣さん! 僕は生演奏を聞けませんでしたが、しっかりと手は打っておきました。じゃ~ん、秋夏祭りフィナーレライブのCDです! 幻想郷では聞けませんから、帰ってから楽しむことにします!by一十百

大花火『胡蝶蘭月』:七尺七寸玉の大花火です。ライブが終わった頃を見計らって打ち上げました。夜空を覆い尽くすほどの大花火です。この花火で世界線を揺るがして、皆さんを元の世界へ帰りやすくさせられたはずです。by一十百
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