ボッチプレイヤーの冒険 ~最強みたいだけど、意味無いよなぁ~   作:杉田モアイ

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12 友達とクッキー

 野盗を殴り、拳を振り上げて大声で叫んだ後、ふと我に返る。

 

 じぃ~~~~。

 

 私を見つめる4つの瞳

 

 ・・・・・・やってしまった。

 

 「えっと・・・」

 

 流れる気まずい時間。

 少女たちは何が起こったのいまいち理解できないのか、無言で私の顔を見つめている。

 

 「うう・・・・」

 

 いつもならうれしいはずの視線に冷や汗が流れ出す。

 何か反応しないと・・・。

 

 「もぉ~、静観するんじゃなかったの?」

 

 蛇ににらまれた蛙のように動けなくなっていた私に天の助けとも言える、可愛い天使が舞い降りる。

 

 「ごめぇ~ん」

 

 後ろから歩いて近づいて来るまるんの言葉のおかげで、子供たちの視線による硬化の魔法が解けてほっと一安心。

 

 助かったぁ~。

 まるんが来てくれなかったらどうしようかと思ったよ。

 

 「シャイナ様、この女性も大丈夫みたいです」

 「ありがとう、そっちは任すねぇ~」

 

 どうやら私が気まずさに固まっている間に、セルニアが少女たちの母親らしき人を家の中に運び、ベットに寝かせて介抱をしてくれていたようだ。

 とりあえずあちらはセルニアに任すとして、私は気を取り直して子供たちに声をかける。

 

 「えっと、大丈夫だった?」

 「・・・あ、はい」

 「だいじょうぶ、です」

 

 セルニアに介抱されている母親を見て安心したのか、まだ顔は少しこわばっているものの、少女たちは私に笑顔を向けてくれた。

 

 「よかった。どこも怪我はないみたいだね」

 「はい。あのぉ、お姉さんは天使様ですか?」

 「ですか?」

 

 天使?

 

 「だって、いきなり現れて助けてくれたし」

 「くれたし」

 「いやいや、私は天使ではないよ」

 

 確かにこの子達からしたら私がどこから現れたか解らないだろうなぁ。

 まぁ、私もどうやってここに来たのか覚えてないけど。

 

 「私の名前はシャイナ。偶然この近くを通りかかったら君たちの泣き声が聞こえたから飛んできただけだよ」

 「そうなんですか」

 「ですかぁ」

 

 ああ、お姉ちゃんのまねをしてるんだろうなぁ。

 妹さん、めっちゃ可愛い。

 

 「もうしおくれました、私の名前はユーリア・マイエルです、こっちは妹のエルマです」

 「エルマです」

 

 声を交わしたことで緊張と恐怖が少しほぐれたのかな?

 さっきより自然な笑顔が二人の顔には浮かんでいる。

 

 そしてユーリアは妹を横に並べると、私に向かってぺこりと頭をさげた。

 

 「助けてくれてありがとうございました」

 「ありがとぉございました」

 

 あぁ~かわいい~!ギュッってしたいぃ~~!

 

 でも、流石にそんな場合ではないのでグッとこらえる。

 心の中で血の涙を流しながら。

 

 「心の中で血の涙流しているところ悪いけど、これからどうするの?」

 「うぐぅ!」

 

 顔には出していないつもりだったけど、まるんにはバレバレだったようだ。

 まぁ、いつも隙あらば抱っこしようとしているのだから当たり前か。

 

 「う~ん、手を出してしまったからにはこのまま帰る訳には行かないよね」

 「おまけに大声で叫んだから、他の野盗もこっち来ると思うよ」

 「そうだろうねぇ」

 

 こうなったらさくっと倒すしかないか。

 

 「仕方ないなぁ、まるんはこの子達とお母さんをお願い」

 「私は行かなくていいの?」

 

 この指示を聞いてまるんが小首をかしげる。

 まあ、かわいい・・・じゃないって!

 まるんは実力的に私と同程度だから戦闘に参加しなくてもいいと言うのが意外なみたいだね、だけど・・・。

 

 (小声で)「まるんの場合、この程度の相手だと第1位階のマジックアローでも1発で死んじゃうでしょ」

 (小声で)「あ、そっか」

 

 可能性は低いけど、野盗が誰も殺していないところを見ると、もしかして本当に殺人がこの世界ではものすごい罪なのかもしれない。

 もしそうなら下手に野盗を殺すわけには行かないよね。

 村人を助けるためとはいえ、相手は誰も殺していないのだから。

 

 ここで殺してしまったら過剰防衛になってしまうかもしれないし。

 

 「セルニア、私が適当に倒していくから、あなたは反対側に周って逃げる者が居たら無力化して」

 「解りました」

 

 さっき話した内容だから解っているとは思うけど、一応念を押しておく。

 

 「解っているとは思うけど、人は殺さないようにね。と言うわけで魔法は使用禁止」

 「麻痺や睡眠の魔法もですか?」

 「その手の魔法は大丈夫っぽいけど、範囲魔法だからなぁ。村人を巻き込む可能性があるからやっぱり禁止」

 「解りました」

 

 いくらマジックキャスターのセルニアでも、レベルからして普通に殴っただけで死んでしまいそうだから、殴る時も気をつけるようにと念を押してから行動開始。

 

 「それじゃあ、まるん、行ってくるね」

 「はぁ~い、行ってらっしゃ~い」

 

 手を振るまるんと、一緒になって手を振る二人の少女を(思いっきり後ろ髪引かれながら)残して村の中央に向かって歩き出す。

 行きがけの駄賃に、さっきの私の絶叫を聞いて駆けつけたであろう二人組みの野盗を殴り飛ばして。

 

 

 ■

 

 

 シャイナに任せておけば、野盗はあっという間に片付くだろうなぁ。

 村がちょっと広いから15分くらいは掛かるかもしれないけど。

 

 そんな事を考えていると後ろから声をかけられた。

 

 「あのぉ、まるんちゃん」

 「ん?」

 

 ちゃん?

 ああそうか、この子達からしたら、私は同い年か年下に見えているのかも。

 

 実年齢を知っているシャイナたちに子ども扱いされると腹が立つけど、何故だろう?この子達だとふしぎと腹が立たない。

 特に訂正する必要もないし、このままでもいいかな。

 

 「まるんちゃんはシャイナさんたちのお嬢様なの?」

 「お嬢様じゃないよ」

 「ならおひめさま?」

 「お姫様でもないかなぁ」

 「ないのかぁ」

 

 どうやらこの二人からすると私の立ち位置が今一歩わかっていないみたいだ。

 確かに私たちはパッと見、お嬢様と護衛とメイドと言う格好をしているからなぁ。

 

 でも、さっきの会話ではどう考えてもシャイナが主導権をとっていたよね。

 そうなると私がどんな立場なのか気になるのも解る気がする。

 

 「でも、シャイナさん若いからお母さんじゃないよね」

 「あはははは、それ、シャイナが聞いたらガックリするよ」

 

 流石にこの想像には笑いが止まらなかった。

 背こそ大きいけど、外見年齢は人間で言うところの20歳くらいじゃないかなぁ?

 シャイナが言うには、年齢の割りに大人びて見えていると言う話だったよね。

 

 実年齢は160歳くらいだったような?あれ?170歳くらいだったっけ?

 どちらにしてもフェアリーオーガとしてはまだ子供を生む年齢じゃないんじゃないかなぁ。

 

 で、もしシャイナが20歳くらいで、私が外見年齢どおりだったとしてもシャイナが10歳の時に私を生んだ事になってしまう。

 流石にそれはありえないよね。

 

 「じゃあ、まるんちゃんとシャイナさんたちはどんな関係なの?」

 「どんな関係かぁ」

 

 ん~どんな関係だろう?やっぱりマスターに仕えていると言うのが一番正しいかなぁ。

 

 「そうだなぁ~、同じ偉い人に仕えている関係かなぁ」

 「えらい人に仕えてるんだぁ。まるんちゃん、私たちと変わらない年なのにえらいね」

 「えらいねぇ~」

 「えへへへへへ」

 

 子供の言う事だと解っていても、褒めてもらうとうれしくなってしまう。

 うふふ、褒めてもらったし、お礼に持ってきたおやつ、わけてあげようかな。

 

 「そうだ、クッキー食べる?」

 「クッキー?・・・ってなに?」

 「なに~?なに~?」

 

 そうか、この村ではクッキーなんて食べた事ないのか。

 

 「甘いお菓子だよ」

 「甘いの?果実くらい?」

 「もっと甘いよ。あと果実水もあるよ」

 

 中空に手を伸ばし、アイテムボックスから果実水の入った魔法の水差しと人数分のマグカップ、おやつ用にいつも持ち歩いているクッキー缶を取り出す。

 それを見ていたユーリアとエルマは目をまん丸に開いて驚いた。

 

 「すごい、魔法だ」

 「まほうだぁ!」

 

 あっそうか、この子達はアイテムボックスも見たことが無いんだ。

 

 「違うよ、これはマジックアイテムだよ」

 「これがマジックアイテム?私、マジックアイテムってはじめて見た」

 「わたしもはじめてみた!」

 

 ふふふ、なんか優越感。

 

 「感心するのはいいから、クッキー食べよ」

 「わぁ~」

 「わぁぁぁ~」

 

 缶を空けると周りに芳ばしいバターやメープルシロップ、チョコレートの甘い香りが広がった。

 クッキー缶の中は色々な種類のクッキーがきちんと仕分けられて入っていて、ジャムやチョコレートが日の光を反射して宝石箱のようだ。

 

 ユーリアに目を向けると、はじめて見るクッキーの見た目とおいしそうな香りに、期待からか目をまん丸にしてキラキラとさせている。

 

 「すごいすごい!」

 

 エルマにいたっては、ほっぺを真っ赤にして大興奮だ。

 

 「まるんちゃん、もらっていいの?」

 「いいのぉ?」

 「いいよぉ~」

 

 全員分の果実水をマグカップになみなみと注ぎ、缶からそれぞれ気に入ったクッキーを取り出して一斉にパクリ。

 

 「なにこれ、おいしい!」

 「おいしぃ~!」

 

 初めて食べたクッキーに大感動している姉妹を横目に。

 

 「(ここは村の外れだし、シャイナたちが全部やっつけるまでこの子達と楽しんでいてもいいよね)」

 

 なんて考えながら、果実水を一口。

 いつの間にか静かになっていた付近の風景をのんびり眺めながらクッキーをもう一枚・・・と思ったら。

 

 「あ、ごめんなさい!まるんちゃん」

 「ごめんなさい!」

 「あははははははっ」

 

 夢中になって食べていた二人によって、あっという間にクッキー缶は空になっていた。

 




 長々と休みましたが、とりあえず復帰です。
 因みに11話も加筆修正したので少し読みやすくなっているんじゃないかな?と思います。
 あと、11話のあとがきにも話に出てくるちょっとした設定を書いておいたのでお時間がある方はどうぞ。


 クッキー缶って子供のころ、本当に宝石箱みたいに思えませんでした?

 さて、ユーリアとエルマですがこの野盗エピソードで出番は終わりではなく、この後も出てくると思います。
 いや、確実に出てきます、まるんのお友達ですからw

 まぁそれ以外の理由でもこの子達はこのSSに絡んで来ますが、それはまた後の話。

 いずれこのSSでもオーバーロードのキャラ(ナザリックのメンバー以外)が絡んでくるのですが、その時ももしかしたら絡むかも。
 とりあえず、今のところ名前が出てきたキャラは、後々何かしら物語にかかわってくると思います。

 これ以降の話の中には名前が出てもそのエピソードだけのキャラもいますが、今のところはまだ序盤なので。

 まぁ、他のキャラはともかく、この二人は幕間エピソードでも出てきそうだから頻繁に出て来るキャラになるかもしれないですけどね。
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