「―――【神明裁決】、汝ヘラクレスの動き、及び防御を禁ずる」
「【最
戦闘開始の動きは一瞬で始まった。
【神明裁決】によって一瞬でヘラクレスが拘束されるが―――それを【神性】と【狂化】でヘラクレスが強引に引き千切りながら動き出す。だが、それでもヘラクレスの初動が完全に死んだ。その瞬間に正面から接近したアルトリアの零距離真名解放された【最果てにて輝ける槍】が炸裂し、ヘラクレスの上半身を消し飛ばしながらその背後の一帯をさえも消し飛ばす。対城の領域にある一撃は命中さえすれば凄まじいダメージと死を巻き起こす。ランサーとして召喚されたアルトリアの象徴とも呼べるべき宝具は十全な魔力を与えられたことに反応し、最大限の力を発揮し、廃墟一帯を完全に更地へと変化させる。
普通のサーヴァントであればこれで即死しただろう。
―――だが大英雄ヘラクレスは違う。
「ふむ……四回……五回は殺せたか? 咄嗟にガードされたが、まぁいい。このまま殺し潰す」
目の前でヘラクレスが欠損した肉体を生やすように再生していた。【
つまり、その防御力を抜きさえすれば、また殺せるという事にある。
「マスター、ランサー、時間稼ぎを頼む。”罪の確認”を開始する。まぁ、目に見えている訳だが……必要な作業だ、時間稼ぎを頼みますよ」
「別に……殺してしまってもいいのだろう? マスター!」
「受け取れ!」
アンリ・サンソンがヘラクレスの姿を確認して、その罪状等の看破を始める。その間に聖旗を―――【我が神はここにありて】を巻いた状態でアルトリアへと投げ渡す。普段は槍としてしか使っていないが、そもそもこれは宝具であり、ランクAはあるのだ。未熟な自分が使えばただの武器だが、アルトリアが使えば、ヘラクレスの殺傷手段が一つ増える結果になる。故にアルトリアに握らせ、そして振るわせる。そこで再生し終わったヘラクレスの口が開く。
「■■■■■■―――!!」
「ゴリ押してくるぞ!」
「把握した」
【啓示】で直感的に得たイメージを言葉として表現し、それを背後からアルトリアに指示する。素早く反応したアルトリアが【最果てにて輝ける槍】と【我が神はここにありて】の二槍流でヘラクレスに襲い掛かる。それに反応し、正面からヘラクレスが黒く染まった石斧を振るいながら攻め込んでくる。アルトリアの肉体とヘラクレスの肉体、どちらが優れているかなんてことは比較しなくても見れば一瞬で解る。ぶつかれば一瞬でアルトリアを紙切れの如く千切る程凶悪な石斧が振るわれ―――正面から受け流すようにアルトリアが耐えた。その動きに発生するのは魔力のジェット噴射、【魔力放出】のスキルだ。ヘラクレスとの間に存在する埋まらない体格と筋力差、それを【魔力放出】による上昇効果でごまかし、そして攻撃を受け流し、カウンターの一撃を叩き込む。
反応するヘラクレスがアルトリアの攻撃を飛び越えるようにアクロバティックに回避しつつ、そのパワーを失う事のない頭上からのダンクを叩き込む。横に回避しながらヘラクレスの動きに魔力を放出しつつアルトリアは追い、押して二槍の宝具でヘラクレスにダメージを発生しようと連撃を繰り出して行く。左手で握る【最果てにて輝ける槍】で繰り出した攻撃を石斧でガードした瞬間に、心臓目掛けて繰り出される【我が神はここにありて】をバーサーカーはバク転を決める事で回避し、その距離をアルトリアは急速に詰める。反応するヘラクレスが足場を踏み抜き、目の前の大地を隆起させる事で視界を阻害し、それを殴り、岩塊を飛ばして来る。
「チ、流石に狂っていてもやるな」
此方へも飛んでくるそれを横へと回避しながら、【啓示】の能力で流れ込んでくる危機のイメージをアルトリアへと指示にして飛ばし、アルトリアが訪れるべき回避を殺す為に動く。二槍という変則的な戦闘スタイルを取りながらも、それでもアルトリアの動きはヘラクレスへと届かんとしている。敏捷や筋力で負けているのは事実だが、それでも【魔力放出】のおかげで何とか同じレベルでの身体能力を発揮している。
「が―――捉えた」
僅かな隙を縫う様に投擲された【我が神はここにありて】がヘラクレスの心臓を貫通し、反対側へと抜ける。そうやって貫通した宝具を此方で呼び寄せて回収しつつ、ヘラクレスの命のストックが一個、また減ったのを確認する。これでとりあえず、即座に放てる宝具効果や武装での殺害は完了した―――まだ半分、ヘラクレスの命が残っている。
蘇生されたヘラクレスは死ぬ前よりも更に猛り、寄り濃密な魔力を体中から発しつつ、一瞬でアルトリアへと接近する。サイドステップで回避に入った動作に此方から鮭とびの術を付与し、上へとアルトリアを飛ばした瞬間、神速の九連撃がアルトリアのいた周囲の空間を粉みじんに砕断した。ノーモーションから放たれた宝具級の破壊力の戦慄しながらも、頭上から大地へと向かい、【最果てにて輝ける槍】の閃光が放たれた。ヘラクレスの背後へと着地したアルトリアが素早く回避し、カウンターの動作でヘラクレスの首に【最果てにて輝ける槍】を突き刺し、
「如何に耐性が増え様が、二連続で対城を喰らえば死ぬだろう? ―――【最
頭のみを集中的に狙い、集束して放たれた螺旋の光がヘラクレスの頭を完全に消し飛ばした。合計三発の真名解放で、ヘラクレスの命を六個、そして此方の宝具を武器として使ってストックを合計で七個削った。回数で言えば既にアルトリアはヘラクレスを三回殺しているのだ。
「当たり前だ、私を誰だと思っている。昔ならいざしらず、今の私の精神性は恐ろしく強いぞ―――はっきり言えば貴様に負ける気がしないな。潤沢な魔力、心の底から信頼できるマスター、そしてドルオタ。負ける理由がない」
「最近僕をオチに使う芸風流行ってませんか」
ヘラクレスは失った頭部を再生させながら更に吠える。それを見て、アルトリアが冷静に呟く。
「ふむ、参ったな。もうロンでは殺せそうにないな。貴様はどうだ、処刑人」
「あぁ、準備が完了したのでそろそろ”終わらせます”ね」
ヘラクレスが吠える。バーサーカーの理性では戦闘に対する本能的行動、そして反復で刻み込まれた動作しか行えない。故に蘇生の終わったヘラクレスは吠えながら直進しようとし、前衛と後衛を交代したアルトリアとアンリ・サンソンの内、アンリ・サンソンを殺す為に接近し、動きを止める。無論、ヘラクレスが自らの意思で足を止めたわけではなく、両手をコートのポケットに入れ、立ち尽くしているアンリ・サンソンの宝具が発動したのだ。闇から手が伸び、それが群衆の悪意と善意を象徴しながらヘラクレスを処刑台へとかける。
「―――大英雄ヘラクレス。貴方は数多くの旅人に勝負を挑んでは殺し、その死骸を飾しましたね? その行いを悪と断じ、処刑を執行します」
ヘラクレスの頭上にギロチンの刃が出現する。
「―――【死
ギロチンが落ち、そしてヘラクレスの首が斬り落とされる。その直後からヘラクレスの再生が始まり、耐性が生み出される。だがそれを気にする事なく、処刑人は無感情に死刑囚へと視線を向ける。
「師であるケイローンを毒矢で殺した事を悪として断じる。処刑執行」
再び処刑の刃が落ちる。即座にヘラクレスが蘇生する。だがそれを気にする事なく、再びアンリ・サンソンはヘラクレスが成した罪を、その悪を告げ、そして新たなギロチンの刃を形成し、死を望む群衆の前で絶対的な殺害権限を発揮する。そもそも、アンリ・マユの汚染によって黒化してしまったヘラクレスはその過去の所業だけではなく、属性自体が悪へと染まっている。故に元々”理由なんかいらない”のだ。
一々粗を突くように罪状を並べているのはシャルル=アンリ・サンソンという男の性格であり、美学である。
だが殺す、という意思はある。
故に罪状を看破する事に時間をかけ、
「―――断罪のギョティーヌからは絶対に逃げられない。生の行きつく先は死であるから。僕はその旅立ちを祝福し、そして祝おう―――【死は明日への希望なり】」
魔力を大量に消費してヘラクレスが命のストックを増やす。が、それを殺すように次の罪状が述べられ、ヘラクレスが殺される。また殺され、そしてそのストックが尽きるまで殺され続ける。生の終焉とは死であり、死を与える役職であるアンリ・サンソンは処刑人である。その存在意義は安らかに、痛みを与える事無く、そして”効率的かつ確実に殺す”事になる。故にギロチンが生み出された。罪人を確実に殺す為に。
アンリ・サンソンの宝具、【死は明日への希望なり】は実にシンプル。
条件を満たした相手の殺害。
アンリ・サンソンの誇りが砕けぬ限りは、処刑を止める事は出来ない。
「僕はしっかりとマリー達まで殺しきったんだ。君程度を殺しきれない訳ないだろ」
その言葉と共にヘラクレスの首が斬り落とされ、そして全ての命を失って消滅し始める。黒い泥となって消滅して行くヘラクレスの姿と共に【死は明日への希望なり】が解除される。処刑人という性質、能力であるからこそ、一度捉えた罪人をアンリ・サンソンは絶対に逃さない。これがジャンヌ・ダルク等の正義の英霊や聖人であれば、”宗教観を含めアンリ・サンソンは宝具を実行できない”という決定的な欠陥を保有している。だがそれを抜きにすれば、一度処刑台へと運んだ相手は絶対に逃さない、最強の処刑人として君臨する。唯一、自分が考えられる限り、アンリ・マユを問答無用で殺し、そして何度再生や蘇生を行おうが殺しきれるのは彼ぐらいだろう。
―――ある意味、冬木汚染聖杯における最強のサーヴァントだと言っても良い。
どんな英霊であれ、”悪”に汚染されている以上は絶対にアンリ・サンソンには勝てないからだ。
息を吐き、戦闘が終了した事に安堵し、秋葉原の方へと視線を向ける。
「秋葉原が心配だけどバゼットなら―――」
そこまで口にしたところで、
【啓示】が危機の到来を告げる。秋葉原で”虹色”の閃光と爆発する魔力が感じられる。爆心地である秋葉原で凄まじい衝撃が発生するのを感知、一瞬で消え去って行くビルの姿に、呆然と眺める。
その姿を、声が笑う。
「―――どうした雑種、忘れたのか? 大聖杯の魔力は”無尽蔵”だぞ」
直後、背後に再び気配を感じる。
道路の奥を歩いてくるように近づいてくるのは黒い甲冑姿の英霊だった。即座に発動する【真名看破】がその正体を暴き、
―――円卓の騎士、ランスロットである事を示していた。
片手に黒く染まる剣を握りつつ、ランスロットはゆっくりと、空間を黒く染めるように、漆黒の魔力を垂れ流しながら汚染していた。
「余ほど我々が目につくらしいな、それ、因縁のある相手を捻り出して消しに来たぞ」
ギルガメッシュの言葉の直後、ランスロットが吠える。
「Aaaaaaarr―――thuuuuuurrrrr―――!!」
「どうやら私を所望の様だな。いいだろう。誰が上なのかこの際、徹底的に叩き込んでやる」
接近して来るランスロットに対してアルトリアが前に立ちはだかる様に出る。それに反応したランスロットが感情と魔力を爆発させ、
「Aaaaaaaar―――」
アルトリアを見た。
正しくはその一部を。
具体的には胸を。
「Not Arthur」
「死ね寝取りクズがぁ―――!!」
棒立ちのランスロットに【最果てにて輝ける槍】の光が叩き込まれる。それを跳躍しながらランスロットが宝具による迎撃を行い、凄まじい破壊と爆裂が周囲に満ちる。その光景を見ていたギルガメッシュが腹を抱えるほどに大爆笑を繰り広げる。
「英雄王貴様ぁ!!」
「良かったではないか! コンプレックスだったのだろう? まるで別人らしいぞ今の貴様は!」
「ランスロットの次は貴様だ英雄王! そしてマスター、ここは私に任せろ! 秋葉原で見たコミックの如く、即落ち2コマを披露してやろう!」
「お前それやっちゃいけない方だよぉ!」
アルトリアにツッコミを入れながらも、彼女の口から微笑が消えないのが見える―――因縁はあるのだろうが、それを一切気にしない、アルトリアの姿がある。【啓示】ではなく、直感的にアルトリアであれば大丈夫だと理解し、彼女に背を向ける。
「バゼット達の援軍に向かうぞ!」
鮭とびの術を使い、即座に跳躍して秋葉原へと戻って行く。
アルトリアに全幅の信頼を置いて。
絶対絶対に処刑するマンシャルル=アンリ・サンソンくん。
悪認定さえ完了すれば完全に死ぬまで罪状並べてひたすら処刑を続けるお仕事。大好きなマリーやルイ16世だって所消したのに大英霊程度殺さない訳がないだろという理論。
アキハバラ <フォトンレイ!
あと貧乳じゃなきゃ王様じゃないらしいです。