ボッチプレイヤーの冒険 ~最強みたいだけど、意味無いよなぁ~   作:杉田モアイ

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 時間は少しさかのぼる。

 

 「あれ?今日はいつもの鎧じゃないんだね」

 「あ、うん。いつものだと強力すぎて物々しいし、村人に見つかったとき何事かと思われてしまうからね」

 

 まるんに言われて、シャイナは自分の姿を鏡で見直す。

 

 純白に赤と金のラインの入ったブレストプレートアーマーと腰だれ、魔法の装備ではあるものの、戦士としてはかなり軽装と言える装備で、頭にはマジックアイテムのサークレットをつけている。

 

 腰に下がっているのは刀と呼ばれる武器。

 炎や雷が出るような派手さは無いけどそれなりのマジックアイテムで、シャイナの腕と合わされば鉄製のフルプレートアーマーくらいならバターを斬るかのように両断するほどの技物だ。

 

 「まるんはその格好で行くの?」

 「うん、可愛いでしょ」

 

 軽装とはいえ、しっかり武装しているシャイナに対してまるんは一見上等な子供服のようなドレスっぽい服装をしている。

 手には小さなステッキのようなものを持っていて、グラスランナーの特徴でもある10歳くらいの女の子と言う外見も相まって、いい所のお嬢様と言った雰囲気だ。

 

 でもそれは外見だけで、着ている服はアルフィンのピンクの魔法少女服と同じでマジックキャスター用布装備を外装だけいじってそう見せているだけだし、手に持っているステッキも魔力強化や発動速度を速める効果のある装備である。

 

 「そうだね。偵察だという事を考えるとまるんの外見とあいまって子供にしか見えないし、とっても可愛いくていいよ。うん、可愛い、可愛い」

 

 もう、ぬいぐるみたちと一緒に部屋に飾りたいくらいの可愛さだ。

 思わずほほが緩んでしまう。

 

 「子供にしか見えないって言うのは余計!可愛いだけでいいの!」

 

 ぷぅとほほを膨らませるまるん。

 こう言う所、可愛いんだよなぁ。

 ギュッと抱きしめたくなる。

 

 いつもしている事だけど、今抱き上げたら間違いなくへそを曲げるからできないけどね。

 

 「でも子供に見えるように偽装するのはいいことだと思うよ、今回の任務を考えると」

 「それはそうだけど・・・」

 

 ちょっと納得いかないみたいだけど、私とまるんが並ぶとどう見ても貴族か金持ちのお嬢様とその護衛の戦士にしか見えないだろう。

 この二人が実は同程度の強さを持っていると見抜くことができる人がいたら、その相手はかなりの実力を持つ相手と言うことだ。

 

 相手の挙動を見るだけで相手の力量が解るという意味でも、この外見は偵察にはベストに近いものだろうと思う。

 

 「シャイナ様、まるん様、私の格好はこれでよろしいでしょうか?」

 「ん?」

 

 声のほうを二人が振り向くと、そこにはいつもとはまるで違う格好のセルニアが立っていた。

 まるんはセルニアの姿を眺めた後、ニパッという表現がよく似合う笑顔を浮かべる。

 

 「うん、可愛くていいと思うよ」

 「えへへへっ」

 

 まるんにほめられて照れ笑いを浮かべるセルニア。

 その格好はと言うと、いつもの派手なメイド服ではなく、黒と白を基調としたザ・メイド服って感じのシックなもので、装備としては地下階層の一般メイドたちが着ている者と同じものだ。

 

 それだけに一応魔法の装備だけど防御力では少々不安はある。

 魔法の掛かっていないミスリルのフルプレート程度の防御力しかないのではないだろうか?

 

 でも派手な服装しか持っていないセルニアは、今回のようなあまり目立たないように行動する時用の服は持っておらず、今から作る時間も無いという事で急遽この服装で出かけることになってしまった。

 

 「そうだね、それならギャリソンも納得するんじゃない?」

 

 私たちがこのような格好をしているのは実はギャリソンが言い出したことで、今回はあくまで村を見に行く事が目的なので、誰かに見られた時に不審に思われず、この一行が一緒に歩いていても不自然ではないような格好で出かけてほしいと言われたから。

 確かにこの3人ならお嬢様、メイド、護衛にしか見えないね。

 

 と言うわけで、当然セルニアの胸には”てんちょう”の名札はぶら下がっていない。

 これって、ある意味レアなんじゃないかなぁ?

 

 「さて、格好はこれでいいとして、どうやって行くの?」

 「全員空は飛べるけど、私はともかく、まるんと店長が空を飛んでいるのは流石にシュールすぎるよなぁ」

 

 貴族か金持ちのお子様とそのメイドが仲良く高速で飛び回る。

 ギャグマンガならありだけど、子供とメイドがフライの魔法を使えるというのはだれが見ても怪しい光景だ。

 

 「シャイナだって妖精の羽広げて飛んでいるのは流石にまずいでしょ」

 「シャイナ様の飛行って、キラキラして綺麗ですけどね」

 

 まるんとセルニアはマジックキャスターだから<フライ/飛行>で飛ぶけど、実は私、種族がフェアリーオーガだから飛ぶときは魔法ではなく、背中から羽が生えて、その羽を使って飛ぶ事が出来る。

 

 セルニアが言っているのは、飛んだ後にきらきらとした光の帯が流れるエフェクトの事で、ついでに澄んだメロディーのようなものがなる隠密行動にはまったく向かないおまけつきでもある。

 気に入ってはいるんだけどね。

 

 因みに、隠密行動用にフライの魔法が使えるペンダントも常備している。

 これが無いと、他の人に迷惑をかけることがあったからね。

 

 「まぁそうだけどね。でもうちって馬車は無いんだよね?」

 

 ユグドラシルでは馬には乗っていたが、プレイヤーの乗り物としては馬車は無かったため、今作りかけている物しかうちにはない。

 

 「シャイナ様と私がアイアンホースに乗って、まるん様はシャイナ様と一緒に乗っていかれては?」

 「アイアンホース?ただの馬じゃなくて?」

 

 アイアンホース・ゴーレムで移動していたら普通驚かないか?

 

 「はい、普通の馬ですと疲労無効の装備をつけさせたとしても、この距離を移動するとなるとかなりの時間が掛かってしまいますし、アイアンホースも鎧をつけた軍馬と言われればそう見えないことも無いので大丈夫だと思いますよ」

 

 「なるほど」

 

 確かに30キロちょっとの距離を馬で移動したら4時間ほど掛かってしまうか。

 

 「なら私はシャイナの前に乗せてもらってキャッキャ・ウフフしてればいいんだね」

 「いや、キャッキャ・ウフフはいらないって」

 

 まぁ、移動手段はこれで決まりか。

 アイアンホースでの移動とはいえ、そこそこの時間が掛かるので疲労無効の指輪を装備し。

 

 「それじゃあ、マ・・・アルフィン、行って来るね」

 「いってらっしゃい」

 

 マスターの所に行き、出発の挨拶をしてからイングウェンザー城の入り口へ。

 そこではすでにセルニアが赤と青、2頭のアイアンホースをつれて待っていた。

 

 「あ、アルフィスのを借りてきたのか」

 「はい、まるん様のアイアンホースは私には少々小さいので」

 「小さいって言うなぁ!」

 

 いや、小さいでしょ。

 それと、お決まりのギャグはいいから。

 

 あ、因みにだけど、私たちにはアルフィンはピンク、私は赤といった感じでそれぞれにイメージカラーと言うものがあって、青はアルフィスの色だ。

 

 「まぁ馬車もそうだけど、今からアイアンホースを作るのも大変だしね」

 「ちゃんとアルフィス様の了解は取ってあるので大丈夫です」

 

 なら問題はないね。

 

 「それじゃあ、行こうか」

 

 そう言って、アイアンホースにまたがって出発・・・と言うところで一つ問題が

 

 「ん?意外と難しいぞ」

 

 ユグドラシルでは馬に乗っていたので乗れると思ったけど、アイアンホースだと普通の馬と勝手が違うのか、それともこの世界だとそもそも練習しないといけないのか、思うように動いてくれない。

 

 「並足で歩くのならこの程度の違和感は問題ないけど、全力で走るとなるとちょっと不安かな?」

 「シャイナ、落馬しないでよ」

 

 しないって。

 言葉には出さず苦笑で返して、全力で走り出す前に少しの間練習する事にする。

 

 「う~ん、マスターもフライで飛んだ時の経験を言っていたけど、揺れたり跳ねたりする感覚が違和感になってるのかな?」

 

 マスターと違って、私はNPCたちと同じ様な存在だから違和感は感じないんじゃないかな?と思っていたけど、感覚はマスターと同じ様なものなのかなぁ。

 

 それでもそこは昔取った杵柄、ユグドラシルでは乗れていたのだから10分ほど並足で歩いていれば普通に走っても違和感が無い程度には慣れる事ができた。

 

 「待たせたね、セルニア。それじゃあ行こうか」

 「はい、シャイナ様」

 

 アイアンホースに命令し、スピードを徐々に上げていく。

 何と言うかなぁ。

 

 「ノーヘルでバイクに乗るとこんな感じなんだろうか?」

 「ちょっと怖いよね」

 

 加速をして速度が60キロを越えた辺りから、かなりのスリルを感じるようになる。

 それに、よくよく考えると普通のバイクは上下に跳ねない。

 でもアイアンホースは馬だからどうしても上下運動を繰り返すんだよね。

 

 「なんかジェットコースターに乗ってるみたいだ」

 「スリル満点だね」

 

 アイアンホースのスピードが限界である100キロ近くまで行くと馬に乗っているというよりしがみついているって感じだ。

 それでもしばらくするとなれるもので、少しは周りを見る余裕が出てくる。

 

 そこでふと横を見ると、なんとセルニアが猛スピードの馬に乗っているとは思えないほどいい姿勢で併走していた。

 乗馬系の競技にでも出ているかのようなその姿勢に驚いて。

 

 「店長、この速度の中、よくその姿勢で乗れるね」

 

 と聞いてみると、

 

 「え?馬と言うのはこのような姿勢で乗るものではないのですか?」

 

 と、セルニアは不思議そうに小首をかしげてそう答えた。

 

 なるほど、そういえばユグドラシルで馬に乗るとあんな感じの姿勢で乗っていたっけ

 NPCはどんな速度であっても設定通りの姿勢で乗るということか。

 

 「待てよ、セルニアが乗れると言う事は・・・」

 

 少々怖いが試しに姿勢を正してみる。

 すると・・・。

 

 「これはびっくり!」

 

 なんと今までのしがみついている姿勢よりはるかに安定した。

 おまけに恐怖心までしがみついていた時とは違って無くなっている気がする。

 

 「まるんも体を起こして姿勢を正してみて。かなり安定するよ」

 「あ、ホントだ」

 

 なるほど、こんなところもゲームと同じわけだ。

 こうなるとよりいっそう余裕が出てきて、草原を疾走するアイアンホースの旅を楽しめるようになってきた。

 

 これなら30キロと言わず、もっと長距離を走ってみたいなぁ。

 後ろに流れていく草原の景色を眺めながらシャイナはそう考えていた。

 




 私の書いたものを面白いと思って毎回読みに来てくださる方々、本当にありがとうございます、これからもお付き合いくださると幸いです。

 さて、先日、やっと近所の本屋にオーバーロードが入荷しました。

 おかげで今度こそ今出ている9巻までそろえる事ができ、今週1週間を使って斜め読みですが最後まで読破できました。(私、読むのが遅いんですよ)

 で、今回も新事実が出てきたのですが・・・ジルクニフって10代前半に即位したのね。

 これは驚いたと同時にちょっと困った事になってます。
 ホントどうしよう、これから先の展開。

 まぁ、先週うそ設定と言う項目を増やしたことだし、むりやりやっていくかな?

 次に驚いたこと。
 web版で死んだ人が生き残り、生き残った人が死んでいたこと。

 まだ読んでいない人もいるだろうから書かないけど、7巻と9巻は本当に驚いた
 って、8巻は誰も死んでないかw

 特に7巻の方は最後のところがweb版と同じだけに余計に悲しい。
 私はうちのキャラのシャイナと同じ特性を持っているので特にね・・・。

 おまけ
 8巻に出てくるある場所の新守護者、わざわざアインズたちが装備をそろえて助けに行かないといけないと思うほど強いという事は、あれも100レベルなのか。
 あんな場所の守護者なのに。

 ナザリックっていったい後何人100レベルNPCがいるんだ?w

追記
前にこのあとがきで書いたことが原因で感想掲示板がちょっと荒れたので、いつまでもその内容を残しておくのもあれだろうと思い消しました。
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