―――炎上汚染都市冬木。
それが冬木市へと与えられた名だった。聖杯解体の失敗から連鎖する様に発生したアンリ・マユの生誕と日本の大規模霊脈汚染から始まる大陸の悪属性化、それは全て冬木という都市を中心に広がっているものであり、冬木はその悪逆性を象徴するかのように”消える事のない炎”で常に燃え続けているのだ。否、正確に表現すると違う。冬木という都市は時代の特異点と化しているのだ。神霊という存在が降臨した結果、冬木市は歪んだ、時代から切り離されてしまった。まるでビデオをリプレイしているかの様に、冬木の死者達は解放される事のない、燃え続ける地獄で死に続ける。そして時が止まった歴史の特異点では永遠に炎は消えず、燃え続けているのだ。地獄。。それは一目見て理解できる地獄。逃げ場のない地獄。死んでしまえば魂まで汚染され、そして冒涜されてしまう地獄だった。
悪神アンリ・マユが住まう、降臨する大地。
それが炎上汚染都市冬木。
九州に位置すると言われる冬木市への道は遠く、そして険しいものだ。普通に九州へと向かおうとするなら、まず絶対に車か、或いは電車、最低限そういう乗り物が欲しくなってくる。少なくとも関東から九州への移動手段が必要になってくる。だがシャドウサーヴァント等の出現でインフラが破壊された今、国内を移動する手段は野生で捕まえる馬か、或いは徒歩、もしくは自転車というものが現実的になっている。だがそれでは移動までに時間がかかりすぎる。冬木に到着するまでは永遠に時間がかかる。その間にまた複数の襲撃を受けでもすれば、それでゲームオーバーになるのが見えている。消耗した令呪は回復する事がないのだから。つまり時間をかければかけるほどピンチになって行くという事実があった。故に早急に冬木へと向かうべく、移動手段が必要になった。
「―――そんなもの飛べばよかろう」
ギルガメッシュのその一言で全てが解決された。
◆
空を飛んでいる。
高速で空を飛翔する多面い使用しているのは飛行機絵はなく―――古代の叡智だ。【
「この我が力を貸すというのだ―――愚か者を滅ぼしに往くぞ。貴様は落ちぬようにしっかりと捕まっていろ雑種」
ギルガメッシュの心変わりは劇的だった。おそらくはエルキドゥというギルガメッシュ唯一の友が敵として召喚されたことに、それを理由にギルガメッシュが慢心を捨てた事にあるのだろう。決して、ギルガメッシュが心を開いたわけでも、此方を認めたわけでもない。指示には従う、が、それでもギルガメッシュは己を曲げようともしないし、助けようともしない。ただ単に、エルキドゥと戦う為、そしてエルキドゥを召喚した者を殺す為だけに、ギルガメッシュは全ての慢心を捨て、本気で戦う事を決めたのだ。この世でおそらくは唯一、ギルガメッシュを本気にさせる事が出来る理由でもあった。この男―――いや、今は女だが、彼女はたとえ、自分の命の危機であろうとも、絶対に本気を出そうとはしない。自分が本気を出す為には理由が必要であり、それを満たさない限りは殺されても出さない。
それが英雄王という存在の傲慢さ。
最古の王にのみ許されたその態度と考え。
それに従う様に【
「すげえ! ギルガメッシュこんな宝具まで持ってたのか! マジすげぇ!」
「ふはははは! そうであろうそうであろう! 讃えるが良い、この英雄王の財宝を! ふむ、なんだ、雑種とはいえ少しは話が分かる奴ではないか。いいだろう、この英雄王のちょっとしたドライビングテクを見せてやろう!」
『私、物凄く嫌な予感がぁ―――』
ジャンヌがそう言葉を放った瞬間、【天翔る王の御座】が逆さまになった。
「ふぉぁっ!?」
『あ』
アンリ・サンソンが足を滑らせて落ちた。
「ドルオタァ―――!!」
「ふはははぁ!」
笑いながら急カーブを放ち、アンリを船体に叩きつける様に回収しつつ、スピンを加え、高速でドリフトを決めながら英雄王ドライブが日本の空に炸裂する。もはや神秘の隠匿なんてことは一切気にせず、通常のドライバーが峠でキメる様に、ギルガメッシュが笑いながら【天翔る王の御座】でテクニックを決めていた。死にそうな表情を浮かべているアンリ・サンソンとは裏腹に、アルトリアは笑いながら立っていた。
『もっと速度は出ないのか英雄王! これならまだドゥンスタリオの方がマシだぞ!』
「ほう、言ったな? ならば見せてやろう、これが速さだ!」
『仲間に殺される……!』
「ヒャッホ―――!」
玉座にしがみつく手に力を込めつつ、更に加速し始める【天翔る王の御座】の姿に大声で叫び、風を感じる。楽しみながら、眼下で変わって行く景色へと視線を向ける。巡る巡る景色を確認する。東京の街並みは既に消え、田舎の風景が一瞬で現れては消え、どんどんと場所は変わって行く。突き進めば進むほど見える場所は変わり、山の上を超えて行く様に飛翔しながら更に日本を横断する様に【天翔る王の御座】が突き進んで行く。やがて、段々と関東圏を抜け、関西圏へと突入し始める。一瞬だけチラリと見える建造物のおかげでどこだかを軽くだが確認できる。アレ、京都や大阪じゃね? なんて事を考えて関西圏を横切れば、
段々と、”冬木の気配”を感じ始める。
冬木の気配とはつまり濃密な”悪”の気配だ。冬木にいるのは強大な悪の神、アンリ・マユ。神話を見てもそれに匹敵するほどの存在は稀であり、そして概念に通ずるサーヴァントである故に、問答無用でその力を世界に浸透させる事が出来る。極悪としか表現できない存在は、そこにいるだけで周囲へと影響を与えるのだ。故に、たとえ関西からでもその存在は感じる事が出来る。そして九州へと近づけば近づく程、その気配と悪意は濃密に空気に乗って伝わってくる。普通の人間であれば発狂する様な空気だが、それをものともしないサーヴァントがここには揃っている。精神への干渉はそのサーヴァントとしての我の強さで跳ね除け、そして【聖人】としての加護が自分を守ってくれている。故に近づきつつある悪意に対しては平気であり、
そのまま臆することなくギルガメッシュが【天翔る王の御座】を前進させる。
関東から関西へ、そして更に九州圏へと入るのはギルガメッシュの宝具をもってすれば、簡単すぎる事だった。
だが九州へと入った瞬間、ギルガメッシュの操作が変わる。直進させていた【天翔る王の御座】を横へとロールさせる様に回避動作に入る。遅れて次の瞬間には【天翔る王の御座】があった空間を閃光が突き抜けていた。視線を背後へと向ければ、ボディコンの様な服装姿の女が翼の生えた白馬の上に乗っており、それが空間を貫いたという事が解る。回避に成功した【天翔る王の御座】を追いかけるように背後から白い閃光となって追いすがってくる。それに反応するように歯を食いしばってジャンヌへと姿を変え、スキルを発動させる。
「―――敵はライダー・メデューサ! ギルガメッシュ船長! 迎撃するのでーす!」
「砲門開けぇ―――い!」
『ノリがいいですね』
『英雄王は割とおだてられると気分良くなって奮発するタイプだからな。コツを掴めばコミュニケーションは難しくはない』
なのにお前、良くぶつかるよな、と思ってはいけない。
それでもおだてられたか気を良くしているのか、ギルガメッシュは上機嫌に笑いながらその背後に【王の財宝】の揺らめきを生み出し―――そして一気に十数の宝具を射出した。高速で中空を駆けて行く宝具の軌跡をライダー・メデューサは白馬、ペガサスの上に乗ったまま素早く飛翔し回避する。だが回避した所で宝具は直角に曲がり、そのままメデューサを追い掛ける。【王の財宝】での射出にそんな機能は存在したか? とは思うが、英雄王の蔵の中は底なしだ、そんな事が出来てもおかしくはないだろう。メデューサは逃れる様に加速し―――そして反転し、閃光となって宝具を体当たりでかき分けながら接近して来る。背後から迫ってくるその姿へと向け、
アルトリアが槍を構えた。
「主砲―――発射ぁ―――!」
「【最果てにて輝ける槍】」
アルトリアから放たれた槍の一撃が背後から接近して来る姿を到達よりも早く貫き、そして滅ぼす。だがそれと同時に【天翔る王の御座】の前方からまるで流星の様な輝きが迫ってくる。【天翔る王の御座】を超える速度で放たれてくる流星の一撃、それを聖旗を前へと突き出す事で、
「―――【我が神はここにありて】!」
無効化する。
「無敵ではないか我が軍は!! フハハハハ!」
更に加速しながら、向かって来る。再び空を切り裂くように流星が煌めく。宝具による遠距離狙撃攻撃だろうか、おそらくはアーチャーの仕業だろうが、これだけでは自分やギルガメッシュでさえ判別は不可能だ。【我が神はここにありて】でそれを正面から無効化しつつ、四度目の無効化に聖旗が少しだけ、前よりも焼けた様な痕を見せ始める。【我が神はここにありて】は使えば使う程宝具が崩壊する。その代わり、今は聖杯と直結している恩恵で時間さえあれば回復させる事もできるのだが―――短い時間の間に連発し過ぎが原因だ。
『空中戦になると役に立たないですね、僕は』
「空中適応できている方がおかしいんだよ……ギルガメッシュ!」
「戯け、解っておるわ!」
【王の財宝】が展開され、それが弾幕となって正面からの流星を防ぐ壁となる。俺を囮に【天翔る王の御座】が高度を下げて行き、一気に地表へと向かって落下して行く。素早く移動しながらも地表スレスレの所まで下がったところで、【天翔る王の御座】から飛び降りる。ギルガメッシュも飛び降り、そして宝物庫の中へと宝具を収納する。空を見上げればそこにはサーヴァントの姿はなく、相手を振り切れたことが解る。息を吐きながら元の姿へと戻り、そしてアルトリアとギルガメッシュ霊体化させる。体を低くしながら着陸した所の近くにあった林の中へと飛び込み、軽く身を隠し、
数分経過する。
変化はなし。
完全に振り切ったとは思わないが、それでも大分接近には成功したな、と思っておく。
「さて、ここは、どこかなっと」
周りを伺いながら林から出て、そして周りへと視線を向ける。周りに見える光景は住宅街のものだ。ルーラーの特権を用いてサーヴァントの気配を感じれば、大量のシャドウサーヴァントの気配を比較的に、近い場所に感じる。その方角へと視線を向ければ、廃墟が視界にあり、その向こう側が見えない。だからその上へと移動するように裏手の壁の上から昇り、元々は二階建ての家だった場所の屋根の上へと移動する。そこから見える光景は、廃墟と荒野ばかりだった。
だがまるで壁を隔てた、隣街へと視線を向ければ、
風景はがらりとその姿を変える。
―――見える限り広がるのは炎と泥。
黒く汚染され、そして炎によって燃え続ける都市の姿だった。少々手前の方で着陸させてしまったが、それでもどうやら目的地へと到達する事が出来たようだ。
『記録の事が経験だとすれば、この感覚を懐かしいというべきなのかもな』
『ふん、変わらんな』
アルトリアとギルガメッシュの声はどこか、懐かしむ様な色がある。サーヴァントという存在は召喚される際に戦闘の記録を時間の概念を無視して英霊の座は集積する。その為、ギルガメッシュとアルトリアには第四次、第五次聖杯戦争の”記録”が存在している。一体、過去の面影が一切存在しない炎上都市を見て何を思うのだろうか―――なんて考えても無駄だ。やる事は決まっているのだから。
「冬木を……大聖杯を潰す」
何故か、それが使命感として胸に焼き付いていた。
この風景を見て、それは半ば義務のようにも思えた。
冬木が見えてきたので漸くfateらしく見えてきましたが、お話的にはクライマックスですよ。前から言っているけど、この人たちの活躍は冬木をクリアしておしまいなのです。
勝っても負けても。
FGOオリオンイベ、礼装持たせて初級集会が効率一番いいらしいですね。
フレサポに送り出すリダが団子礼装持ってると効果発揮するらしいので、採用率上がりそうですよ