Fate/Grail Seeker   作:てんぞー

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神は超えられる試練しか与えない Ⅴ

「―――なるほど、事態は理解した。そしてマスター、お前の判断は正しい。この状況では無理に動いたり罠を仕掛けるよりも、戦力を増強できるのであればそうするに越した事はない。つまり私を召喚して正解だ。話し合いたい事は色々とあるが……此度の聖杯戦争は今までとは趣が違い、中々愉快そうだ。私も少々楽しませてもらう事としよう」

 

 そう言って笑う様な気配を鎧の下から感じさせるランサーの存在は物凄く頼もしい。ある意味、初めて召喚した”まとも”なサーヴァントでもあるのだ。ジャンヌはデミサーヴァント、つまり自分と憑依融合しているような状態だ。だから目の前で触れ、見る事の出来るサーヴァントはこのランサーで初めてなのだ。ジャンヌよりも感動が凄い。それに見た目からして、

 

「凄いかっこいい。ジャンヌとは別物だわ」

 

『マスター、さり気なくディスるの止めましょうよ』

 

「中々愉快なのはいいが……何か策はあるのか?」

 

「ない―――!」

 

 ランサーにそう答えながら、デミサーヴァントとしての機能を発動させる。肉体が音と痛みを響かせながら男から女へと、人から英雄へと肉体を変質させる。その痛みに歯を食いしばって耐えながら、変態を完了させ、そして声を響かせながら顔を持ち上げる。伸ばした右手には聖旗が出現し、服装をジャンヌの軍服姿へと変える。そうやって戦闘の準備を完了させる。ふぅ、と息を吐きながらランサーへと視線を向ける。

 

「そんじゃ戦闘は基本的にランサーに任せる。ぶっちゃけ連携も取れないのに俺が前に出ても邪魔でしょ」

 

「あぁ、成程。変態しても中身もそのままか。その内修練を重ね、使える所まで成長するとして、宝具やスキルで後方から支援してもらった方が遥かに動きやすい。お前は後ろから私の勝利を願い、そしてそれに尽力すれば良い。結果を出してやろう」

 

 ランサーの言葉は威厳で溢れている。カリスマ的だと言っても良い。ランサーの言葉を受けて鼓舞しない者はいないだろう。統率者、そして支配者としての資質をランサーは保有している。故に、前に立つその姿は実に頼もしい。ただ、過信してはいけない。ランサーも英霊である―――即ち殺され、或いは死んだからこそ召喚できるようになった存在なのだ。殺せば死ぬ、それは当たり前の事であり、この迷宮という相手のフィールドで、間違いなく警戒しなくてはならない事だ。

 

「さて……どうやら動き出したようだな」

 

 迷宮の奥から魔獣の咆哮が響いてくる。聞き覚えのある声にそれが即座にアステリオスの咆哮だと気付く。おそらくは【神明裁決】による拘束を突破してきたに違いない。ジャンヌの【神明裁決】によって相手を拘束できる回数は一回の戦闘で一回までと決まっている。その為、誰かと連携して利用する事が出来れば、一撃で葬る事の出来る必殺のコンビネーションを炸裂させる事だって出来る。ただ、今回はもう使用してしまった為、それが出来ない。だからアステリオスに対してはランサーを信じて正面から倒す必要がある。

 

「……近づいているな」

 

 迷宮に殺意と魔力が轟いている。アステリオスが殺す為に此方へと向かってきている。真っ直ぐ、真っ直ぐ殺す為に理性を飛ばし、一直線に突き進んでくる英霊―――それを正面から迎えるために、ランサーは槍を構え、そして自分はその背後数歩後ろに待機する。恥ずかしい話だが、今はこうしないと戦えないのだ。ただ、戦いの心得はある。故に覚悟を決め、心を固め、そして息を飲み、

 

 ―――アステリオスが闇から出現する姿を見た。

 

「来たな怪物め。討伐してやろう」

 

 自分であれば間違いなく恐怖する、【狂化】で理性をトバしている狂戦士の姿、それに対してランサーは正面から喜色を浮かべる様な声で踏み出した。アステリオスが振り上げた鉄塊を潜り抜け、素早く槍を貫くようにアステリオスの胴体へと叩き込む。それを獣の様な直感で回避したアステリオスが横へと跳び、迷宮の壁を足場にし、それを筋力任せに蹴って加速し、その敏捷力では出す事の出来ない速度を繰り出す。

 

「足掻くな」

 

 その加速をランサーは見切りながらすれ違いざまに刺突を叩き込んだ。脇腹を抉るように繰り出された槍の一撃は血の軌跡を描き、突き出た宝石のトゲが傷口を再生できない様にズタズタに引き裂きながらダメージを刻む。おそらくは自分とジャンヌのコンビでは不可能なアステリオスへのダメージを、ランサーは軽々とやってのけた。とはいえ、たったの一撃。アステリオスは一切その猛威を衰えさせる様な姿は見せず、咆哮を迷宮に木魂させながらアステリオスが繰り出すその両手の鉄塊による乱舞、それを回避し、受け流しながら戦闘を行う。

 

 振るわれる鉄塊を潜り抜けるように接近し、それを察知したアステリオスの二本目の鉄塊が槍からの一撃をガードする。受けられたランサーがその威力を利用して横へと抜けながら火花を散らす様に弾き、反動の加速を得て薙ぎ払う様に槍を振るう。本来であればダメージの入らない攻撃の繰り出し方ではあるが、ランサーの槍は釘バットの様に宝石が生えている。その為、横から殴りつけるだけでトゲ突き刺さり、肉が抉れ、

 

「ぐ、お、お―――!!」

 

 魔獣の咆哮が響く。それで二人とも止まるわけはなく、動きはさらに加速して行く。魔獣もランサーが強敵であると悟り、殺す為に鉄塊を振り下ろす。それをランサーは的確に見切り、弾くように火花を散らしながら暗闇の中に光源を生み出し、そして死の踊りを加速させる。変わる変わるアステリオスとランサーの位置に目が回りそうになり―――しっかりと動きを捉える。この目は英霊のものなのだから、捉えられない訳がないのだ。だからしっかりとみて、理解し、そして、

 

「―――【我が神は(リュミノジテ・)ここにありて(エテルネッル)】」

 

 宝具を発動させる。それは英霊を象徴する必殺の象徴であり、ジャンヌの保有する二つ目の宝具、それは無敵の結界を生み出す結界宝具。聖旗を突きだす様に突き立て、そこを中心にランサーとアステリオスを分かつ様に結界を生み出す。一切の指示や警告もなくそれを行ったが、丁度攻撃でお互いに弾かれた瞬間を狙った為か、見事に分かつ様に結界がかみ合う。それによってランサーと分かたれたアステリオスが吠え、結界へと向かって攻撃を繰り出すが、それは通らない。

 

「所詮頭脳(マスター)も理性もない怪物か―――蹂躙してやろう」

 

 そう言って、ランサーは右腕で握る槍を後ろへと引いた。その動作はランサーもまた、宝具を放つ為の体勢だった。宝具を放つために魔力を要求する彼女の要請に対して応え、ランサーの体に魔力を注ぎ込む。それに反応するようにランサーの握るその槍が―――宝具が弾けるように本来の姿を取り戻し始める。固形だった槍は不定形の光の螺旋を描き、焔色と白色の混じった閃光の様な姿を取る。

 

 同時にランサーを守護していた鎧も、それに呼応するように弾ける。体を覆っていた鎧の大部分が失われ、その下に隠されていた瑞々しく豊満な肉体が晒される。背中を覆う鎧の代わりにマントが生成され、色の薄いブロンドを宝具から生成される風に揺らしながらその金色の瞳でアステリオスの姿を捉える。理性を失っているせいか、アステリオスは逃げず、攻撃を結界に無駄に叩きつける。

 

「鳴け。地に堕ちる時だ」

 

 そう言い、光の螺旋を前へと向かってランサーが、

 

 ―――アーサー王、アルトリア・ペンドラゴンが宝具を振り抜いた。

 

「その魂に永遠の終止符を―――【最果てにて輝ける(ロンゴミニアド)槍】―――」

 

 放たれた。数多くの伝説と逸話を残した王の宝具。【約束された(エクス)勝利の剣(カリバー)】に次ぐと言われる彼の王の最強の武具の一つ。それから放たれる光と魔力の波動が一直線に空間を貫き、迷宮という環境である以上、逃げ場もなく荒れ狂いながら全てを喰い滅ぼす。逃れる事も防ぐこともできないアステリオスの姿は一瞬で光に飲まれ、上半身が切断され、下半身も飲み込まれ、そしてそのまま突き抜けて―――迷宮を破壊する。

 

 粉砕された迷宮の壁、床、天井が幻の様に消え去って行く。その向こう側に新宿の高層ビルが、青空が、現代の廃墟が見えてくる。アステリオスが討たれ、迷宮が破壊されたことによって隔離されていた宝具の空間が失われ、そして再び現実へと帰還する事が出来た。【最果てにて輝ける槍】による一撃がそれでもなお正面へと貫き、大破壊を生み出しながら爆風を生み出し、髪を撫で、なびかせる。

 

「―――ごめん……なさい……―――」

 

 そんな、男の声が一瞬だけ、聞こえた気がした。だが次の瞬間には何も残らない。迷宮も、サーヴァントも、まるで最初からいなかったかのように存在しない、消え去っていた。残されたのは破壊された新宿の街並み、消耗された自分の魔力と、そして自分自身にアルトリアの存在だけだった。【我が神はここにありて】を解除しながら息を吐き、かいた汗を宝具の真名解放から来る風に乗せ、涼む。

 

「ふむ……つまらん。理性のない怪物であれば所詮この程度か。多くは求めん。精々来世では頭脳(マスター)を連れてくる事を学習するが良い」

 

 そう言ってアルトリアが【最果てにて輝ける槍】を下げる。光の螺旋の形状をしたまま、鎧が弾け飛んで、一気に露出が増えた格好のまま、アルトリアは此方へと振り返る。その顔には笑みを浮かべており、

 

「して、どうだマスター? もはや私は騎士でも王でもない。お前のサーヴァントだ。となると私の価値はそれ(戦う事)ぐらいしか存在しない。どうだ、お前のサーヴァントは望んだどおりの英雄だったか?」

 

 アルトリアの挑発する様な声に、頷く。

 

「あぁ、まさに渇望していた戦うための英雄だよ―――どっかの聖女と違って」

 

『あ、待ってください。そこで私に当たるのは卑怯だと思うんです。大体私の性能が発揮され切っていないのはマスターがポンコツなのに原因があると思います。つまり、私は悪くないんです、全部マスターのポンコツさ加減が悪いんです。丁度良い所に武において有名な方を召喚する事に成功しましたし、これを機会に鍛えて貰いましょう!』

 

「ジャンヌぅ!」

 

「……中々愉快な道中になりそうだな」

 

 呆れた様な声を漏らしながらランサー・アルトリアが黒い部分鎧姿、そのままで此方へと近づいてくる。手に握られていた宝具は既に姿を消してある。戦闘が終わり、一息がつけるようになったところで、漸く落ち着いてアルトリアの姿を確認する事が出来る。改めて確認するアルトリアには当たり前の様に股間の盛り上がりがなく、そして上半身に女の象徴とも言える豊満な胸が存在する。鎧は両肩と両腕、足、そして角の様に頭頂部の身に存在し、体を覆うのは最低限の体の保護を行っているインナーの様な服装だ。しかもこれ、下乳と横乳が思いっきり見えているので物凄く艶めかしい格好でもあるのだ。太ももも思い切り見えているし、恰好的には割と痴女っぽいかもしれないと思うが、アルトリアは一切恥じる事無くそのしなやかな肢体を見せている。

 

「ふぅむ?」

 

 その視線にアルトリアは小さく笑みを浮かべる。露骨に体を見ていたので、ちょっと恥ずかしい、というよりは罪悪感が湧く。だがやはり、アルトリアは気にする必要はないと言って来る。

 

「女性として魅力的な肉体を誇っている事は自覚しているからな、何か悪心でもない限りは特に私から言う事はないが……マスター、お前も女性としては中々魅力的な体をしているんじゃないか?」

 

『ですって、マスター』

 

「お前ら二人揃って止めてくれよ……」

 

 アルトリアとジャンヌが即座に意気投合しているのが何気に恐ろしく感じるが、このままでは旗色が悪い。話題を変える為に強引に話を変える。

 

「それよりも俺はアルトリア―――というかアーサー王が女性だって初めて聞いたよ。【真名看破】で正体を知った時はホントびっくりしたわ」

 

「歴史の闇というべきものだな。まぁ、私は元々呪いで肉体が成長する事がなかったからな、当時はまだ男か女か見分けるのが難しい年頃の少女だった。胸だって成長する前だ、そうなれば少女か少年の違いなんて所詮は裸にしない限り解ったものじゃないだろう? 女である事を隠し通すのは難しくはなかったさ―――まぁ、それが原因で円卓が崩壊してしまったがな。今更な話だが、最初から女だという事を偽らずに……いや、余計な話か」

 

 一瞬だけアルトリアは憂う様な表情を浮かべ、それを振り払った。まだ話すべき内容ではないと思ったのだろう。まぁ、仲良くなることがあれば、その内話してくれるだろう。

 

「まぁ、戦闘は任せるが良い。騎士でも王でもない、ただの従卒(サーヴァント)の立場で戦うのも悪くはない。お前の行く末を見せて貰おう―――我が名はアルトリア・ペンドラゴン。貴様が自ら弱者である事を証明しない限りはその道を切り開き、怨敵を滅する修羅として同道しよう」

 

「宜しくアルトリア。俺は天白涯だ。改めて宜しく」

 

 近づいて来たアルトリアと握手を交わし、主従の契約を改めて終わらせる。

 

「ん、そうだ。マスター、これを受け取れ。先程撃破したバーサーカーが落としたものだ。礼装の作成かサーヴァントの召喚に役立つかもしれない」

 

  そういって、アルトリアが差し出してくる掌の上に乗っていたのは虹色の美しい輝きを持った石、聖晶石だった。アルトリアの召喚に使った為、ちょうど切らしていたのだ。となると補充できて丁度良かったかもしれない。感謝しつつアルトリアから聖晶石を受け取り、もう一度だけ、アステリオスが撃破された場所へと向ける。

 

 ―――最後のごめんなさい、アレは一体どういう意味だったのだろうか……。

 

 そんな事を少しだけ悩みつつ、

 

 旅と試練は終わらない。




アルトリア
ランサー 秩序・悪
筋力A 耐久A+ 敏捷C 魔力A+ 幸運D 宝具A++
最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)
※FGO+憶測 

 公式で情報が出るか実装されれば修正します。宝具とスキル辺り

 というわけで未実装な槍トリアさんが仲間になったよ。下乳+横乳属性でありながら金髪巨乳とかいう俺を殺しに来ている姿だよ。

 FGO(リセマラ)はじめました

 ジャンヌ出るまで何週間かかるかなぁ(白目
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