ボッチプレイヤーの冒険 ~最強みたいだけど、意味無いよなぁ~ 作:杉田モアイ
9 襲撃
冒険者
名こそ冒険をする者だけど、実際の彼らは町や村、街道周辺に出没するモンスターを退治したり、依頼を受けて近くに住み着いた野党を退治する職業の者たちである。
華やかな職業ではないものの、腕一本で高い地位までのし上がる事が出来、力量次第では名声や大金を手にすることも出来る者たちでもある。
また、あまり才能は無いが運と出会いによって生き残り、生活に困らない程度の日銭を稼ぐ事の出来る域に達した者たちも多い。
そんな冒険者になっても大金も名声も得られない者たちでも時に野盗を倒し、モンスターを退治しては近隣の村や街道を行く旅人から感謝される、ある種やりがいのある職業でもあった。
しかし、ここバハルス帝国では数年前に鮮血帝と呼ばれる新皇帝が即位した事により彼らの生活は一変した。
新皇帝の改革により街道は整備され、国直属の騎士や衛兵によってモンスターや野盗は一掃された。
そして以降も定期的に巡回がなされ、街道の安全がある程度保たれるようになってしまったのだ。
それでも騎士や衛兵より強い白金以上の冒険者や上位の金の冒険者は危険な場所の護衛や強大なモンスターの退治などで仕事はまだあった。
しかし、銀以下となるとそれこそ死活問題ともいえる仕事不足に陥ったのだ。
これが銅や鉄ならまだあきらめて力が必要な仕事に転職も出来たであろうけど、ある程度の収入があった銀以上となるとそうは行かない。
当然すべての冒険者が仕事を失ったわけではなく、銀以下の冒険者の中でもマジックキャスターなら魔法でしか倒せないモンスターが出た際やアンデットを相手にすることが多い墓場の警備、クリエイトマジックによる塩などの生産によって収入を得る事ができたが、それ以外のものでは他の職業についても今までの生活を維持できるほどの収入を得る事はできなかった。
では、銀以下の冒険者たちはどうしたか?
一部のものは王国の冒険者ギルドに移っていったが、そもそも人数が多い銀以下の冒険者は当然王国でも多くの者が所属しているので、移って行っても無名な彼らには割のいい仕事は回ってこない。
下手をすると数は少ないが、たまに出てくる帝国の冒険者ギルドの仕事をこなす方が収入がいいなんて事にもなりかねないのだ。
それに、長年住み慣れた土地と違い、どこがより危険か等の情報も少ないため、本来はこなせていたはずの難易度の依頼でも失敗してしまい、評価を落とすものも少なくなかった。
行くも地獄、戻るも地獄の彼らはどうしたか。
どうしようもなくなった彼らは今まで自分たちが狩る側だった立場、野盗になるしかなかったのである。
ここにエルシモ・アルシ・ポルティモと言う男がいる。
彼自身はそれほど優秀な冒険者ではなかったが、陽気で社交的な彼はチームメンバーに恵まれて金の冒険者まで地位を上げる事ができた。
あくまでチームメンバーに引っ張られたおかげで金の冒険者になれただけで、その地位に見合うだけの実力は無いものの、、金の冒険者には変わりは無い。
本人の能力にかかわらず一度なってしまえば請けられる仕事の幅は増えるのだ。
そして、その中には貴族や商人の護衛等、あまり危険はないのにお金になる割のいい仕事があり、彼はこれからはそのような仕事だけをして楽に生きて行こうと思っていた。
その為、向上心を持って白金を目指すほかのメンバーから離れ、銀の冒険者を募って護衛専門の自分のチームを結成した。
しかし、楽な人生を送るには、彼の運はあまりにも悪かった。
さぁこれからと言うところで鮮血帝の改革に当たってしまったのである。
街道が安全になってしまっては護衛の仕事等ほとんど無くなり、たまに出てきても危険な場所へ行くものばかりで、金の冒険者だけで構成されたチーム以上でしか受ける事ができないような仕事しかなくなってしまったのだ。
それでも本人に金の冒険者たる力があればよかったのだが、所詮チームメンバーに恵まれただけの男では強いモンスターを倒す事もできず、仕事が減った今の冒険者ギルドでは値段は高いのに使えないというレッテルが貼られるのにそれほどの時間は要しなかった。
その為野盗にまで身をやつした彼だったが、基本善人の彼は野盗だとしても人はあまり殺したくない。
しかし、旅の商人等を襲った場合、護衛との戦闘となってしまう。
いくら他のメンバーのおかげでなれたと言っても、仮にも金の冒険者である。
それ相応の強さは持っている彼なら、巡回をしている衛兵や護衛に付く程度の騎士に負けるわけもないのだが、それでも殺さずに無力化するほど力の差があるわけでもない。
そこで彼が選んだのは首都から遠く離れた小さな村を襲うという手段だった。
戦闘経験のない村人相手なら彼やその仲間でも相手を殺さずに無力化できるし、逃げるものは追わなければいい。
抵抗する相手だけを無力化するのなら誰も殺さなくてもいいのである。
そして食料や金品もすべてを奪いつくさなければ、そこに住む村人も飢えて死ぬ事はないだろう。
泥棒の理論ではあるが、彼が考え付いた生きるための方法でもあった。
こうして彼は同じく職にあぶれた鉄以下の冒険者も引き入れ、人を殺さない、世にも珍しい野盗集団を作り上げた。
■
ボウドアの村
ここはバハルス帝国の東のはずれに位置する人口100人程度の小さな村。
産業は農業しかないが、鮮血帝の決めた税率のおかげで、食べていくのも大変と言うほの税を取られないため、真っ当に生活していれば暮らしていくには困る事もなく、周りに強いモンスターも出没しないため、どこかのんびりとした時間が流れる平和な村だ。
ユーリアはこの村に住むごく普通の12歳の女の子。
彼女の毎日は2歳下の妹であるエルマと一緒にお母さんのお手伝いで畑の草むしりをしたり、庭の掃き掃除をしたり、近くの川に洗濯に行ったりして過ぎていく。
まだまだ子供のユーリアにとっては少々大変ではあったけど、優しい両親の元、毎日元気に暮らしていた。
そんなユーリアにとって、今日もいつもと変わらない一日になるはずだった
でも、そんな平和な日常はあるとき、簡単に崩れ去る。
「エルマ、行こっ!」
「うん!お姉ちゃん!」
仲良し姉妹は、今日もいつものように大好きなお母さんのお手伝いで川へ洗濯に向かう。
この村では川の近くに洗濯物を干す場所を作ってあるため、洗ったものをその場で干し、乾いて軽くなったものを取り込んで村に帰ることを出来るようにしているため、洗濯は主に子供の仕事になっていた。
「おはよう!」
「うん、おはよう!」
同じく洗濯に来ている近所の子と元気に挨拶をして洗濯開始。
エルマも小さな手を一生懸命動かして、タオルを一緒に洗ってくれている。
そんな光景を笑顔で見ながら1時間弱、すべての洗濯物を洗い終えた。
「後は干すだけね」
洗濯物から目を上げ、物干しのほうを見たユーリアの目の端にいつもとは何か違うものが映った。
煙だ。
村のほうから煙が上がっている。
今日は野焼きをする予定は無かったはずだし、いらないものを燃やすにはあの煙の量はちょっと多すぎる。
「あれなに?」
「なんだろう?」
周りの子達も煙に気が付いたようで、不安そうな雰囲気が水場に一気に広がっていった。
「お姉ちゃん・・・」
クイっと引っ張られる裾。
目を向けるとエルマが周りの雰囲気を察して心配そうにユーリアを見上げていた。
「大丈夫だよ、エルマ」
妹を安心させるためにそう言ったものの、ユーリアの心の中も不安でいっぱいだ。
とにかく何があったか確かめなくちゃ。
ここで不安がっていても仕方が無い。
「エルマ、一度家に帰ろう」
「うん・・・」
一度村に帰ってみようと決意したユーリアは、エルマの手を引いて村に向かって駆け出した。
村に近づくにつれまわりに漂ってくる何かがこげたような臭い。
そしてかすかに聞こえる喧騒。
「(お母さん!お父さん!)」
大好きな両親の事が心配で、不安でいっぱいになる心を奮い立たせ、ただひたすら走る。
小さなエルマを気遣いながらも、あせる心が足を止めることを許さなかった。
村に入ると、一部の家が燃え、何かに襲われているような喧騒であふれていた。
どう考えても異常事態だ。
そんな中を気丈にも走り続けるユーリアとエルマ。
あの角を曲がればお母さんが待っている家だ!
「やめて!それを持って行かれては、子供たちの明日からの食べるものが!」
そう思ったユーリアの耳に飛び込んできた母の悲痛な叫び声。
「うるせぇ!」
ガンッ!
角を曲がったユーリアとエルマの目に飛び込んできたのは野盗らしき男に蹴り飛ばされ、壁に激突する母親の姿だった。
あわてて駆け寄ると、いつも笑顔を絶やさなかったお母さんが苦しそうな顔をしていた。
頭からは血を流して。
「お母さん、お母さん!」
「ユーリア・・・逃げなさい・・・」
「いやだよ、お母さん、お母さん」
頭が真っ白になって何も考えられない。
目からは後から後から涙があふれてくる。
「あ~~~~~ん!おがぁざ~~ん!」
横ではあまりの事に耐えられなかったのだろう、エルマが声を上げて泣き出していた。
「ふぇっ、おか・・・おかぁ・・さん・・・・ふぇぇぇぇ~~~ん」
お姉ちゃんだからとがんばっていたユーリアも、12歳の女の子だ。
いつまでもこんな状況に耐え続けられるわけも無い。
そんなエルマに釣られて涙腺が決壊し、とうとう泣き出してしまった。
「おっ、お前が素直に渡さないから悪いんだぞ!」
なにやら野盗らしき男が意味不明なことを言い出していたが、もうユーリアの耳には何も入っていなかった。
「お母さんが死んじゃうぅぅ」
「死んじゃやだよぉ~~~、おかぁさぁ~ん」
その時。
バァァァァン!
遠くで何かが爆発したような音が。
そして。
「子供を泣かすなぁぁぁぁぁ!」
ドガッ!
一陣の風とともに現れ、野党を殴り飛ばす白い影。
ユーリアとエルマが涙でかすんだ瞳を向けると・・・。
「子供を泣かすやつは私が絶対に許さない!」
そこには純白の鎧をまとった、褐色の肌のきれいなお姉さんがこぶしを握って立っていた。
ヒーロー登場です。
マシン空間も越えていませんし、バイクも担いでいませんが、子供のピンチには必ずヒーローが現れるものですよねw
さて、何と言うか、私にしては珍しく小説っぽいSSです。
状況説明が少なかったり、出てくるキャラがあまりしゃべっていないのが残念ではあるのですが、私の実力ではこんなものでしょう。
とりあえず次の話に続くような引きになっていますが、私のHPで続きを読まれている方はわかっていると思いますが、次の話ではここまで行きません。
これもまぁ、私の文才とまとめる能力の無さのせいなのでお許しを。
あっ一応、今日うちのHPにアップした分ではこの話のラストまでは進んでいるので、気になる方はそちらをどうぞ。
ではまた次回も私の駄文にお付き合いくださると幸いです。