―――拝啓お父様、お母様へ、
「ふふははははは! この我を喚ぶとは運を使い果たしたな、雑種! だが良いぞ! この世紀末に我を喚んだ事、褒めて遣わす! 人類の裁定者として此度の戦い、及び貴様らの活躍を見てやろう! ふ、ふは、ふははははは―――!」
―――ノリと勢いで召喚してはいけないという事実を改めて理解しました。
『見て解る召喚事故』
ジャンヌ、そこ煩い。
『お、王様だ。処刑しましょう、処刑』
そこ、冷静に仲間を殺す事を考えない。
『あー……めんどくさいなこいつ……』
アルトリア、若干やさぐれてないか。
「さあ、この我に人の世を見せるが良い、雑種!」
超めんどくさい気配。
◆
話は少し遡る。
―――話は実にシンプルに始まる。戦力の補充、増強を行うのであればサーヴァントを召喚すれば良い。聖晶石が大量にあり、そして新宿シェルターでの事故の様なことがまたないとも言えない中、サーヴァントを召喚し、安全を固めるのは当たり前の話だ。というよりも、寧ろ前よりもその事に対する危機を考えるようになった。そしてアサシンのクラスで現界しているシャルル=アンリ・サンソンがアサシンとしての偵察能力に優れていない今、重要なのは”偵察能力を持ち、危機を判断できる”サーヴァントを召喚する事だ。ぶっちゃけてしまえば、火力に関しては足りている。アルトリアの【最果てにて輝ける槍】が宝具ランクA++であって、このランクであれば大抵の宝具と打ち合っても勝利できるし、切り札としては申し分のない破壊力になっている。それに付け加え【魔力放出】や【直感】という優秀な白兵用スキルを保有している。なのでセイバーやライダー等のサーヴァントを召喚する必要性が今はないのだ。
それよりも【単独行動】による情報収集と改正が行えるアーチャーのサーヴァントが欲しい。それが全員で納得した事だった。丁度聖晶石を大量に保有している事実もあり、サーヴァントを召喚する事は半ば決定されていたと言っても良い。故に新宿の仮拠点へと戻って来て数日、最低限の道具を再び調達してきてまともな状態に戻ってから、サーヴァントの召喚は決行される事となった。その際、新しいサーヴァントに誰を召喚するかが激しい議論に発展したのは言うまでもない。
アーチャーを召喚すると言っているのに執拗にマリーを進めてくるドルオタ、
円卓の仲間を召喚してパシらせようとするアルトリア、
そして聖晶石を全ぶっぱして神霊を狙おうとするジャンヌ。
結果的に、その場のノリと勢いで聖晶石の全投入は決定し、アーチャーのクラスであれば大体誰を召喚しようとも、優秀な偵察兵となるのは見えている。その為、アンリ・サンソンの意見を完全に蹴り飛ばし、ある程度アルトリアの意見を採用する事で話は進んだ。
―――と言っても、召喚するサーヴァントは触媒なしでは限定出来ない。
触媒というのは聖晶石の様なアイテムになる。焦げた剣や現存する宝具、遺品、かつてのその持ち主のアイテムだったりするものだ。それらを触媒として消費する事でサーヴァントを狙って召喚する事が出来るのだ。今回に関してはアルトリアとの縁を利用する事で、アルトリアに関係するサーヴァントを召喚する、という方法を取るのだ。触媒召喚程限定的させる事は出来ないが、それでも限定できるだけ、完全なランダムガチャよりはマシな状況だ。それい円卓の者は誰もが戦闘力が高く、そして騎士であるために運用しやすいという点がある。
そういうわけで行った召喚、
「―――ふふははははは! この我を喚ぶとは運を使い果たしたな、雑種! だが良いぞ! この世紀末に我を喚んだ事、褒めて遣わす! 人類の裁定者として此度の戦い、及び貴様らの活躍を見てやろう! ふ、ふは、ふははははは―――!」
召喚されたのは黄金の”女”のサーヴァントだった。
長く伸びる金髪に赤い瞳、その身に纏うのは黄金の鎧だ。上半身を覆う鎧はアルトリアを思い出させるように下乳を思いっきり見せる様になっているが―――此方はアルトリアと違って、インナーを装着して支える様な事はなく、鎧の下のインナーは胸の上半分を隠す様にしか存在していない。黄金の小手とに包まれている両手とは違い、胴体辺りは完全に体を晒しており、そして下半身は黄金のプレートスカートと黄金のレギンスに包まれている。黄金の女帝。そう表現するのが正しい人物であり、その体から感じられる凄まじいまでの王気はアルトリアに匹敵し、勝る程に感じさえするものだ。
【真名看破】で相手のステータスと真名が発覚し、
そうやって理解した。
これ、完全な召喚事故であると。
殺そう、めんどくせぇ、事故ったぁ、なんて言っているサーヴァントどもを無視し、召喚されたばかりの黄金のサーヴァント―――太古にして原初の英霊、英雄王ギルガメッシュへと視線を向ける。えーと、と言葉を置き、
「―――それではギルガメッシュさんの面接を始めたいと思います。あ、いや、冗談です。冗談ですから。ちょっとネタに走っただけだからぁ! そんなガチ睨みしないでよぉ! 英雄王なんでしょ!? 凄い英霊何でしょ!? だったら、こう、もっと王の懐の広さを見せるところなんじゃないですかねぇ!」
「王であるからこそ傲慢と自由が聞くのよ、雑種。通常の聖杯戦争であれば貴様の様な凡夫には召喚されてやらんし、召喚されたところで即刻首を刎ねてやろう。王に対する礼儀を弁えん輩を生かしておくだけ我は優しくはないからな。だが召喚されて解る―――面白い、面白いぞ、今の世は。まさに時は終わりを迎えようと直進している。この世界に未来はない。完全な虚無に世界が閉じようとしている―――故に許そう。貴様のその姿、生き様、そして世界の行く末を我に魅せるが良い」
『こんな事を言っているから友達がいないのだろうな、こいつは』
アルトリアのその言葉にほう、とアーチャー―――ギルガメッシュが声を漏らし、そう言葉を吐いたアルトリアが霊体化を解いて出現する。それを見たギルガメッシュが軽く驚く様な視線を向け、アルトリアは深い、溜息を吐く様な動作を取る。
「すまないなマスター、恐らくこのぼっちが召喚されてしまったのは私の縁だ―――ロリの金髪貧乳な上にツン属性しか愛せない変態だが戦闘力だけならほぼどのサーヴァントとも優位に戦えるだけの変態だ、これから先、長い時間をかけて攻略する事が出来れば間違いなく戦力となるから許してやってくれ」
「槍兵貴様―――いや、待て、貴様には”記録”があるぞ―――あの小娘か! ふ、ふははははは―――! なんだその姿は! ついに成長出来ない体に自信がなくなったか? 小さい体を引きずりながら頑張る貴様の姿はそそるものがあったのだがなぁ! それに比べてなんだ、今の姿は。まるで張合いもなければ下品すぎて言葉もないな。男の誘惑の仕方でも覚えたのか?」
「ほう、言うな英雄王。その”下品な体”とは貴様自身にも言い返せる事なのだがな。なんだ、性別が変わった事で頭まで悪くなったのか貴様? まぁ、元々少女にしか欲情できず求婚して来るような真正の変態だからな、貴様は。そういう性癖も飲み込んでこそ王とか言うのだろうが、少々頭が悪すぎないか貴様? そんなに頭が悪いから貴様には友達が一人しかいないのだろう、納得の理由だな」
アルトリアとギルガメッシュが笑いながらお互いの顔を確認し、
「【
【最
「【神明裁決】」
宝具の真名を呼び、その姿を現した二体のサーヴァントの動きをジャンヌに変態しながら、【神明裁決】で強制的に拘束する。動けなくなったギルガメッシュとアルトリアの姿を見て、頭を抱える。お前らなんでこんなに相性悪いの? 聖晶石全部溶かした結果がこれだと思うと、胃が痛くなってくる。
「えーと……とりあえず聞くけど……お二人とも面識が……?」
「私もそこのロリコンも元は第四次聖杯戦争で戦い、そして第五次聖杯戦争で戦った対戦相手だ。生前に直接の面識はないが、座に記録される程度にはぶつかった、そういう関係だ。加えて言えばその金ピカは基本的に自分以外の王という生き物を認めはしない。基本的にはな」
「当たり前であろう? この我こそが唯一無二の王である故に、我以外は所詮模倣、贋作以外の何物でもないわ」
「性格最悪じゃねーかこいつ」
「マスター、僕的にはさっさと殺したほうが間違いなくいいと思うんですけど」
何時の間にか【死は明日への希望なり】が発動されており、ギルガメッシュが黒い手に捕まれ、ギロチン台にかけられる前段階が完了していた。【真名裁決】の効果でギルガメッシュが拘束されているのは今だけだ、これが解除されればこの女が自由になってしまう訳だが―――このまま殺してガチャ枠開けるというのは、なんか間違ってはいないか? と思わなくもない。それに、
「ギルガメッシュってなんか、そこまで邪悪である様には思えないんだけどなぁ―――」
「正気かマスター。このロリコンボッチの慢心王が悪ではないと?」
「貴様は相当死にたいようだな」
「お前ら喧嘩するの止めろよ! ほんと! マジでそこのドルオタけしかけんぞ!」
視線がアンリ・サンソンへと向けられ、そしてアンリ・サンソンがふ、と小さく笑い声を零す。
「―――もしかしてセイバー枠とアーチャー枠とライダー枠にマリーが入ればトリオ・デ・マリーユニット結成なんではないか……?」
「……ここは一時休戦しないか英雄王」
「流石の我もこれに殺されるのは嫌だな」
最古の英雄でさえドン引きさせる処刑人、お前こそがナンバーワンだ、と心の中で褒めつつ、溜息を吐いて変態を解除し、自分、本来の姿へと戻りながら全員の宝具展開が解除される。先程まではある程度のテンションが、緊張感が空気中にあったのだが、それも完全に霧散してしまった。言い換えれば闘争の雰囲気、そういうものが完全になくなってしまったのだ。もうこの状態からギルガメッシュが戦闘へと引き込む様な事はしない―――と思いたい。
「とりあえず確認させてもらうけど―――ギルガメッシュは戦闘に参加する気も戦う気も一切ない、と見ていいか?」
「興が乗れば手伝わんでもないが、我自身はそこまで貴様の為に戦う理由はないからな。貴様が我がマスターとして相応しい事に足る理由を見せれば従う事も一考してやろう。だが今の貴様はただの凡夫だ。であるならば格不足も良い所だ。それでも我を従えたいと思うのであれば、数をこなせ。凡夫である事を自覚し、その生きざまを我に示せ。その輝きが星へと届かずとも、我が愛でるに相応しいものであれば―――その時はその時だ。我を喚んだのだ。失望させずに足掻け」
そう言ってギルガメッシュは霊体化、これ以上は語る事はない、と黙り込み、姿すら見せなく放った。だがその存在の気配がすぐそばにある事から、決して去ったという訳ではないというのは解る。結局、戦力にもならないサーヴァントがまた増えた形でこの召喚は終了してしまった。聖晶石を全部パスるのは次回から止めようと思いつつも、
「……英雄王って男なんだよな?」
「あぁ。やはり今回の聖杯戦争はどこかおかしい。召喚されるサーヴァントにどこか不備があったり、反映される情報が歪んでいたり、不完全だったり……大聖杯が汚染されているということ以上に何かを感じる」
『マスターの趣味が体の聖杯内を通して反映されていたりして』
『私がこの姿になったのも……』
『我がこの性別で召喚されたことも……』
『僕の脳内で常にマリーの笑顔とヴィヴ・ラ・フランス! が再生されているのも……』
「そこまでにしろよアンリ。ジャンヌも二人を煽る様な事を言うのは止めろよ。マジで止めろよ。」
意外とアルトリアとギルガメッシュ、仲がいいんじゃないかなぁ、なんて事を思いながら溜息を吐く。ギルガメッシュの召喚は間違いなく”失敗”だった。サーヴァントという立場を超越する事の出来る能力、そして実力者である事はそのステータスを確認すれば理解できる。実にめんどくさい。そう思える話だ。しかしそれはそれとして、先に進まなきゃ何もできないのだ。ジャンヌにエールを貰いつつも、
何日も滞在していた新宿の仮拠点に置いてある荷物、集めた物を全て鞄の中に仕舞い込み、そして出立の準備を完了させた。
「さて、そろそろ行くか」
次に向かう場所は決めていた。
他にも新宿の様に避難用シェルターの存在するエリア―――秋葉原だ。
女帝ギル様降臨。やっぱり金髪巨乳は素晴らしい。……ん? サバの金髪巨乳率が高い? そんな馬鹿な……。剣枠にネロちゃまを考えていたなんてことは、そんな事はまさか……? ん……? 金髪巨乳……?
召喚リストを見直さなきゃ(使命感
この時点でギル様は仕掛けとか正体とか大体8割方看破しているので怒ってるように見えて、内心かなり楽しんでいます。