ボッチプレイヤーの冒険 ~最強みたいだけど、意味無いよなぁ~   作:杉田モアイ

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87 いや、無理です

 

 バハルス帝国皇帝の愛妾であり、実質的妻であるロクシーさんとの会見が始まった。

 最初にヘマをやらかしたけど、このままそれを引きずって話を続けるとろくな事がない。

 と言う訳で、私は相手に主導権を握られる前に自分から切り込む事にした。

 

 

 

 目の前に置かれているカップ、これがお茶会ならまずはホストが一口飲んで毒は入っていませんよと見せ、それからゲストが口をつけるのが本来の流れなんだけど、今回は会見なので目の前のお茶は口を潤したり、会話のきっかけにする小道具でしかない。

 だから私は言葉を発するきっかけとして目の前に置かれたカップを手に取り、口に・・・。

 

 「アルフィン様、しばしお待ちを」

 

 「どうしたの? ギャリソン」

 

 持って行こうとしたところでギャリソンから、穏やかな口調で静止の声をかけられた。

 いけない、いけない、私ったらホントにテンパってるわね、こんな事まで忘れているなんて。

 

 「念のためでございます」

 

 そう言うとギャリソンは懐からモノクルを取り出し、それを使って私の手の中にあるカップを確かめた。

 そして何も入っていない事を確認すると、一礼をして後ろに下がる。

 

 「まぁ! 失礼ですよ、ギャリソン。ロクシー様が私のお茶に何か入れるとでも思っているのですか?」

 

 「アルフィン様、御身は我らにとって大事な御体でございます。例え叱責を受けたとしてもこれが私の役目でございますから」

 

 ギャリソンは慇懃な態度でそう答え、もう一度頭を下げた。

 

 ふぅ、ナイス! ギャリソン。

 予め決められてる流れとは少し違ったけど、とりあえずは予定通りの流れでいけたからよかった。

 あのまま飲んでいたら、その程度の注意も払う事ができない馬鹿と言う印象を持たれてしまう所だったわ。

 

 いやそれどころか貴族としての最低限の事も知らないと思われて、一国の主であると言う所まで疑われてしまったかもしれないもの。

 後で褒めてあげないといけないわね。

 

 さて、そんな私たちのやり取りを見ているロクシーさんなんだけど、なんか感心したような顔をして微笑んでるのよねぇ。

 今のやり取りに何か感心する所、あったっけ?

 主人を救ったギャリソンに感心するのなら解るけど、その視線はなぜか私に向けられているし。

 

 まぁよくは解らないけど、私を見直してくれたみたいだからよしとしよう。

 

 と言う訳で行動再開、先程やろうとした事をもう一度やり直す。

 今度こそ本当にカップに口をつけ、ほぅと息を吐いてからロクシーさんに、にっこりと微笑む。

 

 「ロクシー様、そこにいらっしゃるリュハネン様から聞いたお話からすると、我が都市国家に興味をもたれたご様子。しかし、私からするとどこに興味を持たれたのかがよく解らないのです。一体どのような所に御気を引かれたのでしょうか?」

 

 いや解ってるよ、今までの流れは知ってるから。

 でも、これも話の流れって奴なのよね。

 

 リュハネンさんは宝石が持ち込まれたからだと言っていたけど、私は希少金属のほうが引っかかってるんだと思う。

 だって、宝石なんてお金持ちなら持っていて当たり前の物だけど、希少金属となるとそうはいかないもの。

 本来ならお金があっても手に入らないかもしれない物を子供が持ち込んだと言う事は、それを産出する鉱山がうちの都市国家の領内にあるという事だし、もしかするとその金属で武装した兵士がそろってる可能性もあるって事だから見逃せない話よね。

 

 でもねぇ。

 

 「その事でしたらリュハネン殿から御話が伝わっているのではないですか? 商業ギルドからわたくしの所に宝石が持ち込まれ、そのあまりの見事さにどちらから手に入れたのかと調べさせた所、アルフィン様の国から持ち込まれたと聞かされました。それならば、その産地がどのような所か気になるのは、女なら当然ではないですか?」

 

 そう言ってロクシーさんは笑う。

 

 やっぱりそう言うよねぇ。

 と言うより、そう言うしかないというのが実情だろう。

 

 多分だけど、希少金属の話を聞いてこの人は私たちの都市国家がどこにあるかも調べさせたと思う。

 でも見つけられなかったから、呼び出して情報を掴もうと思ったんじゃないかな?

 特に今この都市にいるのが子供のまるんだし、うまく話を持っていけば内情とかも簡単に解ると考えたに違いないのよ。

 

 それなのに私が来てしまった。

 これは予想していない事態だろうし、だからこそこのような場面を想定した準備はしっかりと出来ていないんじゃないかな? って私は考えている。

 だから、そこに付け込めば何とかここは乗り切れると思うのよね。

 

 「ええ、私もそのように聞いてはいたのですが、まさか帝都ではそれ程珍しくはないであろう小さなルビーだけでロクシー様が直接御会いしたいと考えるとは思いませんでしたし、急な事で私も詳しい話を聞く時間が無かったもので。こちらに持ち込まれた宝石と言うと・・・ギャリソン、まるんはいったい何を持ち込んだの?」

 「はい、アルフィン様。まるん様が御売りになられました宝石は小さめのルビーとエメラルド、後はアレキサンドライトでございます。また、リュハネン様からの御話にありましたとおり、アルフィン様がエントの村で村長に御渡しになられた小さなルビーもカロッサ子爵様経由でこの都市の商業ギルドに持ち込まれたそうでございます」

 

 ギャリソンの言葉を聞いて私はほほに右手を添えて困ったような顔をする。

 

 「そんなに? もう、まるんったら困った物ね。きっとお小遣いが足らないと思ったから売却したのでしょうけど、もう少し控えめにすべきではないかしら?」

 

 そしてそう言ってから一度目を伏せる。

 

 「とは言っても私も同じ失敗をしてしまっているから、まるんばかりを責める事はできないわね。ギャリソン、まるんは宝石の価値をよく知らなかったのでしょ? あの時の私のように」

 

 「はい、そのようでございます。私が御止め出来ればよかったのですが、その暇もなく宝石を並べられてしまわれたので。申し訳ありません」

 

 言ってしまえば三文芝居だけど、此方がこう言ってしまえば宝石を持ち込んだのはまるんの独断で、子供ゆえに価値があまり解らず多めに売ってしまったからこれだけの数がこの都市に持ち込まれたのには他意はないんですよと言う話になる。

 だからロクシーさん側が宝石が目に付いてこの会談を要請したと言うスタンスである以上、これ以上の追求は出来ないって訳。

 

 姑息ではあるけど、一定の効果がある方法だと思わない?

 

 「なるほど、子供ゆえに宝石の価値を知らなかったのですね」

 

 「ええ。私も遠く離れたこの都市でまさかこのような事になっているとは。お騒がせして申し訳なく思いますわ」

 

 とりあえず沈痛な面持ちって奴を作ってこの話を何とか終わらせにかかったんだけど、流石に私の思惑通りには行ってはくれなかった。

 

 「しかし、そんな子供に宝石を持たせるとは、都市国家イングウェンザーと言う所はよほど裕福なのですね」

 

 ああ、そこに突っ込んできたか。

 確かに子供がそんなに宝石を持っているのっておかしいよね。

 

 この話を聞きながら「さて、どう誤魔化すかなぁ」なんて考えていたんだけど、実は本当にとんでもない突っ込みはこの後に待っていたんだ。

 

 「それもただの宝石ではありません。私も初めて目にする程の透明度と鮮やかな赤い色をしたルビー、それもほぼ同じ大きさ、同じ形の物が2個も存在するなんて」

 

 っ!?

 

 これはまるで予想していない展開だ。

 

 二つのほぼ同じ大きさで同じ形のルビー。

 天然石である以上、そんな物が存在するのは常識的に考えたら少しおかしい。

 でもこのルビーはユグドラシル時代に手に入れたものなのだから、元はデーターである以上まったく同じ物なのよね。

 

 「特にこの透明度は少し異常です。何の歪も無い。そう、まるでグラスに注いだロゼワインのように透き通っていますわ。そう思ってもしや偽物ではと考えた私は魔法で鑑定をさせたのですが、しかしその二つとも正真正銘のルビーでした。この事実を知って興味を持たない女が居るとアルフィン様はお考えですか?」

 

 うわぁ、これはだめな奴だ。

 言われて見ればそっちの方がおかしいよね。

 ガラス玉じゃないんだから、まったく濁りのないルビーが存在しているのは、言われてみれば確かにおかしい。

 

 でも仕方がないじゃない、だってゲームに出てくるルビーは赤くて透明な石ってフレイバーテキストに書かれているんだから。

 

 落とされた爆弾に驚愕していた正で少し固まっている私に、ロクシーさんは追い討ちをかけてくる。

 と言うか、とんでもない持論を展開してきた。

 

 「アルフィン様、私はあなた様と御会いするにあたり色々と情報を集めさせていただきました。その中にあった一つの報告と、この二つのルビーを見て私はある結論に達したのです」

 

 そう言うとロクシーさんは目の前のカップを手に取って口に運び、その後楽しそうに微笑んでこう言ったの。

 

 「アルフィン様は屋敷を作ってしまうほどのクリエイトマジックの使い手だそうですね。ならば魔法でお作りになられる事ができるのではないですか? 小さなルビーも”オリハルコンやミスリル銀のような希少金属"も」

 

 うわぁ、とんでもない方に勘違いしてくれたよ、この人。

 

 希少金属の所を特に強調して話すロクシーさん。

 それはそうだよね、そちらの方が大事な内容なのだから。

 でも、できない事をできると勘違いされてしまうなんて。

 それも、もし出来たら軍事的にかなりの脅威になりかねない内容なのよね、これ。

 

 もう、一体どうしたらいいのよ!

 

 まったく想定していなかった言葉に、どうやってそれを否定したものか? いや、そもそも否定した所で信じてはもらえるのだろうか? と心の中で途方に暮れるアルフィンだった。

 




 ロクシー様はかなりしっかりと調べてアルフィンと会っています。
 ただ、そのおかげでちょっとおかしな想像もしているみたいです。
 ある意味ギャグ展開みたいになってますがオーバーロード本編キャラなのでそんな展開ばかりにはならないと思うので、お付き合いください。
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