Fate/Grail Seeker   作:てんぞー

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正直な答は、真の友情の印 Ⅲ

 ―――【真名看破】が発動する。

 

 それによって確認する男の名は―――クー・フーリン。有名な魔槍ゲイボルクの使い手であり、ケルト神話の戦士の一人。影の国の女王スカサハの弟子であり、フェルグスの親友であり、そしてケルト神話における最強の戦士。自分でさえ知っている様なビッグネーム、アーサー王に匹敵する超有名人であり、間違いなく大英霊だ。それが真紅の魔槍ゲイボルクを構え、此方を睨んでいる。既に魔術師である事は完全にバレているのだろう。そしてサーヴァントがいる事もバレているのだろう。

 

 ―――【真名看破】を通してクー・フーリンの宝具データを取得する。

 

 ……あ、これあかんやつや。

 

 瞬間的に絶対に殺されると悟り、両手を上げる。幸い、この体はジャンヌのものだ。多少の無茶をしても付いてくるだろう。ただダメージを喰らえば俺も等しくダメージを受ける。だとしたらやる事は簡単だ。両手を上げ、ホールドアップの状態槍を―――聖旗を振るう。聖旗は白いので、丁度白旗を上げている様な風に見える。

 

「はーい、降参しまーす、戦う意思はありませーん、旅人でーす、暴力はんたーい。ほら、白旗上げてるし許そうぜ!」

 

「……」

 

 真剣な表情でランサー・クー・フーリンは此方へと視線を向け、睨み、そして溜息を吐きながら槍を回しながら構えを解く。

 

「戦意がねぇってのは確かだな。……ま、まだ警戒中って所だが問題ねぇだろ。やらかす様な女にも見えねぇしな。とりあえずお前もマスターだよな? ”そういう”気配があるしよ」

 

 クー・フーリンの視線は此方の左腕、令呪が刻まれている腕と、そして背後の気配―――つまりはアルトリア、ギルガメッシュ、そしてアンリ・サンソンへと向けられている。彼の言葉は正しいので、それを証明する様に頷き、そして聖旗を一時的に消す。それを見ていたクー・フーリンがそっか、と呟きながら槍を肩に担ぎ、そして服装を青タイツの衣装からアロハシャツへと変化させる。警戒中とは言ったが、完全に戦闘態勢を体除したようにしか見えない。

 

「いいのか?」

 

「あん? 良いんだよ。俺の勘が嬢ちゃんは悪くはないつってるしな。後ろの御同輩からも特に殺気や敵意も感じねぇしな。っつーことは興味がねぇか、特に何もないって事なんだろ。というわけで、マスターに紹介せにゃあならん。ついてきてもらうぜ」

 

「ういっす」

 

 断る理由が存在しないし、自分以外のマスターが存在するらしいのだ―――だとしたら会っておいて損はないと思う。

 

『ふむ、ランサーか……』

 

『何かと縁のある相手ばかりだな』

 

 アルトリアの言葉はまるでクー・フーリンの事を知っているかの様な反応だ。クー・フーリンに見えない様に軽く首をかしげると、アルトリアが口に言葉を浮かべる。

 

『私とギルガメッシュが第四次、そして第五次で戦ったサーヴァントである事は知っているな? 其方に召喚される前に召喚されていた私はセイバーのクラスとして現界し、そしてランサーのクラスで現れたクー・フーリンと戦いを繰り広げもした。故に記憶ではなく座の記録だが、”懐かしい”という感覚がある……寧ろ貴様の方がそこらへんの気持ちはつよいのではないか、ロリボッチ』

 

『貴様、今罵るのが面倒になって言葉を繋げたなぁ! ……まぁいい。狗とはそこまで交流があったわけではない。特に興味は湧かん』

 

 割とドライ、というか聖杯戦争自体に興味を持っていない、と言った方が正しいのかもしれない。力を持ちすぎた結果、とも言えるが。ともあれ、とりあえずはクー・フーリンの後ろについて歩き、秋葉原の街へと近づいて行く。どうやら魔術的な結界があるらしく、近くにはシャドウサーヴァントや落とし子の気配が一切存在しない。或いは近づいて来るのは全てクー・フーリンが始末してしまっているのかもしれない。それを余裕で行えるだけの能力がこの槍兵には存在している。それでも戦車がないと本気でも何でもないらしいが。

 

 と、そう言えば、

 

「サーヴァント……でいいんだよな?」

 

『マスター、折角姿が可愛いんですから、もっと可愛らしく話しかけましょう』

 

「ん? あぁ、俺はサーヴァントだよ、ランサーのな。こう見えても割と有名な英霊だから、たぶん真名を知れば嬢ちゃんでもビビるんじゃねぇか? まぁ、そういう話がしたい訳じゃねぇんだろうけどな。あんまし腹芸とかは考えなくていいぞ、俺もマスターの奴もそういうのは得意じゃねぇから、というか好きじゃねぇから、好きに言え」

 

「じゃあ俺は結構記憶喪失な感じでアレ、サーヴァントとか割とノリで召喚したんだけど普通にサーヴァントって召喚できるもんなの?」

 

「……悪ぃ、もう一回頼むわ」

 

「記憶喪失で記憶があいまいになっていてわかんないけどサーヴァントって召喚できるもんなの? 割とノリで召喚できるから召喚しちゃったけど」

 

 頭が痛ぇ、と呟きながらクー・フーリンが頭を抱え、それを見て後ろでサーヴァント三人が笑っている。やっぱりお前ら結構仲が良いだろう、こういう時だけ団結しなくてもいいだろ! なんて事を心の中で思いつつ、クー・フーリンの後ろをついて行く。

 

「あー……記憶喪失って話だが、ぶっちゃけ規模はどれぐらいだ」

 

「なんでこんなに荒れてるの? ってレベルで」

 

「よっしゃ、俺の手には負えないな。マスターん所で全部説明すっからそこまで待っていてくれ。その方が落ち着いて話もできるだろ、お互いにな」

 

『悪い人じゃないみたいですね』

 

 そうだな、とジャンヌの言葉に答えつつ、線路を上を歩いて進む。

 

 

                           ◆

 

 

 ―――秋葉原に到着する頃には完全に暗くなっていた。それでも秋葉原は生きている街だった。激安のチェーン店、コンピューターのパーツを売っている店、コンビニ、レストラン、そういう店舗に光が通っており、夜の街なのに明るく周囲を照らしていた。全ての店がそうなっている訳ではない。だが事実として、この秋葉原の街は明るく照らされていた。それは新宿とはかけ離れた光景であり、廃墟の中から再生して行く街を眺める様な、そんな光景だった。正直に言えば、嬉しいものがある。見慣れた光景が孵った来たのだから、当たり前と言ってしまえば当たり前なのだろうが、それでも安心できる風景は良い。

 

 街に入る頃にはクー・フーリンも担いでいた槍を消しているが、最低限の警戒を行っているのは見えている為、特に何かのアクションを見せる事もなく、そのまま案内される様に秋葉原の街の中へと進み、そして光の付いているビルへと連れてこられる。正面、自動扉を抜けて何かに入ると、

 

「おーい、バゼット。戻ってきたぞ。いねぇのか」

 

 クー・フーリンがマスターらしき人物の名を呼ぶと、階段から人の降りてくる気配がする。その方向へと視線を向ければ、スーツ姿の赤髪の女が降りてくるのが見える。彼女は此方へと視線を向けてから、アロハシャツ姿のクー・フーリンへと視線を向ける。

 

「お疲れ様ですランサー、後ろのが―――」

 

「魔術師そしてマスターだ。ってまぁ、大体念話で伝えてあると思うがな」

 

「えぇ、承知しています。えーと、それでは―――」

 

「涯、天白涯だ」

 

「バゼット・フラガ・マクレミッツです。バゼットとお呼びください。それでは色々と混乱がある様なので、話をしましょうか。お互いに把握しておきたい事もあるでしょうし。ランサー、再び警戒をお願いします」

 

 バゼットがそう言うとクー・フーリンが溜息を吐く。

 

「そうそう誰かが来る事はねぇよ……って言いたいが、嬢ちゃんが来たばかりだしんな事も言ってられねぇか」

 

 クー・フーリンが霊体化して姿を消すと、バゼットが奥へと案内してくれる。そこにあるのは応接室の様なもので、テーブルを囲む様に二つのソファが置いてある。そう言えば今日一日歩きっぱなし、戦いっぱなしだったな、なんて事を思いながらソファに座ると、対面側にバゼットが座る。

 

「とりあえずまずは幾つか質問をさせていただきます。ランサーは害がないと判断している様ですが、魔術師であり、マスターである以上は色々とついて回る疑いもあるので―――では所属とここに来た目的をお願いします」

 

「記憶がないので所属も何もわからないし、新宿シェルターが潰れたからこっちに来たんだよ」

 

「……嘘は言ってない様ですね」

 

『魔術ではなく所作や反応から来る確認ですね』

 

 凄い事が出来るんだなぁ、なんて事を思いつつ、

 

「新宿シェルターが潰れたとは、一体どういうことか答えていただけますか」

 

「えーと……寝ている間に何があったか良く解らないんだけど、気付いたら全裸の男と女がゾンビ化みたいな状態になっていたんだよ。殺生院キアラって奴が直前まで関わっていたってのはなんか話の流れで分かったんだけど―――」

 

「―――”魔性菩薩”ですか、成程。彼女であれば関わっただけで破滅させるでしょう寧ろ良く生き残れた、と労うべきでしょうね」

 

 キアラってそんなに酷かったのかよ。やっぱりクソだな、アイツ。そんな事を重い、他にもバゼットが投げかけてくる質問を一つ一つ答えて行く。どこから来たのか、目的は、何を持っているのか、深いプライバシーやサーヴァントに関する情報には一切触れないが、それでも危険がないかどうか、そう言う事を確認する様な質問を一通り行ったところで、バゼットがお疲れ様でした、と言って来る。

 

「一応私の基準で危険がない事を確認しました。暴れないのであればこの街にいる間は普通に滞在する事が出来ますが―――あまりサーヴァントを人前に出す様な事は控えてください。シャドウサーヴァントや汚染英霊と我々のサーヴァントとの違いは分かりますが、それでも被害を受け、過敏に反応する人も多くいます。ですので、そこらへんを意識してくれると助かります」

 

 と、そこでそうでしたね、とバゼットが呟く。

 

「記憶がないから状況が上手く掴めないでしょう、魔術師的な観点から説明させてもらいます。おそらく貴女の協力を得るには説明する方が早いでしょうから」

 

「……はぁ」

 

 後ろへと振り返り、サーヴァント達の視線を確認する―――一人足りない様な気がする。

 

『サーヴァント・ドルオタならグッズショップへ”参考用に確認してきます”と消えて行ったぞ』

 

 止めろよ。というかアサシンじゃなくてドルオタのサーヴァントになってるぞソイツ。

 

 頭が痛くなるのを感じつつも、視線をバゼットへと向けて、

 

「頼む」

 

「ではまず基本的な話から始めさせてもらいます―――まず第一に話を始めるのであれば、聖杯戦争というシステムについて話をしなくてはいけません。聖杯戦争では”小聖杯”と呼ばれる聖杯と、”大聖杯”と呼ばれる二種の聖杯が存在し、冬木市で行われてきた聖杯戦争はこの”大聖杯”が存在する限りは霊脈から魔力を吸い上げ、時間をかけて再度開催される様なシステムになっています。数年前にこれを見つけた第五次聖杯戦争の生存者である遠坂凛、第四次聖杯戦争の生存者であるロード・エルメロイ二世が共同でこの解体に当たりました」

 

 大聖杯の解体が完了すれば聖杯戦争が終了する。

 

「―――ですが二人は聖杯の解体に失敗し、その後の消息を絶ちました。そして、アンリ・マユが間桐桜の体を通し、デミサーヴァントという形で顕現しました。これがこれから起きる地獄の全ての始まりです。アンリ・マユはその生まれた理由を果たそうとする。聖杯というものが悪意的な解釈を行って絶望を撒き散らそうとする」

 

「……その結果が、今、か」

 

「えぇ。アンリ・マユは子とも呼べる怪物を生み、そして取り込んでいる聖杯を通してサーヴァントのコピーを生み出し、破壊します。サーヴァントに対抗できるのはサーヴァントのみ、聖杯の英霊召喚の術式を流用し、改変する事でランサーの様に英霊を召喚する事を可能とはしましたが、聖杯を通して召喚している訳ではないので、やはり全体的な能力が落ちています。ですが、おかげでこうやって防衛するだけの戦力も捻り出せました」

 

「……これだけ聞いていればなんか、スーパーサーヴァント大戦でも初めてまだ押し込めそうな気配がするんだけど」

 

「えぇ、冬木一か所だけならぶっちゃけた話、本気でやれば地図から消せばいいのですから、問題ないでしょう」

 

 だが、

 

「―――今、この世には七つの聖杯が散らばっており、それらが原因世界全体が襲われている様な状況になっています」

 

 バゼットの語った事のスケールに、驚き、口が閉じない。

 

「一つ目の聖杯は冬木市、これはアンリ・マユに汚染されており、霊脈を通して日本を殺しています。二つ目の聖杯はイギリス、ロンドンにあります。これもまた汚染された聖杯であり、円卓の騎士と騎士王が”全員汚染されて現界”されており、フランスに存在する聖杯とその持ち主、”竜の魔女”ジャンヌと戦争を繰り広げています。ローマではロムルスを筆頭として歴代の皇帝や将軍、支配者たちが蘇り、ローマを中心に侵略戦争とローマ時代への回帰が行われています」

 

 えーと、他には何がありましたっけ、と言いながら思い出そうとするバゼットの姿を見て、

 

「まだあるのかよこれ……」

 

「えぇ、悲しい話ですがこのような状況が世界各地、七カ所で同時に行われており、それを中心に地球が悲鳴を上げています。本来であればアラヤか何かが出現しても良さそうなのですが、七つの聖杯が稼働しているせいか、いかなる次元の干渉も跳ね除けているようでして」

 

「もう嫌だこの世界」

 

 バゼットから聞かされた今の世界の事情に、軽く希望が見いだせない。

 

 世紀末とか言うレベルじゃない。

 

 地球、滅亡チョン避けだった。




 バゼットとラニキによる今の世界情勢

・日本:冬木を中心にアンリ・マユで汚染されてる
・イギリス:円卓全員黒化してフランスと戦争中
・フランス:黒ジャンヌがイギリスを皆殺しにしようと戦争中
・ローマ:皇帝たちによってローマ時代へと回帰が実行中

 どうしてこんな事になった!! 頭を空っぽにして読めるTSモノじゃなかったのか! FGOっぽさを入れるなら聖杯回収だよな! カルデアないならレイシフト無理だよな!

 じゃあ聖杯全部同一時間軸で暴れさせればいいよな

 そうやって世界規模の聖杯戦争が始まった。

 きっとバゼットさんが今の時代の魔術や認識、神秘に関するお話をしてくれるに違いない
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