【天地乖離す開闢の星】がエルキドゥの宝具とぶつかって地点は次元の断層が崩壊しながら全てを飲み込み、そして神話を再臨させていた。飲み込まれてしまえば絶対に助からない。そういう神話がぶつかり合った結果、その果てに残ったのは―――静寂だった。秋葉原から離れて戦闘を行った為、秋葉原自体への被害は一切存在しない。その代わりに、ギルガメッシュの放った攻撃の後に、大地に残ったのは―――無だった。何も残らない。道路も、家も、草も、廃墟も、埃の一つさえも残さない。原初の地獄。それがぶつかり合った果てに残されたのは綺麗に破壊された世界であり、まるで鋭利なものに抉られたかのように綺麗に一帯が消失していた。そこで、上半身の鎧が吹き飛んでしまったのか、上半身が裸の状態でギルガメッシュは乖離剣エアを握ったまま、動きを止めていた。エルキドゥの姿が見えず、即座に駆けつける様にギルガメッシュの横へと跳び、着地する。
「ギルガメッシュ! ギルガメッシュ!」
声をかけると、それに反応するようにエアを握っていた手を降ろし、それを【王の財宝】の中へと他の宝具と共に収納して行き、胸を強調するように腕を組みながらギルガメッシュが口を開く。
「騒ぐな雑種……見て解ろう、我は無事だ」
そう言って健在である事をギルガメッシュは示し、安堵の息を吐く。と、ここでランスロットと戦っていたアルトリアの方が気になり、アルトリアの片目を借りてそちらの状況を確認してみる。が、戦闘を行っている様子はなく、此方へと向かって来る最中だったようだ。倒せたかはどうかは解らないが、話を聞けば解るだろう。
「しかし……」
改めてギルガメッシュ対エルキドゥで無に帰された範囲を見る。半径数キロという空間が完全に消失している。これで”サーヴァントとして召喚された英霊は劣化している”為、相対的に宝具の威力まで下がっているのだから、凄まじい話だ。これだけの破壊を生み出してもまだ、ギルガメッシュは全盛期の力を発揮できていないのだ―――令呪を六画叩き込んだ結果はあった、と言う事なのだろうか? これだけの力を発揮できるサーヴァントがいると解ると、心強い。だからほっと息を吐き、そしてギルガメッシュにどう声をかけようかと言葉を悩んでいると、
「―――ま、逃がしてしまったのは些か手落ちといった所か。喜べ
「え、ちょ、ちょっと待って! ギルガメッシュ! 英雄王! AUO! おい、ちょ、マジで消えるな! 逃がしたって何!? え、エルキドゥ殺し切れなかったの!? マジで? アレで!? 令呪六画ぶっ込んだのに!? 殺しきれなかったってちょ、待て、シャレにならないって! AUO! 返事をしてくれAUOォ―――!! 嘘だと言えよぉ―――!!」
ギルガメッシュが笑い声を響かせながら姿を消して行く。マジで姿を消して反応すらしなくなった。アレが、エルキドゥが、まだ無事で、その内襲い掛かってくるんだぞ? ギルガメッシュの【天地乖離す開闢の星】でさえ倒しきれなかった怪物が、再び、襲い掛かってくる。考えるだけで青ざめる、そういう内容だった。ぶっちゃけた話、英霊最強候補のギルガメッシュでどうにもならない存在とか、ドルオタみたいな相性即死で一撃死させる以外には殺害方法が存在しない。
そうなってくるとまた、英霊を召喚する以外にどうにかする事が出来ない。だが現状、自分が知る限り、英霊級でどうにかできそうな存在は思いつかない。それこそ”神霊級”であればまた話は違うのだろうが―――やはり火力でごり押ししかないだろうか? となるとセイバーかライダー辺りにインド系の大英雄を召喚し、それで焦土作戦を行う必要があるのかもしれない。まぁ、それも聖晶石を集める必要がある。今の所、一つも聖晶石がない為、召喚は行えない。割と急務な気がしてきたが、どうにかしなくてはならない。
「どうやら私で最後だったようだな」
大跳躍からアルトリアが着地し、合流して来る。その姿にそこまでダメージはない。鎧の一部にかすれたような跡はついているが、血や切り裂かれたような傷は一つも存在していない。
「ランスロットめ、結局最初から本気じゃなかったのか、或いは手綱を握られていたのか、どうも本気で戦わなかったおかげでお互い、流しあうだけで戦いが終わった。まぁ、殺そうと思えばお互い、ただで済むわけがないから助かったわけでもあるが―――それでも去り際に”Not Arthur”はさすがにキレたぞ」
円卓の騎士は芸人か何かか。そんな事を思いつつ、アルトリアを霊体化させる。そしてそのまま、大地に片膝をつくように休息を取る。魔力を消費し過ぎて、体が軽く疲労しているのだ。【天地乖離す開闢の星】が何発か、【死は明日への希望なり】が最低で七発、【最果てにて輝ける槍】が一発、それに加えて【我が神はここにありて】まで使った。正直、聖杯が体に内臓されているからと言って、宝具のぶっぱなし過ぎではないかと思う。しかし、そのおかげで助かったのだからまた、あまり文句を言う事も出来ない。とりあえずは旗槍を大地に突き刺し、それを支え代わりに立ち上がる。
この襲撃を受けて解ったことがある。
―――このサーヴァントの連続襲撃は”俺を殺す”為の刺客だ。
円卓の騎士、ギリシャの大英雄、そして英雄王唯一の友。どれをとっても超一級の英雄であり、刺客として送り込んでくるのであれば、最強クラスの実力の持ち主だ。正直な話、対策や、対応するサーヴァントを保有していなければ、一切勝利する事が不可能とも言えるレベルのサーヴァントだ。今回勝てた事に関しては純粋に運が良かったのが一つ、そしてもう一つはジャンヌの【真名看破】を保有していた事で、即座に相手に対して対応できた、という事実にある。英霊との戦い、聖杯戦争における戦いでは相手の真名を理解するのが最重要というのは決して嘘ではない。
歴史に名を連ねる大英雄であるからこそ、死因や生前の戦闘方法などの情報が色濃く残っているのだ。【真名看破】はそれを手っ取り早く理解する為の方法であり、そうする事によって的確に相手に対する対処方法を組む事が出来るようになるのだ。ヘラクレスの無限処刑然り、エルキドゥに対する【天地乖離す開闢の星】の全力支援然り、生き残るための選択肢を選びやすくして来る。そういう恩恵が相手の真名を看破する事にはある。
おかげで今回は生き残れたが、襲撃されるという事は、
自分が、はっきりと誰かの、敵の、邪魔になっているという事だ。
―――その誰かが間違いなく大聖杯であるのは確かだ。
「……ここにはいられないなぁ」
呟きながら秋葉原に背を向けて歩きだす。もう、秋葉原どころか人がいる場所に留まる事は出来ない。今回で解った、理解してしまった。自分は狙われる立場にあったのだ。それでももっと先へ、冬木へと向かわなくてはならない。【啓示】がそう自分に伝えてくるのだ。自分の道は前にしか存在しないのだ、と。だからそのまま前へと、秋葉原から離れる様に歩き出すと。背後に足音を感じ、振り返る。
「よう、何処へ行くんだ」
魔槍ゲイボルグを肩に乗せたクー・フーリンの姿だった。自分がエルキドゥを引っ張り出した後でもまだ戦闘があったらしく、クー・フーリンの体は所々傷がついてボロボロになっているが、それでも戦闘はこのまま行えそうな、そんな気配があった。だからクー・フーリンへと向き直り、軽く頭を下げる。
「今まで本当に世話になった事は感謝してる。でも今回の件で確信した。俺は冬木に行かなきゃ駄目だ。何かが到達を嫌がってる。阻んでる。今回の襲撃はそれだ。たぶん、人目の多い所に来たから、ここにいるってバレちまったんだ。俺がいるから―――なんて事は言わないけど、それでも待ちきれないから先に冬木へ行くよ」
「別に止め様とはしねーよ。それよりほれ、バゼットからのプレゼントだ」
クー・フーリンが何かを投げてくる。それを受け取り、確認する。片手で握る事が出いる大きさのそれは、スマートフォンの様に見える。ちゃんと充電されているが、この時代、スマートフォンなんてほとんど意味のない道具のようにも思えるのだが、
「それを使えばなんか解らんがどんな場所にいても話せるし、魔力で充電する事もできるらしいぞ。カルデアの魔術と科学を複合させた技術を流用しただかなんだか。俺にはようわからんが、便利だって事は解った。とりあえずもってけ。んじゃ、元気でやれよ」
クー・フーリンはそう言うと何かを言うわけでもなく、そのまま立ち尽くす。そんなクー・フーリンへと半眼になって視線を向ければ、クー・フーリンがなんだよ、と視線を返してくる。
「いや、クー・フーリンって結構付き合いがいい奴だよなぁ、って。スカサハとかオイフェ相手にブイブイ言わせてたクセに割といい奴だなぁ、って」
「おう、なんつったってあの頃は生きてたし若かったからな! まぁスカサハのあの病みに関しちゃあ偶に怖くなることも―――っていらねぇことを言ってるんじゃねぇよ!! 今はちょい年取って反省している俺なんだからそこはいいんだよ。いや、まぁ、気に入ったら口説くけどさ」
「フラれそう」
「ストレートに言うなよ!! うるせぇよ! 早く行けよ!」
笑いながらクー・フーリンに手を振りながら背を向け、歩き出し―――鮭とびの術の術で一気に秋葉原から離れる。跳躍の間、空から地上へと落ちる間に、秋葉原へと視線を向け、そして動くことなく見送ってくれているクー・フーリンへと視線を向け、笑みを浮かべてからそのまま、九州へ、冬木へと向かって突き進む。
『マスター、荷物を置き忘れているのを忘れずに』
『……そういえばすっかり忘れてたな』
『あのようなゴミは捨て置け、財は集め、使ってこそだ』
「すいません、旅に必要な道具であってゴミじゃないんですけどアレ」
溜息を吐くが、それでも顔に張り付いた笑みは消えない。この先、どうなるかはわからないが―――それでもこの騒がしさがなくならない限りは、なんとかなりそう。そんな気はするのだ。
ともあれ、
とりあえずクー・フーリンや人の見えない場所に行ったら、元の男の姿にいい加減戻りたい。
エルキドゥ、及びランスロ逃亡成功。ギル様でも殺しそこなったようです。今こそインドを呼ぶ時。
次回は幕間を挟んでドンドン冬木へと。
FGO,薔薇礼装限凸完了……! たぶん近いうちにウチのジャンヌちゃんが装備して、絶対死なない聖女ごっこでもしてくれると思います。