ボッチプレイヤーの冒険 ~最強みたいだけど、意味無いよなぁ~   作:杉田モアイ

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番外編 アルフィンと小さな男の子

 

「えっ? 大使館とレストランを調べているらしき男の子がいる?」

 

 帝国内の色々な都市に支店を出す為にしばらくの間帝都に出かけていたんだけど、城に帰る途中で顔見せに寄ったイーノックカウのレストラン.。

 そこで修行の一環で店長代理として働いているティッカ君からそんな報告を受けたんだ。

 

「はい。初めはレストランの付近でよく見かけたらしいのですが、その頃はその男の子の服装から近くの村の子供が話題になっている店を見に来ているものだとばかり思っていたのです。喫茶コーナーの料金は安めに設定してあるとは言え、村にすむ子供が気軽に入れるわけではありませんから、同じように遠巻きに眺めて行く子供はよく見かけるので」

 

「へぇ、そんな子も多く居るのね。そっか、ならそんな子達も気軽に買えるような値段のものを開発して、新たに屋台として出すべきかしら」

 

 つい、その怪しい男の子よりも遠巻きに見る事しかできない子達のほうに気が行ってしまって、こんな事をつぶやいてしまった。

 すると、苦笑しながらも私の意見に頷いてくれるティッカ君。

 

「そうですね。本格的なデザートは無理だとしてもクッキー一枚とかシロップを塗っただけのクレープとかならそんな子達でも気軽に買える値段で提供できますから」

 

 そしてそんな提案までしてくれたのよ。

 うんうん、この子なら帝都に行っても、うまく甘味処の店長を勤めてくれそうね。

 

「そうね。では屋台に出すものはそれくらいの値段設定で開発する事にしましょう。ところで私から逸らしておいて悪いけど、怪しい動きをしていると言う男の子に話を戻しましょう」

 

「はい。先ほども申し上げた通り、初めはこのレストラン周辺をうろうろしている他の子供たちと同じように思っていたのですが、ある時大使館から来られたユミ様がその男の子に目を留め、こう仰られたのです。あの子、大使館の付近でもよく見かける子ね、と」

 

 ユミちゃんがねぇ。

 

 因みにユミちゃんだけど、帝都からファビレッジの村に住民を移送した後は、またこのイーノックカウに赴任してもらっているんだ。

 だって彼女、まるんと一緒に行動していたおかげでこの街の人たちとある程度交流があるし、商業ギルドでも顔が売れてるから新しく人を連れてくるより都合がよかったもの。

 

 と言う訳で、今は大使館の主任駐在員として働いてもらってるんだ。

 ただ、本人は騎士として生み出されたNPCだから、苦労してるみたいだけど。

 

「なるほど、ユミちゃんがそう言うのなら本当に大使館とレストランの両方に出没しているんでしょうね」

 

「はい。ですから我々もそれ以降はその男の子に注意を向けるようになりました。するとこの子供は他の子達と違って店の商品ではなく、店そのものに注意を向けていると解ったのです」

 

 なるほど、それは確かにちょっと怪しいわねぇ。

 でも、男の子ってのが引っかかるなぁ。

 

「ひとつ聞くだけど、その子って幾つくらいの子なの?」

 

「はっきりとは解りませんが10歳前後かと」

 

「えっ、そんなに小さい子なの?」

 

 なるほど、それなら確かに少年ではなく男の子だ。

 

 しかしそうなるとますます解らないわねぇ、何でそんな小さな子が大使館やレストランを探ってるのだろうか?

 

 バハルス帝国はエル=ニクス皇帝陛下のおかげでかなり治安がよくなっているから、イーノックカウのような大きな都市では窃盗団や強盗団のような組織は殆ど存在しないのよね。

 

 そりゃ人が集まる場所なんだからまったく無いとは言わないけど、いくらお金がありそうだと言う情報があったとしてもレストランはともかく他国の大使館を襲おうと考えるほどの大きな組織は無いはずなんだ。

 だからその子が、大使館員やレストランの従業員に怪しまれないよう送り込まれた見張りと言うのは考えづらいだろう。

 

「その男の子の意図が解らないわねぇ。で、その子の身元はまだ解ってないの?」

 

「現在ユミ様がお調べになられているようなんですが、気が付いたのがつい最近なのでまだ判明しておりません。ただ、服装からイーノックカウの住人では無く近くの村の子であろうと言う事で、そちらを中心に調べているようです」

 

 ティッカ君が言うには、街と村とでは着ている服そのものが違うらしいんだ。

 

 殆どの場所に石畳が敷かれ、そうでないところも人々が行き交う為に踏み固められているせいで歩きやすく汚れづらい街の服装と違い、農作業や狩りなどで汚れやすく、枝などに引っ掛けて破れたりする可能性が高い村では多少ごわついても厚手の布地を使った服装をしているそうなんだ。

 

 でも言われて見ればその通りよねぇ。

 ボウドアの村の子達を見てもみんな厚手のズボンで、女の子たちもスカートを穿いている子は一人もいないもの。

 

「なるほど。まぁユミちゃんが動いているのなら、すぐに解るでしょう」

 

「私もそう思います」

 

 こうして私ははじめてその子供の存在を知ったんだ。

 

 

 それから半月ほどたったある日。

 

「アルフィン様。イーノックカウ大使館を任せているユミが、ご報告したいことがあると面会を求めております」

 

「あら、なにかしら」

 

 ギャリソンがユミちゃんから何か報告する事があると聞かされたとき、私の頭の中からはレストランや大使館の周りを探っていると言う男の子の事はすっかり忘れ去られていた。

 

 何せ新しい村を開くと言う作業には私が承認しないといけない事が思ったより多くて、この頃は書類仕事に追われていたんですもの。

 その上、いよいよ帝都に甘味処の第一号店舗を開く日が近づいてきてたから、そっちの準備とかもあったしね。

 

 そんな訳でユミちゃんから、、

 

「件の男の子の身元が判明しました」

 

 と言われても一瞬、何の事か解らなかったのよ。

 でも流石に少し考えたら思い出したわよ、別にボケるような歳でも無いしね。

 

「えっと・・・ああ、レストランや大使館を調べて回っているって言う男の子の事ね。で、どこの誰だったの?」

 

「はい。グランリルと言う村に住む。ルディーンと言う少年のようです」

 

 ユミちゃんの報告によると彼は親に捨てられたのか8歳の時に村近くで保護された子供らしくて、今はカールフェルトと言う狩猟を生業としている夫婦に養子として育てられているんだって。

 

 貧乏だからと言っても奴隷が禁止されているこの周辺国では子供を売るわけにいかず、かと言って口減らししなければ家族全員が飢え死にしてしまうからと、比較的裕福な村近くに子供を捨てていく事は意外とよくあるらしいのよ。

 

 裕福な村の近くにと言う所が、親としては捨てるにしてもちゃんと生きていて欲しいと考えての事なのでしょうね。

 

「しかし、そのような境遇の子は女の子が多いそうで、働き手になる男の子が捨てられる事は殆どないそうです」

 

「まぁそうでしょうね。でも、男の子ばかり居る家ではそんな事もあるんじゃないかしら?」

 

「はい。ですが、この子に関してはもうひとつ不可解な点がありまして」

 

 不可解な点? 子供が捨てられるのはよくある事なのよね? なら一体どんなことが引っかかったんだろう。

 

「その子が何か特別な能力でも持っていたの?」

 

 親が気付いていなかっただけで、実は子供に特別な才能があったとしてもおかしくはない。

 何せ捨てられたのは8歳の頃だと言うし、そんな小さな頃では素質があったとしても自分の専門分野でもなければ気が付く事はまれだろうからね。

 

 ところがユミちゃんが言う不可解な点と言うのは、私のそんな予想をはるかに上回るような内容だったんだ。

 

「はい。その子は8歳の時点ですでに神聖系と魔力系、両方のマジックキャスターとしての能力を身につけていたそうなのです」

 

 はい? って、なによそれ。

 

「そんな子が捨てられるわけ無いじゃない。だってこの世界では素養が無ければ魔法は使えないのよ。それなのに8歳の時点で二つの系統の魔法を使えるなんて天才と言う言葉でさえ生ぬるいほどの才能じゃないの。どこの誰がそんな子を捨てるって言うの?」

 

「はい。だから不可解なのです」

 

 不可解なんてもんじゃない、どちらかと言うと怪しいと言えるような話だろう。

 

 まぁ迷信じみた考えの村があって、そこで二系統の魔法を操るなんて子供が生まれたものだから悪魔付きとでも思われて捨てられたなんて事があったのかもしれないけど・・・いや、流石に魔法が普通にある世界ではそんな事を考える人は居ないか。

 

 それに。

 

「なるほど。8歳で二系統の魔法を操り、我がイングウェンザーの施設に興味を示す、か」

 

 こう考えると、その子供の正体が見えてくるわね。

 多分その子はユグドラシルプレイヤー、それも、もしかすると私を知っている人なのかもしれない。

 と言うのもその子がレストランだけじゃなく、大使館の方も調べているからなんだ。

 

 これがレストランやアンテナショップだけなら、元の世界の果物や料理を振舞う場所ができた事で気になったとしても不思議ではない。

 でもそれなら大使館まで調べようとしているのはおかしいもの。

 

 美食の街であり、その手の情報に敏感なイーノックカウの住人やオープン前から店の存在を知っていた一部の貴族や大商会の人たちはあの店に私たちの国の出資が入っているって事を知っているだろうけど、アンテナショップで売られている産物はカロッサ領の物だと言う触れ込みで売っているし、レストランで振舞われている料理も基本はこの国の食材を使っているから、近隣の村に住むようなオープンした後で店を知った人たちには都市国家イングウェンザーとロクシー様の共同経営だなんて解るはずがない。

 

 ならばどうして大使館に目をつけたのか? それは多分私たちのギルド、誓いの金槌の紋章が国旗として大使館の門に掲げられているからだと思うのよね。

 

 ユグドラシル時代のうちのギルドを知っている人ならあの紋章を知っていてもおかしくは無いもの。

 だから気になって調べていたら、レストランにも私たちが関わっていると言う事にたどり着いて、そちらも調べ始めたと考えれば納得がいくわ。

 

「子供の姿をしたユグドラシルプレイヤーか。解ったわ。引き続き調査を・・・いや、実際にその子に会ったほうが早いかも」

 

「お会いになられるのですか? でも、もしその者に害意があったとしたら危ないのでは」

 

「う~ん、確かにそれはそうなんだけど、もしその子が本当にプレイヤーなんだとして、こちらに害意があるとしたら多分気付かれるような行動はしないと思うのよね。それにどちらかと言うと、気付いて接触してきて欲しいって考えているんじゃないかしら」

 

 プレイヤーだとしたら此方の情報収集能力についてある程度想像がつくと思うのよ。

 だって都市国家と名乗っている以上、単独転移で無い事は解っているだろうからね。

 

 それなのに此方に気付かれるような行動をあえてしていると言うのなら、きっと接触したいんだと思う。

 

 捨てられた子供として生活しているって話だから、その子は単独でこの世界に転移してきて不安だったんじゃないかな? そんな時に見た事がある紋章を見つけたら、その紋章の持ち主に会ってみたいと思うのは当たり前だと思うのよ。

 

「でもまぁ、もしもって事もありえるから、当然私一人では会わないわよ。護衛として持っている最高の装備を身につけたシャイナとまるんについてもらうわ。あの二人が居れば、相手がワールドチャンピオンでもなければそうそう遅れをとる事も無いだろうしね。それに会う場所も大使館の中にしましょう。あそこならもし仲間が居たとしても、乱入はできないもの。それなら安心でしょ?」

 

「はい。それでしたらたとえ相手に害意があったとしても大丈夫ですね」

 

「それじゃあ、その男の子と接触して招待状を渡してきてね。よい返事がもらえるといいのだけれど」

 

 

 それから数日後、ルディーンと言う少年とコンタクトが取れたとユミちゃんから連絡があった。

 

 そして実際に顔を合わせる日時も決まり、その当日の大使館応接間で私とシャイナ、そしてまるんの3人は執事のギャリソンを伴ってそのルディーン君と対面する事になったんだ。

 

 

「ほんとに、本当にあるさんだ! まさかまた会えるなんて」

 

 これが件の少年、ルディーン君の第一声。

 

 挨拶を交わす前に、こんな事を言いながら満面の笑みを浮かべる少年を前に、私は困惑しきりだ。

 だって私、この子にまるで見覚えが無いんですもの。

 

 そう思ってシャイナとまるんの顔を交互に見るも、二人ともはてな顔だ。

 

 まぁ、私が解らないんだからこの二人が解るはずも無いわよね。

 でも目の前の男の子は興奮しきりで、喜びを体全体から発しているんですもの、困ってしまうのも仕方ないわよね。

 

 ところが、次の一言で場の雰囲気が一変する。

 

「あるさん、後ろのギャリソンが普通に動いてるって事はNPCたちもこの世界に来て普通に動くようになったのね。じゃあケイコは? やっぱりあの子も動いてるの? あっ、それに私の蔵書! もしかしてあれもこっちの世界に」

 

「ちょっ、ちょっと待って! もしかしてあなた、カゴメさん?」

 

「そうだけど?」

 

「そうだけどって・・・解るかぁ!」

 

 カゴメさんと言うのはユグドラシル時代に懇意にしていた幾つかの戦闘系ギルドの一つを纏めていたギルドマスターで、キャラ、リアル共に女性のプレイヤー。

 そして我がイングウェンザー城の宝物庫の番人をしている100レベルNPC、ケイコ・タテバヤシのスキルビルドを構築した人物だ。

 

 後、外見も私と一緒にああでも無いこうでも無いと言いながら作っていたのでケイコはうちのNPCにも関わらず、この人の子供と言っても過言では無い存在なのよね。

 

 ただ、フレーバーテキストも彼女に任せたのはちょっと不味かったかも。

 おかげでケイコはオタクな上にちょっと腐ってる女の子としてこの世界に顕現してしまったもの。

 

「いやぁ悪い悪い。目の前にあるさんが居るもんだから、つい昔のつもりで話しちゃったよ。て言うか、こんな口調だったわよね、私って」

 

「と言うと、普段は違うの?」

 

「えっと・・・うん。僕、この世界に来てからなんか性格も変わっちゃったみたいで、普段はこんな感じでしゃべってるんだ。でも、あるさんを前にしたら、つい懐かしくなってちょっとの間、昔に戻っちゃったみたい」

 

 私に問われて頭が冷えたのか、今の自分がいつも話していると言う口調で話し出すカゴメさん。

 

 ユグドラシル時代はちょっとハイテンションな感じのしゃべり方をする人だったのに、ルディーン君はどちらかと言うとおとなしい少年と言った雰囲気の、ゆっくりとしたしゃべり方に変わっていた。

 

「そっか。カゴメさんも私同様、この世界に来て今の体に魂が引っ張られたのね」

 

「魂が引っ張られるか。うまい言い回しだね。でも確かにそうかもしれない。今の自分って、このキャラを作った時にメモ程度に書いたテキストの性格に近くなっているもん」

 

 カゴメさんが言うには、彼女はユグドラシルを引退してギルドメンバーと一緒に他のゲームで遊んでいたらしいんだけど、ユグドラシルがサービス終了すると聞いてキャラを作り直して最終日にログインしたそうなんだ。

 で、その時に作ったのがこのルディーン少年のアバターなんだってさ。

 

「前はゴリゴリの前衛だったから、最後は魔法を使ってみたくってね。で、どうせなら神聖系も魔力系も両方使える賢者のジョブにしたって訳。器用貧乏だけど、最終日だけログインするつもりのキャラだから強さにこだわる必要も無いからね」

 

「確かに」

 

 カゴメさんの言葉に、私は解る解ると笑顔を向ける。

 

「でも意外だなぁ。カゴメさんのアバターは屈強な女戦士だったし、腐ってる方の趣味も耽美系ばかりだったでしょ? それなのに最後は小さな男のこのキャラを作るなんて。もしかしてショタも入ってたとか?」

 

「しまった! これだけは隠し通してたのに」

 

 私の指摘に、つい口調が昔に戻ってしまうカゴメさん。

 

「って事はもしかして、そのキャラ」

 

「うん。元の私から見ると、どストライク」

 

 そう言っておなかを抱えて大笑いするカゴメさん。

 そしてそんな姿に、私も、シャイナも、まるんも、そしてギャリソンまでもが笑顔になる。

 その姿はそれ程楽しそうだったんだ。

 

 

「ところでカゴメさん。今は近くの村で生活しているのよね? 不自由は無いの? なんならうちの城に来てもいいけど」

 

 比較的に裕福な村だとは聞いているけど、それでも所詮はこの世界での基準でだから色々と不便はあるだろう。

 そう思って提案してみたんだけど、カゴメさんは静かに首を横に振った。

 

「ううん。グランリルの村には拾ってくれたお父さんとお母さんが居るし、お兄ちゃんとお姉ちゃんも居るもん。だからお家に帰るよ。でも、誘ってくれてありがとうね、あるさん」

 

「そう。でも何かあったらすぐに言ってね。この大使館に来てくれればすぐに私に伝わるから。あっ、そうだ。それより転移門の鏡をひとつ渡しておこうか。アイテムボックスに入れておけば破損や盗難の心配も無いし。何より城に居るケイコにも会いたいでしょ」

 

「ケイコかぁ。でも、こんなに変わっちゃったし、会っても解んないんじゃないかなぁ」

 

「そうかも知れないけど、あなたはあの子の生みの親の一人でもあるんだから、会って話せばきっとカゴメさんだと解ってくれると思うわ」

 

 そう、NPCたちとその生みの親との絆はとても強いもの。

 実際に会って接し、話し合えばきっと解ってもらえると思うんだ。

 

「それに蔵書もうちの図書館に残ったままだし」

 

「あるさん。それをこのタイミングで言うかな?」

 

 二人して大爆笑。

 そしてしばらく語り合っているうちに、とうとう別れの時が来た。

 

「今度グランリルの村にも顔を出すよ。転移門の鏡を通ればすぐだし、一度行っておけばゲートでいつでも行けるようになるからね」

 

「それはそうだけど、最初は馬車で来てよね。転移門の鏡は普段、アイテムボックスに入れっぱなしにするつもりだから」

 

「あっそっか。解った、ちゃんと馬車で伺う事にするわ。カゴメさんもイングウェンザーに来てよね」

 

「ええ。ケイコにも会いたいし、蔵書も読みたいからちゃんと行くよ。後ね、今の僕はカゴメじゃ無くてルディーン。ルディーン・カールフェルトだから、これからはちゃんとルディーンって呼んでね」

 

「解ったわ、ルディーン君」

 

 こうして再会を約束して彼女、いや彼は帰っていった。

 

「さて、窺うとなったらグランリルの村にも何かお土産が必要よね。ギャリソン、グランリルの村にはどんな支援をしたらいいかを調べておいてね。後、村をどの領主が治めているかも調べておいて頂戴。皇帝陛下の目が光ってるから変なのは居ないと思うけど、発展したとたん人が変わるような人だと困るし」

 

「アルフィン様。グランリルは近くの森で色々な素材となる魔物が獲れるため、帝国の直轄領となっております。ですからロクシー様に文を送ればそれでいいかと私は愚考いたします」

 

 流石ギャリソン、予め調べておいてくれたのね。

 ならさっさとロクシーさんに手紙を書かないと。

 

 予想もしてなかった懐かしい友との再会。

 これから彼女、じゃなかった彼とどんな風に付き合っていこうかと考えると、わくわくが止まらないわね。

 

 

 そしてそれから数日たったある日のイングウェンザー城。

 

「えっと、初めまして・・・って言った方がいいのかな? 僕の名、っ!?」

 

 その日、私はルディーン君と引き合わせるために、ケイコを地上階層にある応接室に呼び出したんだ。

 

 そこで緊張でがちがちになっていたルディーン君が、恐る恐る自己紹介を始めたんだけど、彼の顔を見るなりケイコがいきなり大粒の涙をこぼし始めちゃったもんだから私もルディーン君も大慌て。

 

「ちょっとケイコ、どうしちゃったの?」

 

「もしかして、私と会う事で何か不具合が!?」

 

 この世界に転移する事で意思を持って行動し始めたNPCたち。

 そんな彼らとそこそこ長い間一緒に行動してきたけど、今までは誰もこんな反応を示した事はなかったのよね。

 

 でも、アバターを変えて現れたのはルディーン君が始めてだから、私たちはそれによってケイコに何か異常が起こったのかもしれないって思ったんだけど。

 

「その気配は、カゴメ様・・・ですね。ああ、まさかもう一度お会いできる日が来るとは」

 

 どうやらそれは私たちの杞憂だったみたい。

 

 そっか。

 NPCたちは外見ではなく、その存在を感じ取って私たちに仕えてくれているんだね。

 

 そう言えばユグドラシルでは別の種族に変わる為のアイテムなんてのもあったし、外見が変わったくらいでは認識できなくなるなんてこと、無いのかもしれないわね。

 

 自分より小さくなってしまった創造主に抱きつきながら延々と涙を流し続けるケイコと、その頭を小さな手で優しく撫でているルディーン君を見ながら、私はそんな事を考えていたんだ。

 

 




 番外編でした。

 私が今、小説家になろうで書いている作品を読まれた方はお気付きだと思いますが、あの世界はボッチの世界の地名をそのまま利用しています。
 というのも、元々はルディーン少年はボッチプレイヤーの冒険に登場するはずだったキャラだからなんですよね。

 最初の予定では外伝1でちょっと触れて、外伝2で宝物庫の番人をしているケイコの話を書き、そしてこのルディーン少年が本編に登場するという流れのはずだったのですが、あまりにオーバーロードではないだのオリジナルでやれだのと言われ続けたので、流石にオリジナルのユグドラシルプレイヤーを追加で出すのは断念してお蔵入りとなったわけです。

 なので今回は外伝ではなく、番外編とさせていただきました。

 さて、これでボッチプレイヤーの冒険は終了です。
 3年以上の長い間、お付き合い頂き、ありがとうございました。

 本来ならこの後、総括として活動報告にボッチ全体の後書きを書くつもりだったのですが、今日親戚が着てしまったのでそちらを書く時間が有りません。
 ですので、それはまた明日書きます。

 3年間の締めなので、もし宜しければ、そちらも読んでいただけたら幸いです。

 それでは皆様、今まで本当にありがとうございました。
 また会う日まで、ごきげんよう。
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