ボッチプレイヤーの冒険 ~最強みたいだけど、意味無いよなぁ~   作:杉田モアイ

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136 ダメ出し

 

 

 イーノックカウに出店する二店の概要が決まってからは、とても忙しい日々が続いた。

 資材とか人の手配なんかはギャリソンに丸投げしておけば大丈夫なんて思っていたんだけど、実際は書類の確認をしたり許可を出したりとやることが満載だったのよね。

 

 

 

「ねぇメルヴァ。レストランの従業員だけど、指導員として誰を送り出せばいいと思う?」

 

 うちの城は職人とかメイドとかは多いからその手のことに対する指導員には困らないと思うけど、レストランとなるとやっぱり勝手が違うと思うのよね。

 だから私はメルヴァに相談をしたんだけど、私からこの話を聞いたメルヴァは一瞬ぽかんとして、

 

「アルフィン様、何故私にそのような質問を? 我が城にはその道のスペシャリストがいるのですから、悩む必要はないでしょう」

 

 なんて言葉を返してきたのよ。

 スペシャリスト? えっと、それって誰の事だろう。

 

 私はメルヴァが何を言っているのかまったく解らず、小首をかしげて彼女を見つめたんだ。

 そしたら、

 

 はぁ~。

 

 そんな私を見たメルヴァは大きなため息をつき、少し頭を抱えるようなしぐさをした後にこう言ったのよね。

 

「アルフィン様。都市国家イングウェンザーの女王として忙しくお過ごしに成られているうちに、ギルド誓いの金槌のギルドマスターとして送った日々をお忘れになられたのですか?」

 

「誓いの金槌の日々・・・って、ああそうか!」

 

「はい。我が城にはアルフィン様が接客業務のスペシャリストとしてあれと創造された者が、地上階層統括&コンセプトパーティーホール責任者権店長、セルニア・シーズン・ミラーがおります。彼女以上にこの任が相応しいものなど考えられませんわ」

 

 ああ、そう言えばそうだった。

 元々セルニアはコンセプトレストランの統括兼店長として生み出したんだから,確かにその道のスペシャリストよね。

 

 この頃はずっと私がパーティーや貴族と会う時の身の回りを任せてばかりだったから、すっかり忘れていたわ。

 でもそうね、店長以上の適任者はいないと言われれば、まさにその通りだろう。

 

「そう言えばそうよね。ありがとう、メルヴァ」

 

 私はその事を思い出させてくれたメルヴァにお礼の言葉を送り、その場でメッセージの魔法を発動させる。

 

「セルニア、聞こえる?」

 

「はい、アルフィン様。どうかしました?」

 

 相手は当然セルニア。

 今まで何をやっていたかは解らないけど、私が声をかけると彼女はすぐにいつもの調子で答えてくれた。

 

「今から私の執務室まで来る事ができる? ちょっと話があるんだけど」

 

「解りました、すぐ行きます」

 

 このように彼女からは色よい返事がもらえたので私は上機嫌でメッセージを切ったんだけど、その様子を見ていたメルヴァはその様子が気に入らなかったみたいなのよね。

 

「アルフィン様。何度言えば解っていただけるのでしょうか? あなた様はこの城の主として、都市国家イングウェンザーの女王して、私たちにはただご命令していただければよろしいのです」

 

「へっ? 今、ちゃんと命令したでしょ? 来てって」

 

 変な事言うなぁって思いながら私はメルヴァにそう返したんだけど、それを聞いた彼女は何故解ってもらえないんですか? とでも言いたそうな顔をする。

 

「先ほどのメッセージでアルフィン様は、セルニアさんに今ここに来る事ができるかとお尋ねになられました。これが問題だと言っているのです」

 

「えっ! そんな事を言ってたの?」

 

「そんな事ではありません。アルフィン様が大変御優しいのは解っておりますが、少しは今のお立場を考えて発言していただかないと。下の者に伺いを立てる王などおりません。少し前ならともかく、今やこの世界の皇帝とも席を共にされる事もあるのですから、とっさにそのような態度が出てしまわぬよう、日ごろから気を付けておきませんと」

 

 う~ん、言っている事は解らないでも無いけど、身内だけの時までそんな堅苦しい事を言われてもなぁ。

 確かに気をつけなきゃとは私も思うけど、普段からそんなに気を張ってたら疲れちゃうじゃない。

 

「確かにそうかもしれないけど、私が皇帝陛下と謁見する時はメルヴァかギャリソンがいつも傍らにいてくれるんでしょ? なら私が何か失敗をしそうになったら二人が助けてくれるはずだから、そこまで堅苦しく考えなくてもいいと思うんだけどなぁ」

 

「いえ、ですが・・・」

 

「あら、メルヴァは私を助けてくれないの?」

 

「いえ、けしてそんな事はありません!」

 

「ならいいじゃない。頼りにしてるわよ」

 

「はぁ。」

 

 と言う訳で何とか口八丁手八丁でメルヴァを丸め込み、彼女を黙らせることに成功した。

 大体さぁ、アルフィンとしてはそうだろうけど、他の子に入ってる時はフリーダムだったら結局は同じ事だもん、だからそこまでする必要はないって思うのよね。

 もしやるのなら自キャラ全員がそうしなきゃいけないって事になるけど、まるんやあいしゃがそんな事をできるとは思えないからなぁ。

 

 コンコンコンコン。

 

 そんな時、執務室のドアからノックの音が聞こえてきた。

 

「どうぞ」

 

「失礼します。セルニア様が到着なさいました」

 

 ノックの音を受けて私がそう返事をすると扉が開かれ、部屋付きのメイドの案内でセルニアが入ってきた。

 実はこれもつい最近、メルヴァの発案で始まったのよね。

 

 メイドだろうが統括者だろうが私が作ったNPCはみんな同格だから今まではこんなこと、イングウェンザー城ではやってなかったんだけど、ボウドアの館に続いてイーノックカウの大使館やアンテナショップがある館、それにエントの村にまで新たな館を創造する事になったと言う事で、出向したメイドたちが戸惑わないようにと私の執務室だけはこのシステムを採用したんだってさ。

 

「ありがとうございます」

 

「いえいえ」

 

 ただ初めたばかりと言う事で城の外で人と接する事があまりないセルニアなんかはまだこのやり方になれていないらしく、ドアを開けて案内してくれたメイドに頭を下げてお礼を言ってたりするんだけどね。

 その姿がなんとも可愛らしくて、私はちょっとだけほっこりとする。

 流石我がイングウェンザー城の癒し担当だ。

 

 

 扉前にいるメイドとのやり取りを終えた後、セルニアが小走りで私のところまでやって来た。

 それについてメルヴァは何も言わないんだけど、あれはいいんだろうか?

 

「アルフィン様。何か御用事ですか?」

 

「ええ。あなたにちょっと頼みたい事があってね」

 

 そんな事を考えていると、セルニアが私に話しかけてきたので、頭を切り替える。

 

「イーノックカウに今度店を出す事は知ってるわよね。あなたにそこの従業員の指導を頼みたいのよ」

 

「指導ですか? いいですけど、どのような指導をすればいいですか? 私がやるって事はコンセプトレストランの時のように何か物語のキャラクターの扮しての接客? それともやっぱり舞台での歌やダンス、それに演技の指導でしょうか?」

 

 ああ、そう言えばセルニアに頼んだら、こう考えるのが普通よねぇ。

 だって誓いの金槌のコンセプトレストランはそう言う店だったんですもの。

 でも今回はそう言う訳ではないから、この考えだけは正しておかないとね。

 

「いいえ、今回は普通のレストランよ。・・・あれ、ちょっと普通じゃないのかな? いやでもまぁ、接客に関しては普通のレストランでいいのかなぁ」

 

「???」

 

 私自身がよく解ってないのにその話を聞いていたセルニアに解るはずも無く、彼女は小首をかしげながら頭いっぱいにハテナマークを浮かべている。

 そして彼女なりにこの状況は不味いと思ったんだろうね、セルニアは私にそのレストランの概要は説明して欲しいって言ってきたんだ。

 

 

 言われて見れば当たり前で、それを説明しないで指導を頼んでも何をしたらいいか解らないよね。

 と言う訳でセルニアにレストランのコンセプトを話して店の間取りを描いた図面とかを見てもらったの。

 

「アルフィン様、これじゃダメですよぉ」

 

「えっ、なにが?」

 

 そしたらなんと、セルニアからダメ出しを貰っちゃったのよ。

 でも何が悪いんだろう? 結構時間をかけて作った案だし、城に戻ってからも図面を引きながら問題がありそうな所を少しずつ修正したんだけど。

 そう思った私は、セルニアにそのままぶつけてみた所、こんな答えが帰って来た。

 

「この店ってロクシー様からの提案で作られたんですよね? なら普通のお客様とは別に、貴族の方が来ても警備上問題がないように別の入り口とそこに繋がる個室を作らないと」

 

「ああそっか」

 

 そう言えばそうよね。

 私は貴族相手のお店の設計なんてした事が無かったから、つい普通のレストランみたいなつもりで間取りを考えていたのよ。

 個室にしても、必要な時はクリスタルガラスで仕切られただけの二階席を使ってもらえばいいなんて考えてたんですもの、確かにそれでは警備上問題があるわよね。

 だってそれでは一階席から魔法で攻撃されたら防げないし、なによりその二階に上がるには普通の入り口から入って店内の階段を上ってもらう必要があるんだから。

 

「後ですねぇ、全部のライブキッチンをクリスタルガラスで囲うのもどうかとも思いますよ?」

 

「えっ、でもフランベに慣れていない人ばかりなんだから、その方がいいんじゃないの?」

 

 そして続けて出たセルニアのダメ出しに、私はちょと困惑する。

 だってこれはロクシー様から出た意見なんですもの。

 でもセルニアとしてはちゃんとした理由があってのダメ出しだったのよね。

 

「はい。初めてのお客様にはクリスタルガラスで遮られていると言う安心感は必要だと思います。でも二度目以降のお客様はどうでしょうか? 目の前で上がる炎の熱と立ち上る香りと言う演出を全て捨て去ってしまうのは、やっぱり私には愚作だとしか思えないんですよね」

 

「そっか。そう言えば確かに繰り返し来店されるお客様相手なら、クリスタルガラスは無い方がいいのかも」

 

「はい。ですから店の間取り自体を大きく変えて、四隅にクリスタルガラスで仕切られたカウンター席の半円形ライブキッチンを置き、そのクリスタルガラスはいつでも撤去できるようにしておくのがいいと思います。そうすれば後々仕切りを作る事によって、クリスタルガラスがある場所とない場所の二種類を置く事ができますから」

 

「なるほど。あっでも待って、そうなると店の真ん中の空間が開いてしまうんじゃないかしら?」

 

「はい。ですからそこには円形のバーカウンターを置いて、お酒の注文はそこからお出しするのがいいと思います。ライブキッチンはどうしても温度が高くなるので、お酒の事を考えると別の場所に纏めてしまった方がいいですからね。それに後々クリスタルガラスを撤去するのならライブキッチンから直接お料理をお出しできます。そうなれば料理をキッチンから運ぶ給仕も減らせますから、初めからお酒を給仕する者と分けておいたほうがいいと思うんですよ」

 

 ・・・なんと言うかなぁ、初めからセルニアに相談してから間取りを決めればよかったよ。

 

 この後もどんどん出てくるセルニアからのダメ出し。

 外観や入り口の場所なんかは何も言われずにすんだけど結局私が最初に作った一階席の原案は殆ど残らず、それどころか危うく二階のバルコニー席まで個室を作らないといけないからって却下されそうになったのよね。

 でもそれだけはアンテナショップとの統合性を持たせなきゃいけないからって、なんとか死守。

 

「そうですね。それならいっそ3階建てにして個室はそこに作る事にしましょう」

 

 その結果レストランはなんと本館より高い3階建てにしたらどうかなんて、セルニアは言い出したのよね。

 う~ん、でもそれは流石に問題があるんじゃない?

 

「えっ? でも個室は貴族用として作るのでしょう? なら3階まで上がってもらうのは大変じゃないかしら?」

 

「階段ならそうでしょうね。だから魔道具で運んでしまいましょう」

 

 魔道具で? でもさぁ、このレストランにそんなこの世界に無い物をポンポンと投入していいのかしら?

 そう思ってセルニアにぶつけてみたんだけど、

 

「アルフィン様は前に回転の魔道具を見つけてこられましたよね。ならそれを見て更に発展させたと言えば2~3人乗りのケーブルカーくらいなら作っても問題ないんじゃないですか? 錘を使えばば力不足は補えるし、そもそも魔道具の製作技術はイングウェンザーの方が優れているってもう伝わってるんですから」

 

 って、あっさりと返されてしまったのよね。

 と言う訳でこの世界では多分どこにも無いであろうケーブルカーがレストランに設置される事になってしまった。

 

 クリスタルガラスといい、ケーブルカーといい、本当に大丈夫なのかしら?

 

 





 さて、セルニアに相談したらダメ出しを喰らってしまいましたが、実はこの後別の人からもダメ出しを喰らってます。
 それはイングウェンザー城の料理長。
 お店のデザインはアルフィンも経験した事があるんですけど、キッチンのデザインなんてした事がないですからね。
 専門家に見せたら問題点がどんどん出てくるって言うことをセルニアに相談して知ったアルフィンは、この後料理長も呼んで図面を見てもらったところ、同じ様に山のようなダメ出しを喰らったと言うわけです。

 何事も使う人に聴いてみないと解らないって言うお話でした。
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