Fate/Grail Seeker   作:てんぞー

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人はパンのみにて生くるにあらず

「此度の聖杯戦争は色々とおかしなことが多いな」

 

「……そうなのか?」

 

『ぶっちゃけた話、例外だらけです』

 

 新宿に到着してから数日が経過した。そのまま探索をせずに、デパートの休憩室を拠点にして、まずは使える物を探し回る数日を経過した。何せ、魔力さえあれば生きていけるジャンヌとアルトリアとは違い、俺だけは生身だ。睡眠をする必要もあるし、食べ物などを確保しておく必要がある。だからそういう物資の調達に数日をかけ、新宿のデパートの休憩室に限定的な拠点を作り上げていた。新宿からはいろんな場所へと繋がる”線路”と”高速道路”が存在する。もはやどちらも機能してないとはいえ、その上を走って移動すれば十分に使える。何せ、ジャンヌの肉体で走れば大体どこへでも素早く移動できるのだから。

 

 それに、アルトリアの宝具は一つだけではなかった。それもあり、移動の問題は大幅に解決されたと言っても良い状況だった。だから今はとりあえず、これ以上の旅を続ける上での準備、そして用意をしたかった。だから色々と探していたりしたのだが―――それもそろそろ自分の能力では限界がある、という結論に達しつつあった。故に入手した聖晶石使って、新たにサーヴァントを召喚しようという案が浮かび上がっていた。

 

 そしてそれを実行する事を決めていた。

 

 故に拠点としているデパートの休憩室の床に、アステリオスの迷宮で描いたものよりももっとしっかりとした魔法陣を描いている。なぜなら、アルトリアの召喚は”部分的に失敗”とも言えるものらしいからだ。それを今、ジャンヌとアルトリアが説明してくれている。

 

『まず最初に言いますと、アルトリアさんは騎士王と呼ばれるほどに高潔で、そして清廉潔白な方でした。それに死ぬまで男とも女とも解らない様な姿でした。ですので、まず第一にアルトリアさんが明確に女だと解る様な姿をしていること自体がおかしいんですよ。その上、アルトリアさんは黒に”染まって”いますよね?』

 

「あぁ、今の私は何らかの干渉、或いは汚染を受けて”騎士王の非情さ”を象徴する側面として現界している。ある程度は召喚者の資質等でどうにかなってはいるが、それでも私を知っている者が見れば一目瞭然というものだろう。アルトリア・ペンドラゴンはこんな風貌をしたことはない、と。そして【約束された勝利の剣】を保有している限りは姿が変わる事も永遠にありえない。今の私の姿はまるでモルガンの様だ」

 

 モルガン―――確かアーサー王の姉だった人物の気がする。いや、正確にはアーサー王ではなくアルトリア王かアルトリア女王なのだが。

 

「だが、まぁ、悪い気はしない。或いは”【約束された勝利の剣】の呪いがなかった私”というのはこういう姿をしているのかもしれない。そう思うと今の姿には増々愛着がわいてくるというものだ。まぁ、どうでもいい話だな。重要なのは”本来とは違う形でサーヴァントが召喚されてしまう”という事にある」

 

『ハイ、というわけで前とは違って、今回は真面目に、万全の状態で召喚します。サーヴァントがゆがめられて召喚された場合、どうなったか解ったもんじゃありませんからね。アルトリアさんの場合はなんとかなりましたが、これが次回以降も続くかどうかは一切解りません。なので今回は一切の簡略化なしで進める事になります』

 

「なるほどなー」

 

『あ、そこちょこーっと……あ、そんな感じです』

 

 ジャンヌのルーラーとしての権限には召喚などに関する情報が割と多く含まれているらしく、その指示に従いながら召喚陣を描く。やはりその内容はアステリオスの迷宮で描いたものよりも遥かに細かく、そして大量の血液を消費する物だった。作業の合間に休みを挟みつつも、しっかりとした召喚陣を描いて行く。アルトリアを召喚したときとのは違い、此方は半日程の時間をかけて描き、尚且つ霊脈というラインから魔力が流れ込む様に仕掛けを作り作成した、少々大がかりなつくりだ。それが完成してほっと一息をついてから、アステリオスから入手した聖晶石、それを召喚陣の中央に設置し、

 

 サーヴァントの召喚準備を完了させる。

 

「昔はサーヴァントの召喚に詠唱を必要としたらしいが……」

 

『今は必要ありませんね、召喚に関する知識とかが進んで、サーヴァントを召喚しやすくなっています……というわけでパパっと探したりストーキングが得意なアサシンを召喚してしまいましょう。やっぱりガチャですけど』

 

「触媒がないから仕方がないな。完全な縁か相性召喚になってしまうだろう」

 

 まぁ、そこらへんは仕方がない、と割り切ってしまうしかない。ともあれ、やる事はアルトリアの時とは変わらない。魔術回路を起動させ、魔力を生み出し、それを召喚陣に注ぎ込む。反応するように光り始める召喚陣、中央に魔力が収束し、励起しながら力が集まって行く。あの時は良く解らなかったが、ここで聖晶石が分解されながら力となって注ぎ込まれて行く。それを眺め、アサシンの到来を祈る。反応するように更に光り出した魔法陣はそこから人の姿を生み出す。

 

「―――サーヴァント、アサシン」

 

 そう喋ったのは黒いコート姿の青年だった。水色の瞳に白髪、とかなり印象的な格好をしている。だがそれよりも感じられるのは濃密な”死”の気配だ。いや、この青年はそこまで強い訳ではない。おそらく一対一の戦闘ではジャンヌ化した自分でも勝てると思う。その程度の戦闘力しかない。だがそれとは別に、濃密な死の気配を持った青年がいるのだ。強さとはかけ離れた、そんな死だ。

 

「シャルル=アンリ・サンソン。召喚に応じ参上しました」

 

 その名を聞いて納得した。

 

 ―――シャルル=アンリ・サンソン。彼は人類史上、”二番目に多くの人々を殺した男”の名前だ。少し歴史を調べた事のある人間であれば誰だって知っている。シャルル=アンリ・サンソンは処刑人だ。そういう家系に生まれ、そしてそういう業を背負わされた。本人は処刑そのものを文化から消し去ろうとしたも、それは叶えられず、マリー・アントワネット等の人間を処刑したのだ。【真名看破】が発動し、アンリ・サンソンのステータスが表示される。

 

シャルル=アンリ・サンソン

ランサー 秩序・悪

筋力D 耐久D 敏捷C 魔力D 幸運A 宝具B

【処刑人】A++ 【医術】A 【人体研究】B 【気配遮断】D

【死は明日への希望なり(ラモール・エスポワール)

 

 弱い。その戦闘力は、弱い。だが驚異的なのは【死は明日への希望なり】だ。これは条件次第では相手を即死させる宝具だ。その条件も確認すれば厳しい様で軽い様で、実に微妙な所だが―――”ハマり”さえすればどんな強敵であろうとも、一撃で滅ぼす事のできる宝具だ。それと引き換えにアンリ・サンソンの能力は低いようにさえ思える。しかし、それはいいのだが、アンリ・サンソンに関して一つ、大きな問題がある様に思える。

 

「アンリさんは……その……偵察とか、出来るんですかねぇ……」

 

「……うん……その……済まないけど……処刑専門なんだ……」

 

「聖晶石とアサシン枠の無駄遣いだったな」

 

 アルトリアのその言葉にアンリ・サンソンがショックを受けた様な表情を浮かべるが、だがアンリ・サンソンは彼でかなり優秀なサーヴァントなのだ。とりあえず話の流れをぶった切る様に口を開く。

 

「い、いや、偵察能力なくても大丈夫だから! ほら、アルトリアがいるし! 探ったりするのを本能的にやってのけるからこの人! それにこの王様大量虐殺とかやってるからきっと一発で宝具で殺せるって!」

 

「フォローになってないぞ」

 

「気持ちは受け取っておきます……が、何やら特殊な状況なようなので、とりあえずは事情の説明を受けてもよろしいでしょうか、マスター」

 

 アンリ・サンソンのその言葉におう、と答えながら頷く。当たり前だがサーヴァントには基本的な知識があっても、状況に関する知識は存在しない。だから彼、或いは彼女に直接現状を伝えないとならない。アンリ・サンソンとのコミュニケーションを兼ねて、説明と話し合いを始める事にする。

 

 

                           ◆

 

 

 話し合いに関しては少々時間がかかってしまった。気が付くころには既に外の日が落ちてくる時間となってしまっていた。だけど、おかげで今の状況とどうして召喚されたのか、それをきっちりとアンリ・サンソンへと伝える事が出来た。だから話を全て終わった後で、家具コーナーから引っ張って来たソファの上に座りながら、アンリ・サンソンは頷く。

 

「成程、そして納得が行きました。聖杯からの情報の不備、及び現状の状況に対して得心がいった。まず第一に―――これは聖杯戦争ではない」

 

「どういうことだ」

 

 アルトリアのその言葉に、アンリ・サンソンが頷く。

 

「おそらくこの面子の中で、唯一まともに召喚されているのは僕だけでしょう。だから聖杯からの情報供給を正しく受け取っている。だから幾つか答えられる質問がある―――たとえば何故、こんな風に廃墟ばかりになっているのか、とか」

 

「マジか!?」

 

『意外なところで問題が解決しそうですね。アルトリアさんとは違って早速頼りになりますね』

 

「ルーラー貴様ぁ!」

 

 この聖女はどうにかならんのか、なんて事を思いつつも、先を促す為にも視線をアンリ・サンソンへと向け、それを受けたアンリ・サンソンが頷き返す。

 

「―――やっぱり女の子はマリーじゃないと駄目ですね。ヴィヴ・ラ・フランス!」

 

 何言ってんだこいつ。正気か。

 

「ちげぇよ。……ちげぇよ……。つかお前もか。なんだ、英霊って召喚されたらどこか残念な属性がないと駄目なのか。……何自信満々な気配だしているんだよ! 駄聖女と駄騎士王お前らもだよ! ジャンヌは説明する必要は欠片もねぇけど、お前! アルトリアお前! 無駄にその体に自信満々なんだよ! どんだけ貧乳だったことに闇を抱えているんだよ! お前がその体気に入ってるのは解ったから見せつける為だけに鎧脱いだままなの止めろよ! クソ! いい加減まともなサーヴァントが欲しいなぁ!」

 

「なら次回はランスロットを呼べ。丁度殺したいと思っていたんだ」

 

「クソ! お笑い芸人のサーヴァントはいねぇのか! 主にツッコミ方面で頼りになる奴は!」

 

 まぁ、英霊だからいる訳ないよなぁ、なんて事を思いつつ一息休憩を入れ、場がある程度落ち着くまで時間をかける。そして再び真面目な話、つまりアンリ・サンソンが聖杯から得た知識に関する話になる。

 

「―――まず第一に聖杯戦争は2004年に開催された第五次聖杯戦争が最後の聖杯戦争となっています。そしてこの後、聖杯戦争を継続する為に必要と言われる大聖杯、これの解体が九年後に行われようとして―――失敗、その結果、大聖杯の中で育てられていた悪という概念、アンリ・マユが育ち、生れ落ちました」

 

 それが始まりだとアンリ・サンソンは言った。

 

 アンリ・マユが生まれた結果、災厄は霊脈、或いは龍脈を通って伝染する様に日本に広がり、その悪を体現する為の行動が成された。そうして一気に日本は滅びの道を突き進み―――それは海外にも伝染した。世界が悪という概念によって犯される事によって、神秘に関する法則も徐々に変質し、

 

「そして今のような状況が出来ている、という所までは聖杯から知識を得られました。というわけで解っている情報の共有をしたんですけど、大丈夫ですか?」

 

「……おう、とりあえず目的地は決まったしな、これで」

 

「―――冬木か」

 

 アルトリアの言葉に頷く。これは聖杯戦争ではない。だとしたら何故聖杯は稼働し、サーヴァントは召喚され、そしてこんな事になっているのだろうか? 或いはこうやって用意された自分はアンリ・マユへの対抗策なのか? こんなところで死にそうだったのに? そう思いたくはない。ただ、冬木市で聖杯戦争は行われていた……だとしたらそこにはきっと、更なる情報があるに違いない。そこへ向かうしかない。

 

「ふぅ、じゃあ明日からは物資を書き合埋めて冬木の方へと移動開始だな……場所は解るよな?」

 

「はい、勿論。それも聖杯からの知識にありました」

 

「うし、じゃあ―――」

 

 そこまで話した所で、英霊達の動きが突然止まる。そうやって何かを察知したかのように動きを止めた彼、彼女達の姿を見てどうしたものかと思ったが、

 

『……この建物内に誰かが入ってきましたね。これは―――』

 

 その言葉をアルトリアが引き継いだ。

 

「―――落とし子やサーヴァントではない、人の気配だ」

 

 生存者がいる。世界にいるのは俺達だけじゃなかった。




 マリーFCのシャルルくんが仲間になりました。

 ゲームだと若干使いにくいけど、処刑の宝具に医術とかって、普通のアサシン以上に物凄く厄介で便利な能力なんじゃないかな、と思う。とりあえず、

 サーヴァントたちはいい感じに愉快なようです。
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