Fate/Grail Seeker   作:てんぞー

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人はパンのみにて生くるにあらず Ⅲ

「さぁ、こっちです」

 

「あ、ちょっと待って、警戒しながら進んでるから」

 

「いえ、そんな必要はないから大丈夫ですよ」

 

 そう言いながら武は新宿シェルターへと此方を案内してくれていた。警戒する必要はない、という男の言葉に対しては首を捻るしかなかったが、その言葉の答えは武からではなく、ジャンヌから来る事になった。

 

『この周辺……簡易的にですが魔術による結界が張られています。サーヴァントの様な大物には無意味ですが、落とし子程度の存在であれば寄せ付けない、そういう術式が設定されていますね。だからサーヴァント以外の存在を警戒する必要はありませんね。それにしたって来るならば事前にわかりますし。ただ……見た事のない方式ですね……魔術とは解りますが』

 

『となると、このシェルターとやらには魔術師がいるという事になるな』

 

 ―――魔術師。それは”根源”を目指す自殺志願者達、とジャンヌやアルトリアからは聞いている。戦闘ではなく基本的には研究者であり、どれだけ時間をかけてもいいから根源を目指そうとする存在でもあると。ただその産物として、ありえない怪物等が生み出されているとも。サーヴァントも、根源を目指そうとして生み出された副産物の一つだったとか、確かそういう話だった筈だ。魔術師に出会う事は―――正直良かったかもしれない。魔術師であればこの状況、聖杯戦争が行われているようで行われていないこの状況に対して何か知識を持っているかもしれない。

 

 記憶がない内に自分がどれだけ魔術に染まっていたのかはわからない。が、情報は得たいものだ。

 

「シェルターに行くのは初めてなんだけど……どういう感じなの?」

 

「基本的には地下シェルターだよ。原因不明の災害と怪物が日本を襲って、情報収集とかが全くできなくなって混乱して……まるで最初から用意されていたかのように新宿の地下のシェルターが解放されたんだ。農業が出来るスペースや、居住スペースがあったりして、結構広いんだ。まるで最初からこんな状況を想定していたかのようでちょっと不気味だけど、生きている人達はそこに集まっているよ」

 

「へー」

 

『もしかすると事前に予知か何かで災厄を予想した方々が準備しておいたのかもしれませんね。アトラス院とかが滅びを回避する為に活動している組織らしいですし。いや、まぁ、ろくな情報がない訳ですけど』

 

『憶測ばかりでも仕方あるまい。まずは確定した情報を合埋める事から始めよう。そこからであれば色々と予想する事もできよう。……あれだ、魔術師に期待し過ぎるてはいかん。私が知っているのと言えばまずはマーリンを思い浮かべてしまうが、基本的に連中は”利己的”だ。ギブ・アンド・テイクではない限りは基本的に信用してはならなん連中だ。それに魔術回路を持っている分、”自分は他人よりも優秀である”という自負を抱く劣等ばかりだ。個人的には魔術師はそこまで好かん』

 

『まぁ、会ってみれば解りますよ。マリーが最高のサーヴァントだって事がね』

 

『いい加減その口を縫うぞドルオタ』

 

『アンリさんは少々私達の事ディスりすぎじゃないですかね』

 

『あざとさで気を引こうとする聖女に平原がデフォルトのクセに立派な体を得て有頂天の騎士王。これとフランスの国民的アイドルのマリーと比べれば一体どちらが生物として、女として、そしてアイドルとして最強なのは決まっているからね。聖杯からの知識で僕は”ドルオタ”の概念に目覚めた。甘かった、甘かったよ……現代のアイドルに対する接し方、応援の仕方、その文化! 発展に目から鱗を零したと言っても良いね。僕はマリーへの新たな信仰に目覚めたんだ』

 

 ―――このドルオタやべぇ、色々拗らせてやがる。

 

『見てくださいアルトリアさん、自分で処刑したクセに何か言ってますよこの人』

 

『あぁ、そうだなジャンヌ。マリー・アントワネットを処刑したクセに何か言っているぞこいつ』

 

『うわぁぁ、マリー―――!!』

 

『ザマァミロ』

 

 誰か早くこいつに【精神汚染】を実装しろよと思いつつ、ジャンヌと二人きりだった頃よりも遥かに賑やかになった会話を楽しみ、武が先導する道をしっかり覚えつつも進む。やはり周りの景色は廃墟ばかりだ。どこへ行こうとも廃墟ばかりで―――自分の知っている新宿の姿からは大幅に乖離している。探索している時は毎回思ったが、新宿の面影のみを残した荒廃した文明の姿は悲しかった。や、落とし子やサーヴァントが徘徊している可能性がある中で、銃などの文明の兵器が効き辛い中で、衰退を余儀なくされるのは仕方のない事かもしれない。

 

「なんで……こんな風になっちゃったんだろうなぁ……」

 

「解らないよ。ただ、何が起こったかはわからなくても現実を受け入れないと死ぬんだ、頑張って生きて行くしかない。それしかないんだ……っと、こっちこっち」

 

 地下鉄へと降りる様な、地下へと続く階段を見つける。特に隠されている訳でもなく、普通に中に入って行くと、明かりのついているランプが地下へと続く階段の横についているのが見える。勿論、電力なんてものは今、供給されていない。だから当たり前の様にこの電力は、このシェルターで生み出され、そして使用されているものだ。今まで見る事のなかった電灯の存在にちょっとだけ文明を感じ、笑みを浮かべながら階段を下りて行く。

 

 その先にある鋼鉄の扉を抜ける。

 

 その先には更に階段が存在し、更に下へと下がって行く構造になっている。それを降りて行くと再び鋼鉄の扉が待っており、それを抜けた先に、漸く目的地の姿があった。

 

 そこにあるのは広い空間だった。上から光が降り注ぎ、そして照らしている。簡単に見える場所を説明するなら、”デパ地下”という言葉が近いかもしれない。ただし店舗の代わりに、簡易的で小さな家が並んでいる、という状況だが。テレビで見た事のある、避難所の姿を思い出させる様な光景でもあった。そんなシェルター内を入口から見まわし。確認しながら落とし子、敵、或いは魔術師の気配を探る。おそらくはここに来た時点で自分の事はバレているだろうとは思う。魔術師とは狡猾な生き物らしいし。

 

「さあ、ようこそ新宿シェルターへ! ……と言っても歓迎できるほど素晴らしい場所でもないんだけどね。とりあえず、我が家へと案内するよ。こっちだ」

 

 そういって武はみすぼらしい建造物の前に移動し、そしてそこが家だと言う。―――ぶっちゃけた話、人が五人もいたら辛そうな、そういうサイズの家であり、中に入って邪魔するのは少々気が引ける為、外にいるままでいいし、特に歓迎も必要はない、と言っておく。

 

「そうかい? ……じゃあこれを受け取って欲しい。ちょっとしたお礼だよ」

 

 そう言って武が部屋の中から持ってきたのは―――聖晶石だった。感謝しつつ受け取り、武から離れて、聖晶石を持ち上げ、それを眺める。

 

「……いやさ、サバの召喚に使うから聖晶石を貰えること自体は嬉しいんだよ。別に見返りを求めて人を助けたわけじゃないんだしさ。だけどさ、お礼をするって事で聖晶石をくれるって……なんかおかしくね? ちょっとズレてね? これ、普通の人間にはちょっと綺麗な石って程度の価値だろ? 命を助けてこれかよ! って気持ちがなくもないんだけど……」

 

『人の命という奇跡を前にしているのですから、我儘は言わない方が……』

 

『と、ジャンヌは言っているが私からすれば物価や相場が崩れた事によって物に対する価値観が変動したと見ている。こういう状況になってくると、人間はまず第一に安全と生活の向上を求めるだろうが、それだけではどうにもならないのが人間という生き物だ。娯楽や立場を求め始める者も多い。となれば、装飾品一つで優雅に飾れば、周りからは待望の視線を向けられるのではないのか? ”こいつは飾るだけの余裕があるんだな”、と』

 

「ほえー、流石アルトリアだな。伊達に王様やってないわけだ」

 

『滅んだけどな』

 

『それを言うな貴様! 第一どんな王が務めたとしてもブリテンは滅んだわ阿呆め。円卓が割れるとか妻が寝取られるとか一番の騎士がグレるとか一体どうなってんだ。クソな運命にも程というものがあるぞ! モードレッドめ、次に見たらケツを百叩きにして根性を鍛え直してくれる! そういうわけでだ、マスター。私からはその聖晶石を使用してサーヴァントの召喚はセイバー・ランスロット、或いはセイバー・モードレッドの召喚をオススメする』

 

 その心は、とアルトリアに聞く。

 

『個人的にヤキ入れたい―――というのは半分本音だが、我が円卓の騎士は強いぞ。並の英霊等は歯牙にかけん。私とも面識があるから即座に連携を組んで戦う事もできるからな、そこらへんの相性を見ても悪くはない。まぁ、個人的に確執があるのも事実だが、死んでからも引っ張り続ける程私も愚かではない。貧乳だった頃とは違うのだよ、貧乳とは』

 

『アルトリアさんの貧乳ディスは日々凄くなる一方ですね』

 

『そんな事よりライダーでマリーを召喚しないか? 癒されるぞ―――主に僕が』

 

 全力でアンリ・サンソンの言葉を受け流しつつ、聖晶石をポケットの中に仕舞い込む。聖晶石がこうやってサクサク見つけるのは良い事だ、何せ、増えれば増えるほどサーヴァントが召喚しやすくなるし、戦力の増強にもなる。現状、召喚できるサーヴァントはルーラーであるジャンヌを抜いて、六騎。その内アサシンとランサーは使用してしまった。となると残りは四枠になってくる。

 

 ライダー、バーサーカー、セイバー、アーチャー、そしてキャスター。

 

 この中で壱番除外する可能性が高いのは現状、キャスターになっている。【陣地作成】をベースに、拠点を形成して引きこもる事の多いキャスターは、旅を行っている此方からすれば、動きづらくなる上に戦術を組むのが面倒になってくる部類のサーヴァントだ。勿論、キャスター全体を見ればそうじゃないのも交じっているだろうが、基本的なキャスターという存在は魔術師であり、魔術師は求道者なのだ。自ら能動的に動く事はあまりない。研究や作成する事に長けているのだ。

 

 礼装の作成だってジャンヌの【聖人】を通して【聖骸布】が生み出せる。となるとキャスターを召喚する事の利点が少なくなってくるのだ。

 

 強力なサーヴァントと出会った場合の切り札としてバーサーカー、ライダー、そしてセイバーに、偵察兵としての役割を単独行動で行えるアーチャーが欲しい。アステリオスと戦った時はアルトリア一人でどうにかなったが、既に聖杯戦争のルールからは大きく外れている。相手のサーヴァントがそもそも七騎で終わる、済むという保証時自体が存在しないのだ。場合によっては同時に四体ものサーヴァントと戦う必要さえ出てくるかもしれない。

 

 ジャンヌが言うには俺が戦闘に同時参加させられるサーヴァントは二人、ジャンヌに変身しなければ同時に三人までだったら戦闘させられる事が出来るらしいが、それが限界だ。だけど、手札は多い方が良いに決まっている。だから現状、召喚は積極的に行おうかと思っている―――まぁ、流石に人のいない場所でやる事に決まっているが。

 

「とりあえず交換所へと向かうか」

 

 どこにあるかは知らないが、適当に歩き回れば見つかるだろう。そう思って歩き出そうとして、

 

 ―――何故か無性に、女を抱きたい気分になって来た。

 

 まぁ、このデミサーヴァント状態の生活が始まってから生きる事に必死だから色々とやってない事があるのは事実だし、多少そういう気分になった所でもしょうがない、のかもしれない。ただジャンヌが存在するし、どうしたものか。絶対に口に出す事も、そしてサーヴァントの三人に悟られる事もなく考えていると、

 

「―――もし」

 

「んあっ?」

 

「貴方は外から来た方ではないでしょうか」

 

 そう呼び止められ、振り返る。そこにいたのは一人の尼だった。僧衣に身を包んだ尼は露出しているのが顔と、その両手ぐらいだろうが、そんな服装であっても、隠す事の出来ない体のラインを含め、妙に蠱惑的な雰囲気を持った、女性だった。抱きたくなる女、とはまさに目の前の女の事を言うのかもしれない。初めて見かける類の女の姿に、一瞬だけ呆け、

 

『―――しっかりしろマスター、こんな年増よりもマリーの方が万倍素晴らしいぞ』

 

 ばかな事を言うアンリ・サンソンのおかげで正気を取り戻す。

 

「えぇ、まぁ、ついさっきここに来たばかりで。旅をしている途中で立ち寄っただけだけどな」

 

「まぁ、奇遇ですね。私も旅の途中でここに寄っただけなのですが、ちょっとした事情で離れられなくて……あぁ、すいません。私、殺生院キアラといいます。外からの人は少々珍しいのでついつい……」

 

 そう言って手を口の前へと持って行き小さく笑う彼女の姿は妙に艶やかだ。関係がない筈なのに、妙に脳にこびり付く様な不快感、そして色気がある。直接心に入りこんでくる様な、そんな感じがする。―――直感的に、或いは【啓示】があまり長く、この女と接するべきではないと訴えかけているような、そんな気がする。

 

「あぁ、おう、そっか。それじゃあ」

 

「えぇ、お引止めしてしまいましてすいません、それでは”また”」

 

 キアラが去って行き、軽く息を吐く。

 

『―――淫婦の気配だな。隠そうともしていない。アレはそこにいるだけで心を犯してくる怪物だぞマスター』

 

 アルトリアの吐き捨てる様な言葉を否定する者は誰もいなかった。敵対的に接しようと判断する事が彼女の前では難しい、そんな気がした。

 

『ここは早く出て行った方が自分の為かもしれませんね』

 

 ジャンヌのその言葉をいや、とシャルル=アンリ・サンソンが否定する。

 

『今すぐ殺したほうが。ああいう類は生かしておいてもいい影響を与えない。関わった時点でアウトです。……まぁ、そこまでする必要はないかもしれませんけど』

 

『うーん、【啓示】ではありませんが、なんか嫌な予感がします。早めにここを出る事に関しては賛成ですが……私としては少々、ここが不安でもあります』

 

『所詮は我々には関わらん事だから放置して進め、と私は言うがな』

 

『……どうやら意見が割れてしまったみたいですね』

 

 アルトリアは胸を持ち上げるように腕を組んで、立ち、アンリ・サンソンも肩を軽く揺らしている。ジャンヌから言葉の続きはない。つまり、判断はマスターである俺に預ける、と言う事だ。参った、こういう面倒な事は考えたくはないのだが―――とりあえず、

 

「交換所を見るだけ見てこう。そしてそっからどうするか考えよう、まだ余裕はあるんだし」

 

 とりあえずの結論をそうとし、歩き出す。




 テラニーで有名な殺生院キアラさん登場。

 近くにいるだけでマイサンが大変になるというRレートに喧嘩をCCCであのR審査になった最大の理由にしておそらく型月最悪の存在。おう、お前ちょっとテラニーしろよ。なおYAMA育ちであり、格闘でアルターエゴを撃破する猛者でありながら地上では1回殺されているとか。どっかのウルトラ求道僧も山の上にいたアルクを捕獲してお月様に向かったし、宗教家は化け物しかいないのかこの世界。

 レベルを上げる度にフレ登録しているのに数分後にはまた依頼上限に突入してるよぉ(震え声
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