ボッチプレイヤーの冒険 ~最強みたいだけど、意味無いよなぁ~   作:杉田モアイ

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外伝4 帝国魔法学院への道

 

 今より少しだけ先のお話。

 

 その日、アルフィンはメルヴァから休みを貰い、シャイナと共にボウドアの村にある館を訪ねていた。

 

 

 

 「アルフィン様、カルロッテ様がお目通りを願っております。お通ししても宜しいでしょうか?」

 

 「カルロッテさんが? ええ、いいわよ」

 

 どうしたんだろう? 特に急用があるとも思えないんだけど。

 

 前回のエルシモさんとの面会で城に来た時は特別な事を話したりしなかったから、それから何かあったのかな? でもまぁ彼女が住んでいる別館やボウドアの村に、もし何か大きな問題が発生していたとしたら私の耳にも入っているはずだから、それ程大事件でもないだろう。

 

 もしかするとただ単に私たちがここに来ていると聞いて訊ねてくれただけかもしれないしね。

 

 そんな風に私は楽観視していたんだけど、どうやらシャイナはそうじゃなかったみたいで、

 

 「同じ敷地内に住んでいるとは言え、わざわざアルフィンを訊ねてくるって事は、何かあったのかな?」

 

 と、不安げな顔を見せたから、私自身はこの訪問の内容を、それ程心配していないんだよって伝えてあげる。

 

 「う~ん、どうだろう? ただのご機嫌伺いって事もありえるし、前から何か困ったことがあれば遠慮なく言ってほしいとも伝えてあるから、もし何かあったのならすでに聞かされてるんじゃないかな? まぁ私たちがこの館に来た時に聞いてもらえばいいやと思う程度の小さな問題が別館にあるかもしれないから、とりあえず会ってみないと解らないけどね」

 

 どうせもうすぐ顔を合わせるんだからと、笑いながらシャイナと話をしていると、

 

 コンコンコンコン。

 

 部屋にノックの音が響き渡った。

 

 「アルフィン様、シャイナ様、カルロッテ様が到着しました」

 

 「どうぞ、入ってもらって」

 

 いつもならノックの後すぐに開けられるドアも、今日はカルロッテさんがいるからか確認が入った。

 カルロッテさんなら別にいいのにと私は思うんだけど、この間メルヴァから「アルフィン様は我が国の支配者なのですから、メイド相手ならともかく他国の者と会う時は徹底してください」と言われてしまったのよね。

 

 まったく仰々しいったらありゃしない。

 

 まぁ、ユーリアちゃんたち子供の来客の場合だけは、来たらすぐに通しなさいと言ってあるんだけどね。

 これだけはメルヴァになにを言われたとしても折れる事はない、絶対にね!

 

 ガチャ。

 

 ドアが内側に開き、メイドに案内されるようにカルロッテさんが入って来た。

 その表情には特にあせりは無く、ごく普通に見えるところを見るとやはりただの表敬訪問だったみたいだね。

 

 「カルロッテさん、いらっしゃい」

 

 「いらっしゃい。お久しぶりね」

 

 「アルフィン様、シャイナ様、ご無沙汰しております」

 

 実際の所、つい先日も城で会っているわけだからそれ程ご無沙汰ではないのだけれど、まぁ社交辞令と言う事なのだろう。

 とりあえず立ち話もなんなのでカルロッテさんに席をすすめ、座ってもらう。

 

 「それで今日はどうしたの? 私たちが来ていると聞いて遊びに来てくれたのかしら?」

 

 「それとも食事のお誘い? 別館の子供たちともしばらく遊んでないし、それなら大歓迎なんだけど」

 

 「別館の子供たちもシャイナ様と御会いできるのを楽しみにしているので大変魅力的なお話なのですが、今日は別の話があってまいりました。実はマイエル姉妹のことなのです」

 

 ユーリアちゃんとエルマちゃんのこと?

 一体何があったんだろう? ボウドアの村からは特に何も言ってきてはいないから、怪我をしたとか言う話じゃないだろうし、何よりそんな話だったらカルロッテさんから来るのはおかしいものね。

 

 「ユーリアちゃんたちのこと? 私には何の連絡も入っていないけど何かあったの?」

 

 「はい。実はユーリアさんとエルマさん、お二人共にマジックキャスターの素養があるようなのです」

 

 えっ?

 

 私はその言葉にとても驚いた。

 だってあの二人は普通の農夫の子供であり特に魔法の勉強をしたことも無いのだから、例え素養があったとしてもあの歳でその片鱗を見せる事などあるはずが無いと考えたからだ。

 

「それは確かな事なの?」

 

「はい。私は神官なので魔法を教える事はできませんが、判定方法を知っていたのでためしに別館に住む私たちの子供とボウドアの村の子供たちを調べた所、マイエル姉妹の二人共に素養があることが解ったのです」

 

 なるほど、だから解ったのか。

 確かにそんな判定でもしなければ解るはずも無いものね。

 私はそう考え、一人心の中で頷く。

 

 そうか、ユーリアちゃんたちにマジックキャスターの素養があるのか。

 うん、それはいい事よね。

 

 特に強力なマジックキャスターになれなかったとしても、クリエイトマジックが使えればいろいろとできる事は増えるし、1位階の攻撃魔法でも使えるのなら野盗や弱い魔物から身を守るくらいできるようになるから、イーノックカウまで物を売りに行ったりする時の安全性は格段に上がるもの。

 

 「そう、それは良かったわ」

 

 私は単純にそう考え、喜んだ。

 だけど、そこでふとある事に気が付いたのよね。

 

 魔法って、どうやって覚えるんだろう?

 

 うちの城にもマジックキャスターは多数いるけど、それはゲームで魔法を覚えたのだから当然どうやって習得するかなんて知っているはずがない。

 であるからして、ユーリアちゃんたちにいくら魔法の素養があったとしても、私たちは教える術がないのだ。

 

 でも、目の前にいるカルロッテさんが私にその事を相談しに来たと言う事は当然魔法を教えてほしいと言う事で・・・さてどうしたものか。

 

 「はい。アルフィン様が操るほどでなくともクリエイトマジックが使えれば塩を生み出すことができますから、とても重宝する事でしょう。ですからアルフィン様、あなた様でなくても構いません。前に水場を作られた時にいらっしゃった方のどなたかに、あの二人の魔法の教師役になっていただけたらと思いまして」

 

 「魔法の教師ですか」

 

 そうだよねぇ、普通はそう考えるよねぇ。

 でもできないんだよなぁ・・・困った。

 

 私はどうしようかなぁと頭を捻る。

 すると、あることに気が付いた。

 

 そう言えば私たちって、この世界の人たちの前でクリエイトマジック以外の魔法を使ってないんじゃないかと言う事に。

 いや、厳密に言えばゲートも使っているけど、あれは神官でも高位になれば使える魔法だから魔力系マジックキャスターの魔法ではないのよね。

 うん、これなら何とかごまかせるかも。

 

「困ったわ。実は私たちのクリエイトマジックは魔力系魔法ではなく巫女の系統魔法なのです。ですから私が行った修行方法を教えても巫女や神官になることはできても魔力系マジックキャスターになることはできないのですよ。あなたが教えられないと言う事はそのマジックキャスターの素養と言うのは魔力系魔法の事なのでしょう? どうしましょう、私の城には護衛の騎士や治療神官はいるのですが魔力系魔法の使い手はいないのです。ああなんて事なの、折角ユーリアちゃんたちに素養があることが解ったのに教える事ができないなんて」

 

 私は芝居がかったしぐさで、がっくりと肩を落とす。

 そんな姿を隣にいるシャイナは不思議そうな顔で見ているけど、私になにやら考えがあるのだろうと口には出さないでくれていた。

 良かったわ、これで「マジックキャスターならいるじゃない、沢山」とか言われたら大変だもの。

 とにかくしばらくの間は口を開かないでね。

 

 「そうなのですか・・・。あっ、そう言えば前に私たちが住んでいた廃墟に転移の魔法で来られたセルニアさんという方は? 転移魔法が使えるのなら魔力系魔法の使い手なのではないですか?」

 

 「それはゲートのことではないですか? あれ、実はテレポートなどと違って高位神官でも使える魔法なのですよ」

 

 「そうなのですか」

 

 これは本当のこと。

 だから嘘は言ってないし、セルニアが魔力系マジックキャスターでは無いと言ったわけじゃなく彼女が勘違いしただけなんだけど、その嘘をついていないと言う部分が私の心の揺れを少なくしてくれる重要な部分だったりする。

 だってどうしようもない事意外では、あまり知り合いに嘘はつきたくないものね。

 

 「しかし、本当にどうしましょう? ねぇ、シャイナ。私たちの城の者では魔法を”覚える方法”を、そう、その手段を教える事ができないのよねぇ。あなたはどうしたら良いと思う?」

 

 そうシャイナに話を振ると、彼女は今までの話の意味がやっと理解できたようで、

 

 「ああなるほど、そういう事か。魔法の習得方法なんて私たちに解るはずないものね。だからユーリアちゃんたちに魔法をどうやって教えたら良いかを悩んでいたのか。そうだなぁ」

 

 相槌をうちながら、やっと今の状況がやっと理解できたと言い、そして今度は腕を組んで、う~んと唸りながら頭を捻り始めた。

 よし、これでシャイナがいきなり訳の解らない事を言い出す心配もなくなったから、私も本格的に考えるとしよう。

 

 さっきのカルロッテさんの口調からすると、この世界では魔法を覚えるには教える教師が必要らしい。

 でも私たち元ユグドラシルの住人には肝心の魔法の習得方法が解らないから教える事ができないし、教師になりそうな人とのツテもないのよねぇ。

 う~ん、これは本格的に困った状態なんじゃないかしら?

 

 特に名案が浮かぶ訳でも無いのに時間だけが過ぎてゆく。

 とそんな時である。

 

 「あの、アルフィン様」

 

 カルロッテさんが申し訳なさそうに声を掛けてきた。

 

 「どうしたのカルロッテさん、何か名案でも?」

 

 「いえ、名案と言うほどの事でもないのですが・・・」

 

 私とシャイナに見つめられて居た堪れなくなったのか、彼女は少し身を捩りながら思いついた考えを私たちに告げた。

 

 「アルフィン様のお城に魔法を教えられる方がいないのであれば、カロッサ子爵様に紹介していただく事はできないのでしょうか?」

 

 「あっ!」

 

 そう言えば忘れてた。

 カロッサさんなら貴族だから魔法の講師のツテもありそうだし、頼んでみる価値はあるかも。

 

 「そう言えばそうね。なんで思いつかなかったんだろう? ありがとう、カルロッテさん、早速明日にでも使いの者を出してあちらの都合のいい時にでもお願いしに伺うわ」

 

 「はい、お願いします、アルフィン様。マイエルさんたちもきっと喜ぶと思います」

 

 こうして私たちは一つの結論に達し、胸を撫で下ろすのだった。

 

 

 

 数日後、私はカロッサさんの館へとお邪魔した。 

 

 「お久しぶりです、カロッサさん」

 

 「これはこれはアルフィン様、わざわざお越しいただき、申し訳ありません。呼びつけてもらえばいつでも飛んでいきましたのに」

 

 いや、流石にそれはダメでしょ。

 

 「いえいえ、此方からお願いをする立場なのですから、来ていただく訳には行きませんよ」

 

 「いえ、例えどんな無理難題であったとしても私が足を運ぶべきでしょう。皇帝陛下でも頼み事があるからといって家臣の元へと訪れる事はないのですから」

 

 皇帝陛下"でも"って。

 えっと、カロッサさんってバハルス帝国の貴族であって、都市国家イングウェンザーの貴族じゃないよね? その言葉、皇帝エル=ニクス陛下が聞いたら怒るんじゃないかしら?

 

 「カロッサさん、あなたは皇帝エル=ニクス陛下の臣下であって私の臣下ではないのですから、その例えは間違っていますよ」

 

 「はい、承知しております。しておりますが、しかし・・・」

 

 ああ、この話は水掛け論だからここで打ち切ろう。

 

 「解りました、お気持ちだけいただいておきますね」

 

 「ありがとうございます。それでお話というのは?」

 

 やっと話が進みそうなので、私はユーリアちゃんたちに魔法の素養があることが解った事、しかし我が城には魔力系マジックキャスターが居らず、その能力を伸ばすにはどうしたら良いかと悩んでいる事をカロッサさんに伝えた。

 すると、

 

 「都市であるなら私塾に通うと言う方法もあるのですがボウドアの村に住む子供なら通うのは無理でしょう。それに親と共にイーノックカウに移り住むと言うのも仕事等の面で現実的ではありませんな。ですからこの場合は魔法を教える事ができる者を、家庭教師を雇い入れるのが得策でしょう」

 

 と、カロッサさんは「わざわざ足をお運びになるほどのお願いと言う事ですから、どれほどの難題かと思えば、そんな事ですか」とでも言う様に、笑顔で答えてくれた。

 この顔からすると多分その当てもあるのだろう、それを見て私はほっと胸をなでおろす。

 

 「家庭教師ですか。カロッサさんのお顔からすると、どなたか心当たりがあるようですね」

 

 「はい、その辺りは貴族のネットワークがありますから。私どものように小さな領ではマジックキャスターの素養がある者は貴重ですから、見つかった時は教育できる者をすぐに手配できるよう、教え合うようにしているのです」

 

 なるほど。

 大きな領地を持つ大貴族ならともかく、小さな領地しか持たない人の場合は数少ない魔法使いが見つかった時はその人が冒険者などになって外に出て行かないよう、囲い込むと言う意味もあってこの様なネットワークができているんだろうね。

 特に塩なんかはクリエイトマジックが使える魔法使いが一人居るか居ないかで大きく違うだろうから、見つけたときは離したくはないだろう。

 

 「良かった。マイエル姉妹はうちのまるんちゃんが特に懇意にしている子供たちだから、何とかしてあげたいと思っていたのです。とても助かりますわ」

 

 「そうなのですか。それならば家庭教師を呼ぶ事はできますが、ある程度覚えた後は帝都にある学院に通わせた方が良いと思います。我が領地の子供ですから、私も紹介状を書きますし、皇帝陛下やロクシー様と懇意になされているアルフィン様が連名で紹介状を出してもらえればたとえ平民であっても入学する事は可能でしょうから」

 

 私が謝意を表すと、カロッサさんがそんな提案をしてくれた。

 学院への入学までさせてくれるの? ってことはこの世界の魔法技術やその習得方法まで解るってことよね。

 それは願っても無いことだし、こんなチャンスは滅多にないだろうからユーリアちゃんたちだけを送り出すのは少しもったいないわね。

 

 「それならばうちのまるんちゃんも共に学ばせてもらえないかしら? あの子はまだ小さいから教育を受けていないけど、魔法の素養はあるはずですから。それにまるんちゃんなら我が都市国家イングウェンザーの貴族ですもの。ユーリアちゃんたちと一緒に入学すれば問題が起こる可能性も減るでしょう?」

 

 「おお、そうですね。魔法学院には平民も居りますが貴族も多数在籍しております。貴族であるまるん様がご一緒なら、その子たちも心強いことでしょう」

 

 ふふふっ、うまく行ったわ。

 これでまるんちゃんに色々調べてきてもらえるし、なんなら私が通ってもいいもの。

 魔法の授業自体は問題ないし、ユーリアちゃんたちとの学院生活と言うのも楽しそう。

 夢が膨らむわぁ。

 

 そうだ、これを気に帝都にも進出すると言うのはどうかしら? そうなると物件探しを今から始めないといけないわね。

 善は急げ、明日にでもロクシーさんにお手紙を出しておきましょう。

 

 かなり気が早いものの、楽しげな近い未来を夢見て微笑むアルフィンだった。

 




 この話は本来、もしボッチ連載中にweb版が更新された時は書こうと思っていた学園編の前フリ回でした。

 この場合、まるんに主人公が入って遠目から有名人であるフールーダを見物したり、ナーベやモモンを見てこの世界にも優秀な人はいるんだなぁなんて感心したり、ジエットにグラスランナーだと見破られたりする話になるはずでしたが、web版の学園編が完結していないのでお蔵入りになった次第です。

 さて次回からいよいよ最終章に入るのですが来週は1週休みをいただき、その代わりにボッチプレイヤーとは別のオーバーロード一話完結SSを投稿します。
 ボッチとはまるで関係ない話ですが、ほのぼの路線は変わらないので、読んでいただけたら幸いです。
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