ボッチプレイヤーの冒険 ~最強みたいだけど、意味無いよなぁ~   作:杉田モアイ

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8 幕間

 新技術開発開始から3日、サスペンションの方は何とか目処が立ったものの、今ある物の寄せ集め技術のため、簡単に出来るのではと思われていたベアリングの方が製作に苦労していた。

 

 「小さい鉄球は作れるけど、その大きさを均等にするのがこれほど難しいなんて思わなかった」

 「鉄をとかして型に入れてかためるのは?」

 「それだと鋳物になるから強度が足りないんだよね。出来たら剣みたいに鋼で作りたいし」

 

 あやめとあいしゃは毎日頭をひねってるようで。

 

 「もうクリエイトマジックで作っちゃう? それならかんたんだよ」

 「でもそれだと、ベアリングを大量生産しようとしても出来なくなってしまうよ、折角の新技術なのに」

 「そうかぁ」

 

 などと、食事中にまで二人でああでもない、こうでもないとやっている。

 

 「まぁ、ゆっくりやればいいよ、まだ領主の館に行くのに4日あるし」

 「サスペンションは出来てるのだから、馬車の本体部分だけ先に作っておいて、ベアリングは最後に組み込めばいいんでしょ?」

 

 私とシャイナで口を挟むと。

 

 「まぁ、車軸と車輪も出来ているし、完成さえすれば1日で組み込めると思うけど」

 「なら、あせらずゆっくりやりなよ、あ、図書館に行けば何か役に立つ本があるんじゃない?」

 「あっそっか、確かにあそこなら工業技術の進化の歴史本くらいありそうだね」

 

 あやめが図書館と聞いて忘れていたと言う顔をする。そして。

 

 「うん、そうだね」

 

 あいしゃも一緒になってうなずく。

 

 「じゃあ、食事がすんだら二人で行って来なよ」

 「うん、ありがとう」

 「あとで行ってくるねぇ~」

 

 これで少しは進展するかな。

 

 さて、図書館の話が出たのでちょっと説明を。

 

 ユグドラシルと言うゲームはかなり自由度が高く、色々な事ができたんだけどその中に電子書籍や音楽、映像の登録と言うものがある。

 

 今の時代、書籍や映像作品はダウンロードで手に入れるのが主流なんだけど、ユグドラシルでは大手出版社や映像配信会社と提携して、そのサイトで購入したものや著作権が切れたり作者の好意で閲覧フリーになっているものがライブラリーとしてサーバーに登録されていて、ユグドラシルの中でも楽しむ事ができるようになっていた。

 

 そのほかにも音声合成ソフトで台詞や歌を作り、NPCのプログラムに組み込んで歌わせたり、挨拶と連動させてしゃべらせたりする等の遊びもできるようになっていたんだ。

 

 また、買った映像作品等は著作権の関係上、流石に何十人も同時には出来ないけど、少人数でなら集まってアニメを見るなんて事も出来たくらいだから、ログインできる時は常にしていたいと言う層にはかなり評判のいいシステムだ。

 

 そしてそのようなデーターを本の形にして分類し、並べて管理や貸し出しをしたり、シアターで上映をできるようになっている場所が図書館と呼ばれている場所だ。

 

 そんな図書館に収蔵されているうちの蔵書だけど、たぶんユグドラシルでも、これだけの数を登録しているのはあまり居ないんじゃないかなぁ。

 

 図書館と言うだけあってゲーム内で手に入れることが出来るスキル・ジョブ変更の書や特殊な魔法を覚える本、外装データーなどもあって、それだけでかなりの広さを占有しているのだけれど、オタクであった私はそのアイテムブックの書庫に匹敵するほどの・・・とは流石に言えないけど、かなりの数の漫画や小説、デザイン関係や仕事関係の専門書、果ては小説や同人誌の資料にするための普段の生活とはまったく関係ない専門書まで幅広く手に入れて片っ端から図書館に登録してある。

 

 その為自分でほしい本や映像を捜すことができないから、司書長をはじめとする管理専門のNPCやモンスターを複数置いているくらいだ。

 まぁ、広さ自体ドーム球場2個分くらいあるから探す以前に管理魔法で取り寄せてもらわないと、ある場所がわかっていたとしても見るのにかなりの時間が掛かってしまうだろうしね。

 

 当然映像作品もかなりの数をそろえているのだけれど・・・たぶん半分くらいは買っただけで一度も見てないような・・・。

 特典目当てで買ったものも多いからなぁ・・・。

 

 まっまぁ、そんな感じであそこに行けば偏った知識ではあるけど、かなりの事がわかるはずだ。

 

 「ところでマスター」

 「ん?」

 

 シャイナが話しかけてくる。

 あっ前回の話し合いの後でシャイナたちから話があったんだけど、どうも私が入っているキャラの名前で私を呼ぶのは彼女たちもちょっと抵抗があったらしい。

 

 他のNPCたち同様、彼女たちからしても私は創造主であり、自分たちよりも上の存在だからもっと敬意と忠義を持って接したいと。

 ではなぜ今までそうしなかったかと言うと、私が望んでいない事が繋がっている自キャラたちには解っていたからなのだそうな。

 

 でも、やはり今の状態は耐えられないので、他のNPCが居ないところでは「ご主人様」と呼ばせてほしいと言って来たんだけど・・・流石にそれはいやだ。

 まさしくメイド喫茶じゃないか。

 

 アニメなどで傍から見るのは好きだけど、自分が当事者になるととんでもなく照れるから苦手なんだよ、あれ。

 

 それにシャイナから言われるのならまだいいけど、あいしゃやまるんからご主人様なんて言われたら、子供に言わせているみたいでより一層気まずい。

 

 と言うわけで色々話し合った結果、他のNPCが居ないところでだけマスターと呼ぶことに決めたと言うわけ。

 ただ、変わりに口調だけは敬語ではなく、今までと同じ様に気さくな感じで話すようにと無理やり認めさせたけどね。

 

 まぁ、私たちだけの時と言いながらも、3日目ですでに食堂就き一般メイドのような一部のメイドの前でも言い出しているから、いずれ誰の前でもマスターって呼びそうではあるけど。

 

 う~ん、なるべくイングウェンザー城ではアルフィンに入っていたほうがよさそうだなぁ。

 コロコロキャラ変えていると、他のNPCたちが混乱しそうだし。

 

 さて、話を元に戻そう。

 

 「なに?シャイナ」

 「領主の所に行くのにはまだ日にちがあるよね。そこで思ったんだけど、手の空いている私とまるんで近くのもう一つの村を見てこようと思うんだ」

 「確かボウドアの村だっけ?いいね、私も一緒に行こうかな」

 

 確かに4日間、何もしないのはもったいないよね。

 

 「マスターはだめです」

 「えぇ~、なんで?」

 

 ついて行こうとしたらアルフィスに止められてしまった。

 

 「ギャリソンから言われたでしょ。領主のところへは上級貴族として尋ねるって」

 「上級貴族がそんなに色々なところにほいほい出かけるわけないんだから我慢してください」

 

 シャイナとまるんからも同じ様に止められてしまった。

 

 「でも、気探知とかいるかもだし・・・」

 「気探知ほどはっきりとはわからないけど、私でもある程度の強さはわかるから大丈夫」

 

 シャイナにそう言われてしまった。

 確かにシャイナみたいに前衛職特化のキャラクターはレベルがいくつかまでは解らないものの、相手がどの程度なのか、ある程度の強さを見抜く力がある。

 

 「あ、なら、シャイナかまるんに入って・・・」

 「だめです。マスターには新技術開発の指揮を取ってもらうとか、この城のこれからの事を色々と決めてもらうなどの仕事があるんですから」

 「ううっ・・・」

 

 正論である。

 まったく、ぐうの音も出ません。

 

 「解りましたね」

 「はい・・・」

 

 今回は我慢するしかないみたいだね・・・。

 

 「あ、それと店長を連れて行くけどいいよね?」

 「いいけど、どうして?」

 

 この城最強のこの二人なら護衛はいらないだろうし、まるんは未知の魔法を見つけた時のために解読などのスキルを取らせているから地図や、書物を見るとしても困らないだろうに。

 何よりセルニアは接客と魔法戦闘はできるけど、それ以外はからっきし

 戦闘面で必要のない今回のような場面では、はっきり言ってしまえば役立たず、ただの足手まといだ。

 

 「実はメルヴァに前もってこの話をしたら」

 

 そう言うとまるんは指で両目を吊り上げて。

 

 「”護衛もつけずに至高の方々が外に出るなど承諾できません!”なんて言われちゃった」

 

 と、笑いながらメルヴァの物まね?つきで説明してくれた。

 確かにメルヴァなら言いそうだ。

 

 本当は自分が行きたいけど、私とギャリソンは色々と忙しいから頼りないけどセルニアを同行させてほしいと言われたそうな。

 

 「ははは・・・、まぁいいんじゃない。店長も暇だろうし」

 「ありがとう、では3人で行って来るね」

 

 心配な点があるとしたらヒーラーがいないことだけどポーションもあるし、エントの村の様子から考えるとへんな事さえしなければ大きな怪我をする事はないだろうからいいだろう。

 

 「でも、もしかしたら他のプレイヤーがいるかもだから、行動だけは慎重にな」

 「解ってますよ」

 

 シャイナが男前な雰囲気を出してウィンクして笑う。

 性格的に言って、まるんと店長はちょっと・・・いや、かなり心配だけど・・・うん、まぁシャイナがいるから大丈夫だろう。

 

 「はい、任せてください」

 「マスター、私は心配ってどういう意味ですか・・・」

 「あっ、ごめん」

 

 しまった、強く思ったせいか、まるんたちにまで伝わってしまった。

 これ、近くにいたら知識だけじゃなく、思考の共有と言うか、強い感情も伝わってしまうのかな?

 気をつけよう。

 

 「それでは、準備が整い次第、行って来るね」

 「いってらっしゃい」

 

 新たな村かぁ、どんなところだろう?私も行きたかったなぁ。

 




 図書館の設定、この話を書いてすぐにブルーレイ初回限定版の小説で少しだけですが肯定の内容が出たのはちょっとびっくりしました。
 (ブループラネットさんに映像を見せてもらったと言う部分です)

 今まで出た新事実は私のそこまでに書いた内容を否定する事ばかりだったので。
 私の場合、キャラがオールオリジナルなんで嘘設定が多いんですよね。

 次に出る新事実も同じ様に私の設定を肯定するものだったらいいのになぁ。

 さて、今回の話はいつもより少し短いです。
 これは単純な理由で、延ばしようがなかったからです。

 今回の話はどちらかと言うと幕間といった感じなんですよね。
 次からはちょっと話が動くので、今回ちょっと短いのはご容赦ください。

 あ、今回も2話私のHPで先行していますが、もしかしたら後日内容変わるかも。
 まぁ変更するほど内容をいじる時間がないから変わらないとは思いますが、変わったらごめんなさい。
 色々な妄想が頭の中にあるので。

追記

 すみません、確認のため読み直して気付いたのですが、あとがきに書いたうちのHPにアップしている最新話の内容が変わるかもと言う話、間違いです。

 ここにアップする直前まで次の話を書いていたのでそちらと勘違いしました。

 と言うわけで、今の話はここでアップする時もあまり変わらないと思います。
 多様の加筆修正はしますが。
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