ボッチプレイヤーの冒険 ~最強みたいだけど、意味無いよなぁ~   作:杉田モアイ

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15 それはないよ

 「あはははっ、いやぁ~よかったよかった。意固地になって村人が殺されたらどうしようかと思ったよ」

 「なっ!」

 

 そんな訳はない、そんな訳はないとは思っていたのだが。

 

 「くっ、だまされた」

 

 野盗のボス、エルシモは思う、それが正義の側がやることかと。

 

 でも、だまされても仕方がないだろう。

 やつが言っていることに嘘が見出せなかったのだから。

 

 あらかじめ村の状況を観察していないければわからなかったであろう、我々が村人を殺すのをためらっていた事。

 自分たちがいないと思っていた子供が現れてすぐに駆けつけた事。

 

 もしかしたら、実際村を観察していたのかもしれない。

 見捨てるつもりだったのも本当だったのかもしれない。

 

 しかし今の姿を見る限り、本当に見捨てるつもりだったとしても、誰も我々が殺さないことを確信したから見捨てようと思ったのではないか?

 そして、本当に見捨てるつもりだったからこそ、このハッタリが見抜かれないと確信していたのではないか?

 

 そして誰かを殺したら安心してこちらを殺せるという言葉。

 明らかにこちらの誰よりも強いあの女が振るう、白銀に輝く刀身が我々の頭上に振り下ろされる恐怖。

 

 確かにハッタリかも知れない、いやハッタリだろう。

 だが、その恐怖を前に誰がハッタリだと決め付ける事とができるだろうか?

 

 結局、もし解っていたとしてもあの女の思惑通りに動くしかなかったのだ。

 かたくなに村人を人質にし続けていたとしても、相手がこちらを殺してでも助け出すと決めてしまえば、村人ののどを切り裂く間もなく助け出されてしまっていただろう。

 

 いや、先ほどの目で追うことさえできない動きからすると、あの女が本気で助ける気になれば、こちらを殺さないように手を抜いたとしてもすべて助け出されていたかもしれない。

 

 「でも、ホント、なぜ人を殺さないの?まぁどうでもいいけど」

 

 くそっ!余裕だな。

 笑いながら近づいてきやがる。

 

 だが実際、このまま戦ったらあっという間に全滅だ。

 

 「そろそろ行くよぉ~」

 

 あえて意図してやっているのであろう、女の雰囲気が変わった。

 今までの気楽としか見ることのできない表情を引き締め、殺気をこちらにぶつけてくる。

 にもかかわらず、口調はそのままなのがあの女の余裕なのだろう。

 

 その姿に。

 

 「(だめだ、迷っていては手遅れになる)」

 

 そう本能的に感じた瞬間、俺はつい叫んでしまった。

 

 「まっ待て!」

 

 ・・・なんてこった。

 まさか、これほど余裕を持たれていたとはな。

 叫んだ俺が言うのも変な話だが、本当に止まるとは思わなかったぜ。

 

 俺の言葉に興味を持ったのか、その言葉の必死さに哀れみを感じたのか女は足がを止め、こちらに顔を向けた。

 いや、向けてくれた。

 

 ああ、もったいない。

 売れば金貨数千枚になるとまで言われたのに。

 

 しかし、ここで使わなければ宝の持ち腐れだ。

 そして、使うべき時に使わないのは自分の寿命縮める行為だ。

 

 「なに?まだ何かあるの?」

 「ふふふ、確かにお前は強い。ミスリル級の冒険者だと言われても納得するほどだ」

 

 ミスリル級と言われてもピンとこないのか怪訝そうな顔をする女。

 冒険者システムを知らない?まさか、そんなはずはない。

 

 「とぼけても無駄だ。普通に鍛えたものがそれだけの力を得るわけがない。しかし、たとえお前がミスリル級だとしてもこのアイテムで呼び出されるゴーレムには敵うまい!」

 

 金の冒険者のパーティに入っていた頃遺跡で見つけた、見たことがない文字が刻まれた金属製の小さな人形。

 マジックキャスターに鑑定してもらった話では、この人形は強力なマジックアイテムで、どれだけの強さかははっきりしないが、最低でもミスリル級のパーティでなければ太刀打ちできないゴーレムが召還できるそうだ。

 

 そしてやつは一人、たとえミスリル級の力を持っていたとしても一人なら勝つ事はできないはずだ。

 

 「あっ、それって・・・」

 

 ん?あの女、このアイテムの事を知っているのか?

 もしや俺が知らなかっただけで、高位の冒険者の間では結構メジャーなアイテムなのだろうか?

 

 「どうやらこのマジックアイテムを知っているようだな。ならば話は早い、出でよゴーレム!」

 

 鑑定してもらったマジックキャスターに教わったとおり、頭を押し込み地面に軽く放り投げる。

 投じられたそれは地面に到達する事はなく、中空に浮かんた後、目を開けていられないほどのまばゆい光を放って消滅。

 光が収まったその場所に目を向けると。

 

 「おお、凄い!」

 「勝てる、これなら勝てるぞ!」

 

 黒光りする鋼鉄の体、直径30センチはあろう太く強靭な腕、その巨体を支えるたくましい足。

 身長3メートルを超える鉄の巨人、アイアンゴーレムがその姿を現していた。

 

 「まさかこれほどとは・・・」

 

 この威圧感、強く、雄雄しく聳え立つその姿、伝わってくる魔力、確かにこれならミスリル級のパーティ相手でも十分に戦えそうだ。

 その勇姿に勝ちを確信し、女の方に向き直る。

 

 「どうだ、命乞いするのなら今のうちだぞ!」

 

 

 ■

 

 

 「そろそろ行くよぉ~」

 「まっ待て!」

 

 さて、後は仕上げだけだと思い、さっさと終わらせてユーリアちゃんたちと遊ぶぞ!と思ったところに冷や水を浴びせられた。

 

 ん?後は一方的に掃討するだけだと思ったけど、もしかしてまだ何かあるのかな?

 まぁ、たいした物では無いかもしれないけど、もしまだ人質がいましたなんてことだと困るから一応聞いてみるか 。

 

 「なに?まだ何かあるの?」

 「ふふふ、確かにお前は強い。ミスリル級の冒険者だと言われても納得するほどだ」

 

 ミスリル級冒険者?それってこの世界の冒険者のランクか何かかなぁ。

 って事は、この世界にも私たちクラスの強さの冒険者がいるって事か。

 

 「とぼけても無駄だ。普通に鍛えたものがそれだけの力を得るわけがない。しかし、たとえお前がミスリル級だとしてもこのアイテムで呼び出されるゴーレムには敵うまい!」

 

 100レベルの戦士でも勝てないって事はかなり強力なゴーレムだけど、そんなものがマジックアイテムで!?そんな技術までこの世界にはあるの!?なんて思ったら・・・。

 

 野盗のリーダーらしき男が、腰の皮袋からおもむろに鉄でできた人形を取り出す。

 

 「あっ、それって・・・」

 

 野盗のボスが取り出した人形には見覚えがある。

 あれってユグドラシル初期のハズレ課金アイテム、「愚鈍なる鉄巨人の人型」だよね

 たしか、使うと30レベル前後のアイアンゴーレムが出てくるってやつ。

 

 あくまでマスターの記憶の断片だけど、たしかかなりのプレイヤーが当時のレベルキャプ、50レベルに達していたからレベル上げでは使えないし、つれて移動するには移動速度が遅いからボス前ダンジョンの雑魚戦での使い捨てか、当時実装された小規模本拠地や個人の家の門番くらいにしかならなかった。

 

 まぁ、外見はそれほど悪くなく、はじめたばかりのプレイヤーでも使えたからそれなりの需要はあったようだけど、マスターのような初期からのプレイヤーのほとんどからすれば本当にどうしようもないハズレアイテムだ。

 

 「どうやらこのマジックアイテムを知っているようだな。ならば話は早い、出でよゴーレム!」

 

 意気揚々とアイテムを投げる野盗。

 え~っと、もしかしてそのアイテムの強さを間違って知らされてる?

 流石に100レベルのプレイヤーと戦える能力はないんだけど・・・もしかして似ているだけの私の知らないマジックアイテムなの?

 

 まばゆい光に包まれて現れるゴーレム、しかし現れたものは予想に反して強大な力を持ったもの・・・などではなく、残念ながら想像通りの愚鈍そうなアイアンゴーレムだった。

 ・・・だろうね。

 

 「(やっぱりあれかぁ」

 

 現れた姿に、自分の知識が間違っていない事を再確認する。

 でも・・・。

 

 「おお、凄い!」

 「勝てる、これなら勝てるぞ!」

 

 現れたアイアンゴーレムに部下の野盗たちは大興奮だ。

 まぁ、部下の野盗たちからすると、自分たちよりはるかに強いからこの反応はわかるけど、リーダーは愕然としているんじゃないかな?

 出てきたゴーレムが予想に反して弱すぎて。

 

 「まさかこれほどとは・・・」

 

 って、お前もかっ!

 いけない、この人たち、本気でこれで勝てると思っているみたいだよ。

 

 「どうだ、命乞いするのなら今のうちだぞ!」

 

 アイアンゴーレムを背に勝ち誇ったような顔をしてこちらに振り向く野盗のリーダー。

 

 ・・・なんか頭痛くなってきた。

 だけど、実際このアイアンゴーレムが彼らの切り札なのだろう。

 それに悪役が口上を述べているのなら、それに付き合って最後まで聞いてあげるのがヒーローの立場にある私の役目だよね。

 

 マスターから受け継いだオタクの流儀に従ってすぐには手を出さず、すべての口上を聞いてからマナーどおり、苦戦をするようなフリをして倒してあげよう。

 え~っと確かヒーローたるもの、3の力の相手に10の力で勝つのではなく、相手の力を5とか6まで引き上げて7の力で勝つだったかな?

 

 そのほうが盛り上がるというのは私も解る。

 観客は・・・いないけど、ヒーローと悪役の最終決戦は見ている人が楽しんでもらえるような戦いをすべきだとマスターは考えるはずだ。

 

 よし、折角だから思いっきり盛り上がる戦闘を繰り広げて見せよう!

 

 そんな事を考えていた私の眼の端にあるものが映った。

 ものと言うか・・・。

 

 「えっ!?」

 「はははっ!これほどのゴーレムだ。これなら・・・」

 

 バキッ。

 

 「あっ!」

 「お前など軽くひねりつぶし、もう一人のメイドも血祭りに上げてやろう!」

 

 メキッ。

 

 「あ~・・・」

 「そしてこの力を持ってすれば国の兵士さえ恐れるに足らない!」

 

 ゴガガガガガッ。

 

 「(もう、やめてあげて・・・)」

 「いや、高位の冒険者と言えど、このゴーレムに打ち勝つ事などできないはずだ!」

 

 ドガガガガガ。

 

 「もう村など襲う必要もない!キャラバンや町の警備さえ打ち破れる・・・・」

 「ああああああ・・・」

 

 ベキベキベキッ。

 

 「ああ、何だ!うるさいな、今いいところなのに」

 「いっいや、野盗さん、今は振り向かないほうが・・・」

 

 他人事ながら私も思わず汗が噴出してしまう。

 

 グシャッ。

 

 イラつきながら振り向いた野盗のリーダーは、その場で固まってしまった。

 きっと彼は自分の見たものが信じられないだろう。

 

 私としてもあまりの事に呆けてしまいそうな光景なのだから。

 

 「シャイナ様ぁ~これは人間じゃないから大丈夫ですよねぇ~」

 

 野盗のリーダーの視線の先ではセルニアが、顔いっぱいに笑みを浮かべてアイアンゴーレムからもぎ取った鋼鉄の腕をこちらに向かってブンブンと振っていた。

 そう、直径30センチはあろう、強靭なはずのアイアンゴーレムの腕を。

 

 「あのさぁ店長ぉ~、ダメでしょうぉ~」

 「えっ?シャイナ様、何か不手際がございましたか?ご命令とおり、魔法は使用しておりませんが・・・」

 

 そう、先ほど私の目の端に見えたのはトテトテと歩いてくるセルニアの姿。

 

 「そんな・・・うそだろ・・・・」

 

 そして野盗のリーダーが振り向いた瞬間に目の前に広がった光景は、セルニアによって素手でスクラップにされたアイアンゴーレムが崩れ落ち、、頭をかわいらしい靴で踏み潰される光景だった。




 セルニア、ちゃんとシャイナの命令は守っているんですよね。
 魔法も使ってないし、人は殺していない。
 敵の使役したゴーレムがいたからとりあえず倒しました!てな感じなのでしょう。

 野盗は哀れですがw

 因みにシャイナが言っているヒーローと悪役が戦うときの理論ですが、知っている人は知っているでしょうけど、これはヒーローの役者の言葉でもなければ漫画原作者の言葉でもありません。
 レジェンドと言っても過言ではない昭和の顎のしゃくれたプロレスラーの言葉です。(少し変えてはありますが)
 でも、これって場を盛り上げると言う意味では間違いなく正しいですよね。

 さて、シャイナたちと違い、野盗の思考はシリアスです。
 それはそうでしょう、生きるために必死なのですから。
 それに対してお気楽極楽なシャイナの思考との対比を書こうと思ったのですが、成功しているでしょうか?

 もともと各キャラクターの書き分けさえあまりできていないので、成功しているとはとても言えないだろうなぁw

 投稿後、言いまわしがおかしな所を見つけたので修正。
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